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いきなりだが荒井崇博(佐賀82期)が強すぎる。
近況、人気を集めた20代若手先行選手を43歳の荒井オジがひん捲くる姿が多数見られるのだ。
20代の頃は地脚を活かした戦法で対戦相手を消耗戦に引きずり込み、『泥試合製造機』と呼ばれ同型自力選手から恐れられていたのだが30代はなりを潜めた。
捲くりは通用せず、彼が存在感を示したのは喫煙室だけだった。
GI開催中は喫煙室が常に彼の定位置で若手を捕まえてはレースや世の中に対しての愚痴や不満を垂れ流していた。
荒井を探して佐賀の後輩に居場所を聞いたら間違いなく
『喫煙室っす』の一言。
『喫煙室の住人』、『タバコ神』とも呼ばれていた。
その荒井崇博が長い冬眠期間を経て再ブレイクである。
とにかく荒井は豪快だ。
20代の頃筆者がGIタイトルを獲り、グランプリを優勝した時は合志正臣さんと心から祝ってくれた。
荒井とは同級生、合志さんは1歳年上と同世代でプライベートでもよく遊んだ。
その荒井が
『シンペーがやってるトレーニングを教えてくれ』と言ってきたことがある。
もちろん即答でOKし日程を決めジム施設を予約、前日には都内ホテルに集まり当日を迎えた。
迎えた当日、3人で朝ごはんを食べていたらふと荒井と合志さんが言った。
ジムの予約が14時からだった事もあり割と時間はあった。
『トレーニング時間まで本場東京でスロットを打たせてくれ』と。
その眼差しは本気だったので筆者はそれを許し2人と別れた。
トレーニング開始を控えた1時間前、荒井から1本の連絡があった。
『とりあえず店舗に来てくれ』
と一言だ。
急いで店舗に向かうと荒井と合志さんは軽快にレバーを叩いていた。
『さぁトレーニング行くぞ』
と筆者が言うと2人は口を揃えて言った。
『あとちょっとで出そうな予感がするからもう少し打たせてくれ!』
と……
筆者は絶句した。
が、その表情は真剣だ。
(やべー奴じゃん!)と思った事を今でも覚えている。
ジムに無理言ってトレーニング時間を17時からに変更し再び16時に迎えに行った。
すると今度は血走った目でスロットレバーを叩き続ける荒井と合志さんが居た。
『トレーニング行くぞ!』と声を掛けると
『見てわからんか!?こっちは真剣勝負しとるんじゃ!』
と逆ギレで対抗されたのだ。
結果…
荒井と合志さんは朝10時から夜11時まで13時間スロットを打ち続けたのだ。
トレーニングする為にわざわざ東京に集まり宿泊したのにだ!
今思うとこれくらいぶっ飛んでないと43歳で再ブレイクなど出来るはずないと再確認した冬の終わり。
口うるさい"強い"オッサンで居てほしいものだ。