第70回高松宮記念杯競輪(GI)直前展望
今や、競輪界のスーパースターになった脇本雄太が、高松宮記念杯競輪に出場します。
その無敵っぷりは、海外の競技レースでも見せているのがすごいですね。
そしてその脇本を倒さんと虎視眈々と狙っている選手たちもいます。
脇本を倒さないとGIタイトルが手に入らないのですから必死になって当然でしょう。
今回の宮杯は、そんな選手たちの意地が見られる大会となりそうですよ!
脇本雄太 福井 94期
ピックアップするというより、優勝候補の筆頭です。日本選手権競輪でみせた圧巻の走りはインパクトがありすぎて、場内騒然でした。今だと何に例えるのでしょうかね? 例えようがないので「脇本無双」で良いのかもしれません。無双が流行っている事ですし。どこまで突っ走っていくのかに期待したいと思います。
清水裕友 山口 105期
ちょっと調子を落としている感じはありますが、打倒脇本の筆頭に挙げたいですね。本人はそのようなことを考えているとは思いませんが、レースの巧さで脇本を破ってくると思います。またそうならないと盛り上がってきませんよね。良いレースを見せてほしい筆頭の選手です。
太田竜馬 徳島 109期
日本選手権競輪では精彩を欠いていた太田でしたが、松山の全プロ記念競輪スーパープロピストレーサー賞では、見事な主導権取りで押し切り優勝を飾りました。これは相当インパクトがあったと思います。この調子をキープしていければ、宮杯も決勝は間違いなさそうです。
深谷知広 愛知 96期
ナショナルチームからピックアップしてみました。日本選手権競輪決勝では、仕掛けるタイミングしだいで優勝の目があったと思ったレースを見せていました。決勝までの道中も危なげなく勝ち上がっていました。脇本ばかりを目立たすわけにはいかないというところで、今回は深谷が良いレースを見せ優勝を狙ってくると思います。
第70回高松宮記念杯競輪(GI)展望
第70回高松宮記念杯が岸和田競輪場で開催される。勝ち上がり方式は昨年と同様に3日目の準決勝までは東日本地区と西日本地区に分かれて戦われる東西対抗戦だが、先の日本選手権で完全優勝を成し遂げた脇本雄太が断然の優勝候補の筆頭だ。日本選手権のときの強さとスピードをキープならば今大会も完全優勝が濃厚だろう。東も西も関係なく、脇本を止める術はあるのか、脇本に土をつける選手が現れるのか、今大会の注目はその一点のみといっても過言ではない。
新田祐大はブランクの克服が課題
平原康多が本来の強さと巧さを取り戻す
高松宮記念杯は3日目準決勝まで東日本地区と西日本地区に分かれて戦われる東西対抗形式が最大の特徴だ。勝ち上がり方式は昨年と同じく初日は東日本、西日本の特別選抜予選が1個ずつで、東日本の特別選抜予選で4着に入った4名と一次予選で1着になった5名が2日目の青龍賞へ、西日本も特別選抜予選の4名と一次予選の5名が2日目の白虎賞へ勝ち上がる。
3日目の準決勝は4個レースで、東日本は青龍賞の9名と二次予選3個レースで3着までに入った9名が準決勝2個レースに、西日本も白虎賞の9名と二次予選の9名が準決勝2個レースに振り分けられる。そして東西それぞれの準決勝で2着までに入った8名と3着の1名が晴れて決勝進出と、他のGIよりも厳しい勝ち上がりシステムとなっている。
東日本の初日特別選抜予選は北日本、関東、南関東がそれぞれ3名ずつの組み合わせだ。北日本は新山響平-新田祐大-佐藤慎太郎、関東は平原康多-武田豊樹-諸橋愛の並び、南関東は渡邉雄太と郡司浩平の前後は微妙だがおそらく渡邉-郡司-中村浩士になるだろう。機動力では北日本がやや優勢だが、先の日本選手権でGI初優出を果たした渡邉に勢いがあり、渡邉が2段駆け覚悟で飛ばしていけば南関東でのワンツーも十分だ。それは新山も同じで、新山と渡邉が先行争いになれば平原の捲りごろになるだろう。
