2010年世界トラック選手権自転車競技大会3日目は現地時間の26日、デンマーク・コペンハーゲン近郊のバレラップスーパーアリーナで男女4種目が行われた。男子1キロメートルタイムトライアルでは、テーン・ムルダー(オランダ)が1分00秒341をたたき出して優勝。日本からは新田祐大(24=福島)が出場し、1分03秒762のタイムで21位に終わった。男子団体追抜ではオーストラリア、女子スクラッチはパスカル・ジュラン(フランス)が優勝を飾った。なお女子スプリントはベスト4までが出そろった。 |
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【男子1キロメートルタイムトライアル】 |
丸1日を休養にあてた新田は16時過ぎからウォーミングアップを開始。「体調は問題ないんで頑張れそうです」と笑顔をのぞかせた。遠目に見守る班目秀雄総監督は「タイムは急に上がるわけでもないですからね。今回は〝とにかく自己ベストを出すこと〟それに尽きる。これまでは1分3秒台だったけど、それを今年中に2秒台へ。そして来年は1秒台へ、その後はさらに…といきたいんです」とプランを明かした。新田の過去最高タイムは、昨年12月のワールドカップ第3戦カリ大会(コロンビア)で出した1分03秒529。それを上回るのは難しい課題ではなかった。
競技は18時45分に始まり、18番目の新田は静かに発走を待った。世界戦で1キロメートルTTを走るのは2度目で、昨年のプルシュクフ大会(ポーランド)のときのような緊張感はない。先に出走したテーン・ムルダー(オランダ)は1分00秒341とずば抜けたタイムをたたき出したが、その他にも3人が1分01秒台を出していた。そこで新田はいつもと違うペース配分を思い立った。
「みんなタイムが出ていたんで、自分も出せるかなと。2秒台を目指しました。普段は残り1周半を過ぎたところで行ってスピードが落ちない程度に走るんですけど、今回は2周目からどれだけ上げられるかと。突っ込む気持ちでいきました」
意を決して出走。ところが早めのスパートに力尽き、残り1周を迎えた時点で息が上がってしまった。視界が薄れ、意識朦朧。かつてない苦しさを味わった。当然ながら後半は急激に失速し、平凡なタイムの1分03秒762に終わった。それでも落胆の色はない。ラスト1周16秒141(24人中23番目)で、総タイムが自己ベストに及ぶ1分3秒台なら悪くはない。中間の速度を上げる試みは失敗ではなかった。
「もうパワーが残っていない状態で目の前が真っ白になった。でも2秒台がダメなら4秒か5秒台になると思ってましたから。それが3秒台でしょう。まだまだいけそうですね。来年度からはオリンピック(2012年ロンドン)に関わる大会がたくさんあるんで、そこで何かを試してる場合じゃない。どうしてもここでやっておきたかった。いい経験になりました」
得たものは大きな自信。シーズン最後を効果的に走った新田が輝いている。
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男子1kmTT決勝 新田祐大選手 |
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11番目に出走したテーン・ムルダーは1分00秒341をたたき出し、暫定1位でラスト走者シュテファン・ニムケ(ドイツ)の結果を待った。昨年の優勝者が1分1秒086に終わるや、声を張り上げて喜びを爆発させる。「モチベーションを高めてレースに臨めたが、相手が強いので優勝できるとは思わなかった」と振り返り、「幸せだ」「信じられない」を何度も繰り返していた。
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男子1kmTT決勝 テーン・ムルダー選手 |
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男子1kmTT決勝ゴール後の テーン・ムルダー選手 |
男子1kmTT 表彰式 |
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【女子スクラッチ】 |
落車や転倒によるクラッシュが続いた激戦を22歳のパスカル・ジュランが制した。 40周、10000メートルで争うレースは序盤からタチアナ・シャラコバ(ベラルーシ)らが何度も抜け出そうとスパートをかけたが、いずれも不発に終わった。ジュランは前回女王のユマリ・ゴンサレスバルディビエソ(キューバ)らとともに力を温存し、最後に爆発させた。最後のスプリント勝負でゴンサレスバルディビエソを抑えて、世界王者の証である5色のジャージーを身にまとったジュランは「国際レースで初めての金メダル。本当にうれしい」とコーチやスタッフと抱き合って涙を流した。
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女子スクラッチ パスカル・ジュラン選手 |
女子スクラッチで金メダルを手にした パスカル・ジュラン選手 |
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【男子団体追抜】 |
この種目のトップ4は08年世界選手権、北京五輪、09年世界選手権と3大会続けて、英国、デンマーク、ニュージーランド、オーストラリアの4チームが占めてきた。今大会もその流れは変わらず、常連が予選を勝ち抜いた。決勝は前回2位のオーストラリアが、北京五輪を世界記録で制した英国を破って金メダルをつかんだ。
オーストラリアは予選とメンバーを入れ替え、決勝に今大会のポイントレースで2連覇を果たした22歳のキャメロン・マイアーを起用。この策が見事に結実した。マイアーが力強い走りでけん引し、序盤に英国をリード。後半はじわじわと差を詰められたが、逃げ切った。今大会2個目の金メダルを手にしたマイアーは「とてもハッピー」と喜びをかみ締めた。リーダー格のジャック・ボブリッジは「キャメロンはチームのエンジンになってくれた」と称賛した。
3位決定戦は、地元の観客から大声援を受けた前回優勝のデンマークを前回3位のニュージーランドが破った。
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男子団体追い抜き オーストラリアチーム |
男子団体追い抜きで金メダルを手にした オーストラリアチーム |
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