鮮やかによみがえった。A級ですらなかなか勝ち切れずにいた男が、この8月に3連勝でS級初優勝。
さらに10月も厳しい位置から猛烈に追い込んで今年2度目のV。在校9位の成績でデビューから一気にS級1班まで登り詰めたものの、長くA級生活が続いていた山口が30代終盤にして覚醒した。
「もうすぐ40歳。この先、どうなるのかなと不安を感じていた。そんな頃に落車負傷で入院した時にたまたま成清貴之(千葉・73期)さんと同じ部屋になった。『お前はもっとやれるよ。俺はできるやつにしかこんなことは言わない』と声をかけてもらったのがきっかけなんです」と打ち明けた。
練習をがらりと変えた。アップダウンのある街道で徹底的に鍛え直した。負荷をかけた上で最後にもう一度加速するトレーニング。そして同時に行ったのが四日市通い。そう、浅井康太(三重・90期)の教えを請うために月1回のペースでともに練習するようになった。「2年前からですね。基礎的な身体の使い方を教えてもらうためです。理解するのに時間はかかりましたが、それが分かるにつれて成績も上がってきたんです」。
気付けば大台の110点にも手が届きそうな競走得点をマーク。成績上昇とともに番組が良くなり、周囲の見る目も変わる。山口自身の意識もはっきりと変わった。「これまでは決勝に乗ったらひと安心する自分がいた。でも今はそんな気持ちはない。記念(熊本記念in久留米)で初めて決勝に乗れたことで9車の競走でも結果を残せた。一つ勝つことで次も勝ちたいと思うようになったんです」。
練習、理論、意識。全てがかみ合ったことでS級上位の地位を固めつつある現在。「今の目標は、来年9月に地元の岐阜で開催される共同通信社杯に出場すること。そこを目指せば他のGIなどの出場も自然に付いてくるでしょう」。
4月以降、ビッグでの決勝進出者がゼロという苦戦が続く中部勢。そんな中でもあるだけに、山口の復活は明るい希望の光となりそうだ。