新田祐大 福島 90期
新田祐大はやはり長期間のブランクが響いたのか、今年初出走となった日本選手権では決勝進出を果たせなかった。それでも1走目の特別選抜予選では逃げて2着に粘っており体調面には問題はなさそうで、準決でも1走目のような思い切りのよさが発揮できればと悔やまれるところだ。日本選手権のあとも今大会までは競輪での出走がなくブランクをいかに跳ね飛ばすかが課題になりそうだが、17年の高松宮記念杯決勝では8番手からの大捲りで優勝と岸和田バンクとの相性は抜群なだけに今大会でも復活の走りが期待できる。
平原康多 埼玉 87期
平原康多は日本選手権では準決で惜しくも4着と敗れたが、1走目の特別選抜予選は4番手を奪取してからの捲りで1着と平原らしい走りを披露した。ゴールデンレーサー賞も脇本雄太の超速捲りに屈したものの7番手からの先捲りで2着と仕掛けのタイミングもベストに近かった。脇本雄太らのスピード競輪に対抗すべく昨年は試行錯誤を繰り返していた平原だが、3月のウィナーズカップから元に戻して本来の平原らしい走りが見られるようになってきた。今大会でもこれぞ「競輪」という走りで強さを発揮してくれるだろう。
渡邉雄太 静岡 105期
渡邉雄太は日本選手権の準決では4番手からの捲りで2着、逃げる深谷知広に4分の1車輪届かなかったが、うれしいGI初優出を決めた。深谷知広、平原康多、中川誠一郎、古性優作と強敵揃いの準決だっただけに、そこを2着で突破できたのは大きな自信になったはずだ。ウィナーズカップの準決も脇本雄太、山崎賢人らとの対戦で3着に入り決勝進出と勢いに乗っている。今大会の特別選抜予選でも相性抜群の郡司浩平とうまく連係して新田祐大や平原康多に一泡吹かせてくれそうだ。
さらなる進化を遂げた脇本雄太に死角はない
地元・古性優作が脇本追走に全身全霊を傾ける
西日本の特別選抜予選は近畿が5名、中四国が3名、九州が1名の組み合わせだ。5人揃った近畿勢の並びは難しいが、昨年の大会の白虎賞の例でいくと三谷竜生-村上義弘-村上博幸、脇本雄太-古性優作の別線勝負になりそうだ。昨年の白虎賞では脇本は村上(兄)のブロックを受けて不発、村上(兄)と三谷のワンツーで決着しているが果たして今年はどうか。別線は清水裕友-松浦悠士の山陽ラインだが、中川誠一郎が太田竜馬との連係を選択するかどうかは微妙だが、中川と太田は単騎戦になるかもしれない。現在の脇本のスピードは桁外れだが、清水裕友や太田竜馬が思い切りよく飛び出していけば波乱の余地もないとはいいきれないだろう。
脇本雄太 福井 94期
脇本雄太は今年初出走となった3月のウィナーズでは準決のみが2着の準パーフェクトで優勝、続く日本選手権では21年ぶりのGI完全優勝を達成して脇本の一強時代の到来を高らかに告げた。逃げても捲っても2着に3車身、4車身の差をつけての完勝劇、短走路の松戸で9番手からの捲りでも届いてしまうのだから死角は見当たらない。対戦相手たちが脇本を警戒して早駆けや先捲りに出ても、脇本にとっては仕掛けやすい流れになるだけなので手の打ちようがない状態だ。もちろん今大会も完全優勝を決めてくるだろう。
古性優作 大阪 100期
