初のナイターでのGI開催。6日制に生まれ変わったロングランシリーズの先に、新たな栄光が待っている。
 四日市で幕を開けた18年のGIバトルも先の寬仁親王牌までに5つを終えて、残すところあとひとつ。
 北九州メディアドーム・小倉競輪場を舞台に今年最後のGI「第60回朝日新聞社杯 競輪祭」が、11月20日に熱戦の火ぶたを切って落とす。6日制で 行われる今年は、一次予選1と2の2走での合計点によるポイント制が導入された。S級S班を含めた選考上位選手による特選レースがなくなり、オール予選で争われるだけに、実力者といえども油断はできない。4日目には一次予選の合計ポイント上位9選手による準決フリーパスの「ダイヤモンドレース」がある一方で、早い段階で勝ち上がりを逃す可能性もあり、獲得賞金でグランプリ出場を狙う選手にとっては決勝にたどり着くまでの4走が険しい道のりとなる。
 昨年のビッグ戦線では新田祐大、渡邉一成(写真)がそれぞれGIを2度制し、新田においてはサマーナイトフェスティバル(GII)をも獲り、福島勢が17年を席巻した。今年最初のGI、全日本選抜で4車で結束した近畿勢を単騎の新田が粉砕。「KEIRINグランプリ2018」一番乗りを果たした時は、この流れが続くのかに思われたがそうはならなかった。新田、渡邉を阻んだのは同じナショナルチームで日の丸を背負い競技で世界の舞台に身を置く脇本雄太だった。ゴールデンウイークのダービー決勝では、近畿4車の先頭を務めて別線をクギ付け。番手の三谷竜生がダービー連覇を飾り、3番手の村上義弘が2着。脇本自身も3着に残り、4着の村上博幸(写真)までラインで上位を独占した。当時、未冠だった脇本の初タイトルに期待がかかる高松宮記念杯では、逃げて3番手以下をちぎって三谷とマッチレース。最後は交わされたものの、鮮烈なインパクトを残して"脇本時代"の到来を予感させた。その後は周知の通りオールスターで圧巻の逃走劇を披露すると、続く寬仁親王牌も優勝。ダービー、高松宮記念杯を脇本の番手の三谷が制し、オールスター、寬仁親王牌で脇本がGI連続Vで他地区に出る幕はなかった。

渡邉一成選手

村上博幸選手
 脇本の名前がなかった9月の共同通信社杯の優勝で大きく賞金をアップさせた平原康多が、三谷、脇本に次ぐ獲得賞金ランク3位で6年連続でのGP出場をほぼ決定づけた。また、今年5度のビッグ優出の村上義は、全日本選抜、ダービーで準V。賞金獲得額でも平原に次ぐ4位でGP出場返り咲きを確かなものとしている。昨年のGP覇者、約7980万円の賞金を稼いだ5位の浅井康太まで獲得賞金でのGP出場が当確とみてよさそうだ。全日本選抜Vの新田、それぞれGIを2勝している三谷、脇本に前述した獲得賞金での3人を加えた6人のGPシートが確定。競輪祭は、残る3つの椅子を巡り最後の6日目まで目が離せない。
 現時点で7番目のGP枠に一番近いところにいるのが、獲得賞金ランク6位の村上博だ。次位の武田豊樹(写真)との差はおよそ640万円。今年の優勝は2回ともFIで、GIでの成績が獲得賞金に大きくものをいっている。2年ぶりのGIファイナルとなった2月全日本選抜を3着の表彰台。続くダービー、高松宮記念杯でも決勝に進出し、年間を通して安定した成績を残している。近況、脇本の驚異的な加速力に手を焼いているが、層の厚い近畿地区なら目標にこと欠く心配はなくシリーズを有利にすすめられるだろう。先にあげた6人以外の選手が競輪祭を優勝して、武田、原田研太朗(写真)、渡邉一、山田英明、古性優作のなかのひとりが2着で賞金1720万円(副賞含む)を加え、さらに3着(賞金1124万円※副賞含む)に武田(武田の場合は決勝4着でも村上博との逆転が可能)、原田、渡邉一、山田が入ると、シリーズの着順次第では、村上博の4年ぶりのGP出場が危うくなる。しかしながら、前回、前々回のGI同様に"脇本一色"の競輪祭なら、近畿地区から4人目のGP出場者が出る公算が大きい。

