親王牌直前展望
弥彦で開かれる寬仁親王牌は2015年以来となります。その時の優勝者は園田匠選手でした。
今回の実に6年振りとなる親王牌は少し混沌としてきたようです。脇本雄太、新田祐大も本調子ではなさそうですし、その他のSSもちょっと調子落ちのような感じです。
が、しっかりGIに合わせて調子を合わせてくるのもトップ選手です。見極めて弥彦の親王牌を楽しみましょう。賞金上位選手は決勝を狙ってくるでしょうし、KEIRINグランプリ出場を目指し、追い込んでくる選手が一発狙ってくるはずです。
激アツな競走の合間に秋の弥彦山に癒されながら4日間ご観戦ください。
山口拳矢 岐阜 117期
デビューして2年目ながらGPを狙える位置にきましたね。ヤンググランプリをすっ飛ばしてGP出場決めることができるのか?この開催で決勝に乗ってくることが出来るとかなり現実味を帯びてくると思います。ヤングパワーを見せつけられるか。期待したいですね。
吉田拓矢 茨城 107期
GP出場を決めるには吉田もここは決勝進出を決めて来なければなりません。そして一つでも上位でフィニッシュしたいところでしょう。当然、優勝すればGP出場は間違いありませんが。初日からの勝負駆けに期待したいですね。
脇本雄太 福井 94期
熊本記念初日の競走をみると本来の感じでは全く無かったのがかなり気になりますが、賞金の積み上げもありますし、何よりも優勝を狙ってくるでしょう。本来のパワーが戻れば急上昇がみられるはず。期待しましょう。
佐藤慎太郎 福島 78期
佐藤慎太郎の進化は止まりません。パワーアップもそうですが、府県を超えて縦横無尽にラインを作れるのは佐藤しかいません。ラインを作るという表現ではないかもしれませんが、近年このようなことができる選手はいませんでしたよね。追い込みとしての実力とコミュニケーション能力の高さを競輪競走で見せてくれるのは佐藤しかいないでしょう。今回も華麗な競輪を見せてほしいですね。
第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント展望
第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが6年ぶりに新潟県の弥彦競輪場で開催される。残りワンタイトルとなった新田祐大のグランドスラム達成に期待したいが、本調子ならばスピード互角の脇本雄太がやはり難敵だ。共同通信社杯でビッグ初制覇を飾った山口拳矢の勢いも侮れず、地元戦で巻き返しを狙う平原康多率いる関東勢の走りにも注目したい。
新田祐大がグランドスラムに挑む
開催初日のメインとなる日本競輪選手会理事長杯では5着までに入った5名が2日目のローズカップと3日目の準決へ無条件で進出できる権利を獲得できる。通常ならば全日本プロ選手権自転車競技大会の成績が選考基準のひとつになっているが、昨年同様に今年も新型コロナウィルス感染症の影響で全プロ大会が中止となったために、今大会の理事長杯はS級S班8名にプラスワンの対決で、各地区2名ずつに単騎が1名の細切れ戦となっている。
新田祐大 福島 90期
新田祐大は8月のオールスター決勝では北日本勢が4人と展開的には有利だったが、脇本雄太に先手を取られて5着に終わった。9月の共同通信社杯決勝も新山響平の先行で絶好の展開となったが結果は4着と、勝負どころで運行に難を抱える弱点をさらけ出してしまった。それでも二次予選Aは逃げて2着で北日本上位独占。準決も逃げ切りで守澤太志とワンツーとかつてないほどの積極的な攻めを見せており、今回の理事長杯でも佐藤慎太郎との2車だが、ライバル・脇本雄太を叩いての先行策も十分にありそうだ。
脇本雄太 福井 94期
脇本雄太はオールスター決勝では逃げて2着で古性優作のGI初優勝に貢献、次場所の向日町記念は完全優勝とさすがの強さを見せていたが、共同通信社杯の直前に腰痛が悪化して無念の欠場となっただけに今回も体調面に不安が残る。古性優作も共同通信社杯を欠場しているが、今回は脇本の援護に徹してくるだろう。となれば脇本は自分の状態を計るためにも開催初日の理事長杯はなにがなんでも先行の気持ちで再び古性とのワンツー決着を狙ってくるだろう。
郡司浩平 神奈川 99期
郡司浩平は体調不良で8月のオールスターと小田原記念を欠場、復帰戦となった9月の松阪記念決勝では結果は8着ながら突っ張り先行でレースを支配する気迫溢れる走りを見せた。続く共同通信社杯も完調とはいえない状態だったが、南関東の仲間に助けられながら3連勝で決勝進出を果たした。決勝は4番手外併走の状態から最終2コーナーで清水裕友に張られて後退し8着に終わったが、欠場明けでも十分に戦える感触をつかんだはずで、今回も和田健太郎を連れての自在な走りで強さを発揮してくれるだろう。
