『シン東京ミリオンナイトレース(GIII)レポート』 最終日編

配信日:7月17日

 京王閣競輪場にてナイターで実施された新企画の3日制2節GIII開催の第一弾・「シン東京ミリオンナイトレース」が7月16日に最終日を迎えた。注目の決勝は、ライン2車でも山口多聞が逃げて埼玉勢のレースとなったが、その3番手を奪った和田健太郎がゴール前で逆転してVをさらった。和田のGIII優勝は23年12月伊東記念以来で通算5回目となる。
 なお、S級戦と同時に実施されたガールズトーナメントはAが児玉碧衣、Bは梅川風子がそれぞれ貫禄の完全Vを飾った。

決勝戦 レース経過

 号砲で中釜章成が出ていくがけん制する感じで、和田健太郎が正攻法の位置を確保する。和田は九州勢を入れて、山崎賢人-田中誠、和田、中釜、吉田有希-寺沼拓摩-鈴木玄人、山口多聞-藤田周磨の並びで周回を重ねる。
 青板3コーナーから山口が上昇を開始。山口は一旦、吉田の外で併走してから、赤板を過ぎてさらに踏んでいって2コーナーで山崎を押さえる。山崎は引いて、追って上がってきた吉田と3番手がモツれる。吉田は最終ホームから山口を叩きに行くが、藤田にけん制を受けて1センターで外に膨れて後退。目標を失った地元コンビは外を踏んでへばり付き、山崎は内に詰まったまま。最後方でジッと脚を溜めていた中釜が地元勢に切り替える形から3コーナーで外に車を持ち出して凝縮した前団を襲う。だが、届かず3着まで。勝ったのは和田。逃げ粘る山口の番手から藤田が抜け出すも、中を割って逆転した。和田は最終ホームで九州勢の後位から田中をキメてから山崎の内をすくって埼玉勢の後位を奪っていた。

和田健太郎選手
和田健太郎選手

 泥臭く、前々に。最後はズバっと、差し脚を伸ばす。「持ち味は出せたかな」。和田健太郎(写真)は、会心の総力戦を、照れくさそうに振り返った。
 見合ったスタートから、まず前に出たのは単騎の中釜章成。中釜が誘導を追わずにいると、和田が前に出て誘導を追いかけた。その後、上昇した九州勢を迎え入れて、和田は3番手からの組み立てとなった。
 「(スタートは)中釜君が出たから追ってほしかったけど、(前を)取らないなら僕が取った方が並び的に良いと思ったんで、(誘導を)追いかけました。初手は思ったのと違くて、吉田(有希)君達が前受けして突っ張る感じかなと思ってた。意外な並びだったけど、あとは臨機応変にって考えてました」
 山口多聞が、中団の吉田にフタをしてから打鐘手前で前に出る。九州勢から切り替えて、追い上げを狙った和田だが、一瞬反応が遅れて外の吉田と、内の田中誠に包まれる形に。ただ、そこからが和田の真骨頂だった。4コーナーで田中を決め込むと、山崎が最終ホームで内を空けた隙を見逃さなかった。内から山崎をどかして、最終的に先行の3番手を手中に収めた。
 「(埼玉勢が叩いた)3番手をきれいに取りたかったんですけど、アンコになってしまった。田中君が遅れ気味だったんで、そこをしのいで、(山崎)賢人が瞬間的に空けた内を行けた。なんとか、結果的に思ってた位置が取れました」
 吉田は前を叩けず後退し、自力に転じた寺沼拓摩がまくりを放つ。山口の余力を見極めた藤田周磨が、3コーナーから前に踏み込むと、和田は迷わず内のコースを突っ込む。内から藤田を差し切ったところが、ゴールだった。目標不在だった準決勝を、ラインの先頭で突破して、決勝戦も、選択肢があるなかで単騎戦を選んだ。総力戦でつかんだ優勝は、値打ちが高い。
 「単騎はタラレバだけど、(優勝は)嬉しいです。優勝できると思ってなかったし、GIとか関係なく、次のレースに向けて何か得るものがあればと思って自分でやった。昨日(2日目)は、新田(康仁)さんを付けてまくれなくて悔しかった。自分で前々にっていうのが理想だったけど、今日も最悪まくりに行こうと思ってた。けど、(準決勝と)似たような展開になった。それでも、最後まで持ち味は出せたと思います」
 前回の地元、松戸FIから、連続優勝を飾って、最高のリズムで次走の函館オールスターへと向かう。頼もしい南関の仲間と共に、GIの舞台へ乗り込んでいく。
 「同県の岩本(俊介)がS班ですし、郡司(浩平)や、深谷(知広)、(松井)宏佑もいる。付いていくのが大変なんですけど、そこをしっかりと追えるように。お客さんは、グレードとか関係なく、その1レースを買いに来ていると思うので、苦しい展開でも、3着までに入れるように、必死でやっていきたい」
 平塚グランプリを制したのが、30代ラストの年だった。「こんなおじさんが勝って申し訳ない」と笑うが、44歳を迎えた和田は、あの頃となんら変わらない。むしろ、アグレッシブなレースからは、若々しさすら感じる。目の前の一戦一戦を積み重ねて、再び大舞台へと返り咲きを目指す。

