月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
自転車競技
Tissot UCIトラックサイクリング ネイションズカップ 香港大会
後半戦レポート(3日目・4日目)
昨年から世界中でCOVED-19の流行により、トラック自転車競技界では世界レベルの大会が開かれず、今回のネイションズカップ香港大会が約14か月ぶりに開催された。
本来であれば、今年4月、イギリスのニューポートでネイションズカップが開催される予定だったが、こちらは中止となり、香港大会が初めてのネイションズカップ開催となった。
但し、感染防止の為に、選手及び関係者には交通、ホテルの部屋からの外出制限等、相当厳しい制限を設けての開催となった。

日本からの出場選手は20名(男子12名内中距離4名、女子8名内中距離4名)。これは今までの中でもかなり大規模な選手数を送り込んだ。
一つは東京オリンピックに出場する選手たちのトレーニングの一環でもあるが、その次のパリオリンピックに向けて次世代の選手達の育成の一環でもあった。

3日目以降のレポートをお届けいたします!
3日目
メダル獲得ラッシュ!だがしかし、素直に喜べないレース内容と成績だった。
色々な点で課題が見つかった3日目となった。

セッション1では男子ケイリン1回戦、敗者復活戦、女子3km個人追い抜き予選、女子500mタイムトライアル予選が行われ、日本選手は男子ケイリンと女子3km個人追い抜きに出場。これらの種目はセッション2で行われる本戦に進出しているのでセッション2からレポートする。
女子3km個人追い抜き
古山稀絵が出場し、1-2位決勝に進出。決勝では勝つことは出来なかったが、銀メダルを獲得した。

表彰

女子オムニアム
参加選手6選手と出場選手が少なかった女子オムニアムには鈴木奈央と梶原悠未が出場し、梶原が世界女王の貫録を見せ優勝。鈴木は最終種目のポイントレースのゴールで10ポイント獲得し4位となった。優勝した梶原は、第1種目のスクラッチで2位となり、パーフェクト優勝を目指していた目標が崩れたことになった。この後、クレイグコーチに、注意され気持ちを入れなおし競技に臨んだのだが、最終種目のポイントレースの最終ポイント周回を迎える前に逆転される状況を作ってしまった。これらの事柄に反省しきりの優勝となった。鈴木はスクラッチ3位、テンポ6位、エリミネーション5位で迎えた最終種目のポイントレースでポイントを獲得し4位となった。

梶原悠未

梶原悠未

鈴木奈央

表彰

男子マディソン
橋本英也と今村駿介が出場し、UCI国際大会で初めての銅メダル獲得となった。しかし、経験不足が出てしまったレース内容だった。マディソンでは実績のない日本であったのと、コロナ禍でコーチがバンクに上がれず指示が出せなかったのが良かったのか、逃げが決まりラップできる状況で躊躇しラップしなかった。そしてポイント周回が来てしまい、集団のスピードが上がりさらにそこからドイツとオーストリアが飛び出し、ポイントを取られ続け日本はラップ認定されたものの逆転されてしまった。この辺りは今後の課題だろう。が、今回は素直にメダル獲得を喜びたい。

表彰

男子ケイリン
日本は7名が出場。東京オリンピック代表選手の脇本雄太、新田祐大も出場した。また次世代の選手たちも出場となった。山崎賢人、松井宏佑、小原佑太、新山響平、中野慎嗣の5選手の活躍にも期待がかかった。順調に勝ち進んだのは、脇本、新田、山崎の3選手。松井と小原は7-12位決勝に進出し松井が7位、小原が12位となった。
1-6位決勝は、意外でもあり、またありがちな展開となってしまった。率直に述べれば、脇本、新田以外、競輪用語でいえば格下の選手たちで優勝するのは脇本か新田と誰しもが思ったところだ。しかしレースは生きていた。周回の並びが前方3番目の新田と、後方6番目の脇本がペーサーの離脱する3周前から始まりペーサーが離脱した後も見合ってしまった。新田の前には2選手がいる。後ろをみれば、大けん制状態で間が大きく空いていることに気が付いていない。のであれば逃げる。事実逃げた。
新田、脇本がこれに気が付いた時は遅く、巻き返しを計ったが、逃げたマレーシアの選手には届かず大外を捲り追い込んだ脇本が新田をゴール直前に捉え2位、新田が3位となった。
金メダルを逃がしたのは痛いが、東京オリンピックの前に気持ちを引き締める良い経験になったと思う。東京オリンピックでは活躍してほしい。

