第28回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)直前展望
10月ですね。2019年も追い込む時期にやってまいりました。
今開催の見どころは、タイトルを誰がとるのかもありますが、賞金争いも激化してきました。
KEIRINグランプリ2019に出場するために、ここは決勝に勝ち上がりたい選手が多くいそうです。
特に、賞金を積み上げておきたい選手は佐藤慎太郎、郡司浩平、平原康多、清水裕友、松浦悠士、村上博幸、諸橋愛、太田竜馬、古性優作、小倉竜二、渡邉雄太でしょう。
その中でも、佐藤は抜けた賞金獲得額で、例え今回の決勝を外してもほぼKEIRINグランプリには出場できそうです。
郡司、平原、清水、松浦は、優勝を狙うのは無論ですが、賞金の積み上げをしておかなくては逆転の可能性がなくはないでしょう。
賞金ランキングは
こちら
そして鬼の居ぬ間にではありませんが(ナショナルチーム組が参加しない間に)しっかりタイトルを狙っている選手が多いと思います。その中で誰が飛び出してくるのか?非常に楽しみですね。賞金争いでは群雄割拠、そして下克上という様相の2019年10月寬仁親王牌をお楽しみ下さい。
注目選手
平原康多 埼玉 87期
名古屋オールスターでの気合の入った競走を見て、やっとナショナルチームに対抗できる身体になったのが印象的だった。まだまだ進化しそうな勢いで、ここはタイトル獲得を目指し積極的に動いてくるはず。ナショナル並みという事は、他の選手より頭一つ抜けているということなので優勝も視野に入れてくるだろう。
郡司浩平 神奈川 99期
松阪共同通信社杯を優勝し、一挙に賞金ランキングを駆け上り、KEIRINグランプリ出場が見えてきた郡司。調子そのものも好調で、まずは決勝を目指して出場してくるだろう。今回の南関勢は先行選手が厚いので、機動力を活かしてレースを組み立ててくる。南関も選手の絆が深いので、早めに出ていくなどないだろうが、場合によっては色々なシーンが考えられるだろう。
松浦悠士 広島 98期
昨年まで、自分で動いて強い選手という印象から、番手戦、ラインの先頭戦となんでも自在にこなし、一段階上がった感があるのが松浦。KEIRINグランプリ初出場にリーチが懸っているこの状況で、てっぺんを狙ってくるだろう。中四国の強い先行選手たちの番手戦が楽しみである。
太田竜馬 徳島 109期
上り調子で、親王牌も結果を出してくると予測したいのが太田。岐阜記念決勝の逃げ切り勝ちは圧巻だった。ここで決勝進出、上位に入ってくるとグランプリ出場も見えてくる。飄々としている太田だが、ここは熱い競走でKEIRINグランプリ出場を目指してほしい。若いパワーの台頭を見せて競輪界の活性化を促してほしい。
第28回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント展望
第28回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが昨年に続き前橋競輪場で開催される。今大会は昨年覇者の脇本雄太を始めとするナショナルチームのメンバーが不在で混戦模様だが、復調著しい平原康多を主役に推したい。清水裕友、太田竜馬らの若手機動力型の充実ぶりを誇る中四国勢や中川誠一郎と山崎賢人のツートップによる九州勢もライン的には強力で、浅井康太率いる中部勢や郡司浩平率いる南関東勢の逆転一発も侮れない。
平原康多がスピード強化で進化を遂げる
清水裕友が前橋バンクで再び輝く
