『名古屋競輪開場72周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:3月3日

 名古屋競輪場開場72周年記念「金鯱賞争奪戦(GIII)」が3月3日にスタートした。初日のメイン・特選では、単騎戦だった眞杉匠がまくり追い込みで強襲し、松浦悠士-清水裕友の中国ゴールデンコンビをゴール寸前で逆転して波乱を演出。また、一次予選では地元愛知勢7名のうち6名が二次予選出を決める上々の成果を挙げた。3月4日の2日目には、二次予選7個レースで準決への勝ち上がりが争われる。
 なお、本場では、開催を通して近藤幸徳さんをはじめとした愛知支部OB予想会、山口幸二さん予想会が毎日予定されていますが、「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となりますので、ご協力とご理解をお願いいたします。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

柿澤大貴選手
柿澤大貴選手
 押さえた近畿勢に阿部大樹が続くが、前受けした山本直は車を下げ切らず、中団は中四国勢と関東勢で併走に。外併走の阿部は打鐘過ぎに6番手に車を下げる。中団を取り切った山本が最終2コーナーからまくるが、中井俊亮の番手から松田治之がタテに踏んで応戦。中四国勢を追った阿部は2センターから車を外に持ち出すと、惰性を貰った柿澤大貴(写真)がさらに外を突き抜けた。
 「後方になってしまって厳しいかなって思ったんですけど、山本君が仕掛けてそのあと阿部君が仕掛けてくれたので。余裕はありましたね。伸びて1着なので悪くないです。顔見せは風もなかったんですけど、レースが始まったら少し重かった。練習でしっかりやってきたことを出せるように。力まず力を伝えられるように走れれば」
 阿部大樹は3着で一次予選突破も、レース内容には課題を残した。
 「前か後ろしか考えていなくて中団になってどうしようかなって感じでした。風の強さに気持ちで負けて、中井君のやる気にも気持ちで負けてしまいました。積極的に走ろうと思っていたんですけどね。バックで詰まったんですけど、堤(洋)さんがどう動くかわからなくて。久々の1レースで思ったように動けなかったですけど、踏んだ感じは悪くないと思います」


<2R>

 スタートでけん制が入り、人気の中部勢は前受けを選択。山田諒は赤板で片折亮太の上昇を突っ張る。片折が下げると、間髪入れずに打鐘で大西貴晃が巻き返す。だが、牧剛央が離れてしまい、高橋和也のアシストを受けた山田が大西の番手に嵌る。山田が最終2センターから大西を抜きにかかり、さらに外から高橋が突き抜けた。
 「(山田が)あれだけ頑張ってくれて、3人で決まったのでよかった。自分も(最終)ホームでもうちょい何かできればよかったんですけど(山田)諒もペースに入っていたので余計なことはしないように。番手に入ってからも踏んでいく雰囲気だったし、片折君も来れなそうだったので、あの辺は落ち着いて走れました。余裕はなかったけど、地元で気持ちを入れて走れました」
 大西には出られてしまった山田諒だが、最後は差し返して2着。
 「きついっす。(初手は)本当は中団がよかったんですけど、けん制が入ったので前から。相手の押さえ方次第でしたけど、突っ張りは頭に入れていました。片折さんに勢いよく来られて、思ったよりも踏まされてしまった。大西さんも間髪入れずに来てたのでバックを踏めなかった。でもそこから抜き返しているところは自分で評価できる。高橋さんに入れてもらったおかげなので、明日(2日目)以降も貢献できるように頑張りたい」


<3R>

藤井侑吾選手
藤井侑吾選手
 佐藤幸治は中団の中部勢にフタをしてから近藤夏樹を押さえにいくが、これを近藤が突っ張る。藤井侑吾(写真)は赤板の2コーナーから勢いよく仕掛けて打鐘で先頭に立つと、そのままグングンとペースアップ。ハイペースで駆ける藤井に対して別線は誰も仕掛けることが出来ず、そのまま藤井が力強く逃げ切った。
 「(山内)卓也さんと八日市屋(浩之)さんが付いていたのでプレッシャーはありましたけど、出るところでしっかり出て、最後も踏み直せた。去年の後半はあんな感じのペースで行って最後は持たなかったですけど、ここ最近はあのペースでも持つようになってきたので。やっぱり3月になると毎年良くなるので。今日は100点満点のレースができました。明日(2日目)以降は特選の選手もいると思うので、その中でもしっかりと勝ち上がれるように」
 地元同士の山内卓也が藤井の番手をキープして二次予選へと駒を進めた。
 「あの位置(中団)が取れればと思っていたので。(藤井)侑吾が一番走りやすい位置かなって思ったので、最高の形になりましたね。近藤君が後ろなら切って踏むと思ったんですけど、佐藤君なら押さえ気味だと思ったから狙い通りでしたね。ジャン(打鐘)のスピードが凄くて、正直持つのかなって思いました。練習で強いのは知っていましたけどレースでこれだけ強いのは初めてだったんで。自分も緊張していたのもあって余裕はなかったですね」