脇本雄太

新田祐大

松井宏佑

1-6位決勝


表彰
〔選手コメント〕
脇本雄太 男子ケイリン2位
「決勝も自分らしいレースをすれば優勝できると思っていたが、ライバルである新田選手との牽制があり、新田選手しか見ておらず周り全体が見えていなかったため、対応が遅くなってしまったのが敗因。足の感覚は良いので、明日のスプリントを頑張りたい」

新田祐大 男子ケイリン3位
「予選は消極的な部分があったが、2回戦では自分と戦うレースが出来て良かった。決勝は、脇本選手を意識し過ぎてマレーシアの選手が逃げていることに気が付けなかった。相手を甘く見過ぎたことと、自分の力を過信し過ぎた。今回の反省を活かし、オリンピックに向けてしっかりと準備をしていきたい」

梶原悠未 女子オムニアム優勝
「世界チャンピオンとして相応しいレースをしたいと思って挑んだが、最初の1種目目は周りを気にし過ぎてしまって、自分のレースが出来なかった。コーチからも『喝』を入れられ、2種目目からは、自分でレースを作ることができた。今回のレースでは自分から仕掛けるという覚悟と意識が足りなかったと反省している。小さなミスもあったので反省し、オリンピックまでに修正していきたい」

橋本英也 男子マディソン3位
「マディソン種目では、日本勢初のメダルを獲得できたことは光栄。悔しい3位ではあるが、一つステップアップできたのは良かった。今後は自分の経験を元に、今村選手に色々と伝えていきパリオリンピックを目指したい」

今村駿介 男子マディソン3位
「今回は少人数だったので、メダル獲得は狙ってた。レースを重ねてきて疲れはあったが、メダルが獲得できた良かった」

古山稀絵 女子個人追い抜き2位
「今回は順位よりタイムを更新すること意識していたが、思うような結果が出せなかったことが今後の課題。この状況の中開催していただいたことに感謝したい」
4日目
日本が出場した種目すべて金メダル獲得!男子スプリントは日本が表彰台を独占!

UCIトラック ネイションズカップ香港大会も最終日を無事迎えた。
昨日の男子ケイリンで落車した新山響平も無事男子スプリントを走ることが出来た。
結果から見ると、この日もメダルラッシュ! 以前のワールドカップであれば、最後の最後の表彰に最多メダル獲得国が表彰台に立ち、ワールドカップを授与されたのだか、コロナ禍かネイションズカップの授与はなく、初めてメダル獲得国となった日本は表彰されなかったのが非常に残念だった。

では各種目を見ていきたい。
女子ケイリン
セッション1で行われた女子ケイリン1回戦(12名出場だったので2組に分かれて1着から3着が1-6位決勝へ進出、4着から6着が7-12位決勝へ進出)では、出場した日本人選手が全員1-6位決勝へ進出となった。

第1ヒート
梅川風子2着

第2ヒート
小林優香1着
佐藤水菜2着
太田りゆ3着

この結果をもって全員1-6位決勝進出となった。
1-6位決勝、周回はペーサー以下リーワイジー、佐藤水菜、太田りゆ、梅川風子、小林優香、マダリンゴドビー。はたとみれば全選手ガールズケイリンの選手、もしくはガールズケイリンを走った選手の決勝となった。ペーサー退避は残り3周。口火を切ったのが梅川風子。50km/hを超えたスピードから4番手から上昇。残り2周で先頭に立ち先行、その後ろにリーが入りその後ろの佐藤と小林が並走で残り1周。誰しもがこの状況でリーが優勝と考えただろう。それだけリーのポジションが優勝に一番近いところだった。が、小林は前に踏み込み梅川の後ろから出ていくリーを追走から捲りに出て、ゴール前リーを交わし優勝となった。元世界チャンピオンのリーワイジーを外から捲って優勝は小林の実力がすべてにおいてパワーアップされた証拠でもあった。
優勝後のインタビューでも自信に溢れた表情を見せた小林は東京オリンピックでも間違いなく活躍できることを証明した。また、小林の金メダルはUCI国際大会で初となった。

