月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
117期、118期による若き熱い戦いルーキーシリーズ。ほとんどラインを組まず、各々が前へ前へと踏んでいったこのレースを市田佳寿浩さんはどう見たのでしょうか。そして、注目選手もあげていただきました!
面白いレースはたくさんあったし、どんどん若い力で前に踏んでいくレースが多かったですね。
-ルーキーシリーズを見た印象はいかがでしたか?
「競輪界、色々な関係団体の思惑もあるとは思うんですけども、こういう風になっていくのかなということを感じたんですよね。というのは世の中、ライン戦や競輪道、そういったものが、お客様の目線、各関係団体の目線、はたまた選手や選手会サイドの目線というものが色々なところで交差する中で、若い力が1人ずつラインを組まずに思いっ切り走っていく、シリーズ通してほとんどラインを組まずに思い切り走っていく、どんどん前に前に仕掛けていってスピード感のあるレースで、想定していたよりも面白い内容が繰り広げられたと思います。
 ルーキーシリーズを通していえることは、データ的にはなく、そういった中で養成所時代の記録、またはその選手の(練習)環境などの情報の中でポンっと賭けの対象になる。まぁ、今期の子は2世、3世が多いなというイメージはありますけど、それを外しても、ライン戦のほぼない単騎戦。今後の競輪界はこういった風になっていくのかな、カタカナのケイリンに近づくのかなという感じですね。決して悲観的な意味ではなく、面白いレースはたくさんありましたから。どんどん若い力で前に踏んでくレースが多かったですね。
 顕著なのが高松宮記念杯を優勝した福井の脇本雄太選手ですが、(現状の)9車から(7月から9月までの)7車もまさに無敵になると思います。世界で戦うような強さを7車の競輪に当てはめたら、無敵となるわけです。高松宮記念杯は国内最強対ナショナルチームというような構図になりましたけど、日本のライン戦、競輪道を無視してもぶっちぎりで強かったわけですから、それでもお客様は『脇本』『脇本』と盛り上がったわけです。そこにまたギャンブル性がかかわってくると穴党だとか色々な方の思惑だとか出てくるので、交わることはないでしょうけど。自分は競技も見てきているので充分楽しめました。今後、こういったレースが増えるのかなと思いました。」
-注目選手は誰ですか?
「やっぱり皆が口をそろえて山口拳矢君をあげると思いますが、そりゃそうですよね(笑)。確かにキレイに走ったなという印象はありますが、ルーキーシリーズで仕上がっていたなと思ったのは町田太我選手ですね。大崩れしてこない走りだったので、今後これを磨いていくと面白いと思います。山口拳矢君は、山口幸二さんにそっくりのフォームでしたけど(笑)、ちょっと今風。でも、幸二さんの肘の開きだったり、ペダリングだったり、間の待ち方だったりはお父さんにそっくりでしたね。
 長田龍拳選手は在校1位で出てきましたけど、少し噛み合ってなかったですけど、ポテンシャルはすごいものを持っているので、今後に期待だなと思っています。坂本紘規さんもいましたけど、やっぱり2世、3世が本当に多いですね。
 このシリーズだけでは計り知れないけど、前々に攻めていくのは養成所のままだったと思うんですけど、しっかり出してきているという意味では町田君、出せてないのは長田君、でも、ポテンシャルは一級品ですから今後に期待ですね。山口君も上手く走っていましたけど、ポテンシャルも半端ないですし、サラブレット中のサラブレット! と、あまり褒めすぎると幸二さんが照れるといけないので(笑)。  大学出の子たちはレース経験も多く、上手く走る印象はありますけど。しっかり学生の間に自転車競技に携わっていた選手は大崩れしない印象と説明すると買いやすいかもしれないですね。」
-市田さんと戦っていた選手たちの息子さんも多いですが、市田さんから見ても似ていましたか?
「皆、そっくりですね(笑)。太田(真一)のとこなんて龍希君の肘の開き方とか本当にそっくり(笑)。腰は太田の方がしっかり座っていたかなとは思いますけど、そこは時代ですね。肘の開きや、顔を少しあげたところはそっくりですね。」
-118期はいかがですか?
「やはり気になるのは永塚祐子さんですね。高校時代から知っている子は数名いますけど、レース運びでも脚力でも永塚さんが先をいっていますね。でも、永塚さんも先輩たちと一緒に走った時にこのまま連勝街道に乗れるかというと(わからない)、もがける距離と絶対的なスピード的にいうと57点はないでしょうね。乗り方的に後伸びはしていくので、仕掛けてしまえば、大崩れしないでしょうけど、仕掛けられない時はどうかなと思いますね。
 小倉を優勝した尾方真生さんの方が力で勝負という感じです。乗り方は小林優香さんに似ていますね。走りを見ていてもしっかり自分を持っていそうですね。小倉競輪場というのも助けられたのもあるでしょうけど、充分にすぐに通用していくレースぶりでしたね。今後も見ていきたいですね。」
-総評としては?
「ルーキーシリーズは評価していますね。見方によっては選手はシステム通り走っているみたいな感じですけど、7車立てで競輪道とかラインはなく勝ったもの勝ちみたいな競輪ですけど、これはこれで面白くなるのかなと思います。9車で育ってきた身としては、9車立てがなくなっていくのは寂しいですけどね。解説者としてもライン、競輪道があるから選手を説明できる、面白い競輪を作れるというのはあるので、単騎戦の前に前への走りは「この人は10秒で走ります」「ダッシュタイプですね」で終わってしまいますけど(笑)。でも、面白いとは思います。」


町田太我

長田龍拳

山口拳矢

永塚祐子

尾方真生
市田 佳寿浩 (いちだ かずひろ)
福井 76期 2018年12月13日に引退

【通算成績】
2010年寬仁親王牌優勝・2010年西王座戦優勝・2006年サマーナイトフェスティバル優勝
GIII優勝14回 通算優勝数65回
1着451回 2着278回 3着184回
勝率26.8% 2連対率43.4% 3連対率54.3%