初日12R日本競輪選手会理事長杯は関東が3名、近畿が3名、中部、中国、九州がそれぞれ1名ずつの組み合わせとなったが、昨年の理事長杯でも先行した南潤の主導権取りが濃厚だ。展開的には南に付ける義弘と博幸の村上兄弟が有利だが、横山尚則-平原康多-武田豊樹の関東3車の巻き返しは必至で、好位置を取って逆転を狙う清水裕友、浅井康太の一発も十分だ。
平原康多 埼玉 87期
平原康多は8月のオールスターで今年2度目のGI優出を果たし、ようやく強さが戻ってきた。準決では清水裕友の逃げを4番手から捲って上がりタイムは10秒8と同大会の最高上がりタイムを叩き出している。最終日特別優秀では深谷知広がやはり捲りで10秒8をマークしており、現在の平原はナショナルチームに匹敵するスピード強化に成功したと言っていいだろう。決勝では新田祐大とのもがき合いに敗れたが、踏み出しのスピードは素晴らしく、今大会でも前橋の超高速バンクでさらなる進化を遂げたスピードを見せつけてくれるはずだ。
南潤 和歌山 111期
南潤は昨年に引き続き全プロの1kmタイムトライアルで優勝して理事長杯の出場権を獲得した。昨年は先行するも番手に平原康多に入られて6着に沈んでいるが、もちろん今年も村上兄弟を連れて主導権取りを狙ってくるだろう。オールスターでは二次予選で敗れているが、4走すべてで先行して1、5、9、4着とまずまずの成績。昨年の寬仁親王牌では準決までの勝ち上がりとバンクとの相性もよく、今年も強力地脚を発揮して勝ち上がっていくだろう。
清水裕友 山口 105期
昨年の準決で南潤の逃げを3番手の絶好位置から捲ってGI初優出を決めたのが清水裕友だ。その勢いに乗って競輪祭でも決勝3着と健闘し、S級S班の座を射止めたのはご存知のとおりだ。今年も日本選手権と高松宮記念杯で決勝進出、オールスターでは準決で先行して5着と敗れたがS班の名に恥じない活躍ぶりを見せており、飛躍のきっかけとなった寬仁親王牌で今年も大暴れしてくれるだろう。理事長杯は5着まで入れば2日目のローズカップに進めるので、南潤を叩いての先行策も十分にありそうだ。
浅井康太 三重 90期
浅井康太は今年3月のウィナーズカップでの準優勝はあるがGIでの優出はなく、地元のオールスターも二次予選で敗れて途中欠場と苦しい戦いが続いている。ただ直後の富山記念では優勝こそならなかったが、オールスターでの雪辱を晴らさんとばかりに準決で先行して2着と気合いの走りを見せており調子は決して悪くはない。競輪競走のハイスピード化の流れにうまく乗り切れずに仕掛けのリズムがやや狂っている印象だが、昨年は柴崎淳の逃げを目標に準決を1着で通過と大会との相性もよく、うまく立て直しが図れれば勝ち上がりが期待できるだろう。
渡邉一成が後輩との連係から強さを見せる
郡司浩平が小田原記念連覇で復活
渡邉一成 福島 88期
初日の特別選抜予選2個レースは2着までに入れば2日目のローズカップに進める厳しい勝ち上がりだが、渡邉一成、佐藤博紀、坂本貴史、新山響平と機動力型が揃った北日本勢が優勢だ。渡邉一成は自転車競技との両立で競輪では結果を残せない時期が長らくあったが、今では完全に競輪選手の走りに戻っており自慢のスピードを存分に発揮できている。8月のオールスターも決勝は4着に終わったが、一次予選と二次予選は捲りの2連勝、準決は新山響平の先行を目標に2着で突破しており、今回も北日本の後輩との連係で展開有利にレースを進めていけるだろう。
木暮安由 群馬 92期
地元の木暮安由にも今年は勝ち上がりのチャンスが巡ってきそうだ。昨年の特別選抜予選で渡邉一成-佐藤慎太郎の北日本コンビの捲りを追走するも3着でローズカップには進めなかったが、今回は鈴木竜士と蕗澤鴻太郎の機動力型がいるので期待が持てる。とりわけ注目は群馬の新鋭・111期の蕗澤鴻太郎だ。蕗澤は7月にS級に上がったばかりだが、全プロの1kmタイムトライアルで3位となり寬仁親王牌の出場権を獲得した。8月の小倉FIの予選で逃げ切ってS級初勝利を挙げており、今回も同県先輩の木暮との連係があれば主導権取りに燃えてくるだろう。
