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2014年9月14日(日)、取手競輪場にて「第10回取手蛍輪」が開催されました。
「蛍輪」と書いて「けいりん」と読むこのイベントは、電球などで装飾した自転車を漕いで発光させ、その美しさとアイデアを競うというもの。自転車発電とアートが融合した、なんとも面白いレースなのです。
第1回の「取手蛍輪」は2004年に市内の小学校で開催。2年後、復活を望む有志を中心に第2回大会が企画され、以降は毎年開催されています。今年で10回目を数え、地元のお祭り感覚で愛されるイベントです。

この「取手蛍輪」、第4回大会から取手競輪場で開催されるようになったのですが、もともと「競輪」にインスピレーションを受けて誕生したのだそうです。発案者の京都市立芸術大学教授・小山田徹さんにお話を伺うと、アートイベントの企画で取手市内を歩いている際に取手競輪場の存在を知り、ちょっとした言葉遊びの中から「競輪」に掛けた「蛍輪」という言葉が浮かび、そこから思いついた企画なのだとか。
「蛍輪という言葉から連想したのは風情です。街には無機質な灯りが多い。風情という意味では、もっと色々な街の光の在り方があっていいのでは。自転車で発電するほのかな光を楽しむイベントを通じて、取手の街が自分たちの価値基準をもう一度考えてみるきっかけになればいいなという思いでした」
東日本大震災以降、東北でのプロジェクトが増え、ここ数年「取手蛍輪」に足を運べていなかったという小山田さんですが、3年ぶりに参加が実現。今年は審査委員長を務められていました。

「取手蛍輪」発案者の小山田徹さん
さて、「蛍輪」は自転車発電のイルミネーションが見どころ。当然開始時間は日が暮れてからとなります。メインの「蛍輪レース」は午後6時から。とはいえ、午後5時の開場とともに続々と観客が集まりはじめ、地元ダンススタジオの生徒さんらによるダンスや、出店のグルメを楽しんでいました。

子供達のダンス

グルメも楽しみのひとつ

いつの間にか会場には多くの観客が
どっぷりと日が暮れ、辺りが闇に包まれた頃、いよいよ「蛍輪レース」のスタートです。
今回の出場チームは11組。1組ずつ走路に登場し、手作りの装飾自転車を走らせ、観客と審査員に美しさをアピールします。順位は観客と審査員の投票で決定。
BGMに乗って、思い思いのコンセプトでデコレーションされた自転車が現れると、暗闇が一気に明るくなります。色とりどりの鮮やかな光から、柔らかく浮かび上がるような光など、輝きの種類も様々。それらが全て自転車を漕いで発電している光だということが信じられないような、ちょっと幻想的な光景に見とれてしまいます。
中にはうまく光らなかったり、途中で装飾が壊れてしまったりするハプニングもありましたが、会場からは温かい声援が飛び、惜しみない拍手が贈られていました。
今年は「取手蛍輪」10周年記念ということで、一般から蛍輪自転車のアイデアを募集する特別企画「夢ちゃり」を実施。応募案の中から採用された自転車を実際に作り、イベント当日にお披露目されたのですが、この自転車に乗って登場したのは戸邉裕将選手。茨城支部では、以前からこの「取手蛍輪」に協力されているとのことで、今回は宮本秀人支部長代行と戸邉選手が参加。戸邉選手は東日本大震災翌年のイベントでは、「取手競輪再開」と書いた電飾の看板と自転車を作って参加されたこともあったそうで、毎年何かしら観客を楽しませる工夫をこらしているのだとか。
宮本支部長代行も「年々、出場者の電飾のレベルも上がってきていますし、お客さんも増えていますね。電飾の自転車は実際に見ると本当に綺麗ですよ。ダンスのイベントもあったり、盛りだくさんでとにかく楽しめるイベントになっていると思います」と、「取手蛍輪」の魅力を語ってくれました。

「夢ちゃり」に乗る戸邉選手

今回は仮面をつけて登場し、会場を沸かせる

宮本支部長代行は審査員を務める
全ての出場チームが出走を終え、最後は審査員と観客の皆さんが「これだ!」と思うチームに投票。最も得票の多いチームが優勝となりますが、表彰は優勝チームだけでなく、審査員それぞれからの賞や参加賞が用意されているので、どのチームも必ず表彰されます。そんなところにもアットホームで温かい「取手蛍輪」らしさが感じられますね。

記念すべき第10回大会の優勝者は「東京オリンピックのワクワク感を出した」という「JC&常総100キロ」チームに決定し、イベントは無事幕を下ろしました。

優勝したJC&常総100キロチームの表彰

出場者・審査員一同で記念撮影
普段の競輪場とはまた違った雰囲気が楽しめる「取手蛍輪」。自転車で発電する柔らかく暖かい灯りは、見ているこちらの気持ちまでほっこり暖かくさせてくれるようです。手作り感いっぱいの中から、関わる方々の愛情がひしひしと伝わる、そんな素敵なイベントでした。

また来年も開催されるであろう「取手蛍輪」に、皆さんもぜひ一度足を運んでみて下さい!