 山口とのタッグで挑んだ藤田周磨は、あと一歩のところで初優勝を逃してしまった。悔しそうに、こう振り返る。
 「夢見ました。山口君の組み立ては完璧だったし、頑張ってくれた。後ろの状況が分からなくて、けん制も大きくならないようにしていたけど、和田さんは見えてなかった。出ていくのもまだ早いなって思って一回見てしまった。獲るイメージができていなかったし、経験不足です。獲りたいっていう気持ちの覚悟が足りなかったです」

 単騎の中釜章成は、最後方からまくったものの3着まで。
 「情けないです。2コーナーでドリフトしました。優勝したかったけど、無理でしたね。関東勢が前を取るかと思ったけど、あの展開で獲れなければ(優勝は)夢ですね。3日間通して良くなかった。気持ち一本で戦っていました」








ガールズ決勝戦A レース経過

児玉碧衣選手
児玉碧衣選手

 黒河内由実が打鐘で元砂七夕美を切って、伊藤優里がすかさず叩いて4コーナーから先行態勢に入る。追い上げた石井寛子が3番手に入り、児玉碧衣(写真)は一本棒の7番手に置かれて最終周回に入る。1センターで車を外した児玉は、2コーナーの下りから一気に加速。石井は合わせてまくりを狙ったが、児玉のスピードが違う。3コーナーで先頭に立った児玉は、そのまま後続を千切り、2着に6車身差を付けて圧勝した。
 「位置にはこだわってなかったけど、あそこまで動きが早いとは思ってなかった。7番手かって思ったけど、自信を持って仕掛けられた。風も強かったし、バンクも重たくて仕掛け所を迷ったけど、しっかり出し切れたと思う。踏んだ感覚は良かったですし、しっかり抜けるなって思った。(3日間振り返って)今日(最終日)が一番きつかった。湿度が高くてバテているのか、半周しかモガいていないのにきつかった。暑さ対策を考えないとなって。初日は先行して、昨日と今日はまくり。予選2も先行したかったので、次は長い距離をモガいてオールスターにいきたい」






ガールズ決勝戦B レース経過

梅川風子選手
梅川風子選手

 周回中に3番手の太田りゆが、前と大きく車間を取って打鐘を通過。3コーナーで、5番手から太田美穂が仕掛けると、太田りも合わせて車間を詰めていく。太田りはそのまま仕掛けるかと思いきや、最終ホームで内に行って、是永ゆうきをすくう。これで太田美は仕掛けやすくなり、先頭の石井貴子に襲い掛かる。太田美を追いかけた梅川風子(写真)は、両者で踏み合う上を1センターから車を外してまくり上げる。太田りは抜け出すのが遅れて万事休す。バック線を先頭で通過した梅川を、大浦彩瑛が追いかける。梅川は最後まで一切失速せず、追いすがる大浦を寄せ付けずに、優勝のゴールを駆け抜けた。
 「(太田)美穂さんが仕掛けたいだろうなって思ってたんで、まずはそこの出方を見ながらでした。(太田)りゆさんが内に行ったのは見えたので、自分の方が有利だなって思った。美穂さんと、りゆさんの仕掛けが同時に見えて、美穂さんと私が上にいって、りゆさんが下にいったので、自分に(展開が)向いたと思います。もう少し待ったら、りゆさんが自分の後ろにスイッチできちゃうと思って、少し早めだったんですけど仕掛けました。(感触は)良くなかったですね。風がそんなに強くないのに、風を感じてしまったので、まだまだだなと。このメンバーで勝てたら自信になると思っていたし、素直に嬉しいです」






次回のグレードレースは玉野競輪「サマーナイトフェスティバル」が7月18日~21日の日程で実施されます。

今年はガールズケイリンフェスティバルがなくなったため、男子選手のみの大会となり、開催日数も初めて4日制となりました。SS班9名をはじめ、全国各地から健脚が集結して覇を競います。新装開店したサマーナイトフェスティバルで主役を演じるのは誰でしょうか?

7月7日時点の出場予定選手データを分析した、玉野「サマーナイトフェスティバル」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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