郡司浩平 神奈川 99期
南関東勢も特別選抜予選に4人が出場予定で強力だ。郡司浩平はオールスターでは長期欠場明けの出場だったが、オリオン賞は渡邉雄太との連係で4着、二次予選は松井宏佑との連係で3着、準決は郡司自ら動いて新山響平-渡邉一成の北日本コンビの3番手を取り切り、脇本雄太の捲りを不発に終わらせ、番手発進の渡邉一成も抜き去って1着で突破と強さを見せつけた。次場所の小田原記念も初日特選こそは8着だったが、2日目以降は同地区の機動力型との連係から3連勝で連覇を達成しており、今回も根田空史や和田真久留との連係から勝利を目指す。
三谷竜生 奈良 101期
近畿勢は三谷竜生と古性優作の2人だけが出場予定でライン的には苦しいが、2人とも強さだけは折り紙付きなのでどう切り抜けてくるかが見どころになるだろう。三谷は近況の成績はやや物足りないところがありオールスターの準決も捲り不発の脇本雄太と共倒れになっているが、二次予選では南潤の先行を目標にしっかり1着を取っている。次場所の小田原記念でも初日特選は3番手からの捲りで1着、準決も3番手から追い込みで1着と三谷は位置取りも巧みにこなせるのが強みだ。今回も単騎戦になったとしても好位置を奪取しての一発が十分にあるだろう。
佐藤慎太郎がベテランの技を披露する
たくましさを増した柴崎淳の好走に期待
佐藤慎太郎 福島 78期
佐藤慎太郎は8月のオールスターで準優勝、獲得賞金ランキングを4位に押し上げて13年ぶりのグランプリ出場をほぼ確実なものとした。決勝は菅田壱道-新田祐大-渡邉一成の後ろの4番手と位置は決してよくなかったが、最終4角から外へ踏んだ渡邉とは対照的に中を突いて鋭く伸びた。優勝した新田の上がりタイムが11秒0だが、佐藤の個人タイムは10秒9で現在のハイスピード競輪にしっかり対応できているのは、さすがとしか言いようがない。今年は2月の全日本選抜でも準優勝しており、前橋の高速バンクでもベテランらしい技と安定性を披露してくれるだろう。
諸橋愛 新潟 79期
諸橋愛も佐藤慎太郎と同年代だが、佐藤と同様にハイスピード化の波に飲まれることなく安定した成績を維持しており7月の弥彦で地元記念3連覇の偉業を達成した。オールスターのオリオン賞では古性優作と連係、大ガマシを打った吉田敏洋をロング捲りで追った古性をゴール前で交わして1着、準決は平原康多の捲りに食らいついて3着、決勝も平原が新田とのもがき合いに敗れたが、そこから必死に踏み込んで3着に突っ込んでいる。賞金獲得ランキングでは10位と当落線上につけており、2年ぶりのグランプリ出場を目指して今大会も力走してくれるだろう。
柴崎淳 三重 91期
中部では柴崎淳が好調だ。オールスターでは準決で捲り不発の深谷知広と共倒れに終わったが、一次予選は4番手からの捲りで2着、二次予選は深谷知広の逃げをきっちり差して1着、最終日特別優秀は脇本雄太ー古性優作の近畿コンビの3番手に付け、脇本の快速捲りに食らいついていっただけではなく、ゴール前では脇本を交わして1着古性、2着柴崎で入線している。追い込みもしっかりこなせる自在型への転向がうまくいっていて、以前よりも走りにたくましさが増してきた印象が強い。
山崎賢人 長崎 111期
山崎賢人はオールスターの初日ドリームレースはなにもできずに流れ込みの5着、3日目シャイニングスター賞は絶好の4番手に入るも不発の7着とかなり評価を下げてしまったが、準決は一転してきっぷよく先行し新田祐大に捲られて5着に終わったが中川誠一郎の決勝進出に貢献している。近況は以前ほどの調子ではないのは確かだが、悪いときでもここぞというときには意表を突く大きな走りができるのが山崎の魅力だ。昨年の寬仁親王牌ではやはり準決で先行して8着と敗れているが、残り3走で3勝と前橋バンクとの相性はよく今大会も決して軽視はできない。