平原康多 埼玉 87期
平原康多は9月の共同通信社杯で準優勝となり、獲得賞金額でのグランプリ出場に少し前進した。しかし、レース内容は平原らしからぬ走りで位置取りに失敗、勝負どころで8番手となってしまい、7番手から捲った山口拳矢についていっただけの2着だから本人も素直に喜べないようすだった。今回の理事長杯は各地区2人ずつの4分戦だからどこへ行っても3番手はあるし、直線の長い弥彦なら3番手でも十分に勝負圏内だが、おそらく平原は単騎戦を選択し、今度こそは位置取りをしっかり決めて1着を狙ってくるだろう。
清水裕友 山口 105期
清水裕友と松浦悠士の中国コンビは近況の調子から清水が前回りだろう。松浦は9月の共同通信社杯ではまさかの一次予選敗退となり、2日目からの敗者戦も1、3、2着とかなりの落ち込みようだった。それでも8月の松戸記念は逃げ切って優勝しており、今回も自分の調子を試すために前回りの自力勝負を選択するかもしれない。一方の清水だが共同通信社杯決勝は7着に終わったが、一次予選は逃げて4着、二次予選Bは捲って1着としっかり動けており、清水が前回りならばいつもどおりの強気の攻めで勝機をつかんでくるだろう。
深谷知広が徹底先行で押し切る
開催初日の特別選抜予選2個レースでは各レースで2着までに入った4名が無条件で2日目のローズカップと3日目準決に無条件で進出できる権利を獲得できる。今年の特別選抜予選は深谷知広、吉田拓矢、新山響平、太田竜馬、野原雅也と近況好調な自力選手がそろって激戦模様だ。弥彦バンクは直線が長いだけに、自力選手同士が叩き合うようなら追い込み選手にチャンスが巡ってくるだろう。
深谷知広 静岡 96期
深谷知広は8月のオールスター決勝では9着に敗れたが、勝ち上がり戦の4走はすべて主導権取りと気迫溢れる走りを見せた。初日ドリームレースは脇本雄太と新田祐大を不発に終わらせる先行で自身は5着に沈んだが、深谷追走の和田健太郎が2着、準決では松浦悠士、吉田拓矢、山口拳矢を相手に先行して3着に粘り込み、成田和也と佐藤慎太郎の優出に貢献している。9月の共同通信社杯は不出場だったが、3年後のパリ五輪出場を目指す深谷が今大会も連日の徹底先行を貫いてくれるだろう。
諸橋 愛 新潟 79期
6年ぶりの地元バンクでのGI開催に闘志を燃やすのが諸橋愛だ。11年から15年まで5年連続弥彦で開催された寬仁親王牌では決勝進出を果たせていないが、記念開催は17年、18年、19年と3連覇しており弥彦バンクとの相性はもちろん抜群だ。昨年7月の記念も平原康多の捲りを追走して準優勝している。近況は落車が続いて成績が安定せず、9月の共同通信社杯でも二次予選Aで落車してしまったが、一次予選は2着、敗者戦は2着、3着と調子は悪くなく、今大会も地元ファンの期待に応える走りを見せてくれるだろう。
吉田拓矢 茨城 107期
吉田拓矢は9月の共同通信社杯は準決で敗れたが、共同通信社杯終了時点での獲得賞金ランキングは11位でグランプリ初出場を狙える位置につけている。一次予選は逃げて2着で鈴木庸之とワンツー、二次予選Aは眞杉匠の番手で逃げる眞杉が寺崎浩平に捲られてしまったが、4番手から鋭く伸びて1着、4日目特別優秀は捲って2着で再び鈴木庸之とワンツーと好調だ。7車立てのFI戦だが7月の弥彦で完全優勝とバンクとの相性もよく、準優勝した6月の高松宮記念杯に続いての決勝進出が期待できる。
新山響平 青森 107期
徹底先行を貫く新山響平は先行のスピードは折り紙付きだが、詰めの甘さがウィークポイントだ。今年も2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯で準決まで勝ち進み、何度もラインの選手の勝ち上がりに貢献してきたが、鬼門の準決をどうしても突破できなかった。しかし、9月の共同通信社杯の準決では逃げる嘉永泰斗の番手にハマるツキもあったが、3着で16年11月の競輪祭以来のビッグ優出を決めた。もちろん展開の恵まれがいつもあるわけではないが、スピードは文句ないだけにこれをきっかけにさらなる飛躍を期待したい。
浅井康太 三重 90期
浅井康太は9月の松阪記念決勝では勝負どころで9番手となったが、最終2角から仕掛けると逃げる郡司浩平を捲った清水裕友をさらに捲りきって通算30回目のGIII制覇を達成した。ところが、次場所の共同通信社杯では二次予選Aで敗れて途中欠場と近況の浅井は心技体がうまく噛み合っていない印象だ。その一方で同じ中部の山口拳矢が共同通信社杯を優勝したのだから浅井もこのままでは終われないはずだ。もう10年前になるが11年6月に弥彦で開催された寬仁親王牌で浅井はGI初優勝を飾っており、今大会での奮起に注目したい。
山口拳矢が競輪界に新風を吹き込む
山口拳矢 岐阜 117期
