村上義弘選手の500勝達成ロングインタビューをお伝えします |
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配信日:2013年10月30日 |
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平成25年10月29日(火)に通算500勝を達成した村上義弘選手に、表彰式後インタビューを行いました。 「競輪はいつでも真剣勝負」。 スタイルにこだわる村上選手。彼の熱い"魂"を知って競輪をもっと楽しんで欲しいと思います。
―まずは、500勝を達成された感想はいかがですか? 「勝利数を意識したことがないので、現時点で素晴らしいものなのか、まだ分からないというのが正直なところです。ですが自分を買ってくださっているファンの方々に少しでも期待に応えられたかと思います。 でも勝率3割で、残りの7割は期待に応えられなかったということなので、これからも一戦一戦、頑張るしかないなと思います」 ―来年で、競輪選手になって20年になりますが? 「やはり年数に関しても意識はしていません。GI優勝、グランプリ優勝で日本一を目標にはしていましたけど、あくまでも目の前の一走一走に全力で取り組んできただけですから。その結果が500勝で選手生活20年目前に達成できたのは良かったです。」 ―振り返ってみて、デビュー当時にどのような目標を持っていましたか? 「とにかく日本一になることです。GIを優勝して、グランプリの舞台で走って、日本一の競輪選手になるというのが、ずっと自転車を乗り始めた頃から夢でした。 デビュー当時は日本一を真剣に狙いにいく先輩方や、周囲の雰囲気も常にあったので、その環境で育った僕にはそれが普通やと思っていました」 ―現状で日本一になりましたが、心境の変化はありましたか? 「日本一っていうのは何のことなのか、自問自答しています。昨年はグランプリで優勝して年間の獲得賞金が1位になったけど、それが果たして日本一なのか。日本選手権を優勝することが日本一なのか。結局日本一っていうのは掴めそうで、掴めないものだと思っています。 今、僕が考える日本一というのはファンの皆さん誰もが、"この人が日本一"って名前を挙げる選手だと思っています。」 ―「村上義弘」を支えるものは何ですか? 「ファンの方の声援ですね。20代でGIを優勝して、その後に怪我をしてずっと成績が落ち込んだ時でも、声援が本当に支えになりました。 今の自分が2回目のピークと言われるようになり、その時から応援し続けてくださるファンに対して、どういう形で恩返しをしていくのか。それは結果を求めるばかりでなくて、自分がファンにはこう評価されているだろう、ファンから見た理想の"村上義弘"っていうのを、自分も追いかけていきたいですね。それを追いかけていくことで結果も付いてくるだろうと思っています。結果が全てではないですけど、勝負の世界はやはり結果が全てですから、そこは難しい課題ですね」 ―競輪は1着を取らなければならないけど、競走の内容も魅せなければならないですよね? 「もちろん全レース1着を狙って走っています。悔いが残らないよう一走一走自分らしく走っていますので、着外になった時も僕の走りを見ていただけたらと考えています。 僕が子供の時に見た、中野浩一さん、滝澤正光さん、井上茂徳さんらは、魅せるレースをしていましたよね。勝っても負けてもインパクトに残るレースをされていた。僕も当然1着を目指して走っていますが、"これぞ村上義弘のレース"とみなさんの記憶に残る競走をしたいです。」 ―今、個性のある選手が少なくなっていると感じますが? 「プロとしての理想像っていうのは各選手違っていいと思います。それも含めてファンは期待するわけですから。何をしても1着を狙いにいく選手もプロの形ですし、スタイルにこだわることもプロの形ですし。 僕が考える名選手というのは、選手自身が自分の背負っているものを魅せるレースをできる選手かなと思っています」 ―「"魂"の走り・村上義弘」と言われていますが? 「今までの泥臭い勝ち方が"魂の走り"と言われるようになったのだと思います。当然全選手皆が頑張っていますし、自分だけが頑張っているわけではありません。ただ、"魂"っていう言葉は、何か感じてもらえる部分があったんだと思うんです。それなら、僕もそれを追いかけていって、脚力も、レースも、意気込みを、全てファンが期待するものに近づいていけるように頑張るだけやと思います」 ―村上選手は負けても納得させられるところがありますね。 「自分ではあまり分からないですね。だって負けは負けですから。