思い出のレース
2014年 第23回大会 深谷知広
深谷知広が3年ぶり2度目のGI制覇
深谷知広-浅井康太の中部コンビが前団、中団に中川誠一郎-井上昌己-大塚健一郎の九州トリオ、その後ろに菊地圭尚、稲川翔、池田勇人、野田源一の単騎4車が続いて周回を重ねる。青板2コーナーから野田がゆっくりと上昇を開始、稲川、池田、菊地の順で野田を追う。深谷は赤板ホームで誘導を下ろし、上昇してくる野田に対して突っ張る素振りを見せるが、結局は5番手の内まですんなり車を下げる。先頭に立った野田は赤板2コーナーでペースを緩め、そこを稲川が叩いて先頭に立つが、打鐘から中川が一気にカマして主導権を奪う。同時に深谷も内からするすると上昇、やや車間の空いた中川と井上の間にすっぽりとはまってしまう。いったんは踏み出しで遅れた浅井も必死に追い上げて深谷に続き、深谷は最終バックから番手捲りを打ち、上がり10秒7の好タイムで3年ぶり2度目のGI制覇を達成、2着に浅井、3着に井上が流れ込む。
バンクの特徴
無風の高速バンクで自力選手が断然有利
先行も捲りも早め早めの仕掛けが肝心
前橋は日本一のカントを誇る小回り走路で、屋内バンクのために風の影響も皆無でスピードに乗りやすく、積極性の高い自力選手に向いている。
小回りバンクなので基本的には先手ライン有利とされているが、さすがにトップクラスの選手が集うGIでは基本どおりにはいかない。
昨年10月に開催された寬仁親王牌の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが2回、捲りが26回、差しが20回、2着は逃げが9回、捲りが13回、差しが12回、マークが14回となっている。
逃げ切りがわすが2回で、先手ラインの選手が1着になったのも15回しかなく、捲りのラインが断然有利だ。昨年の大会では初日こそは先手ラインの選手が1着になったのが6回と先行選手が健闘、差しー逃げの決まり手が連続して出現していたが、2日目以降は完全な捲り天国になっている。
準決の3個レースも10Rこそは柴崎淳の先行に乗った浅井康太が1着だったが、11Rは脇本雄太がまくって1着、12Rも清水裕友が捲って1着でGI初優出を決めている。
ただ、一昨年に同じく前橋で開催された寬仁親王牌の準決では3個レースとも先手ラインの選手が1着になっており、開催年によって決まり手の出現率に変動が見られるので注意が必要だ。
それでも、1周335mの短走路ながら直線は400走路並に長く、風の影響を受けない代わりに追い風によるアシストも期待できないので、先行選手にとっては好条件のバンクとは言えないことだけは確かだ。
先行は主導権争いに巻き込まれないように早めに先頭に立ち、打鐘前から仕掛けて一本棒で最終ホームを通過できればゴール前まで粘り込める。
捲りも早めの仕掛けが肝心だ。36度のカントを有する3コーナーがそそり立つ壁のようになっているので、中団からの仕掛けなら2コーナーの手前あたりからスパートしてバックを越えるまでにトップスピードに持っていかないと3コーナーの壁を乗り越えられない。
周長は335m、最大カントは36度、見なし直線距離は46.7m。直線ではイエローラインのやや外寄りがよく伸びるので、最終バックで後方に置かれていても、36度のきついカントを使ってトップスピードに乗せ、イエローラインを目標に突っ込んでいけば連絡みが可能だ。またゴール前では内が開きやすいので、展開次第ではイン突きも有効だ。
前橋バンク