2021UCトラックサイクリング世界選手権を振り返り、パリはどうする?
今回は10月に行われた2021UCIトラックサイクリング世界選手権大会を振り返っていただきました。
佐藤水菜が女子ケイリンで銀メダルを獲るという快挙を成し遂げた大会を日本自転車競技連盟のトラック部会の長でもある中野氏はどう見たのか?競輪選手を中心にインタビューしました。
中野浩一氏
女子チームスプリントの日本チーム
-2021UCIトラックサイクリング世界選を振り返ってどのように見られましたか?
まずは短距離からお願いいたします。
「新しいメンバーというか、今後パリを目指すメンバーで臨んだわけです。長迫吉拓がケガをしたため、あれで寺崎浩平もけっこうプレシャーがかかったと思うけど、本来ならスプリントだけだったのがチームスプリントも出場になったので状況の変化はちょっとありました。
今回は、(世界選)初参加みたいな選手が多かった中、経験は積めたと思います。
これから期待がもてるのではないかと思ったのは女子のチームスプリント(4位)ですね。相手が失格でラッキーだった面もありますけど、それも経験だし、あとは1走の梅川風子がもうちょっと変わってくれば良いですね。
太田りゆはスピードがついたし、ハロンもそれなりのタイムで走ってます。
佐藤水菜は物怖じしない感じで女子ケイリンを走っていましたよね。あの子は運も持っているからね。あのメダル(女子ケイリン銀メダル)は簡単には取れないものですけど、展開的に恵まれた部分もあるけど、それはそれで今後に活かしていかなきゃいけないし、また運も実力の内って言うからね」
女子ケイリン1-6位決勝の佐藤水菜
個人追い抜きを走る今村駿介
-中距離はどのように見られました?
「(中長距離の)男子の方は、今村駿介は、個人追い抜きでもう少しで日本記録だったし、あの辺は徐々にレベルアップしているのは間違いないだろうと思います。
窪木もスクラッチ5位でしたが、メダルに手が届きそうでした。
来シーズンは団体追い抜きをもう少し真剣にやる必要があるかなと思います。その辺はBRIDGESTONEとしっかり話してやっていきたいと思います」
「本当は団体追い抜きで枠を取れるようになるのが一番理想ですよね。ただ、今の状況ではちょっと団抜きでは難しいということなので、日本の選手はそれよりゲーム系の方のレースが向いているのではないかという意見もありますし、競輪選手というのもあるので、その辺りをどうするかクレイグらコーチ陣とよく話し合いをしながら、やっていかなきゃいけないですね。以前は、コーチからの方針についてどうだっていう話はトラック委員会ではあまりしていなかったので、今度は部会で話をした上で、皆の意思を確認してやっていきたいと思います」
-そうすると男子は団体追い抜きから組み立てるという事ですか。
「そうですね」
-女子の団体追い抜きもメンバーが揃い次第でしょうか。
「揃えなきゃいけないんだろうけど、オリンピックだけということだけでなく競技的に人数が増える為には、そういう団体種目があるかどうかというのが大事だなっていう、僕はそこを心配しています」
-パリのオリンピックに向かってはどのような体制で臨むことになりますか?
「順調といってはなんだけど、まず選手はこのメンバーでやっていくしかないし、今後はジェイソンが短距離ヘッドコーチで、クレイグが中長距離ヘッドコーチ、ブノワには世界の状況を見据えた上で戦略的なものを組んでもらうテクニカルディレクターという形になります」
-選手の育成についてはどのように考えられています?
「例に挙げればですが、現在、脇本雄太が腰の状態が良くなっていないですが、やはり脇本が競輪で走れば売り上げもやっぱり違います。競技も競輪も強い、そういう選手を育てたい。そのためには今のハイパフォーマンスセンターを継続していかなければいけない。
そのためにはお金はかかる。継続していくためにはトラック支援競輪は継続してやって欲しいです。そうでないと、なかなかそういうスター選手は出てこないですからね。スター選手は生まれるけど、スーパースター選手は簡単には生まれないですから。やっぱりスーパースターが生まれないと競技も競輪も盛り上がらない。他のスポーツでも同じですし。やはり世界チャンピオンが生まれて、その選手が国内で勝ってくれるというのが理想ですね」
全日本トラック選手権が12月10日から13日にかけて伊豆ベロドロームで行われます。この後に、この大会の結果をみて、ナショナルチームの再編成がされるようです。
パリに臨むナショナルチームを見てください。またそのあとに中野氏にインタビューし、選考理由などを聞いてみたいと思います。東京オリンピックでは競輪選手がメダルを取り逃がしましたが、確実に実力はアップし世界に負けない選手たちが育っています。
是非応援よろしくお願いいたします。