2013-14ワールド・カップ第2戦アグアスカリエンテス大会

配信日:12月10日
12月7日(土)開催最終日 天候:晴れ
 種目が詰め込まれてハード・スケジュールの今大会もあっという間に3日目最終日。朝晩はぐっと冷え込むものの、連日快晴で天気には恵まれている。最終日はメインに男子のケイリン、女子のスプリントとなる。
 まずは男子のケイリン、この種目には昨シーズンのこの大会で念願のケイリンでのメダルを獲得した渡邉一成、ここまで出番を待ち続けた脇本雄太の2人が出場する。28人のエントリーとなった今開催、1回戦は各ヒート7人の4ヒート制、2着までが2回戦へ進み、残りの4枠が敗者復活戦で争われる。

 第1ヒートには渡邉が出場。残り2周となるホーム・ストレッチ(HS)でクチンスキー(ポーランド)が叩いて先行。渡邉は4番手から残り1周半前のバック・ストレッチ(BS)から仕掛けるも、前の動きもあり、ブフリ(オランダ)に張られる形に。そのブフリが残り1周で前に並び、渡邉も再度追走する。しかしごちゃついた展開で外を回らされ、苦しい形になったところ、内を突いてブルーバンドを走っていたヴェルデューゴが結果的に外のクチンスキーを押し上げることに。最終2センターから4コーナー、後続の選手がこれに接触、次々と落車する中、渡邉の前はパッと開け、接触事故より前に位置していたブフリに次いでなんと渡邉は2着でゴール到達。ヴェルデューゴ以外の4名は落車、大外を周っていたダルメイダ(フランス)は突き飛ばされて外のフェンスを越えて客席に投げ出されてしまう事故となってしまった。しばらくの中断の後、十分とは言えない整備の後、第2ヒートが開始、こちらでも残り2周を過ぎたところ、2コーナーでボタッソ(アルゼンチン)のタイヤがパンクし落車、そして最終2センター過ぎ、またも先ほどと同じあたりで内アーチバルド(ニュージーランド)、外ヌグが絡んで2人が落車、2レース続いての大事故となってしまい、また救急車がトラック内に入ってくるといった、異様な雰囲気となってしまった。またしばらくの中断後の第3ヒートに脇本が登場。ペーサー退避時に7番手となり後手に回った脇本、何かしようとするも、結局は最後方で追走するだけの残念な内容。最後に1人交わしただけの6位でこちらは敗者復活戦へ進むことになった。

 その敗者復活戦は2ヒート制で各ヒート7名で上位2名が準決勝へ進出。脇本は第2ヒートに出場したが、このレース、ペーサー退避時に、内カネロン(ベネズエラ)、外チェーチ(イタリア)がペーサーの後輪に差込み、2人が失格となってしまった。その後、5人で再発走となり、脇本は今度はペーサーの後位で周回を重ねる。ペーサー退避後、他も前を狙ってくるが脇本も譲らず、突っ張っての先行となる。しかし、後方から一気に来たプタクニク(チェコ)に残り1周半で先頭を譲り、その後方を追走するも、その後に3番手からバルツァー(ドイツ・ERD)、そして4番手からフィリップ(トリニダード・トバゴ)にも外からいかれ、脇本は巻き返せない。大外を捲ったフィリップが1着、先に前に出たバルツァーがフィリップに交わされ2着。脇本はプタクニクを追走したまま4着で今回の競走を終えた。
運も味方した渡邉のケイリン1回戦 常に決勝に出て欲しい
運も味方した渡邉のケイリン1回戦
常に決勝に出て欲しい
脇本のケイリン 次に繋がる何かは見えたか
脇本のケイリン
次に繋がる何かは見えたか

 2回戦、渡邉は第2ヒートに出場。上位3名に入り決勝戦を目指す。道中は2番手で周回を重ねた渡邉、ペーサー退避時に最後方からヴァハター(ドイツ)が上がり先行、渡邉は4番手となる。そろそろ仕掛けどころという残り2周を過ぎた1コーナー過ぎ、5番手からヴォリカキス(ギリシャ)が動き、フィリップがこれに続く。残り1周でヴォリカキスが先頭に立ち、渡邉は最後方となってしまう。渡邉は追いつき、外から交わそうとするも指すことが出来ず6着。押し切ったヴォリカキスが1着、交わそうとするフィリップの内を突いたヴァハターが2着、外を回り直線でフィリップを差し、内からの追撃をしのいだパーキンス(オーストラリア)が3着で決勝戦へ。結局7-12位決定戦でも精彩を欠いてしまった渡邉はここでも6着で12位でレースを終えた。

コメント(渡邉 準決勝終了後):「仕掛けよう、と思ったところでやっぱりギリシアが来てましたね。結局そこで立ち遅れる形になっちゃって・・・ちょっとレースが見えていませんでしたね。感覚では分かっていたんですけど、しっかりと仕掛けようと思ったタイミングが残りどれくらいなのか、というのに確信が持ててませんでした。気を取り直して少しでも上のポイントを取れるように頑張ります。」

 決勝戦は道中2番手からペーサー退避時に飛び出し、外から来るブフリの番手に入ったクランプトン(イギリス)が、更に外から来たヴァハターの後ろに上手く切り替え、最終BSで外に車を出し、粘るヴァハターを直線で捕らえて優勝した。2着にヴァハター、内を突いて3着に来たアワン(マレーシア・YSD)がブルーバンド走行で降格となり、パーキンスが3着となった。
伸び悩んでいた日本でも活躍していたクランプトンが見事初WC
伸び悩んでいた日本でも活躍していたクランプトンが見事初WC

