第29回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント直前展望
新型コロナウイルスの影響がなかなか抜けませんね。皆様、くれぐれも健康管理に気を付けて、罹らない様にしましょう!
さて、
激動の2020年も残りわずかとなってきました。残るGIもあと二つ。
その一つが寬仁親王牌です。今年は全プロ自転車競技大会が行うことが出来ず、選考基準が例年と違いますが、嬉しいことが一つあり、初日12Rの日本競輪選手会理事長杯がKEIRINグランプリ2019と同じメンバーとなりました。これは気になるレースとなるでしょう。
並び等レース前の選手情報が気になるところですが、当日しっかり確認してレース観戦をしたいですね。
さて、注目は何といってもGP出場戦線です。GIタイトルが欲しい選手、賞金の上積みが欲しい選手など、ここ一番にかけてきている選手を狙い撃ちしてみるのも面白そうです。
注目選手
郡司浩平 神奈川 99期
GIIは2度制している郡司だが、GIは惜しいところで逃す感じがあることは否めないですが、ここのところの調子の良さは、この親王牌で発揮されそうです。熊本記念(in久留米)の優勝は今回の優勝への弾みをつけたと思います。超強力なナショナル組を相手にして撃破してくるでしょう。自在に動けるところも強みです。前橋の335バンクで縦横無尽なレースを見せてくれると期待したいです。
新田祐大 福島 90期
来年のオリンピック出場を考えるとここは早い段階でGI制覇し2021年のS級S班を確保しておきたいところでしょう。優勝はかなわずとも決勝進出はマスト、着位は上位を狙ってくるはずです。あとは新田の場合は運次第。名古屋オールスター準決勝のような場合もありますから、競輪って難しいですよね。しかし、これらを乗り越えてパワフルなレースを期待したいです。
和田真久留 神奈川 99期
ここのところひそかに調子が良いのが和田真久留です。7月に大垣FI優勝、8月小田原GIIIを優勝し、取手FI決勝2位と調子を上げてきています。ラインの組み合わせもあると思いますが、ここは4日間を通して注目すると面白そうと感じました。
和田健太郎 千葉 87期
賞金では現在6位に付けている和田に注目したいですね。近年賞金ランキングで良いところにつけながら、今一歩のところでしたが、今年に入り賞金ランキングでグランプリ圏内に入ってきています。今、南関東勢に勢いがあるとはいえ、やはり脚がなければ、この位置に来れないでしょう。今開催の成績次第ではさらにランキングを上げてくる可能性があります。S級S班獲得なるか!応援したいですね。
第29回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)
第29回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが昨年に続き前橋競輪場で開催される。短走路の高速バンクが舞台となればやはり先行日本一の脇本雄太が中心となるだろう。同じくスピード抜群の新田祐大にはグランドスラム達成の大きな期待がかかる。8月のオールスターで脇本とのもがき合いを制して優勝した松浦悠士と清水裕友の中国コンビの逆転も十分で、平原康多率いる地元・関東勢の巻き返しにも注目したい。
相性抜群の前橋バンクで脇本雄太が押し切る
開催初日のメインとなる日本競輪選手会理事長杯では5着までに入った5名は2日目のローズカップと3日目の準決勝へ無条件で進出できる権利を獲得できる。例年ならば全日本プロ選手権自転車競技大会の成績が選考基準のひとつとなっていたが、今年は新型コロナウィルス感染症の影響で全プロが中止となったために、今大会の理事長杯は結果的には昨年のグランプリ以来のS級S班9名による対決となっている。
脇本雄太 福井 94期
高速の短走路が舞台となれば主役はやはり脇本雄太だろう。8月のオールスター決勝では脇本包囲網を突破できずに2着だったが、打鐘で前団を叩きにいこうとしたときに内藤秀久に一発持っていかれ、タイミングとスピードを殺されたのが痛かった、それでも強引に中四国の2段駆けラインを叩いて2着に粘っているのだから敗れてなお強しの一言に尽きる。前橋の寬仁親王牌は18年の開催で優勝、準決ではバンクレコードタイの上がり8秒8をマークしておりバンクとの相性もいい。
新田祐大 福島 90期
新田祐大は18年2月に全日本選抜を優勝してグランドスラムに王手をかけた。だが、その後は寬仁親王牌の出場がなく、今大会が3年ぶりの出場となるだけに滝澤正光、井上茂徳、神山雄一郎に次ぐ偉業達成に大きな夢がふくらむ。位置取りに関してはやや難のある新田は短走路でのレースは決して得意とは言えないが、17年の前橋の寬仁親王牌では準決を逃げ切りで突破、決勝はうまく3番手にはまり、ゴール前で渡邉一成に交わされたものの準優勝しており、今大会も持ち味のスピードを活かして優勝を狙いにくる。