古性優作、三谷竜生、村上義弘、村上博幸らの地元勢にとっては今大会が正念場だ。昨年の大会では三谷竜生が脇本雄太の逃げを差して優勝しているが、あれからさらに進化を遂げた脇本のスピードに付いていけるかどうかが一番の課題だ。脇本の番手は優勝に一番近い位置であると同時に一番遠い位置でもある。日本選手権決勝では古性が脇本のダッシュに食らいついていったが、3角で松浦悠士のブロックを受けて4着と悔しい思いをしているだけに、地元開催の今大会では脇本追走に全神経を集中させてくるだろう。
清水裕友 山口 105期
清水裕友は2月の全日本選抜で落車した影響で3月のウィナーズカップは低調だったが、4月の高知記念で決勝進出、続く日本選手権では準優勝と復活を果たした。日本選手権のゴールデンレーサー賞では逃げて8着ながらも、あの逃走劇で「やれる」感触を掴んだのは間違いなく、準決は堂々の逃げ切りで松浦悠士とワンツーを決めた。決勝も脇本の捲りに屈したものの先捲りであわやのシーンを演出しており、今大会でも松浦との山陽ラインでのワンツーを狙ってくる。
菅田壱道が巧みな走りでGI連続優出を決める
精悍さを増した深谷知広がスピード対決を挑む
脇本雄太の圧勝劇で幕を閉じた日本選手権だが、もうひとつの話題は決勝メンバーの若返りだ。最年長が田中晴基の33歳で平均年齢は28.4歳、昨年の日本選手権の決勝メンバーの平均年齢が35.1歳だから7歳近くも若返ったことになる。このまま世代交代が進んでいくのか、それともベテラン勢の巻き返しがあるのかにも注目したい。
菅田壱道 宮城 91期
菅田壱道は日本選手権で4度目のGI優出を決め、決勝は3着と初めて大舞台の表彰台に上がった。特別選抜予選の2着や準決の3着なども一見するとただの流れ込みのような印象を与えかねないが、レース展開に対する鋭い臭覚と的確な位置取りがあってこその着であり、本人にとっては決して楽な競走ではなかったはずだ。昨年の高松宮記念杯も準決を2着で突破しており、今大会も決勝進出が十分にありそうだ。
吉澤純平 茨城 101期
関東勢は巻き返しへ必死だ。3月のウィナーズカップに続き日本選手権でも関東勢からの決勝進出はゼロに終わってしまった。平原康多が復調気配とはいえ、関東の選手たちにとっては吉澤純平や吉田拓矢らの機動力型に期するところが大きいはずだ。吉田は残念ながら日本選手権の1走目で落車してしまったが、吉澤は準決まで勝ち上がっており調子は悪くない。昨年の高松宮記念杯では準決を1着で突破して優出しており、今大会も関東勢を引き連れての快走を期待したい。
深谷知広 愛知 96期
深谷知広は脇本雄太、新田祐大らとともに東京五輪を目指して世界の舞台で戦っているが、久しぶりに競輪場で見たその姿は以前よりも精悍さが増して確実にパワーアップしている印象だった。日本選手権では見事に決勝進出、勝ち上がりの3走は連日逃げて1着、2着、1着とレース内容も素晴らしかった。決勝は絶好の3番手に入りながらもやや焦りすぎて失敗してしまったが、今大会では脇本雄太との互角のスピード対決を演じて全国の競輪ファンを沸かせてくれるだろう。
原田研太朗 徳島 98期
中四国のヤングパワーの台頭に引っ張られるようにして強さを取り戻してきたのが原田研太朗だ。昨年の夏頃からやや調子落ちになっていたが、中四国のエースの座はまだ渡さんとばかりに日本選手権では昨年の高松宮記念杯以来のGI優出を決めた。以前は捲り一辺倒の原田だったが、二次予選では竹内雄作。南潤を相手に一気にカマして逃げ切り小倉竜二とワンツー、準決では脇本雄太の捲りを追って2着に突っ込んでおり、今大会も清水裕友や太田竜馬ら引けを取らない自力勝負で活躍してくれるだろう。
思い出のレース
2013年 第64回大会 成田和也
新田祐大の逃げを差して成田和也が3度目のGI制覇