 男子の1kmタイム・トライアルも女子と同様、ケイリンの勝ち上がりの間に組み込まれ、ケイリンに参加している選手のエントリーもちらほら見られた。日本は唯一3日間全て競走に出ることとなった中川誠一郎が出場。21人が出場の中、中川は2組目、ドイツのレヴィーとの対戦。相手のレヴィーが驚異的なスピードで走る中、中川はこれに離されてしまう状況。世界新を予感させるレヴィーの走りに中川も喰らいつく中、レヴィーのタイムは57秒949と2001年、高地ボリビアのラパスで記録されたトゥルナン(フランス)による58秒875の記録を12年ぶりに抜き去ることとなった。遅れをとった中川も1分0秒017で、こちらは伏見俊昭が2002年に出した日本記録を1分2秒158をこちらは11年ぶりに更新した。圧巻は7組目に登場したペルビス(フランス)。ハロンでも世界新を出した絶好調のペルビスはここでもレヴィーを1秒5以上上回る圧巻の56秒303で世界新をまたまた叩き出して優勝。中川は11位だった。

コメント(中川):「スタート、ちょっと失敗しちゃったんですよね。なので、あー、タイム出ないかな、って思ったんですけど、掲示板見てみたら0秒台で。相手が相手だったんで霞んじゃってますけどね。後半は自分でもまずまずの感じで、相手ともそんなに離されてないなって思ってたんで、こうなるとそうですね、1分切れていれば、という欲を今更ながらかいちゃいますよね。なかなか高地じゃないとこのタイムは出ないと思うので、チャンスを生かせて良かったです。」
中川の1kmも日本新
中川の1kmも日本新

驚異的なタイムを叩き出したペルビスは来年も日本で
驚異的なタイムを叩き出した
ペルビスは来年も日本で

 女子のメインはスプリント。エントリーは26名で予選通過は16名、10名が予選落ちとなるが、本選に進んで欲しいところ。日本は石井寛子、前田佳代乃の2人が出場、石井が6番手、前田が13番手での出走。石井はタイムが全く伸びずに11秒469、前田も1月、ここアグアスカリエンテスで出した11秒014の日本新を切れずに11秒099とそれぞれ26人中25位、20位で予選落ちとなった。勿論ここでも1月のここで作られた10秒573の世界新記録の更新が期待され、18番目スタートの500mTTで世界新のメアーズ(オーストラリア)が10秒487でこれを打ち破るも、最後に出走のフォーゲル(ドイツ)が10秒384と0秒1の差をつけて世界新記録を打ち立てた。結局決勝もこの2人での争いとなったが、今回充実著しいフォーゲルがメアーズを寄せ付けずに2-0で勝利。チーム・スプリント、ケイリンに続く、今大会3個目の金メダルを獲得した。
石井のスプリント予選
石井のスプリント予選
日本記録は更新して欲しかった前田
日本記録は更新して欲しかった前田

 3種目を終えて17位と低迷してしまっている塚越さくらだが、この先に向けてもレース一つ一つで何かを掴んでいきたいところ。成績下位なため、1組目でスタートとなった4種目目の個人追抜(3kmTT)は3分44秒367で14位の成績。5種目目のスクラッチは序盤の逃げはすぐに吸収され、その後は大きな逃げもなく、ラップも決まらずに最後のスプリント勝負、塚越には分が悪く16位でのゴール。最後の500mタイム・トライアルは得意とする短距離系、35秒886で優勝となるハマー(アメリカ)より早い8位という成績。最終成績は85ポイント、順位をひとつ上げて16位でのフィニッシュになった。優勝は19ポイントでオリンピック金メダリスト、トロット(イギリス)の26ポイントに7ポイント差をつけたハマーとなった。やはりゲーム系のレースで力の差が目立ってしまう内容ではあったが、経験を重ねて少しずつでも世界との差を埋めていって欲しい。

コメント(塚越):「今回は高地なのでやっぱりタイムが出るので、そういう意味ではタイム種目は全部自己ベストだったので良かったです。でも高地ですからね。正直他の選手とはレベルが違いすぎるので、嫌になってやめたい、と思うこともあるんですが、でもやっぱりタイムが出ればやってて良かったって思えますし。でも今までは海外に出てもアジアだったので、世界のレベルを思い知らされています。色々とコーチに言ってもらっていますし、折角こんな大会に出させてもらっているので、駄目なところは少しでも直せるようにして先々につなげていきたいと思います。」

コメント(飯島コーチ-中長距離コーチ):「選手もまだまだこれからだし、僕自身も指導者としては始まったばかりなので、申し訳ないですけど、今は経験を積んで、というところです。ですからこういった世界が集まる中では、あ、あそこいいことやってるな、というところはどんどん吸収してまねしていきたいと考えています。なので今年うんぬん、ではなくて、まずはリオまでに何が出来るか、そして本音は東京でのオリンピックできっちりと結果を出せるようにしっかりとやっていきたいと考えています。とはいえ時間なんてそんなにあるわけではないので、体力的なものはともかく、思考的なもの、あそこはこうした方が良いよね、という部分はすぐに選手が理解して改善できるようにコーチングしています。選手時代に経験したものを感覚的に伝えるだけでなく、今はデータも昔と違ってたくさんありますので、それに基づいた理論的なアドバイスも出来るように周りの人の力を借りながらやって強化していければと思います。」
実力差は歴然も一歩一歩進んで欲しい塚越
実力差は歴然も一歩一歩進んで欲しい塚越

 これで世界新記録が7つ、日本新記録が4つ出た13-14シーズンのワールド・カップ第2戦アグアスカリエンテス大会も終了。ワールド・カップも残り1戦を残すだけ。年明けにまたここメキシコ、今度はグアダラハラで今シーズン最終戦が行なわれる。きっちりと戦い、少しでも多くの世界選手権出場枠を勝ち取りたいところだ。

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