『京王閣競輪開設74周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:11月1日

 京王閣競輪場でナイターシリーズとして開催されてきた開設74周年記念「ゴールドカップレース(GIII)」は10月31日に最終日を迎えた。細切れの乱戦となった決勝は、S班で組んだ福島コンビが格の違いを示した。単騎になった北井佑季が思い切ってカマしたが、俊敏に追った新田祐大が最終3コーナーで捕まえて佐藤慎太郎のゴール前での追撃も振り切った。新田の記念優勝は4月高知以来で今年3度目。通算では12回目となる。
 また、第3レースで実施された123期の7人による「競輪ルーキーシリーズ2023プラス」は、2班に特別昇班した選手が実力を発揮。棚瀬義大が単騎のハンデも関係なく強烈まくりを放って勝利した。

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると少し見合ったものの、晝田宗一郎が誘導員を追う。初手は、晝田-香川雄介、新田祐大-佐藤慎太郎、中釜章成-東口善朋、藤井侑吾-柴崎俊光、北井佑季の並び。
 青板1センターから藤井がゆっくりと上昇していく。北井はこの動きを追わず、中釜が柴崎の後位に切り替える。藤井は3コーナーから晝田を押さえに入る。赤板を過ぎると藤井が誘導員を切って前に出るも、1センターで中釜が上昇して先頭に立つ。するとすかさず北井がジャン前にスパートし、後続を一気に引き離し、新田が北井の仕掛けを必死に追いかける。最終ホームは逃げまくる北井、新田-佐藤、中釜-東口の順で通過。2コーナーから2番手の新田がまくりにいく。北井との車間がどんどんと詰まっていき、3コーナーで北井を捕らえる。4コーナーを先頭で回った新田のスピードは直線でも鈍ることなく、追走の佐藤を振り切ってのV。2着には新田にしっかりと続いた佐藤が入り、この2人を追った中釜はGIII初優出で3着に入った。


新田祐大選手
新田祐大選手

 後方に置かれてまくり追い込みとなった二次予選、仕掛け所を逃して内を突くしかなかった準決は、2着、3着の結果もさることながら、グランドスラマーのプライドを背負う新田祐大(写真)にとって到底満足のいく競走ではなかった。
 「2日目、3日目と良いレースが出来ていなかったので、絶対に良いレースをしようと思ってました。とくに、昨日(3日目)は(小松崎)大地さんと決めたかった。一緒に走ることはできなかったけど、優勝という形で終われて良かった」
 藤井侑吾、中釜章成の順で切ると、単騎の北井佑季が打鐘から奇襲カマシに出る。北井の並外れたダッシュにも、新田が立ち遅れることはなかった。
 「中釜君が押さえて、北井君がそこに付いて行くのか、切るのかどっちかだと思ったんで、まずそこで切らないとと思って準備していた時に北井君が行った。すごいダッシュで、藤井君とかは千切れていましたし、自分は必死に追いかけた。中釜君も射程圏に入れていたと思うけど、自分は(北井に)付きすぎずに車間を切れたのが(佐藤)慎太郎さんとワンツーが決まった勝因だと思います」
 「あそこ(打鐘前)で(中釜を叩いて)先行態勢に入ってもいいぞって気持ちで動いてるから反応できるんだよね」と、真後ろで見ていた佐藤慎太郎が新田を称える。攻める姿勢を取り戻した新田に、隙はなかった。
 高知記念以来通算12度目。今年3度目のGIII優勝で賞金を加算してもなお、賞金ランキングはグランプリ圏外に位置している。S班の座を守り抜くためには、今年最後のGI競輪祭が勝負駆けとなる。
 「親王牌で表彰台に乗れていれば、賞金が重要になると思ってたけど、二次予選で負けたんで、もう(競輪祭を)優勝するしかない。そこに向けて、京王閣、四日市と仕上げていきたいと思っていたので良かった」
 まだ、赤いパンツを脱ぐわけにはいかない。全冠覇者が、年末に向けてラストスパートをかける。

 新田に続いて2着の佐藤慎太郎は、この結果にも満足はしない。
 「チャンスでしたね。精一杯踏んだけど駄目だった。難しいし、出入りの激しいレースになると思ったんで、新田の感性に任せていました。新田の番手まくりを差せないのは当たり前と言えば当たり前。だけど、新田が早めに行ってるから、抜けたんじゃないかと思うし、悔しい気持ちがある」

 北井のカマシに反応が遅れた中釜章成だが、態勢を立て直して、まくり上げる。GIII初決勝で3着に入った。
 「(初の記念決勝だが)4日間とも緊張感はなかったです。でも、今回は1回もバックを取っていない勝ち上がりなので。(北井が先行して)ああなるのもあると思った。2コーナーで(車を)外していかないといけないんでしょうけど。今回は、たまたまという感じ。気を抜くとFIでも7着を取ってしまうので集中力を切らさずにいきたい」







ルーキーシリーズプラス

棚瀬義大選手
棚瀬義大選手

 松崎広太がスタートで飛び出して、茨城勢が前受け。その後ろに単騎の棚瀬義大(写真)、荒川達郎、峯口司の順で続き、上越勢が6、7番手に構える。浮島知稀が赤板で押さえに動くが、松田昂己は突っ張って出させない。6番手に戻った浮島は、打鐘3コーナーから再度仕掛けて最終ホームで松田を叩き切る。叩かれて3番手となった松田がバックで仕掛けるが、牧田悠生に阻まれて不発。5番手の棚瀬はバックで外に持ち出すと、そこから圧巻の加速。並ぶ間もなく4コーナーで浮島をとらえて、先頭でゴールを駆け抜けた。
 「内枠をもらったんで、松田君達の後ろから行こうと思ってたし、作戦通りいけました。プラン的には松田君と浮島君でやり合うと思ってました。牧田君と松崎君でもつれたところを逃さずに行けました。出だしも、最後も踏み切れました。強い同期の中で勝てたことが嬉しいです」
 松田は不発でバックから後退。松崎広太は内から3番手に切り替えて、4コーナーで外を伸びて2着に入った。
 「突っ張ると思ってたけど、突っ張り切れなくてもなんとか援護したかった。最終バックで(松田と牧田がからんで)危ない展開があって内に詰まってしまった。最低限行けるところまでと思ったけど、2着になっちゃいました。番手の経験が少ないからその緊張感はあった。松田を助けられればと思ってたけど、悔しいですね」
 棚瀬後位にいた荒川達郎だったが、最終ホームで峯口司にすくわれて一瞬苦しくなる。車間が空きながらも棚瀬の仕掛けを追って、3着のゴール。
 「棚瀬に絶好の展開になったし、その前に行かないといけなかった。外併走は苦しくなかったけど、緩んで出られそうなタイミングで出られなかった。その甘えが3着だったんだと思う。やっぱり下手くそだなと思った。1着を取り切れるようになるまで、(あっせんの止まる)2カ月は練習していきたい」





次回のグレードレースは、防府競輪場開設74周年記念「周防国府杯争奪戦in玉野」GIIIが、11月2日~5日の日程で開催されます。
今シリーズは古性優作、松浦悠士、郡司浩平、新山響平、守澤太志のSS班5名が参戦する超豪華メンバー。しかし、最も注目を集めるのは地元の清水裕友です。
この大会は目下5連覇中。果たして大記録をさらに伸ばすことができるでしょうか?

10月23日時点の出場予定選手データを分析した、防府競輪「周防国府杯争奪戦in玉野」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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