<4R>

 磯島康祐が中団の小森貴大にフタをしてから打鐘前に押さえて出る。視界が開けた小森はすかさず磯島を叩きにいくが、磯島も一歩も引かずに両者で踏み合いになる。脚をためた松川高大のまくり頃かと思われたが、最終2コーナーから石塚輪太郎が番手まくりに出て、1着をつかんだ。
 「(番手から出るのを)もう少し待とうと思えば待てたけど、人気になっていたし、待ったら4、5、6着だなと思った。2コーナーでまだ磯島さんも内にいたし、あのままなら松川さんのラインに3人でいかれて小森さんと僕で4、5着だった。共倒れになるのはお客さんに失礼ですし…。自分の中でその葛藤があります。自分が自力の時は残してほしいと思うし。とにかく技術がないです」
 石塚の番手まくりに中澤央治が続いた。
 「小森君には申し訳ないけど、かなり合されている感じだったし、石塚君も難しかったと思う。そのなかで判断してくれたおかげ。最近ずっと試行錯誤していたんですけど、自分には合わなかった。それを元に戻したらよくなりましたね」


<5R>

 押さえた吉田智哉を神田龍が切り、早坂秀悟が叩いて打鐘から主導権。中団の神田は最終2コーナーからまくるが、大槻寛徳が厳しくブロック。神田の勢いが止まると、大槻は返す刀で追い込んで、昨年12月取手の落車から復帰して以来、初勝利をつかんだ。
 「(早坂)秀悟がいいレースをしてくれましたね。カカリも良かったですし。いつもなら引いてカマしても出切って終了って感じでしたけど、いいペースで頑張ってくれました。余裕はありました。(神田が)来たのが見えて止めて、最後もギリギリまで引き付けて。(黒田淳の動きも)全部見えていましたね。だいぶ戻ってきました。(前回3日目にシューズのサンをいじって)全然違いますね。もうあとは微調整くらいです」
 早坂秀悟は打鐘からの押さえ先行でレースを作り、自身も3着に逃げ粘った。
 「スタートはどこでもよかったんですけど、けん制が入ったので。神田君だけには先に切られないように。最悪、吉田君を突っ張ってもいいかなって思っていたので。組み立て的にはオーソドックスな形で、自分らしいじゃないですけど。前回の平で武田(豊樹)さんに『押さえて駆けてもいけるぞ』って言ってもらえたので自信を持って走れましたね。昔の競輪じゃないですけど、これで深谷(知広)や、ワッキー(脇本雄太)とか強い人を倒してきているので」


<6R>

木村弘選手
木村弘選手
 前受けの木村弘(写真)は別線の上昇を受けて7番手へとすんなり車を下げる。先頭の竹澤浩司がペースを上げるが、木村はおかまいなしに打鐘過ぎ2センターからカマシを敢行。スピードの違いで番手の内藤宣彦と共に2車で出切った木村が、そのまま押し切った。
 「スタートは前中団がよかったんですけど、前でもいいかなと。ホームが向かい風だったので、そこ目掛けてカマせば決まるなと思った。気持ち遅れたけど、やりたいことはできた。欲を言えばもっと大きいレースがしたかった。風はあるけど、軽くて走りやすかったです」
 木村マークの内藤宣彦が2着。
 「(木村)弘が強かったです。風が強いので、自力に限らず追い込みも脚を削られる感じだと思います。後ろを見る余裕もなかった。後ろに置かれたけど、弘なら付いていれば必ず仕掛けてくれると思っていたし、一番良いところでいってくれましたね」


<7R>

 前受けから引いた吉田昌司は、打鐘前に切った竹内翼を勢いよく叩いて先手を奪う。吉田マークの伏見俊昭は大きく車間を切って別線の反撃に備える。伏見は最終2センターから車間を詰め、追い付いた勢いのままに吉田を差し切った。
 「(吉田は)一周半もいってくれたので、できるだけ援護できるようにと思っていました。風も強くてだいぶきつそうだったんですけど、後ろもこの風で脚がたまっていない感じでしたね。ワンツーを決められればよかったんですけど、3人で決まったので良かったです。久々のレースで緊張したんですけど、一回走れば自分の調子もわかってくるので明日(2日目)以降も頑張ります」
 打鐘先行の吉田昌司は、伏見の援護もあって3着に逃げ粘った。
 「今日は(別線が)切って切ってって感じでそこから頑張ろうと思っていました。風はまんべんなく向かっている感じできつかったですけど。2人付いてもらったので。伏見さんとは2回目で緊張したんですけど、周りはそのオーラでやられたみたいで。なんとか残してもらいました」


