デュッセルドルフ通信 2010年5月19日

ロンドン五輪選手選考、発表はあったが…

 
 皆さんいかがお過ごしでしょうか?残念ながらゴールデン・ウィークも終わってしまい、舞い戻ってきたハードな日々と戦う毎日でしょうか?そんな5月も中旬だというのにこちらは最近、連日最高気温がひとケタ台と10度を下回っています。夜9時を過ぎても真っ暗にはならずに確実に日は延びているんですが、気温が全然あがらずになんだか気分も盛り上がらずに・・・という感じなんです。このまま温かくならないうちに夏が終わってしまい・・・なんてことにならなければ良いんですが・・・アイスランドの火山噴火の影響で足止めを喰らって結局都合2週間もUAEはアラブ首長国連邦にいることとなった私でしたが、こうなるとあのUAEのくそ暑さも少しだけ懐かしい、といったところでしょうか?まあ、実際居たら居たで外に出たくないくらいあっついんですけど・・・勝手なもんです・・・
 さて、こちらドイツのデュッセルドルフはドイツに16ある州のうち、ノルトライン・ヴェストファーレン州というところに属しているのですが、このノルトライン・ヴェストファーレン州で先週末に州議会議員の選挙がありました。なんだかこれが国中の注目を浴びていたようで・・・というのもこの州はドイツ16の州の中でも一番人口が多いらしく、またこの結果によって参議院議員も選出されるということらしく、今後の政局を占う意味でも非常に重要なんだとか・・・結果、現行の連立政権が過半数を獲得出来ない、という結果に・・・特にEU諸国には例のギリシャの問題が重くのしかかっておりますが、選挙直前にこれの支援に反対の姿勢を見せていたドイツ政府が急遽受け入れることとなり、メルケル首相の政党キリスト教民主同盟が失望感からか支持を減らし・・・と、こんなこともひとつの結果の要因のようです。日本も、期待感が大きかった内閣支持率がどんどん低下・・・という感じで次の総選挙がどうなるか・・・という状況のようですが、政治的に安定していないというのはこの経済不況下、どこの国も一緒なんでしょうか・・・
オランダ・アペルドールンの競技場
オランダ・アペルドールンの競技場

やはりU23ヨーロッパ選手権は開かれないのか?
(アペルドールン内部)
やはりU23ヨーロッパ選手権は
開かれないのか?
(アペルドールン内部)

