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佐々木悠葵 群馬 S級2班
未完の大器が真夏に輝く
 2021年の真夏に輝くのは五輪アスリートだけじゃない。上州に現れた久々の大器がバンクで躍動する。
 7月1日からのGIII小松島周年記念は、全国区に名乗りを上げる4日間となった。昨年末にS級に特別昇給。S級でもその爆発的なスプリント力とハイスピードで結果を出してきた。直前の静岡、西武園で連続完全Vの6連勝を決めて、その勢いをぶつけた。「静岡では9車立ての戦いに合うセッティングを試して臨みました。それが西武園でかみ合う感覚があった」と記念、次のGIIサマーナイトフェスティバル、そして初のGIオールスターに挑む配分を意識した。
 初日1次予選は武田豊樹を連れて打鐘先行で2着に粘り込み関東ワンツーを決めた。2次予選では得意のホームカマシで堂々と押し切った。準決は後方に置かれながらまくり上げて2着に入りGIII初の優出を決めた。「先輩が2人も付いてくれたのに仕掛けが遅れたし内容が良くなかった」と出るのは反省の弁ばかりだった。決勝戦は前受けから最終的には後方に置かれて6着で終わった。
 小学校から始めたバスケットボールを大学まで続けた。Bリーグにすすむ選択肢はなかったが180cm、90kg超えの体格を生かした仕事はしたかった。大学の先輩である山岸佳太(107期)の影響もあって適性で115期の選手養成所に入った。慣れない自転車の扱いに戸惑いはあったが、バスケットで鍛え上げた瞬発力を生かしたスプリント力で養成所でも頭角を現し、自転車競技でも活躍した師匠の矢口啓一郎には「まだ基礎はなってないけど、群馬で久々に『これは』と感じる新人」と言わしめた。
 小松島に続く初の特別挑戦となったGII函館サマーナイトフェスティバルでは流れに乗れず7、8、9着に終わった。「結果は出たけど小松島は疲れがピークだった。次の函館でも体調のずれがあった」と吐露する。それでも「9車立てのセッティングには目処がつきました」と前を向く。「もう1度生活の習慣から元に戻してオールスターに向かいたい。予選突破をしたいけど大きな目標はない。目の前の一戦にまずは全力でぶつかるだけです。将来的に目指すのは何でもできる古性(優作)さんのような選手です」。先行主体で結果を出してきた未完の大器が、古性のような峻烈(しゅんれつ)な自在性を備えればどう化けるか。その成長から目が離せない。


小松島競輪場より