『東京オーヴァルカップレース(GIII)レポート』 最終日編

配信日:7月28日

 京王閣競輪場で開催された3日制2節GIIIの第2弾「東京オーヴァルカップレース(GIII)」は、7月28日に最終日が行われた。S級の決勝では、眞杉匠後位から自力に転じた吉田拓矢を、ゴール寸前で交わした鈴木竜士がV。2月の小松島ミッドナイトに次いで、通算2度目のGIII制覇をホームで遂げた。また、A級1、2班戦の決勝は、単騎の福元啓太が最後方からのまくりで前団をとらえて優勝した。

S級決勝戦 レース経過

 眞杉匠がスタートを制して、眞杉-吉田拓矢-鈴木竜士-内藤宣彦が前団に構える。中団に寺崎浩平-三谷将太-友定祐己、荒井崇博-小倉竜二で周回を重ねる。
 8番手の荒井は青板2コーナーから上昇を始めて、眞杉に併せ込む。誘導との車間を空けた眞杉が、赤板過ぎに荒井を突っ張る。早めに下げていた寺崎は、1センター過ぎから踏み込む。眞杉もペースを上げるが、打鐘過ぎに寺崎が叩き切る。友定は遅れ気味で、3番手に飛び付いた眞杉は最終ホーム手前から再度、仕掛ける。逃げる寺崎が合わせて、眞杉は不発。今度は吉田が、2コーナー手前でまくりを打つ。寺崎を4コーナー手前でとらえた吉田に、鈴木、内藤の追走。ゴール前で吉田に並んだ地元の鈴木が、最後のハンドル投げで交わして優勝。2着に吉田、3着も内藤でラインで上位を独占した。

鈴木竜士選手
鈴木竜士選手

 ラインの先頭を務めた眞杉匠は、押しも押されもせぬ関東のエース。番手は今年のダービー王で、元同県の同期、吉田拓矢。関東の屋台骨を担う2人の力を借りてつかんだ、地元でのGIII優勝。
 「いままでの優勝のなかで、一番うれしいです」
 クールな鈴木竜士(写真)が、素直に喜びの言葉を口にした。
 前受けの眞杉が、赤板過ぎに荒井崇博を突っ張ったのもつかの間、寺崎浩平がすぐさま巻き返す。打鐘で叩かれた眞杉が、再度最終ホーム手前で仕掛けるが、前には出切れない。眞杉の態勢が苦しくなると、吉田が自力に転じて2コーナーからまくり上げる。2センター過ぎにまくり切った吉田を、鈴木はガッチリとマーク。同期の両者がほぼ並んだところがゴールだったが、4分1輪差で、鈴木が交わしていた。
 「ラインにすごく恵まれたと思います。まず離れないようにっていうことだけでした。(ゴールの瞬間は)必死すぎて覚えてないんですけど、特に細かいことは考えてなくて、本当に迷惑を掛けないようにってことだけでした。前の2人のおかげです」
 6月福井FIで落車し、サマーナイトフェスティバルの3日目にも落車の憂き目。サマーナイトフェスティバルは4日間を走り切ったものの、そこから中3日。前検日に「体はボロボロ」と語ったのは、本音だろう。地元戦にかける思いと、ラインの力でつかんだ優勝だった。
 「自分の状態も状態なんで、優勝できるとは1ミリも思ってなかった。地元パワーですね。僕はなにもしてないし、2人の力だと思います」
 今年もグランプリ出場をほぼ確実なものとしている眞杉と、S班返り咲きを決めている吉田。繰り返しラインへの感謝を口にした鈴木だが、その両者の躍進を、ただ黙って追いかけるだけでは終われない。自分自身も、関東の力になることを誓った。
 「今年グランプリに出る2人に、おんぶにだっこだったんですけど、その中での優勝なんで、めちゃくちゃうれしいです。いまの競輪は先行力がないと勝てない。自在性だけじゃなくて、真っすぐ走る力も付けて、2人の前を引っ張れるようになりたい」
 最高の弾みを付けて、心強い仲間とともに、次回のオールスターに挑んでいく。

 眞杉の余力を見極めて自力を発動した吉田拓矢は、鈴木との同期ワンツーで2着。
 「眞杉があれだけ踏んで(寺崎に)出切られるんだからしょうがないですね。自分も友定(祐己)さんをさばき切れなかった。スピードが落ちて友定さんが復活してきてしまった。そこで脚を使いました。(最終2コーナー付近では)眞杉もキツそうだったし、(自分で)行くしかないなと。力は出し切った。(今後は)自信を持って眞杉の前を回れるようにならないと。このあとは(オールスターに向けて)眞杉と合宿をするので、しっかり仕上げたい」

 内藤宣彦は、関東勢の追走に専念。ハイスピードのレースに対応して、しぶとく3着に続いた。
 「初手で中団に(近畿勢に)入られることは想定していなかったけど、眞杉はなんでもできるので。(前がもつれていて)自分のところに下がってこられると嫌だったけど、そうならなかったので脚を使わずうまく追走できた。前が眞杉と吉田だったし、どんな展開でも安心感しかなかった。自分は恵まれたのもあるけど、しっかりレースになったし自信になった」






A級決勝戦 レース経過

福元啓太選手
福元啓太選手

 埼京勢が前を取り、小川将二郎が4番手。単騎の福元啓太(写真)と、高本和也が6、7番手で周回を重ねる。誘導と車間を切った吉田昌司に対して、赤板を過ぎても4番手以下の隊列に動きはない。7番手の高本は、2コーナーでインをすくう。吉田が打鐘2センターから本格的にペースを上げて先行。高本が4番手となり、福元は最後方になる。高本は前との車間が詰まらず、5番手の小川が最終2コーナーからまくる。小川は踏み直した吉田をまくり切るのに手こずり、3コーナーから持ち出した福元が、大外を猛然と伸びてくる。一人だけ次元の違うスピードでまくり上げた福元が、鮮やかに優勝をゲットした。
 「小川君が一発なにかするかなと思ってたけど、あとは細かいことはあまり考えず、高本君のカマシだけは気をつけて、基本的には自分が届くところから仕掛けて勝負しようと思ってました。(高本にすくわれたが)あんまりあの1車は気にしてなかったです。(仕掛けてから)小川君がクッションになったというか、じわじわと詰まっていく感じだった。フォームを崩さないように、練習通りに踏めたのが良かったのかと思います。いままでは突っ張り先行にこだわっていたけど、突っ張れなかった時にパニックになったり、気持ちの弱さが出ていた。それで、今回はまくりでも力を出し切ろうと目標を立てていたし、結果としてその成果が出たと思います」



次回のグレードレースは富山競輪「瑞峰立山賞争奪戦」が7月31日~8月3日の日程で実施されます。

サマーナイトフェスティバルとオールスターの間に行なわれる夏真っ盛りの時期のグレード戦で、タフに戦い抜く精神力、肉体力が問われるシリーズとなるでしょう。脇本雄太に続き、昨年大会の覇者でもある古性優作も負傷欠場。優勝争いは、一人S班となった犬伏湧也が軸となりそうですが、思わぬ伏兵の台頭も含めて波乱ムードの漂うシリーズとなりました。

7月24日時点の出場予定選手データを分析した、富山「瑞峰立山賞争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。
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