松浦悠士 広島 98期
松浦悠士はオールスターの決勝では3人揃った中四国勢でがっちり結束、松浦は同期・原田研太朗の先行に乗り、脇本雄太との壮絶なもがき合いを制して2度目のGI優勝を飾っている。今回の理事長杯は奇しくも昨年のグランプリの再戦となったが、グランプリでの中国コンビは仕掛け遅れの捲り不発に終わっている。しかし、松浦と清水裕友の2人は今年それぞれGI優勝1回、GII優勝1回と大きな成長を遂げており、今回の理事長杯でも決して後手を踏まない積極的な攻めで勝利を目指してくるだろう。
平原康多 埼玉 87期
平原康多はオールスターのドリームレースで落車、二次予選は先行策に出たが島川将貴に捲られて9着に終わり途中欠場している。それでも次場所の松戸記念は準優勝しており落車の影響は心配なさそうだが、近況はずっと本調子を欠いているのは否定できない。グランプリでは単騎戦で最終3角8番手からさすがのコース取りで3着に突っ込んでいるが、レースの組み立ては完全に失敗だった。今回の理事長杯も着よりもまずは、平原らしい自在性を発揮してライバルたちに健在ぶりを強くアピールできるような走りを期待したい。
郡司浩平 神奈川 99期
郡司浩平はオールスターでは準決で4着に敗れて優出を逃したが、ドリームレースでは逃げた脇本雄太に終始マークし、捲りで迫る深谷知広をきっちり止めて2着、シャイニングスター賞も脇本を捲った松浦悠士を追いかけ、最後は新田祐大の捲りに屈したものの2着とタイトルホルダーたちに決して引けを取らない強さを見せている。今はまだ勝ち負けが展開に負うところが多いのが弱点だが、地元・平塚で開催予定のグランプリ出場を目指し、今大会も初日から力強い走りを見せてくれるだろう。
浅井康太がきっちり仕上げて巻き返しを図る
初日の特別選抜予選2個レースでは各レースで2着までに入った4名が無条件で2日目のローズカップと3日目の準決勝に進出できる権利を獲得できる。今年の特別選抜予選のポイントは生粋の先行型が新山響平と吉田拓矢の2人しかいないことだ。原田研太朗もいるが基本は捲りだ。新山を目標にできる守澤太志と大槻寛徳、吉田を目標にできる諸橋愛と木暮安由が展開的には有利だが、自在型の浅井康太や古性優作がどう動くのか、目標のない追い込み型が位置取りにこだわってくるのか、それとも短走路ならば自力発進もあるのかどうかが見どころになる。
浅井康太 三重 90期
浅井康太は、今年前半は記念優勝3回と勢いがあったが、8月のオールスターでは準決で敗れ、結果的には地元・中部勢からの優出はゼロに終わった。今年のGIも残りは2大会となり、中部のエースとして今大会までにしっかり仕上げて巻き返しを図りたい。浅井は前橋での寬仁親王牌は16年から昨年まで4年連続で優出と相性は良好だ。中部勢は今大会もライン的には手薄だが、得意の自在戦法を駆使して勝ち上がってくるだろう。
山田英明 佐賀 89期
山田英明は今年2月の全日本選抜で優出、6月の高松宮記念杯は二次予選で敗れたが、その後はFI戦ながら6月の佐世保、7月の広島、8月の武雄と3場所連続で完全優勝を決めて上昇気流に乗り、8月のオールスターで優出を果たしている。決勝は6着に終わったが、悲願のGIタイトル奪取へまた一歩近づいたのはまちがいない。また準決は2着だったが、これまで相性のよくなかった山崎賢人の先行をしっかり活かしきって結果を残せたのは大きく、今大会も活躍が期待できる。
古性優作 大阪 100期
古性優作はオールスターの準決ではバンクレコードタイの上がり10秒4の脇本雄太の捲りにきっちり食らいついて2着で突破、決勝は脇本と松浦悠士のもがき合いが続く中、3番手の位置で最後の直線に入ってきて絶好のチャンスが巡ってきたかと思われたが、車を外に持ち出すも思うように伸びきれずに3着に終わっている。絶好のチャンスを活かしきれなかった無念さは相当のものがあるはずで、今大会も強い気持ちで勝ち上がり、決勝で脇本との再度の連係を目指してくるだろう。
諸橋愛 新潟 79期
諸橋愛は前半戦がよくなく、7月の地元記念から急速に調子を上げてくるのが例年のパターンとなっており、ビッグ初優勝も17年9月の共同通信社杯だった。今年も弥彦記念で準優勝すると次場所のオールスターで優出を果たしている。決勝は4着に終わったが、オリオン賞は新山響平の逃げを差し切っての1着、準決も島川将貴-原田研太朗の四国コンビを追走して2着で突破している。関東勢は近況やや元気がないが、今大会も諸橋のそつない立ち回りと鋭い差し脚に期待してみたい。
深谷知広が思い出のバンクで輝きを取り戻す
深谷知広 愛知 96期
深谷知広は8月のオールスターでは準決で敗れたが、二次予選は逃げ切って中部ラインで上位を独占、4日目特別優秀も渡邉雄太を叩いて主導権を取りきり、最後は新田祐大の捲り追い込みに屈したが浅井康太が2着、深谷が3着と調子は上々だ。前橋での寬仁親王牌は3年ぶりの出場となるが、11年にGI初制覇を飾った思い出のバンクだけに相性が悪いはずはなく、16年、17年の大会で連続優出している。今大会もナショナルチームで鍛えた脚で華麗な逃走劇を披露する。
