小倉竜二がスタートを決めて山崎芳仁を迎え入れた。以下、海老根恵太―沢田義和―松山勝久、小嶋敬二―山内卓也、荒井崇博―原司の並びに落ち着いて周回が進む。
赤板で荒井―原が上昇すると小嶋も三番手を追走する。荒井が打鐘の手前から誘導を交わすと、海老根が内を突いて上昇し外の小嶋と三番手を取り合う。ホームで小嶋が外併走からまくると、原が好ブロックして小嶋は外に浮く。バックで三番手の海老根が仕掛けると、山崎も大外をまくり上げる。三角で荒井が海老根を外に張ると、海老根の煽りを受けた山崎も外に膨らんだ。この時に番手の原が一瞬空いたインを抜け出し記念初Vを飾った。2センターで原に切り替えた沢田、松山が続いて2、3着に流れ込む。
輪界最強の機動力を誇る小嶋敬二、山崎芳仁だが、「師弟愛」には勝てなかった。弟子の荒井崇博が気風良く駆け、師匠の原司に記念初優勝をプレゼントした。
「バックで海老根と山崎のスピードが全然違ったんで行かれたかと思ったけど、3コーナーで荒井が持っていって海老根が飛んだんで、それで助かったね。でも、絶対に後ろから誰か来ると思っていたし無我夢中だった。4コーナーを過ぎても誰も来なかったからもしかしたらと思ったけど、勝ったと確信できたのはゴールでハンドルを投げてから。俺が獲っちゃって良いのかなあ。今日は、作戦としては駆けるなら山崎だろうし、そのラインの後ろにいて流した所をカマす予定だった。山崎の後ろは取れなかったけど、前の山崎が引いたんで結果的には自分達が逃げる展開になったね」
10年以上面倒を見てきた愛弟子の荒井が急遽、飛び入りで表彰式に参加し、原は師弟で優勝の美酒を味わった。
「とにかく嬉しいね。アイツとは高校の時から知ってたんだけど、当時からアイツは天狗だったよ。『もう佐賀には俺より強い奴はいない』なんて言ってたから、とりあえず鼻をへし折ってやったのが始まり。アイツも強くはなったけど、この優勝をきっかけにこれから俺も強くならないといけないのかな」
優勝の立役者・荒井崇博は「自分が記念を獲るよりも嬉しい」と素直に喜ぶ。 「今日は先行して3着以内に入れれば良いと思っていた。後ろ攻めになってしまったし、自分から動かないと仕方ないからね。3コーナーで振ったように見えたかもしれないけど、あそこは風が凄く強いところであおられたのもあったんですよ」
準優勝は沢田義和。目標の海老根恵太が不発となったが、スピードに乗って鋭い伸びを見せた。
「レース前、海老根に『切り替えはないから好きに走ってくれ』と言った。小嶋さんの内をうまくすくって前々に踏んでくれたおかげ。4コーナーでは余裕があったから、抜けるかなと思ったんだけどもう少しだったね。でも、前回の観音寺に比べたらレース内容も結果も良かったんで、練習をしっかりとやってきた甲斐がありました」
連日、圧巻のレースで勝ち上がった小嶋敬二だったが、決勝は海老根に内をすくわれたことが命取りとなった。
「ジャンでカマしてくると思って外を見たら、海老根に内から来られてしまった。ホームでは山崎がくればそっちに切り替えようと思っていたけど来なかったんでね。外併走だったし最後は脚が一杯だった」
海老根恵太もバックから勢い良くまくり上げたが…。
「ジャンでどうしようかと迷っていたら内が空いたんでね。バックで行ったと思ったけど、まさか荒井があんなに持ってくるとは…。原さんのところまでシャクってしまえばよかったかも」
海老根のあおりを受けて失速した山崎芳仁は「絶好の展開だったし、行ったと思ったんだけどね。海老根さんの一発が効いた。仕方ないね」。

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