佐藤水菜4位
太田りゆ5位
梅川風子6位


ゴール

優勝の小林優香

男子スプリント
男子スプリントには脇本雄太、新田祐大、深谷知広、山崎賢人、松井宏佑、中野慎嗣、新山響平の7選手が出場。
スプリント予選上位11名は1/8決勝進出、以下は1/16決勝からとなる。

予選タイムの結果
脇本雄太 9秒746 1位
新田祐大 9秒781 2位
深谷知広 9秒816 3位
山崎賢人 9秒817 4位
新山響平 9秒878 6位
中野慎嗣 9秒925 7位
松井宏佑 10秒089 12位
となり松井は1/16決勝からスタートとなった。
順調に勝ち上がるかと思ったが山崎賢人が1/8決勝で降格。新山は敗退となった。

1/4決勝は脇本、新田、深谷、松井が勝ち上がり1/2決勝は全員日本人選手となり、ここで表彰台独占が確定し後は誰が金、銀、銅メダルを獲得するのかという状況に。今回史上初ラッシュの日本だか、これも史上初の出来事だろう。

1/2決勝は
新田VS深谷
脇本VS松井
となった。どちらも新田、脇本が2本先取し、1-2位決勝は新田VS脇本、3-4位決勝は深谷VS松井の対戦となった。
3-4位決勝では深谷が松井を2本先取で下し、深谷が3位、松井が4位確定。
今、男子スプリントの一番見たい対戦が1-2位決勝の新田VS脇本だろう。それが実現となったこの決勝は3本目までもつれ込むのではないだろうかと予想したが、新田の2本先取で新田が優勝、脇本が2位となった。これは見た目の感想だが、まず新田が脇本に自分のペースに巻き込んだというところだろう。回転力に勝る脇本をパワーでねじ伏せていく感じがレースの中で観られてたと思う。
一つに経験的に新田がスプリントに関してあったのと、新田は数回、深谷と研究会を開いて戦術の勉強を重ねていたのだ。これに関しては、深谷が自分で研究したことを新田に伝え、東京オリンピックでメダル獲得に結び付ける事を目的とした研究会でその結果が今回出たという事だった。
感覚とパワーから更に頭脳も加わった日本チームの活躍に大いに期待したい。

1-2位決勝

3-4位決勝


優勝の新田

2位脇本雄太

3位深谷知広

男子オムニアム
この種目に橋本英也が出場。東京オリンピック前のレースでどれぐらいのパフォーマンスを発揮できるのかに期待がかかったレースとなった。
出翔選手は8選手とかなり少ない人数でのレースとなった第1種目のスクラッチはゴールスプリントになり、先行するベラルーシの後ろに付けたがスペインが外並走となり抜け出せず2着フィニッシュという出だしに。

第2種目のテンポレースは残り24周ぐらいから残り2周まで逃げて23ポイント獲得し、ファイナルラップはバンクの上に上がり後ろのポイントをゆずるという憎い演出をみせ1位。集団が橋本を追わなかったので全開で踏まず淡々とペースで逃げれたのがこのレースだった。

第3種目のエリミネーションはしっかりと前々に踏んで危ないところもなく残り2人になったが最後はデンマークに行かれ2位となった。

最終種目のポイントレースには1位116ポイントで臨む。2位のデンマークには6ポイント差。3位のベラルーシとは8ポイント差。ベラルーシの追い上げもあり拮抗した中でオーストリアが逃げポイントを重ね、上位に登ってくると、3位争いも熾烈になりレースは膠着し、最終ポイント周回で決着し橋本が優勝となった。
レース中橋本は落車もあったがレースに復帰出来たのがよかった。橋本を知っている方であれば、また落車!と思ったことだろう。この部分は大いに反省すべきところだと思う。

