2月8日の全日本選抜から、幕が開けた2013年のG1戦線。超一流の選手たちによって例年に優るとも劣らない名勝負が演じられてきたが、今年も競輪祭を残すのみとなった。グランプリへ向けた大一番「第55回競輪祭」が、11月28日に九州メディアドーム・小倉競輪場で4日間シリーズの熱戦の火ぶたを切って落とす。
G1の優勝者と獲得賞金上位選手に出場権が与えられる、競輪界最高峰のレース「KEIRINグランプリ2013」(立川競輪場12月30日)。そのグランプリシート争いも、いよいよ大詰め。競輪祭シリーズが終わると、グランプリ出場の9選手の枠がすべて決まる。平原康多(全日本選抜)、村上義弘(日本選手権)、成田和也(高松宮記念杯)、金子貴志(寬 仁親王牌)、後閑信一(オールスター)と現時点ではG1優勝をもぎ取った5選手が、グランプリの出場権を得ている。競輪祭を含めてG1が5つだった昨年と比較すると、1つ増え6つのG1となった今年は獲得賞金でのグランプリ出場がさらに狭き門になったと言わざるを得ない。賞金でのグランプリ出場圏内にいる選手にとっては、競輪祭が泣いても笑っても最後。いやが上にも賞金争いはヒートアップする。
今年の優勝は2月の高松記念のみに終わっている深谷知広だが、村上を抜いて現在のところ賞金ランク1位。全日本選抜、日本選手権、寬 仁親王牌と3度のG1準優勝に加えて、G2共同通信社杯でも準優勝。年間を通して高いレベルで安定した成績を残している。獲得賞金額もすでに1億円を越えて、グランプリ出場を確実のものとしている。また、昨年のロンドン五輪での経験を糧に、飛躍の年となった新田祐大。賞金を着実に積み重ね同ランク4位。8000万円超を獲得し、次位の長塚智広との差を考えても初のグランプリ出場は安泰だろう。深谷、新田の2人が賞金でのグランプリ出場を確かなものにしているだけに、今年のG1覇者5人を含め7つのグランプリシートが埋まった。残るグランプリの椅子2つを巡り、競輪祭ではタイトル奪取へ向けた戦いと同時進行で熾烈な賞金争いが繰り広げられる。初日から一日、一日が勝負となる、賞金ボーダー上の選手からは目が離せない。
その残り2つのグランプリシートに一番近いポジションにいるのが、賞金ランク5位の長塚智広だ。グランプリの権利を持たない選手が競輪祭を優勝した場合でも、断然有利な立場にいることは間違いない。長塚にとっては当面のライバルとなるのが、同ランク9位の浅井康太。長塚の獲得額が約6650万円に対し、浅井は約5340万円。両者の賞金での開きはおよそ1310万円で、競輪祭の準優勝賞金は1350万円(副賞含む)。グランプリの権利のない選手の優勝(同着は除く)で、浅井が準優勝の2着。なおかつ、長塚自身がシリーズでの成績が振るわずに賞金の加算がわずかだった場合にのみ、長塚はグランプリ出場を果たせなくなる。しかしながら、近況の長塚は熊本、一宮、取手と記念を3場所連続で優勝。怒とうのVラッシュで賞金を上積みし、乗れている長塚の競輪祭での不振は考えづらい。あっせん停止で今年いっぱいはレースに出られない武田豊樹に代わって、関東勢のまとめ役を果たしながらの充実ぶりは目覚しい。絶対的なアドバンテージを生かしてシリーズを乗り切った先に、3年連続でのグランプリ出場が見えてくる。 |
長塚智広選手 |
記念3場所連続Vの長塚に大きく水をあけられた賞金ランク9位の浅井康太だが、まだ次位の岡田征陽を400万円近くリードしている。「賞金よりもG1を獲ってグランプリに出るのが、強い人の基本的な流れだと思う」と、G1を奪還してのグランプリ出場に浅井は迷いがない。とはいえ、すでにグランプリの権利を有する選手や深谷、新田、長塚が競輪祭を優勝すれば、浅井自身のシリーズでの賞金上積みが重要な意味を成してくる。近況は10月の防府で今年4度目の記念制覇。順風満帆かに思われたが、決勝の直後にギックリ腰のアクシデントに見舞われた。次の一宮記念は順調さを欠いたが、決勝では新田、長塚らと互角のパフォーマンスを披露した。続く地元の松阪記念では初日特選で失格。臨戦過程では決して好リズムとは言いがたいが、勝負強さを備えている浅井なら競輪祭で好勝負を演じてくれることだろう。岡田、佐藤友和、藤木裕といった選手らとのセーフティリードを保ちながら、最終日を迎えてグランプリ出場権をつかみたい。 |
浅井康太選手 |
条件付きながらも長塚、浅井は競輪祭で決勝までコマを進められない場合でも、グランプリ出場の権利を獲得できる可能性の方が高いが、岡田征陽以下は決勝進出がグランプリ出場への必須条件となってくる。賞金ランク10位の岡田は、グランプリ最後の椅子を射止めた昨年同様に今年も競輪祭が勝負駆け。共同通信社杯、寬 仁親王牌、サマーナイトフェスティバルとビッグレースで3度優出を果たし安定はしていたが、今年はいまひとつ勝ち切れないシーンもあった。ホームバンクでのG1、夢舞台だった京王閣オールスターは2・2・8・1着で優出を逃した。そのオールスターが終わると、岡田はシフトチェンジ。「すべては競輪祭のために」と、今年最後のG1に照準を絞って、地道な努力を重ねてきた。平原、後閑と埼京ラインの2人はすでにグランプリが確定。ここ数年数多の連係実績を積んだ長塚もグランプリ出場が濃厚となれば、岡田も黙って見ている訳にはいかない。関東勢の一翼を担うべく、競輪祭で持てるすべてを吐き出す。 |
