『弥彦競輪開設67周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:8月1日

 弥彦競輪場を舞台に開催された開設67周年記念「ふるさとカップ(GIII)」は、8月1日に最終日が行われた。S級S班の2人をはじめ好メンバーがそろった決勝は、地元の諸橋愛を連れて渡邉雄太が主導権。番手で絶好の展開が訪れた諸橋が、渾身の追い込みでV。一昨年8月の豊橋以来、通算4度目の記念優勝で悲願の地元記念初制覇を遂げた。

決勝戦 レース経過

 号砲で朝倉佳弘が飛び出し、木暮安由‐朝倉が前受け。以下は、浅井康太‐西村光太、渡邉雄太‐諸橋愛、稲垣裕之‐椎木尾拓哉、阿部力也で周回を重ねる。
 青板バックで稲垣が動き出すと、これを制して浅井が先に木暮に並び掛ける。前団の併走が続く赤板で今度は渡邉が踏み出す。合わせて動く稲垣を叩いた渡邉が2コーナーから先手奪取。稲垣がすんなり3番手を確保し、6番手に木暮、浅井は8番手まで下げる。だが、打鐘2センターで木暮が動き、稲垣の外へ猛然と追い上げる。木暮を追って浅井も仕掛けたが、最終2コーナーで稲垣が外の木暮を押し返すと、このあおりを受けた浅井は失速。3番手は依然として併走で、快調に逃げる渡邉の番手を回る諸橋には絶好の勝機が到来。外併走からバックまくりの木暮を止めた諸橋は、直線に入ると車を外して踏み出す。中を割ってくる稲垣、外を迫る椎木尾をギリギリ振り切って諸橋が初の地元記念Vを果たした。

諸橋愛選手
諸橋愛選手

 「よかったぁ。あぁ、よかったぁ。苦しい練習をしてきてよかった」
 引き揚げて来た諸橋愛(写真)がデビュー20年にして手に入れた地元記念Vをかみ締めながら、何度も同じ言葉を繰り返した。
 2日目の優秀で、吉田拓矢の後ろで競りを演じた木暮安由とは別線。渡邉雄太とタッグを組んだ。
 「オマエが勝てる競走でいいから、そうすれば俺にもチャンスがあるから」
 急造のラインも、渡邉は稲垣裕之を押さえて迷わず風を切る。追い上げた木暮と稲垣で3番手がもつれると、その上を浅井康太が踏み上げるが木暮のブロックで不発。輪界名うての俊敏型、浅井、木暮、稲垣のつばぜり合いが3番手で繰り広げられ、番手すんなりだった諸橋に追い風は吹いた。
 「後ろがもつれるのは予想外だった。阿部(力也)君が切り替えてくれるかと思ったけど、そうじゃなかったね。あおりをつくりながら、まくらせないようにと」
 浅井をどかした木暮が外併走からまくり上げると、諸橋が2発目のブロックで仕留めて直線を迎える。内から稲垣、外を椎木尾拓哉の近畿勢が迫るが、力いっぱいハンドルを投げた。
 「(最終)4コーナーからは自分のモガキじゃなかった。その辺がプレッシャーに弱いですね(笑)。椎木尾が見えた時は、行かれたかなって思ったけど。俺が出ているかなっていうのもあった」
 椎木尾を4分の1輪振り切ってのゴール。4度目の記念Vは、地元だけに格別な思いがこみ上げてくる。
 「違いますね、さすがにここまでうれしいっていうのは。声援がすごかった。2カ月くらい前、高松宮記念杯が終わってからは、ここを照準にしていた。地元だから頑張ってたけど、年々体もいうことをきかなくなっている。しっかり休んで、また一から」
 不惑を迎えて初めてのシリーズで地元記念を制覇。諸橋はこれからも自分の道を信じて突き進む。

 諸橋の後ろをキープした稲垣は、直線で逃げた渡邉と諸橋の間を踏む。外に持ち出した椎木尾拓哉が、諸橋に詰め寄るも2着まで。
 「おしい~、届いたかなと思ったんですけど。自分としては成績的にもまとめられたし、よかったんじゃないかと思います」

 「渡邉君の出方次第では、先行も視野に入れていた」と、振り返った稲垣裕之。結果、渡邉ラインを受けて好位確保も、最後まで仕掛けられず直線は中割り及ばずの3着。
 「(渡邉が)掛かっているなかで、木暮君が追い上げて来てへばりついていた。それで自分のコースが確保できなかった。最後は内に行くしかなかった。諸橋君の気迫は伝わってきました」

 諸橋との即席ラインも、ケレン味ない仕掛けで渡邉雄太がレースを支配。横一線のゴール勝負からは遅れて4着も、十分にその存在をアピールした。
 「(周回中は)もう1個前のラインがよかった。それで(先行するタイミングが)早くなっちゃいました。ちょっと焦ってたけど、残れる感じもあったし状態はいい気がします。(地元の諸橋が番手で)変なレースはできないから、荷が重かったんですけどよかったです」

 6番手の木暮安由は、打鐘の3コーナー過ぎから踏み込んで3番手追い上げ。浅井をさばき、再度踏み込んでまくったが諸橋のブロックに力尽きた。
 「もう(先頭まで)行って出ちゃおうと思ったんだけど、前が踏んじゃったからああなった。そのあともからんで(脚力を)ロスして、3コーナーからもう1回行ったけどダメでした」