そして男子オムニアムでもUCI国際大会では初金メダル獲得となった。


優勝の橋本英也
女子マディソン
日本チームで梶原悠未、中村妃智ペア、ラクテンチームで鈴木奈央、古山稀絵ペアが出場した。出場チームは4チームだった。
日本チームは淡々とポイント重ね、危なげなく優勝となった。ラクテンチームは検討したが残り10周のポイント周回後ベラルーシとスペインの逃げについて行けず後方となってしまい2位に浮上することは出来なかった。とはいえ積極的に攻めたのが銅メダル獲得に繋がった。
こちらの種目も金も銅も日本初獲得となった。

優勝の日本チーム(梶原悠未 中村妃智)

3位チームラクテン(鈴木奈央 古山稀絵)


2チームで
〔コーチコメント〕
ブノワ ベトゥヘッドコーチの総括
「大会に参加し、本当に良かったと思う、すべての勝利に価値が有る。東京五輪に向けてのいい準備ができたと感じている。特に新田は非常に力強いレースができた。今のコンディションであれば東京五輪でもいい結果が期待できるのではないかと思う。若手選手は、もっとハングリーに戦わなければならない」

ジェイソン ニブレットコーチ
「大会を通じてポジティブな結果が出て、数少ない国際大会で若手選手にも貴重な経験となったと感じているが改善点も同時に見つかった。この経験をどう生かしていくかが課題」
〔選手コメント〕
新田祐大 男子スプリント1位
「予選はあまりタイムが出ていなかったが、ある意味切り替えてレースに臨むことができた。決勝戦はいい緊張感で臨め、最後は気力で走りました。今年に入ってから深谷選手が開催してくれたスプリントの勉強会でスプリントの戦い方が整理できた。東京五輪でのメダル獲得にこの大会を通じて近づいたと感じている。個人としては個人種目で初の金メダルの獲得したことはうれしく思うが、さらに成長しなければならないと感じている」

小林優香 女子ケイリン1位
「大会を振り返って、ケイリンに関しては優勝だけを見据えて、決勝は気持ちに余裕を持って臨むことができたのが勝因だと思う。ゴールした瞬間は自然にガッツポーズが出た。今回の大会は自信になったのでもう一度コーチと話し合いながら東京五輪に向けて準備したい」

橋本英也 男子オムニアム1位
「今回は少人数でのレースになったが、自分が想定していた通りの得意な展開になった。最後のポイントレースでは落車してしまい、その後積極性に欠けてしまったのが反省点として上げられるが、それ以外はスムースにレース運びができ、優勝できたのは自信となった。東京オリンピックでは今回とは違う展開になると思うが積極的な走りをしたい」

脇本雄太 男子スプリント2位
「予選1位で通過できたのでコンディションはいいと感じていた。ギリギリの部分は有ったがタイムの部分はある程度納得している。決勝の新田選手とのレースでは自分の持てる力、持ち味はある程度出せたと感じている。ケイリンについては課題が見え、スプリントでは銀メダルだったが、いい経験が積めたと感じている」

深谷知広 男子スプリント3位
「3位という結果については、今の実力・コンディション通りかなと感じている。新田選手との対戦は、もともとフィジカルでは新田選手が上なので、自分は新田選手の穴を探したが今日は付け入る隙が無いな、と感じた。自分は一戦ー戦目の前のレースを全力で戦いたい」

梶原悠未 女子マディソン1位
「マディソンはスプリントの戦いになったが、序盤で先手を打ってポイントを積み上げられたこと、中村選手との交代も全てタイミングを合わせられたことが良かった。最後の2組の逃げを作ったことに関して、すでにラップされなければ勝利が確定していたので冷静に判断して走ることができたものの、二人の持久力という点では課題が見つかった。 今回、参加した4種目のうちスクラッチで優勝できなかったのが悔しいが、残る3種目で 優勝できたのはとても嬉しい。この走りを東京オリンピックでもできるよう残る期間を大切に過ごしていきたい」

中村妃智 女子マディソン1位
「今日のマディソンは予想していた通りスプリント勝負のレース展開となったが、梶原選手にいいポジションで交代することを意識して走った。残り10周ほどで2組の逃げを作 ってしまったのが悔やまれる。東京オリンピックに向け最後まで戦い抜けるよう持久力を強化したい」