松井宏佑 神奈川 113期
松井宏佑はオールスターでは二次予選で敗れたが、特別選抜予選では勝負どころで8番手に置かれながらも打鐘とともに一気にスパートするとまたたくまに先頭に躍り出て、番手追走の和田健太郎が1着、松井が逃げ粘りの2着と潜在能力の高さを見せつけた。次場所の小田原記念では4日間逃げて和田真久留の優勝に貢献、今はまだレースの組み立てに関して課題が多いが、今大会も飾り気なしの先行勝負で南関東の先輩たちを勝ち上がりへと導いていくだろう。
島川将貴 徳島 109期
島川将貴が順調にパワーアッブしてきた。オールスターの一次予選では打鐘から仕掛けて一気に主導権を握ると別線を引き離して中四国勢で上位を独占、二次予選は平原康多に先手を取られたが、8番手から好回転で巻き返すと平原を捲りきっての1着と大金星、2着も小倉竜二のワンツー決着、GI初の準決もド先行で原田研太朗の1着に貢献、それが決勝での松浦悠士の優勝につながったのだから、次々と有望な若手が登場してくる中四国勢の快進撃は当分収まることはないだろう。
思い出のレース
2015年 第24回大会 園田匠
園田匠が中バンク強襲でGI初優勝
新田祐大-渡邉一成-伏見俊昭-菊地圭尚。武田豊樹-神山雄一郎、脇本雄太-金子貴志-園田匠の並びで周回を重ねる。青板2コーナーから脇本が上昇を開始、合わせて武田も前へ踏んで先頭に立ち、4コーナーで誘導員を下ろし、新田も6番手まで車を下げる。脇本は赤板ホームで武田を叩いて先頭に立つが、武田は脇本の番手に飛びつき、1コーナーで金子を飛ばして番手を奪う。捌かれた金子は後退するが、4番手にいた園田が金子を迎え入れ、新田は6番手のままで一列棒状の展開となる。脇本は打鐘から徐々にベースを上げ最終ホームから一気に先行態勢に入る。最終3コーナーからようやく新田が捲りに出るが、合わせて金子も4番手から捲っていく。さらに4コーナー手前から武田も番手から踏み込んでいくが、脇本の粘りがよく思うように車が進まない。最後の直線に入ると神山が武田と脇本の中を割りにいくが、金子と新田の捲り両者は外に膨らみ、ぽっかり空いた中バンクを園田が一気に突き抜けてGI初優勝、武田が2着、神山3着に入る。
表彰
ゴール
バンクの特徴
先行も捲りも早めの仕掛けが肝心
前橋は日本一のカントを誇る小回り走路で、屋内バンクのために風の影響も皆無でスピードに乗りやすく、積極性の高い自力選手に向いている。
小回り走路なので基本的には先手ライン有利とされているが、輪界のトップクラスが集うGI戦では基本どおりとはいかない。昨年10月に開催された寬仁親王牌の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが4回、捲りが26回、差しが18回、2着は逃げが4回、捲りが11回、差しが15回、マークが18回となっている。やはり高速バンクなので捲りが圧倒的に有利で、先手ラインの選手が1着を取った回数は16回のみだ。
先行で連絡みを目指すならば赤板過ぎからのカマシの一択だ。打鐘でトップスピードに乗ってしまい、そのまま前団を叩いていけば押し切れる。
3日目12Rの準決では中川誠一郎が赤板で8番手に引いてから一気にカマし、後続に5車身の差をつけたまま先頭でゴールイン、2着に木暮安由、3着に離れながらも必死に中川を追った園田匠が入っている。
4日目12Rの決勝も三谷竜生-村上博幸の近畿コンビが赤板の8番手からカマし、打鐘で先頭に立つとそのまま最後の直線まで一本棒の展開に持ち込み、ゴール前で村上が差し切って優勝、2着も三谷でワンツーを決まっている。
先行は赤板発進から少しでもタイミングが遅れると連絡みはかなり難しくなる。打鐘からの発進だと前受けの自力選手とほぼまちがいなくもがき合いになってしまうので、後方待機の選手の捲りごろになってしまう。あるいは前受けの選手に番手を捌かれ、番手捲りを食らって終了というパターンも多い。
前橋が舞台の寬仁親王牌では先行選手の仕掛けのタイミングによって、レース展開のパターンがほぼ決まってしまうと言って過言ではない。先行選手に赤板発進も厭わない度胸と脚力があるかどうかを見極めることが的中車券の第一歩となるのである。
前橋バンク
周長は335m、最大カントは36度、見なし直線距離は46.7m。屋内バンクで風の影響を受けないのでスピードに乗りやすいが、反面追い風などのアシストを期待できないので選手の脚力や調子が直にスピードに反映されるごまかしの利かないバンクとなっている。捲りも先行同様に早めの仕掛けが肝心で、最終ホームからスパートしてバックまでにトップスピードに乗っていないと、そそり立つ壁のような3コーナーを乗り越えることはできない。