藤木裕-南修二-稲川翔の近畿勢が正攻法、中団に新田祐大-成田和也-伏見俊昭の福島トリオ、単騎の荒井崇博が続き、佐藤友和-神山雄一郎の即席ラインが後攻めて集会を重ねる。青板バックから佐藤友和が上昇を開始、赤板ホームで佐藤は藤木に並びかけるが、藤木はなかなか車を引かず、誘導員の後ろで両ラインが併走となり佐藤ラインの後ろに新田祐大が続く。打鐘手前から新田が前を叩いて主導権を奪うと、藤木はすかさず車を引き、新田ラインの後ろにいた荒井をどかして4番手を確保、そこから打鐘とともに間髪入れずにスパートして新田ラインを叩き返しにいく。だが、最終ホームすぎに成田和也が藤木をプロック、藤木のスピートが鈍り2角からずるずると後退していく。新田は快調に逃げ、4番手に稲川、6番手に佐藤の一本棒の展開となり、後方からの仕掛けがないまま最後の直線に入る。番手絶好となった成田がゴール前で懸命に追い込んで優勝、2着に新田、3着も伏見で福島トリオでの上位独占となった。
ゴール
表彰
バンクの特徴
直線が長めの高速バンク
7、8番手からの捲りがよく決まる
岸和田は標準的な400バンクで、走路もクセがなくて走りやすく直線も比較的長いので、戦法や脚質による有利不利は少ない。
海岸に近い平地にあるため、大阪湾からの浜風と南東の山から吹き下ろす山風のせいで全国でも有数の風の影響を受けやすいバンクとなっているが、通常はバック追い風が強く、先行はその風に乗って粘り込むことができる。長い直線を利しての2角からの捲りや捲り追い込みも決まりやすい。
岸和田での高松宮記念杯は3年連続5回目となるが、一昨年の決勝では新田祐大が8番手からの大捲りを決めて上がりタイムが11秒0、昨年の決勝は脇本雄太の逃げを三谷竜生が差して上がりタイムが11秒2、脇本の個人タイムも11秒3と高速バンクならではの決着となっている。
昨年の大会の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着(1着同着を1回含む)は逃げが6回、捲りが19回、差しが24回、2着は逃げが5回、捲りが9回、差しが22回、マークが12回となっている。
やはりGIの大会らしく捲りがよく決まっているか、先手ラインの選手が1着になったレースも15回あり逃げ選手もかなり健闘している。
捲りは通常の400バンクならば中団取りが必須といってもいいが、昨年の捲りの1着の19回のうち7、8番手からの仕掛けが12回もあり、岸和田では後方からの捲りのほうがよく決まっている。カントがやや緩めだが、直線が長くてスピードに乗りやすいので後方からの仕掛けでも十分に間に合うのだ。
また、2着の決まり手でマークの回数が少ないのも注目のポイントだ。直線が長いので、4、5番手で足をためていた選手が直線伸びて連絡みを果たし好配当というケースが多く見られた。
4日目6Rの二次予選では逃げ粘る稲垣裕之ー川村晃司の京都コンビの間を4番手から伸びてきた筒井敦史が中を割って1着、川村が2着、稲垣が3着で3連単は32万円と大会一番の高配当を叩き出している。
周長は400m、最大カントは30度56分00秒、見なし直線距離56.7m。通称は浪切バンク。以前は直線が長めで追い込み有利のバンクだったが、02年のバンク改修で滑り止めのウォークトップを手塗りにしてから軽いスピートバンクに生まれ変わった。14年7月にはフランスのフランソワ・ペルヴィスが5番手からの2角捲りで上がりタイム10秒3をマーク、400バンクの日本記録を更新している。直線はとくに伸びるコースではないが、イエローラインより外寄りを急襲してくケースがよく見られる。
岸和田バンク