こちらはポーランド・プルシュクフの競技場外観
こちらはポーランド・プルシュクフの競技場外観
  ところで温かくならないヨーロッパではオランダ・アムステルダムをスタート地にジロ・デ・イタリアが始まって、いよいよロード・シーズン本番まっただ中、という感じになってきました。一方、トラックはこの時期オフ・シーズンなので、全くレースが無い訳ではありませんが、国内大会が中心で国際レースはちょこちょこ・・・というのが実態です。そんなところ、前回お伝えしましたオリンピックの出場権のシステムについて、ようやく・・・UCIからの発表がありました。細かいところまで発表されたわけではありませんが、内容については前回にお伝えしたとおり・・・となっています。まあ、なんとかかんとか、とりあえず発表という段階には至ったのでほっと一安心ではありますが、なんだかんだ、オリンピック選考方法を含めて色々と混乱している状況があるようです・・・
 私たち日本人にはなじみが薄いですが、オリンピックの他に、同様に4年に1回開かれる大きなスポーツ大会として「コモンウェルス・ゲームズ」というものがあります。コモンウェルスをウィキペディアなどで調べてみると、「イギリスとその植民地であった独立の主権国家から成る、緩やかな連合(集合体・組織体)。英連邦(えいれんぽう)ともいう。」とありますが、イギリス系の国々で争われる非常に規模の大きい、そして大事なスポーツ・イベントで、参加国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、更にはマン島などに分かれたイギリス勢にオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ジャマイカ、南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、インド、マレーシア、シンガポール・・・といった国々、かなりの数になります。前回のオーストラリア・メルボルンに引き続いて、これが今年2010年にインドのニューデリーで開催されることになっています。なんだかイギリス系の国々、そしてインドで開かれるなんて聞いてしまうと、クリケットなんかでガンガン盛り上がりまくりなのか?なんて私は思ってしまうのですが、どうやらクリケットは種目にはなっていないようです。かわりにこれまた我々にあまり馴染みのないネット・ボール、ローン・ボウルズなどといった競技が種目に並んでいます。
 で、なんでこのコモンウェルス・ゲームズなのか、という話なのですが、先ほど決まったとお知らせしたロンドン・オリンピックの出場枠争いなのですが、今シーズン2010-2011と来シーズン2011-2012のワールド・カップ全戦、2011と2012年の世界選手権に2012年の世界選手権からさかのぼった直近2回の大陸選手権、これらの大会の成績によるランキングに基づいて決定されるということになっています。で、この大陸選手権、他のエリアはともかく、ヨーロッパ選手権は従来U23というカテゴリーで争われてきています。ヨーロッパ自転車競技連合、UECの総会の中でオリンピックの枠を争うための、オリンピック種目である男女それぞれ5種目に関するエリートによる新たなヨーロッパ選手権の創設が話し合われたようなのですが、UCIのパット・マックェイド会長にヨーロッパ選手権を2つというのは認められないと却下されてしまい、その後その行方がこれまたはっきりしない感じに・・・  
  そもそもヨーロッパ選手権はU23による大会ということで次回の2011年の世界選手権が開催されるオランダのアペルドールンで7月28日から8月1日までの5日間の日程で開催される予定で、これはUCIのカレンダーにも一時期掲載されていたのですが、いつのまにかこれがカレンダーから姿を消してしまいました。そしてUECのカレンダーの中にも変化は現れ、こちらも結果的には同様にU23のヨーロッパ選手権は消えて無くなってしまったのですが、一時は並行的に新たにトラックのヨーロッパ選手権が2009年の世界選手権が行われたポーランドのプルクシュフで開催されるということでカレンダーに追加されたのです。
スプリント世界選4連覇で
北京五輪金メダリストのペンドルトン
スプリント世界選4連覇で
北京五輪金メダリストのペンドルトン


