2020アジア自転車競技選手権レポート
今年1月にインドネシアで2019年大会が開催されたアジア選手権トラックレースだが、今シーズン(2019-2020シーズン)から開催時期が変更され、10月17日~21日の5日間にわたり、韓国・鎮川(ジンチョン)にて2020年大会が行われた。
前回大会同様、今回のアジア選手権の成績も東京オリンピックの出場権にかかわるオリンピックポイントに繋がる。大陸選手権は獲得できるポイントが高く(大陸選手権の優勝はワールドカップの優勝よりもポイントが高い)、日本チームとしてもオリンピックポイントの大きな上積みを狙える非常に重要な大会だ。
今大会には競輪界から新田祐大、河端朋之、脇本雄太、深谷知広、雨谷一樹、橋本英也、小林優香、太田りゆ、鈴木奈央の9名が出場。
各選手の成績は次の通り。
◎男子チームスプリント |
雨谷一樹・新田祐大・深谷知広1位 |
◎男子ケイリン |
脇本雄太1位 新田祐大3位 河端朋之7位 |
◎男子スプリント |
脇本雄太2位 深谷知広3位 |
◎男子チームパシュート |
橋本英也(予選のみ)1位 |
◎男子オムニアム |
橋本英也1位 |
◎男子マディソン |
橋本英也2位 |
◎女子ケイリン |
小林優香2位 太田りゆ5位 |
◎女子スプリント |
小林優香3位 太田りゆ4位 |
◎女子チームパシュート |
鈴木奈央3位 |
以下は各種目の詳細なレポート。
■男子チームスプリント
雨谷一樹・新田祐大・深谷知広が出場。
1走雨谷・2走新田・3走深谷で臨んだ予選は、44秒041で首位に立ち、1-2位決定戦進出を決める。
中国(予選タイム44秒643)との対戦となった1-2位決定戦では、唯一の43秒台をマークし、勝利。前回大会に続いて連覇となった。
結果
1位 日本(雨谷一樹・新田祐大・深谷知広) 43.653
2位 中国 44.177
3位 韓国 44.920
雨谷一樹コメント
「優勝できたのは嬉しいんですけど、1走としてのタイムはもう少し欲しかったので、ちょっと悔しい気持ちはあります」
新田祐大コメント
「チームの今まで持っていたベストタイムを最後の最後で更新できて、目指すところが少し見えてきたなと思いました」
深谷知広コメント
「自分自身のタイムは決勝戦になってすごくよくなったので、いい走りができたとは思います。ただ、課題として1本目をしっかり走り切れないところがあるので、そのあたりを修正して次に活かしたいと思います」
1-2位決定戦の日本
表彰式
金メダルの日本チーム
■男子ケイリン
新田祐大、河端朋之、脇本雄太が出場。
1回戦は3選手とも1着でクリアし、2回戦へ進出。
2回戦1組、新田は1着で決勝進出を決めるも、後方からの追い上げとなった河端は3着までに届かず、決勝進出を逃す。2組の脇本は1着で決勝へ。
7-12位決定戦に回った河端は残り1周からの先行で1着。最終順位を7位とした。
決勝戦はペーサーの後ろに新田、4番手脇本で周回。ペーサー退避のタイミングでシャロム(マレーシア)が先頭に上がり、新田2番手、脇本5番手。残り2周でアワン(マレーシア)が上昇すると脇本も合わせて前へ上がる。アワン先頭、番手にシャロムと脇本が並走、その後ろに新田。残り1周半で脇本がアワンをかわして先頭に立つと、そのまま先行態勢に。ゴールまで逃げ切った脇本が1着、追い込んだ新田は3着。
優勝した脇本はこれで2大会連続、通算4度目の金メダルを手にした。
結果
1位 脇本雄太(日本)
2位 AWANG Mohd Azizulhasni(マレーシア)
3位 新田祐大(日本)
7位 河端朋之(日本)
脇本雄太コメント
「今の気持ちはホッとしています。決勝の展開は、自分としてはすごく恵まれた形になったのかなと。最初から残り2周でいこうと思っていたんですけど、そのタイミングがたまたま(アワンの仕掛けと)一緒になったので、そこはよかったなと思います」
新田祐大コメント