予選スタート組の注目選手はもちろん山口拳矢だ。デビューから1年4カ月足らずで9月の共同通信社杯を優勝、二次予選Bではバンクレコードタイの10秒7の捲りで圧勝、決勝も7番手からの捲りで新田祐大、清水裕友、平原康多らの強豪を撃破した。デビュー以来戦法的な面で色々と言われてきたが、我が道を貫いて結果を挙げたのだから立派だ。ライン戦が主流で戦法的にも数々の制約に縛られている競輪界に新しい風を吹き込んだといっても過言ではない。獲得賞金額でのグランプリ出場も見えてきており、当然今大会も優勝候補の一角だ。
園田 匠 福岡 87期
15年7月に弥彦で開催された寬仁親王牌決勝では園田匠が5番手からの中割り強襲で長い直線を突き抜けてGI初優勝を飾っている。あれから6年、園田も40歳となったが今年は2月の全日本選抜競輪で優出しておりまだまだ元気だ。9月の松阪記念では2、1、3着で決勝進出、決勝は逃げる郡司浩平を捲った清水裕友をさらに捲った浅井康太の優勝だったが、清水裕友-中本匠栄の3番手から浅井を追うように外を踏んだ園田が2着と差し脚も健在で、思い出の弥彦バンクで園田が再び輝きを取り戻す。
思い出のレース
2016年 第25回大会 稲垣裕之
脇本雄太の番手から稲垣裕之がGI初優勝
深谷知広-浅井康太の中部コンビが前受け、単騎の平原康多と園田匠が続き、5番手に脇本雄太-稲垣裕之-村上義弘、8番手に古性優作-南修二の並びで周回を重ねる。残り3周半から古性が早くも上昇開始、青板で誘導員の後ろに入ると大阪コンビの後ろに平原、園田が続き、中部コンビは5番手に引く。7番手になった脇本は中バンクに上がり、3コーナーから一気に仕掛け、赤板ホームで古性を叩いて主導権を握る。脇本はペースを緩めることなく2周半先行を敢行、4番手に古性、6番手に平原、7番手に園田、8番手に深谷の一列棒状のまま打鐘、最終ホームと通過する。最終バック手前から古性と深谷の2人が仕掛けるが車が伸びず、車間を空けて準備していた稲垣が3角から番手捲りを打つ。と同時に内をすくってきた平原が4コーナーで村上を飛ばして稲垣を追う。最後の直線では稲垣と平原のマッチレースとなるが、稲垣が4分の1輪振り切ってGI初優勝、平原が2着、村上が3着に滑り込む。
表彰
ゴール
バンクの特徴
直線が長くて追い込みが断然有利
弥彦は標準的な400バンクだが、みなし直線距離が63.1mと長く追い込みが断然有利だ。先行はもちろん捲りでも差し交わされるケースが少なくなく、自力選手には厳しいバンクとなっている。
15年7月に開催された寬仁親王牌決勝では脇本雄太が先行、武田豊樹ー神山雄一郎の関東コンビが金子貴志を捌いて脇本の番手を奪取、武田に絶好の展開かと思われたが、5番手にいた園田匠が長い直線を利しての中割り強襲を決めてGI初優勝を飾っている。
15年の大会の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが3回、捲りが21回、差しが23回、2着は逃げが7回、捲りが11回、差しが14回、マークが15回となっている。
やはり先行は苦しく、先手ラインの選手が1着を取ったのも13回しかない。逃げ粘りの2着は7回とそこそこあるが、そのほとんどが一次予選や敗者戦のみで、上位戦での逃げ粘りは厳しい。3日目の準決3個レースでは逃げた選手が全員着外に沈んでいる。
捲りは1着回数が23回とよく決まっているように思えるが、そのほとんどが3、4番手からの捲りで後方からの巻き返しは決まりにくい。寬仁親王牌は自力選手の出場が多くほとんどのレースが細切れ戦になりやすく、自力選手が3番手を取りやすいので、後方からの巻き返しに合わせて3番手の選手が3角過ぎから捲って1着というパターンが多い。
一般的な400バンクでは最終2角からの仕掛けが捲りのポイントだが、弥彦はバンクが重くてスピードに乗りにくいので早めの巻き返しは不発になりやすい。直線の長い弥彦では最後の直線に入ってから必ずもつれがあるので、後方になった選手はじっと我慢で前団のもつれを待ち、3角過ぎからまくり追い込みを狙ったほうがいい。
2日目のローズカップでは新田祐大が例によって8番手となったが、逃げる脇本雄太と早めに巻き返した深谷知広とのもがき合いでもつれたところを4角から大外を捲り追い込んで上がり10秒9をマークしている。
周長は400m、最大カントは32度24分17秒、見なし直線距離63.1m。日本唯一の村営の公営競技場で、1コーナー後方にはパワースボットとして有名な弥彦神社がある。その裏手が弥彦山で、競輪場はうっそうとした森に囲まれており、通称弥彦おろしと呼ばれる風が3コーナーから吹き込んでバック向かい風の日が多い。ただ風向きは直線的ではなくバンク内を回って吹くことが多いので、風の強い日は展開がもつれやすい。
弥彦バンク