武田豊樹選手

原田研太朗選手
 武田は残念ながら直近の地元、取手記念を3562着。決勝進出を逃し、大幅な賞金アップはできなかった。それでも9回のGP出場を誇り、2Vに3度の準Vと抜群の相性の競輪祭を前にして、武田に焦りはない。昨年の骨盤骨折の大怪我から徐々に立ち直り、3月のウィナーズカップでは15年の競輪祭以来となるビッグ制覇を飾った。優勝はウィナーズカップの1回にとどまってはいるものの、ソツがない立ち回りで獲得賞金をおよそ4960万円まで積み重ねてきた。武田より賞金ランクで下位の選手が競輪祭を優勝すると、武田に最後のイスが転がり込んでくる。また、三谷、脇本(新田は不出場)、平原、村上義、浅井、村上博が優勝なら、武田は8番目。いずれにせよ、シリーズを通して次位の原田らに抜かれないことで5年連続のGP出場に大きく前進する。
 全日本選抜を獲った新田が獲得賞金ランク9位にいるため、8位の原田が競輪祭を控えて現時点でのGPラスト枠に位置している。誰よりもプレッシャーのかかる立場だが、ここを乗り越えてこそ初めてのGPシートに手が届く。原田は6月の高松宮記念杯までに2度のビッグ優出でウィナーズで表彰台。前半戦で賞金を積み重ねたが、後半に入り失速しているのが気がかりだ。直近の2場所も千葉記念(松戸)8299着、久留米FIを189着と大敗が目につく。自転車との一体感が得られて、本来の力が発揮できれば大一番でのガラリ一変がある。
 脇本、新田と同じくナショナルチームでの競技活動で出走が限られている渡邉だが、3年連続でのGPを狙えるところにいる。7月のサマーナイトフェスティバルを制すと、地元のオールスターを3113着。続く寬仁親王牌でもファイナルに進出しGI連続優出で賞金ランクを上げた。現在のところ獲得賞金は約4440万円で10位。8位の原田とおよそ250万円の差がある。原田の成績次第にはなるが決勝に進めない場合でも逆転が可能な数字で、3連続GI優出ならGPに大きく視界が開けてくる。
 獲得賞金が4200万円台後半の山田(賞金ランク11位)、古性(同12位)、さらにそこから約500万円差で追いかける中川誠一郎(同13位)、佐藤慎太郎(同14位)、中村浩士(同15位)らは、まず決勝に乗ることが条件になってくる。山田、古性は、準Vなら自力でのGP出場が計算上では可能。中川、佐藤、中村は決勝の上位着を取り、なおかつ、他の選手次第になってくる。
 そのほかでは獲得賞金ランク19位の清水裕友(写真)、22位の山崎賢人(写真)のニュージェネレーションが、出場権を獲得すると年末のGPに新しい風が吹く。清水は昨年、A級陥落を味わったが特進でカムバック。その後は順調に力をつけてきた。8月の小田原で記念初優出を果たすと、共同通信社杯の準Vで全国に名前を売った。向日町記念優出を挟んで寬仁親王牌でGI初めてのファイナルを経験。5場所連続優出となった地元の防府で記念初制覇。いまもっとも、乗れているひとりだ。3620万円の獲得賞金を考えると、条件次第では競輪祭決勝3着でもGPの出場権利が得られる。また、山崎はGIデビューとなった8月のオールスターでいきなりの決勝進出。周囲の度肝を抜いた。直前の取手では無傷の4連勝で記念初優勝。賞金ランクも22位まで押し上げた。初戴冠をもちろん、準Vなら出場予定のヤンググランプリを飛び越えてのGP出場がかなう。優勝賞金1億円をかけた「KEIRINグランプリ2018」での脇本との激突に、ファンの興味が一層注がれる。

清水裕友選手

山崎賢人選手


『KEIRINグランプリ2018』出場見込み選手について
氏名 府県 現在満たしている選考要件 2018選考用賞金獲得額 GP出場回数
(出場した場合)
賞金順位
新田祐大 福島 第33回読売新聞社杯全日本選抜競輪 優勝 45,313,800 4年連続5回目 9位
三谷竜生 奈良 第72回日本選手権競輪 優勝
第69回高松宮記念杯競輪 優勝
150,817,000 2年連続2回目 1位
脇本雄太 福井 第27回寬仁親王牌・世界選手権トーナメント 優勝
第61回オールスター競輪 優勝
122,486,000 初出場 2位
平原康多 埼玉 92,264,400 6年連続9回目 3位
村上義弘 京都 82,219,000 H28年以来11回目 4位
浅井康太 三重 79,815,000 8年連続8回目 5位
村上博幸 京都 56,017,600 H26年以来3回目 6位
武田豊樹 茨城 49,628,700 5年連続10回目 7位
原田研太朗 徳島 46,891,500 初出場 8位
渡邉一成 福島 44,422,000 3年連続3回目 10位
山田英明 佐賀 42,969,000 初出場 11位
古性優作 大阪 42,897,000 初出場 12位
中川誠一郎 熊本 38,124,000 H28年以来2回目 13位
佐藤慎太郎 福島 37,302,000 H18年以来5回目 14位
中村浩士 千葉 37,132,000 初出場 15位
菅田壱道 宮城 36,644,800 初出場 16位
香川雄介 香川 36,379,200 初出場 17位
木暮安由 群馬 36,234,000 初出場 18位
清水裕友 山口 36,200,000 初出場 19位
松浦悠士 広島 36,031,800 初出場 20位
『GP・GI・GII等の出場選手を選考する際に使用する賞金獲得額』
KEIRIN.JP等で発表されている賞金と異なり、以下の賞金が含まれません。
(1)先頭誘導選手として出走したことによる各種手当
(2)予備選手への各種手当
(3)雨天時等における出走時の特別出場手当等
第60回朝日新聞社杯競輪祭【GI】 決勝レース終了後(11月25日)に発表される、 『KEIRINグランプリ2018出場選手選考』及び『S級S班選手の選出』は、この選考用賞金獲得額を使用します。
平成20年度の各特別競輪等の選考から導入されました。