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徳田匠 京都 A級3班
近畿の大砲候補
 京都市の北部にかつて「北桑田郡京北町」という自治体があった。2005年に京都市と合併して、現在は同市右京区の一部となったが、林業が盛んなこの山深い里に北桑田高校がある。全国総合優勝3回を誇る自転車競技の名門だ。府立高ながら寮を備えており、府内から自転車競技の有力選手が集まる好環境。競輪選手も多く輩出しており、徳田もまた北桑田高OBの一人だが、出身は日本海に面した宮津市。ロードで名を馳せる長兄・鍛造さん、次兄・優さんと同じく、同高から鹿屋体育大に進み、脚力を培った。
 強靱な地脚は兄譲りといったところだが、徳田はスプリント系のトラック競技もこなす器用さを持ち合わせていた。19年の茨城国体では成年ケイリンで3位。「大学時代は自転車競技を楽しませてもらった」。卒業後は、高校の先輩でもある畑段嵐士に師事し、競輪選手の道を選ぶ。119期生として、晴れて今年デビューとなった。
6月30日初日の地元・向日町で本格デビュー初戦を完全Vで飾り、9月の豊橋では特別昇班に王手をかけたが決勝で3着に敗れた。続く向日町でも決勝で敗れ、仕切り直しとなった今回10月8日からの奈良にV候補筆頭として登場。「自分の持ち味は長く踏めること。向日町決勝は行くべきところで行けず、悔しい思いをした。まくりもできるようになれば攻め幅も広がるが、今は細かいことを考えずに先行したい」と、気合を入れて乗り込んできた。
 有言実行とばかり、初日予選は打鐘先行、準決勝は突っ張り先行。決勝は松本憲斗、神開一輝、渡口勝成との同期対決になったが、打鐘前の2コーナーで内から抜け出すと、渡口との先行争いに踏み勝って1周半の押し切り勝ち。改めて強さを見せつけた。「何とか勝てたが、ずっとキツかった。奈良はキツいイメージが付いちゃいましたね」と振り返ったが、気迫が伝わる好レースだった。
 あらためて今後の目標を聞いた。「バックを取ったレースではほとんど負けていないが、まだ脚もスピードも足りていない。走りながら迷うこともあるので、そういう部分をなくしていければ」。その後、10月14日に行われた「近畿地区プロ自転車競技大会」に出場。4キロ団体追い抜きでは京都チームの大会新記録でのVに貢献したが、4キロ個人追い抜きでは昨年覇者の枠元一葵に惜敗。「悔しいですね。来年は大会新記録で勝ちます」と、早々にリベンジ宣言をぶち上げ、負けず嫌いの一面をのぞかせる。
 すでにS級特進者も出ている119期。徳田は「同期は意識しないが、早く上で戦いたい」と意欲を語る。「後ろが味方っていうのは競技ではなかったので。そういう意味では競輪のセオリーがまだ分かっていない。やっていくしかないですね」。それでも今のスタイルを貫いた先には、近畿の新しい大砲として輝く日が必ず訪れるはずだ。迷わず、自分の信じた道を突っ走る。


奈良競輪場より