オムニアムはちょっと衝撃的だったクランシー
オムニアムはちょっと衝撃的だったクランシー
 で、これが雑誌にも載っていたのですが、日程的にインドでのコモンウェルス・ゲームとバッティングしているのです。この新たなヨーロッパ選手権の日程が10月の8日から10日の日程、そしてコモンウェルス・ゲームでのトラック競技の日程が10月の5日から8日なのです。しかもこの前にはロードの世界選手権がオーストラリアのメルボルンで行われる」ことになっており、この日程が9月の29日から10月3日。コモンウェルス・ゲームのロード種目の日程が10月10日のロード・レースと13日のタイム・トライアル。イギリス・チームの装備担当者は記事の中でメルボルンの世界選手権から、早い段階で行われるトラック競技種目に間に合うようにインドに装備、用具を送り込むのは難しいと話しています。こんな、もともとでさえロードの世界選手権とタイトな日程で設定されていたコモンウェルス・ゲームズにオリンピック枠のかかるヨーロッパ選手権の追加、これではただではすまない、というのがイギリス・チームなんでしょう。
  先ほどの参加国を見てもらえればわかるとおり、スポーツの強豪国の名前が見て取れるんですが、それをトラック競技に絞り込むとイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、マレーシアといったところ・・・そう、他のヨーロッパの国々に、そして有力国は全くこのコモンウェルス・ゲームズに関係がないんですね。ということで頭を悩ませなければならないのはイギリス・チームのみ・・・  
  前回お知らせしたとおりオリンピックの出場枠には上位に入らなければならないのと同時に大陸内での枠があります。ですので同じ大陸内で争われるヨーロッパ選手権はライバルであるヨーロッパの国々との争いの中では重要な位置づけになってきます。まして、2年間で争われる枠取りはまだその行方が当然見えてきていません。何が起こるか分からないこの先、しっかりとポイントを増やしておかないと、と考えるのが当然でしょう・・・しかも個人にポイントが付いていく、というシステムです。枠取りをした選手が出場選手というわけではなく、オリンピックの出場選手はその国々の裁量によって決められるとなっているのですが、とりわけ個人種目はポイント上位で国に貢献した選手を選ばざるを得ない雰囲気になるでしょうから、やはりライダーとしてもきちんとポイントを上積みしていきたい、という気持ちにやっぱりなるでしょう。イギリス・チームのパフォーマンス・マネージャーのシェーン・サットンはやはりこれらのレース日程の競合によってイギリスだけが被害者になっている現状を憂いながら「コモンウェルス・ゲームズも重要だけれどやっぱり優先順位をつける必要があるから・・・やっぱり最重要なのはオリンピックのメダルだから・・・」と言っています  
  確かにこのオリンピックの選考方法がしっかりとアナウンスされなかったことによって、4月に入ってすぐにアジア選手権のあった日本を含めたアジア諸国は、いったいどうなるんだ?とやきもきした状態だったでしょう。同様に他の国の選手、特にヨーロッパでは抜けてこのイギリスのライダーたちが「どうして良いかはっきりせずにフラストレーションがたまっている」と記事にも書かれています。
  そして、正直、大きな大会であるものの、オリンピック選考には正直関係のないコモンウェルス・ゲームズ。これがいろんな大会との日程の問題とはまた違う意味で問題となっているようです。というのが、スポーツ・イベントや外国人がインドでのテロリストによる攻撃の標的にされているといった問題・・・これにより大会参加国中で最強とも言えるオーストラリア・チームが真剣に大会への参加を取りやめることを考えているというのです。確かに調べてみると色々とインフラ整備などの問題が伝えられるこのニューデリー大会。自転車競技場も新たに都市部にインドアの木製トラックを備えるということで建設されているようなのですが、こちらも見られるのは建設の遅れ・・・建設中のヴェロドロームの内部の写真が掲載されているので建設が進んではいるんでしょうけれど・・・それに加えて爆発が起きたりといった治安面での不安・・・状況によっては有力国の撤退で一気に開催の不安が持ち上がってしまう可能性も・・・イギリスのライダーも多くがまだ決めかねている状況のようですが、3月のコペンハーゲンの世界選手権でスプリント4連覇を達成したヴィクトリア・ペンドルトンも「もしもコモンウェルス・ゲームズに出ないとなると残念だけど、選ばねばならないとすると、やっぱり2012年のロンドンで戦うためにはヨーロッパ選手権に出ないと・・・」と言っているようです。またオムニウムに圧倒的な強さで優勝したエド・クランシーは「まだ決めていないけど・・・・コモンウェルスはメルボルンの大会で全然ダメだったから、今度はちゃんとした結果を出したいと思ってる。でも危ないんでしょ・・・今ロードを乗って楽しんでるけど、必ずしもコモンウェルスのためにツアー・オブ・ブリテンをやめたい訳ではないんだよね・・・」と言っているようです。マン島のライダーのようにマン島のために走るまたとない機会なのでコモンウェルスで走りたいと思っている選手もいるようですが・・・我々には馴染みの薄い大会ではありますが、今後の成り行き、ちょっと注意して見ていきたいと思います。併せてヨーロッパ選手権の成り行き、そしてしっかりとはハッキリしていない今後のアジア選手権のスケジュール、UCIカレンダーにのらない他の大陸の大陸選手権などなど・・・色々と注意して見ていかなくては・・・発表されたものの、まだまだどうなるの?という感じいっぱいの状態です・・・それではまた!

 
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