小谷 実 京都 S級2班
記念競輪初出場
真新しいS級の赤パンツ。選手仲間から「色を間違えて買ったのか」と冷やかされても明るく笑い返した。この7月からデビュー以来初めてS級に上がった小谷。2班に降班することはないけれど、S級点に届くほどの成績は残せずにいたA級1班の安定選手が30代半ばにして昇級した。
要因は何か。コロナ禍で落ち込んだ成績を反省し、練習への取り組みを変えたことが大きいのは事実だ。ただ、体力は20代の頃の方が絶対にあったはずで、自力の看板を降ろすことなくデビュー14年目にしての昇級は、なかなかのレアケースである。
「もちろん、脚力は昔の方がありました。若い時の方がタイムは良かったし、もがける距離も長かった。S級点を取れたのは無理な駆け方をしなくなったからでしょう」。相手の動きを見ての中団取り、適切なタイミングでの仕掛け。「任されたら頑張る」自力選手でありながら、番手どころか3番手も回る柔軟なスタンスも成績安定につながったのかもしれない。
7月の富山記念は記念初出場。S級初戦だった静岡FIでは3番手から突き抜けて早々とS級初勝利を飾っている。ただ記念では、自力の初日は見せ場なく終わってしまった。「自分は中途半端なのに、みんな隙がなくてスピードが違う。ヤバい、すごいしかない」と危機感をあらわ。そして「そもそもテレビで見ていた選手と戦い、地元の向日町記念でお手伝いしかしなかったGIIIに自分が出ている」と改めて驚いた。
しばらくは簡単にはいかないだろう。それでもしっかりとしたタテ脚を持っているのは確か。特に番手回りなら高配当を提供してくれる選手だろう。「S級は脚も技もある人ばかり。まずはレースの流れに慣れていかないと」。初々しさも感じさせる14年目の中堅選手の挑戦に注目だ。
富山競輪場より