「アジア選手権のケイリンでのメダル獲得はこれが初めてだと思います。今回表彰台に乗った3人は、昨シーズンの世界ランク1位から3位のメンバーですが、その中で戦って手応えを感じることもできました。決勝のレースは、ちょっと躊躇してしまった部分はありますね。それが敗因かなと思います」
7-12位決定戦の河端
決勝戦周回
残り1周のホーム
ゴール
表彰式
金メダルの脇本と銅メダルの新田
■男子スプリント
脇本雄太、深谷知広が出場。
予選は深谷が9秒846でトップタイム、脇本が9秒881で2位通過。
両選手とも続く1/8決勝、1/4決勝と危なげなく勝ち進む。
準決勝となる1/2決勝、深谷はアワン(マレーシア)に敗れ、3-4位決定戦へ。シャロム(マレーシア)と対戦した脇本は3本目までもつれるも勝利し、決勝進出を果たす。
3-4位決定戦に回った深谷はシャロムをストレートで下し、銅メダル。
1-2位決定戦の脇本対アワンは、1本目を脇本が取るも、2本目、3本目をアワンが取り、脇本は銀メダルとなった。
結果
1位 AWANG Mohd Azizulhasni(マレーシア)
2位 脇本雄太(日本)
3位 深谷知広(日本)
脇本雄太コメント
「今までアジア選手権のスプリントで2位を取ったことはなかったので、自分の中では成長できたのかなと思っています。結果としては優勝を逃して残念ではあるんですけど、今後に繋がるレースができたかなと。このあとはワールドカップが控えているので、そこでまたしっかり結果を残していきたいです」
深谷知広コメント
「準決勝(1/2決勝)が一番の問題だったと思うんですけど、やっぱり朝一番のレースで、しっかり自分の調子を上げきれなかったのが敗因だと思います。もともと自分の課題として、朝のレースは立ち上がりがよくないというのがあったんですけど、その中で予選はしっかり走れたと思うので、その感じで調整の仕方を考えていこうと思っています。ワールドカップではさらに予選のタイムが大事になってくるので、そのあたりは意識して頑張りたいと思います」
予選の深谷
予選の脇本
3-4位決定戦の深谷
1-2位決定戦の脇本
表彰式
銀メダルの脇本
銅メダルの深谷
■女子ケイリン
小林優香、太田りゆが出場。
1回戦、小林は2着で2回戦進出を決めるも、太田は3着で敗者復活戦へ。敗者復活戦を1着で勝ち上がった太田は、小林とともに2回戦へ進む。
2回戦1組の小林は2着、2組の太田は3着で揃って決勝進出を果たす。
決勝戦は小林3番手、太田4番手で周回。残り2周で先頭はリ・ヘジン(韓国)、小林は3番手から4番手で並走、太田は5番手の位置でレースが進む。リの先行で残り1周に入り、小林は最後の直線を追い込み2着でゴール。昨年は優勝を飾った小林だが、惜しくも連覇はならず。太田は後方から追い上げるも5着。
優勝はリの番手から直線でかわしたリー・ワイジー(ホンコンチャイナ)。
結果
1位 LEE Wai Sze(ホンコンチャイナ)
2位 小林優香(日本)
3位 LEE Hyejin(韓国)
5位 太田りゆ(日本)
小林優香コメント
「悔しいですね。でも(優勝した)リー・ワイジー選手との差は徐々に縮まってきていると思いますし、次に彼女と戦うときはしっかり倍返しできるように頑張りたいと思います。今回、オリンピックポイントが取れたことはすごくいい材料になったと思いますし、これからワールドカップのシーズンが始まる中で、いい手応えを感じているので、ワールドカップでもメダルを獲っていけるように頑張りたいです」
決勝戦周回
残り1周のホーム
ゴール
表彰式
銀メダルの小林
■女子スプリント
小林優香、太田りゆが出場。
予選は小林が11秒093で5位、太田が11秒147で6位通過。
両選手とも続く1/8決勝、1/4決勝を勝ち上がり、1/2決勝へ進出。
1/2決勝では小林がリー・ワイジー(ホンコンチャイナ)に、太田がゾン・テンシ(中国)にストレートで敗れ、ともに決勝進出は果たせず。
小林と太田の対戦となった3-4位決定戦は、小林が2本先取し、銅メダル。太田は4位となった。
結果
1位 LEE Wai Sze(ホンコンチャイナ)
2位 ZHONG Tianshi(中国)
3位 小林優香(日本)
4位 太田りゆ(日本)
