『取手競輪開設67周年記念(GIII)レポート』 3日目編

配信日:6月5日

 取手競輪場を舞台に開催されている開設67周年記念「水戸黄門賞(GIII)」は、6月5日に3日目を迎えた。決勝進出をかけた準決の3個レースは熾烈を極め、見応えのバトルが展開された。吉澤純平、芦澤大輔が勝ち星を挙げると、シリーズただひとりのS班、武田豊樹が白星で締めて地元勢が準決で3連勝を飾った。シリーズもいよいよ大詰め、6日の最終日には決勝の号砲が鳴らされる。また、9レースではS級への特進をかけて、レインボーカップ・A級ファイナルが一発勝負で行われる。
 本場では最終日も様々なファンサービスとイベントで、お客様をお待ちしています。ガールズケイリントークショー、小室貴広選手、小林申太選手によるトークショー、先着ファンサービス(茨城県産品1000個)、予想会(山口幸二&吉井秀仁)、未確定車券抽選会などが予定されています。ぜひ、本場へ足をお運びください。

<10R>

吉澤純平選手
吉澤純平選手

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 赤板手前で先頭に立った伊早坂駿一は、出し惜しみすることなくペースを保ち後続を一本棒にして逃げる。打鐘、最終ホームもそのまま通過。番手で伊早坂との車間を切った吉澤純平(写真)は、2コーナー手前からまくりを打った飯野祐太に合わせて迷いなく番手から出る。踏み出しで遅れた志村龍己との距離を保ったまま、3車身差をつけてゴールを駆け抜けた。
 「番手だったからチャンスがあるぶん、緊張もありました。飯野君が見えたんで、自分が踏み込みました。そのあとも志村君が仕事をしてくれたおかげですね。脚と体の反応はだいぶいいと思います」
 踏み出しで立ち遅れた志村龍己だったが、焦らず最終3コーナーで飯野のまくりを阻みあおりをつくり出す。ゴール前では佐藤慎太郎の猛追をタイヤ差を抑えて2着をキープした。
 「(吉澤)純平さんのまくりのスピードは、えげつないですね。内をしゃくられないようにと思って締めていたしキツかった。飯野さんが横にいたので止めておかないと、4コーナーで来られてしまうと思ったので、キツくても(3コーナーで)一発張って正解でした。今日は本当に前のおかげです」
 志村のブロックで飯野が外に浮くと、佐藤慎太郎(写真)はソツなく志村後位にもぐり込んで直線で差を詰めて3着。
 「理想の展開だったし、あの位置を取れたのは100点。(飯野)祐太が無理に仕掛けてくれたし、2着まで届きたかったけど。しいていえば、1コーナーで早めに仕掛けてくれたら、祐太は吉澤の横まで行ってたかもしれない」
 シンガリに沈んだ伊早坂駿一だったが、ラインの2人を決勝に導き重責は全う。これからを見据える。
 「(飯野が)切ってくれて、自分も行きやすくなった。あとは行けるところまでと思っていた。自分ももっとステップアップして、あれで(最終)4コーナーまでもつようにならないと。(3日間走って)脚の感じはいいです」

<11R>

芦澤大輔選手
芦澤大輔選手

新山響平選手
新山響平選手
 後ろ攻めから早めに上昇した石井秀治が3番手の新山響平にしばらくフタをしてから打鐘前に踏み込む。中団まで下がりかけた古性優作は2センターで内をすくって千葉勢を分断。もつれたところを新山が一気に叩いて出る。これで地元の芦澤大輔(写真)にとっては絶好の流れ。番手から懸命に追い込み、激しい直線の攻防を制した。
 「恵まれました。前がちょっと踏み合いになったので、新山君が一気に行ってしまうだろうなって。あとは自分が付いて行って、このカマシなら誰もまくって来れないだろうと思ってました。新山君の強さを肌で感じました。連日、先行選手が頑張ってくれているおかげで、たまたま1着が取れています。決勝に乗れてホッとしていますが、明日があるのでしっかり頑張ります」
 タイミングを逃さずにスパートした新山響平(写真)は僅差の3着。今シリーズは未勝利ながら連日、積極的に攻めている。
 「(石井にフタをされて)あそこで引いちゃうと、すぐに引く選手と思われてしまうので、内で粘りました。車間を詰める勢いで、1コーナーまでに出切れるように、しっかり仕掛けられたと思います。最後の粘りはちょっと欠きましたけど、かなりいい感じで踏めました」
 藤田大輔をどかした古性優作は2コーナーから踏み上げる。直線で芦澤に際どく詰め寄って2着。自在性を存分に発揮した。
 「展開は想定外でした。最低限の動きはできたと思います。ラインで決められなかったのが…。シューズを元に戻してマシにはなりました。日に日によくなっています」
 新山と力勝負した石井秀治はシンガリ負けに終わった。
 「新山君と力勝負がしたかったので、今日は先行しようと思ってました。新山君に行かれてしまって、番手か3番手に飛び付ければよかったんですけどね。古性君に叩き込まれて、踏めなくなってしまった。なんか古性君は内をすくって、自分のすぐ後ろにいたみたいですね。藤田にとってはこれも経験でしょう」