岡田征陽選手 |
4年連続でのグランプリに黄色信号がともっている佐藤友和。賞金ランクは11位で獲得賞金は約4750万円。苦しい位置にいることは間違いないが、逆境に強いのも佐藤の魅力のひとつだ。昨年は寬 仁親王牌でタイトルを奪取し、7月にグランプリ出場を早々と確定させていた。昨年と違い今年は重圧の掛かる競輪祭だが、強心臓の佐藤ならそのプレッシャーを楽しんでいることだろう。オールスター後は4場所続けて、記念の決勝に勝ち進んでいるが優勝はない。それでも競輪祭を直前に控えた松阪記念では「日に日に脚の感じは良くなってきてたんで、これならっていうのはある。ラストチャンスなんでしっかりやります」と、G1獲りをしっかりと見据えていただけに期待は膨らむ。 |
佐藤友和選手 |
昨年の競輪祭がG1初の決勝の舞台となった藤木裕が、一回りも二回りも大きくなって小倉バンクに帰ってくる。13年一発目のG1となった全日本選抜で優出を果たすと、その後は6月の高松宮記念杯、9月のオールスターと3度のG1優出。G1ファイナルのメンバーに、すっかり定着した感さえある。オールスターを終えるとラスト1冠の競輪祭へ向けて、さらなる脚力アップに余念がない。10月岸和田、11月の松戸とF1ながらも、2度の完全優勝。松阪記念では初日特選、優秀を逃げて佐藤らを完封した。現時点で近畿勢は村上のみがグランプリの出場権を得ている。グランプリチャンプの座には就いたが、単騎だった昨年の村上。今年もその村上をグランプリでひとりにさせないためにも、初戴冠で藤木がグランプリの椅子を獲得したい。 |
藤木裕選手 |
前記した賞金ランク12位の藤木を、わずか50万円近い差で追っているのが山崎芳仁。07、09年と2度に渡っての競輪祭Vと小倉バンクとの相性も抜群。3度目の優勝で7度目のグランプリ出場を決めるシーンがあるかもしれない。また、近況のG戦線で流れを支配している関東勢がうまくまとまれば、獲得賞金約4350万円で15位の神山雄一郎にまでチャンスはありそうだ。また、神山とは10万円に満たない差の稲川翔も、ケースによっては準優勝でもグランプリに手が届く。
選考用賞金獲得額ランキング(11月19日時点)
1位 |
深谷知広 |
106,998,000円 |
2位 |
村上義弘 |
106,594,200円 |
3位 |
成田和也 |
93,009,000円 |
4位 |
新田祐大 |
80,548,500円 |
5位 |
長塚智広 |
66,499,500円 |
6位 |
平原康多 |
62,369,000円 |
7位 |
後閑信一 |
62,232,300円 |
8位 |
金子貴志 |
61,336,722円 |
9位 |
浅井康太 |
53,413,000円 |
10位 |
岡田征陽 |
49,551,200円 |
11位 |
佐藤友和 |
47,472,200円 |
12位 |
藤木裕 |
45,528,200円 |
13位 |
山崎芳仁 |
45,021,000円 |
14位 |
武田豊樹 |
44,423,000円 |
15位 |
神山雄一郎 |
43,457,000円 |
16位 |
稲川翔 |
43,362,800円 |
17位 |
池田勇人 |
39,448,500円 |
18位 |
勝瀬卓也 |
37,757,200円 |
19位 |
佐藤慎太郎 |
35,712,200円 |
20位 |
井上昌己 |
35,223,800円 |
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※選考用賞金獲得額とは
『GP・GI・GII等の出場選手を選考する際に使用する賞金獲得額。』
KEIRIN.JP等で発表されている賞金と異なり、以下の賞金が含まれません。
・先頭誘導選手として出走したことによる各種手当
・予備選手への各種手当
・雨天時等における出走時の特別出場手当等
第55回朝日新聞社杯競輪祭【GI】 決勝レース終了後(12月1日)に発表される、『KEIRINグランプリ2013出場選手選考』及び『S級S班選手の選出』は、この選考用賞金獲得額を使用します。(平成20年度の各特別競輪等の選考から導入されました。)
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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真提供:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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