小林優香コメント
「3位という結果で終われて、オリンピックポイントには大きく繋げられたと思います。予選のタイムはもう少し出したかったなというのはあるんですけど、対戦でカバーできたのでよかったと思います。ここからまた、しっかり気を引き締めて頑張りたいと思います」
予選の小林
予選の太田
3-4位決定戦の小林と太田 1
3-4位決定戦の小林と太田 2
表彰式
銅メダルの小林
■男子チームパシュート
橋本英也が出場。
予選は橋本英也、窪木一茂、今村駿介、沢田桂太郎で出走。4分01秒206で首位に立ち、1-2位決定戦進出を決める。
韓国(予選タイム4分03秒051)との対戦となった1-2位決定戦。橋本から近谷涼にメンバーを代えて臨んだ日本は、終盤で隊列を崩した韓国を追い抜きで下し、優勝。
オリンピックに向け、昨シーズンから厳しい戦いが続いている日本チームだが、これで世界選手権の出場権を手にした。
結果
1位 日本(窪木一茂・今村駿介・沢田桂太郎・近谷涼※決勝のみ・橋本英也※予選のみ)
2位 韓国 OVL
3位 ホンコンチャイナ 4:05.608
橋本英也コメント
「すごく嬉しいです。次はワールドカップでメダルを獲りたいですね。それができれば、本当に厳しい中ではありますが、オリンピックも見えてくるんじゃないかなと思うので、頑張りたいと思います」
予選の日本
決勝の日本
表彰式
金メダルの日本チーム
■男子オムニアム
橋本英也が出場。
橋本はスクラッチ2位、テンポレース1位、エリミネーション1位で、3種目終え暫定1位で最終種目のポイントレースを迎える。ポイントレースではさらに17点を加え、リードを守り切っての優勝。橋本はこれで大会3連覇、4度目の金メダル獲得となった。
結果
1位 橋本英也(日本) 135点
2位 ZAKHAROV Artyom(カザフスタン) 127点
3位 SHIN Dongin (韓国) 121点
橋本英也コメント
「目標としていたアジア選手権で3連覇することができて本当に嬉しいです。アジア選手権は人数が少ないこともあり、最後のポイントレースが非常に重要になってくるので、今回そのポイントレースのマネジメントがうまくできたのが一番の勝因じゃないかなと思っています。これからワールドカップ、世界選手権があるので、そこに向けてしっかり仕上げていきたいと思います」
ポイントレースを走る橋本
表彰式
金メダルの橋本
■男子マディソン
橋本英也・窪木一茂が出場。
前半はカザフスタンがリードを広げるが、後半に入ると日本と韓国が得点を重ねていき、レースは日本と韓国の一騎打ちの様相に。最後ポイント周回を前に、日本は2点差で韓国を追いかける展開。逆転を懸けて橋本が先に仕掛けて逃げ切りを図るも、惜しくもゴール直前で韓国にかわされ、2位。
チームパシュート同様、オリンピックに向けて厳しい状況が続いている男子マディソン。今大会を優勝し、世界選手権出場を狙っていたが、ここでの出場権獲得はならず。
結果
1位 韓国 50点
2位 日本(橋本英也・窪木一茂) 44点
3位 カザフスタン 23点
橋本英也コメント
「最後のゴール勝負で韓国との直接対決になりましたが、自分の力不足というか、本当にあと少しのところだったので悔しいです。このあとのワールドカップでは、マディソンでまだ入賞ができていないので、まずは入賞目指して頑張りたいと思います」
橋本・窪木ペア
表彰式
銀メダルの橋本と窪木
■女子チームパシュート
鈴木奈央が出場。
鈴木奈央、梶原悠未、中村妃智、古山稀絵のメンバーで臨んだ予選は4分35秒934で3位通過。
ホンコンチャイナとの対戦となった3-4位決定戦では、追い抜きで勝利し、銅メダル獲得となった。
結果
1位 韓国 4:26.966
2位 中国 4:31.944
3位 日本(鈴木奈央・中村妃智・梶原悠未・古山稀絵)
鈴木奈央コメント
「目標としていたタイムは出せなかったんですけど、決勝では予選で失敗したところを修正することができたので、次にしっかり繋げてまた頑張りたいと思います」
決勝の日本
表彰式
銅メダルの日本チーム