車券を買ってくださっている方に迷惑をかけているのは間違いありません。でも常に1着を目指して全力でやっているので、そこをファンの方は見て下さっているのかもしれません」 ―村上さんはプロの競輪選手という以上に、プロの自転車競技者ですね。魅せなきゃいけないというと、ロードレースと同じだと感じますが? 「そういう意味でいうと競輪も同じですね。自転車競技も子供の時から憧れて見ていましたし、プロは憧れられる存在でないとダメだと思います。僕らを見て競輪選手になりたいと言ってくれるよう、夢のある仕事をしたいですね。 僕自身がそうであったように、小さいころ受けた感銘があって今ここにいるわけですから。」 ―500勝の中で、思い出に残るレースはありますか? 「平安賞(向日町記念)を初優勝した時です。その時、松本整さんと一緒に走りました。ゴール直前に身体をぶつけあいながら走ったレースで、今の自分の原点になっています」 ―何故大きな転機になったレースなのでしょうか? 「あのレースで先輩にいろいろ教えていただきました。人は厳しいこと、辛いことから楽な方に行きたくなりますから。あのレースで競輪とは、勝負とは、ファンの期待に応えるとは、といったプロに必要な姿勢を学びました。 お互いに選手ばっかりを見ていてはあかんし、ファンが見て、ファンがお金を賭けて納得してもらわないといけない、先輩の強い意志とか気迫というものを肌で感じた時に、自分もそうあっていかなければいけないって、そのレースが終わった時から、ずっとそれが頭の中に残っていたことを覚えています。ダービーにしても、グランプリにしても勝って嬉しかったレースはたくさんありますけど、そこにつながったのは平安賞初優勝ですね」 ―そのレースがなかったら、今の村上選手はないと思いますか? 「なかったと思いますね」 ―それをこれからは後輩に教えていくのですか? 「そうですね。後輩に伝えていきます。自分自身のプロフェッショナルを表現していくことが、人の人生も変えますから後輩から嫌がられても、煙たがられてもやっていきますよ。そういういい影響を与えられるような存在でいたいです。」 ―さて、競輪場にいる村上選手と、オフの時、やはりオン、オフはありますか? 「それは差がありすぎて見せられないですよ(笑)」 ―競輪場の村上選手を見ていると、相当ピリピリとした空気を漂わせていますが? 「それは、500勝していますけど、楽な1勝なんかないですから。競輪場に入って、1着を目指すにはどれだけ楽にならないかが大事だと思いますし、やっぱり、それなりの覚悟も必要で、大怪我をすることもあれば、命を落とす選手もいますから、自分がもしそうなっても納得できるようにしておかなければいけないと思うんですよ。本当に自分が全力を尽くして、死力を尽くして、やったことなら、例えそれがアクシデントにつながったりしても、負けることになっても、全力を尽くすことで自分を納得できますから。それは見ている人も同じで、自分が納得できないのに、見ている人も納得できませんから。そういう意味では、競輪場に入ったら、なんというか、全てを競輪に集中して頑張りたいと思っています」 ―その分、オフが? 「オフはだらだらですね(笑)」 ―オフの時はどんな感じで過ごされますか? 「家族と一緒にいることが多いですね」 ―家族で旅行等行かれます? 「あまり旅行には行きません。僕はあまり自転車から離れるのが好きじゃないので、車で行ける範囲に自転車を持って行きますね」 ―村上選手の次の大きな目標はありますか? 「目の前にあるグランプリ連覇ですね。連続で出ていますけど、グランプリだけは毎回『今年が最後』って思いながらやっています。グランプリという注目される場で、自分が最高のパフォーマンスを発揮すること、その先にしか優勝はないだろうし、年間ベスト9のレースなので、一番いいレースを見せなきゃいけないだろうと思っています」 ―来年のグランプリは岸和田に決まりましたが、感想は? 「もう一つの大きな目標になりました。初めて箱根を越えて、グランプリが関西地区に来るなんて考えたこともないですから。年齢は重ねましたけど、チャンスある位置にいますから、岸和田グランプリ出場も目標に頑張りたいと思います」 ―最後にファンの方にメッセージをお願いします。 「500勝といっても、これは一つの通過点に過ぎません。大事なのはこれからの1勝、1勝だと思いますし、皆さんに喜んでもらえるレースをして、1勝を積み重ねていけるように頑張っていきます。その1勝がグランプリにつながればいいし、GIの優勝につながればいい。そういう自分の中で価値のある1勝を積み重ねていきたいと思いますので、応援していただきたいと思います」 |