<12R>

武田豊樹選手
武田豊樹選手

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 松谷秀幸の上昇に合わせて突っ張り気味に踏んだ吉田拓矢は、南関ラインを受けるとその上を山本直、吉田敏洋の順で出て7番手のポジショニング。別線にひと通り脚を使わせた吉田拓は、打鐘の3コーナー過ぎに吉田敏が緩めたところの見逃さず一気。抵抗する吉田敏をスピードの違いでねじ伏せ、武田豊樹(写真)が抜かりなく続く。武田は、はやることなく直線で吉田拓を交わして危なげなく勝ち切った。
 「強かったです、吉田(拓)君が。ハイピッチにすればするほど、彼の力が生きてきますね。あれで粘れるっていうことは、やっぱり彼の普段の練習じゃないですか。連日、若い選手が頑張ってくれて、(決勝は別線になった)吉澤(純平)と吉田(拓)はこれからどんどん強い相手と戦っていかないといけない。後輩にはもっともっと強くなってもらいたい」
 周回中は9番手にいた単騎の山本直。南関勢に乗って行き、その上を自ら切って出ると、今度は中部コンビを受けて3番手に入る。スマートな立ち回りで好位に収まり、最終的には関東ラインにスイッチ。朝倉佳弘が武田と吉田拓の間に進路を取ると、外を踏んで2着に伸びてうれしい記念初優出を遂げた。
 「(吉田)拓矢が行ったのが見えたんで、次はそっちに行かないとっていう感じで反応できた。初めてですね、記念の決勝は。やっと乗れた。自信になりました。決勝も(自分の力を)出せるところ探して、ひとりでやります」
 「松谷さんに脚を使わせたのが大きかった」と、汗をぬぐった吉田拓矢(写真)。消耗戦に持ち込むと、ヤングパワーを武器に最後は横一線のゴール勝負で3着に踏ん張った。
 「あそこで行かないとって思って、行きました。もう出切って脚がなかったです。最後は行かれたかと思ったけど、なんとかですね。責任ある位置で役目は果たせたかなと」
 若い吉田拓に引っ張りまわされた松谷秀幸は、最終バック7番手から仕掛けられず5着がいっぱい。思惑通りの流れにならず、肩を落して振り返る。
 「そうとう脚を使って、(吉田拓を押さえた)あの時点で売り切れちゃった。(関東ラインに)粘る展開にもっていけなかった…。相手もうまく考えていた」

<最終日9R レインボーカップA級ファイナル>

元砂勇雪選手
元砂勇雪選手

井上公利選手
井上公利選手
 レインボーカップA級ファイナルが最終日の9レースに行われる。A級屈指の実力者が取手で激突する。ここで3着以内に入れば、S級特別昇級が決まる。来期A級予定の選手にとっては勝負のかかる大事な一戦だ。
 競走得点トップの元砂勇雪(写真)は2月の地元奈良から7場所連続のVを達成。驚異的な成績を残している。
 「A級に落ちてしまって、もっと頑張らないといけないなって。しっかり練習するようになって結果が出ました。(5月)奈良の後に熱と痛風が出たので、小松島を欠場しました。治ってから練習はしっかりやってきたので、状態は問題ないです。ここを勝てれば来年のダービー(出場)も見えてくるので頑張りたいですね。単騎でも自力です」
 佐伯辰哉は昨年末のレインボーカップ・チャレンジファイナル優勝している。この半年間でA級トップクラスの機動型に成長を遂げた。ここ一番で勝負強さを発揮する。
 「ここ2場所は優勝しているし、調子は上がってます。ここを見据えて、最近はまくりのレースも試してました。ちゃんと練習はやってきたのでバッチリです。今期はS級が取れているけど、来期はA級なので、なんでもして3着以内に入るつもり。しっかり自分のできるレースをします」
 来期A級の大矢崇弘は直近5場所で優勝3回。タテ攻撃の破壊力に一段と磨きがかかっている。勝負駆けのレースでも気負いはまったくない。
 「いつも通りの感じで練習してきました。調子は変わらないと思います。細切れ戦なんで、やりやすいですね。単騎だから変な展開になったほうがチャンスがあるかも。自力でできることをやります。しっかり走って3着以内に入れるように。S級に上がりたい気持ちはあるんですが、あとは運ですね」
 4人そろった北日本勢は別線勝負を選択。来期A級予定の井上公利(写真)は今年に入って優勝4回、準V4回と気配が一変している。ここは同県の阿部拓真に前を託して特進を狙う。
 「A級に落ちて、気持ちを入れて練習するようになって、最近はその成果が出ていると思います。体重も6キロぐらい痩せました。いかに今まで練習をやってなかったですね。今は自信を持って走れています。4人で並ぶかはすごい悩みましたが、話し合って阿部君の番手になりました。緊張しますけど、3着以内に入りたいですね」
 引地正人も勝負駆けのひとり。高木翔を目標にS級キップをつかむ。
 「みんなすごい成績ですね。前回(立川)は初日に飛んじゃったんですよ。2日目は一般戦で、レインボーに出る人がこんなところ走っちゃダメだろうって周りから言われました。ちょっと最近は警戒されて厳しくなってきているけど、前回も仕上がってなかったわけじゃないので。人任せになるんですが、S級に上がりに来たので頑張ります」