年間6つあるGIも、今年は残すところ競輪祭のみ。北九州メディアドーム・小倉競輪場を舞台に「第64回朝日新聞社杯・競輪祭(GI)」が、ナイター開催で11月22日に幕を開ける。日本選手権、オールスターと同じく6日制で行われる今シリーズだが、まずはシード権のないオール一次予選2走の合計ポイントで勝ち上がりが争われる。それだけにS級S班ら選考上位選手に大きなアドバンテージはない。実力者といえども二次予選進出を逃すことも考えられ、初戦からうかうかしてはいられない。シリーズの流れをつかみ、勢いを後半でさらに加速。その先に栄光と年末の優勝賞金1億円超をかけたグランプリが待っている。
 例年通り2月の全日本選抜から、22年のGI戦線はスタート。昨年のグランプリ王者の古性優作(写真)が、年をまたいでもその勢いを持ち越すように優勝。昨年の賞金王が、グランプリの出場をいち早く確定させた。5月の日本選手権は、全日本選抜の出場権がなかった脇本雄太(写真)が、規格外のまくりでV。延期され昨年に行われた東京五輪や怪我の影響もあり、S級S班陥落となった今年だったが返り咲きに平競輪場は沸いた。そして続く6月の高松宮記念杯でファンの声援に応えたのは、地元の古性だった。今年2度目となるGI奪取を単騎で遂げて、岸和田への凱旋を優勝という最高の形で飾った。全日本選抜に次いで高松宮記念杯も不出場の脇本は、8月のオールスターを5連勝の完全V。ここまでの4つのGIを古性と脇本が2つずつ分け合い、近畿勢がタイトルを総ナメにした。10月の寬仁親王牌では、昨年同様に新田祐大(写真)がファイナルにコマ進めて、グランドスラムをかけた決勝でインを抜け出してV。4人目のグランドスラマーに輝いた。昨年の東京五輪で日本代表を務めた脇本、新田の2人がともにタイトルを奪取して、年末の「KEIRINグランプリ2022(GP)」で激突。ファンにとっては待ち遠しいことだろう。

古性優作選手

脇本雄太選手

新田祐大選手
 そして今年もいよいよラストバトル。グランプリの9枚のチケットを巡る争いも、この競輪祭でピリオドが打たれる。前述したように古性、脇本、新田の3人が、すでにGI優勝でグランプリ出場を決めている。残るグランプリの出場キップは6枚。その1枚が、競輪祭の優勝者に与えられる。すでに今年GIを獲っている3人が優勝しないかぎりは、獲得賞金でグランプリに出場できるのは5人。昨年と比較すると獲得賞金枠でのチャンスは広がり、競輪祭でのバトルは初日から激しさを増しそうだ。
 グランプリ選考用の獲得賞金額とランクに目を移すと1位は脇本。約1億4552万円を稼いで、2位にいるのが松浦悠士(写真)だ。今年はGI優勝こそないが、全日本選抜、オールスターと2度の準Vに、7月のサマーナイトフェスティバル(GII)を制覇。そのほかにもGIIIを4回優勝で賞金を積み重ねて、4年連続4回目のグランプリ出場に当確ランプを灯している。約1億313万円で4位の佐藤慎太郎(写真)も8度目のグランプリは安泰とみる。続いて5位の守澤太志(写真)は、獲得賞金が約9610万円。古性、脇本、新田に松浦、佐藤を加えて、さらにランク外から競輪祭優勝者が出たとしても、守澤の順位は7番目。6、7位の郡司浩平、平原康多が優出して、決勝で上位着を取ると同時に2人に逆転されるおそれはあるが、9位の清水裕友とは約2270万円の差。仮に清水が4連勝で決勝に進み準V、さらに郡司、平原にひっくり返されると、ラング外の選手がVなら守澤は10番目でグランプリを逃すことになる。守澤の3度目のグランプリ出場の可能性は限りなく高いが、守澤にとって今シリーズ、地道に賞金を加算することも重要になってくる。

松浦悠士選手

佐藤慎太郎選手

守澤太志選手
 今年のGI覇者3人に獲得賞金ランク上位の松浦、佐藤、守澤までの6枠が、おおよそで確定。残りの3つの枠が熾烈な戦いになってくる。獲得賞金ランク6位の郡司も、当然ながら優位にいるのは間違いない。ビッグではなかなか波に乗れていないなかで、9月の共同通信社杯を4連勝。逃げ切りで優勝をもぎ取り、賞金を大きく上積みしてグランプリに視界良好で競輪祭を迎えられる。直前の防府記念決勝での落車による怪我が心配だが、一昨年初タイトルを手にした競輪祭だけに力を振り絞り、地元の平塚グランプリ出場につなげたい。
 平原にとっては、13年から連続でグランプリ出場の10年目の年。40歳という節目を迎えた今年も、競輪に対する飽くなき探求心に変わりはない。ビッグレースの表彰台がないなかで、獲得賞金ランク7位は胸を張れる順位。しかしながら、常にGI奪取を目標に掲げているだけに、そこにブレはなく、守りに入ることないだろう。競輪祭でも攻めの姿勢で、関東地区を盛り立てる。その結果のグランプリ出場ということになっていそうだ。
 獲得賞金ランク8位は新田。約7340万円で9位の清水は、直近の防府記念を優勝した。地元で記念を前人未到の5連覇。リズム良く競輪祭に臨めそうだ。4年連続でグランプリを経験している清水なら、“イレ込む”ことなく、まずは1走1走に集中。すでにグランプリ出場を確かなものにしている松浦との同地区連係も、視野に入れてシリーズを進める。
 9位の清水を約967万円の差で追いかける山田庸平は、決勝進出が絶対条件。清水ら上位ランク選手のシリーズ成績にもよるが、決勝の4着賞金が約984万円ということを考えれば、優勝でなくても上位着でグランプリに届く。もちろん、獲得賞金ランク8位以上の選手が優勝することも条件に含まれるが、初のグランプリを地元地区でつかむことができれば、九州地区が盛り上がることは必至。
 約5907万円で11位の成田和也は、計算上は決勝3着では微妙も準Vで十分のグランプリ圏内。そうなれば13年以来、久々のグランプリの大舞台。新田、佐藤、守澤に次ぐ北日本“第四の男”というには、あまりにもまぶしすぎる。昨年、競輪祭での勝負駆けを決めて、グランプリ初出場を遂げた吉田拓矢は、獲得賞金ランク12位。地元、取手での2月全日本選抜は、S級S班として初めて臨んだGI。その重圧は計り知れなく、その後も実を結ぶことは少なかったが、寬仁親王牌で今年初のビッグ優出。かみ合ってくれば連覇があっても不思議はない。
 ここに照準を合わせてくる獲得賞金ランク13位の深谷知広。4月に44歳を迎えながらも年間を通して輪界をにぎわせた14位の荒井崇博は、優勝が条件になってくるが、存在感たっぷりでシリーズを通して目が離せない。