<8R>

大石剣士選手
大石剣士選手
 大石剣士(写真)を押さえて前に出た瀬戸晋作は、長尾拳太を突っ張って主導権を譲らない。前のもつれを見た大石は、打鐘過ぎ4コーナーからスパート。ライン3車できれいに出切った大石は、迫る阿部力也を振り切って白星スタートを切った。
 「前で踏み合うとは思ってなかったし、結果的には展開が向きましたね。ちょうど詰めていった時に波ができてキツかった。長い間、大きめのフレームを我慢して使っていたけど、これ以上点数を落とせないと思って今回から元のフレームに戻した。それがよかったですね」
 大石マークの阿部力也は、前を差し切るには至らず。
 「ただ大石君が強かった。バックで踏み上がっていったし、追い風で加速していく感じだった。(打鐘過ぎの)4コーナーで振られて、内に差さってしまったので置いていかれるかと思った。なんと付いていけてよかった。ゴール前で抜きにいく時にスカスカしてしまったので、修正が必要です」


<9R>

吉本卓仁選手
吉本卓仁選手
 前を取った原口昌平は、小林則之に切られ、3番手内で伊藤裕貴にフタをされてしまう。小林が流したままペースは上がらず、中釜章成が最終ホームでカマして出る。ようやく外が開けた原口はバック7番手からまくり発進。原口の番手からさらに外を踏み込んだ吉本卓仁(写真)が強襲した。
 「今日(初日)はなにもしていないですね。自分がジャン(打鐘)でビビッてしまって入られそうになってしまったんですけど。調子自体は良くなってきているというか戻ってきているので。でも、ほぼ自力を出していないので、自力を出してみて完全復活かどうかって感じですね。でも、追走自体は巧くなってきているのかなって。踏んだりやめたりも慣れてきた」
 絶体絶命の展開をなんとかしのいだ原口昌平が3着。
 「ちょっとダメでしたね。危なかったです。展開も組み立ても失敗したけど、後ろの2人が来てくれてよかったです。本当は先行したかったんですけど…。最後は止まりかけたんですけど、なんとか耐えたって感じですね」


<10R>

 吉田篤史が押さえて流すと、嘉永泰斗は流れを殺さずに打鐘で叩いて主導権を握る。徐々にペースを上げた嘉永が隊列を一本棒にしてレースを支配。小岩大介の援護を受けて、嘉永が軽快に逃げ切った。
 「今日(初日)は逃げると決めていました。ジャンで前に出てペースに入れられれば持つと思っていたので、出切ってからペースに入れて、バックの追い風でもう一回スピードに乗せきるように踏みました。気持ちに余裕を持って挑めましたね。若干体が重かった気がするので、疲れを抜いて調整したい」
 嘉永マークの小岩大介は、吉田のまくりを外に張って2着に流れ込んだ。
 「嘉永君が積極的にいってくれて強かったです。新車を使っているんですけど、まだセッティングが出ていない感じがする。今日(初日)感じた事を修正したい。脚の状態自体は問題ないです」


<11R>

鈴木竜士選手
鈴木竜士選手
 スタートで前を取った隅田洋介は、誘導を残したまま車を下げ、中部、九州勢を受けて5番手の位置を確保する。最終バックでは松岡篤哉が3番手から先まくりを打つが、隅田はさらにその上を踏み上げる。両者の争いは隅田が制し、ゴール寸前で華麗なハンドル投げを披露した鈴木竜士(写真)が隅田を交わして1着だった。
 「隅田さんのスピードが凄かったですね。でも3コーナーのきつい所をいってくれたので。どっちが1着でも決まったなって感じでした。隅田さんが得意の展開になるように、スタートから道中もなにかできればなって思っていたので。やっぱり1着は嬉しい。修正点はないですね」
 まくりでねじ伏せた隅田洋介だが、ゴール前は鈴木の鋭い差し脚にわずかに交わされた。
 「風が強かったから前からって感じで。でも(鈴木)竜士つえーな。あの展開で1着を取れなくて悔しいですね。出切れるには出切れると思ったし、内には負けないと思って回しながらいったんですけどね。竜士も仕上げてきていますね」


<12R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 前受けの松浦悠士は別線を受けて5番手に車を下げ、単騎の眞杉匠(写真)は9番手。松浦は打鐘で前と車間を切って反撃のタイミングをうかがう。先頭の渡邉雄太がペースを上げるが、松浦は最終ホームで一気にカマして、バックではライン4人できれいに出切る。松浦マークの清水に絶好の展開かと思いきや、単騎で松浦ラインを追った眞杉が好回転でまくり迫る。外に張りながら抜け出した清水と、眞杉のゴール前勝負は、4分の1輪差で眞杉に軍配が上がった。
 「要所要所で踏み遅れたけど、なんとかって感じです。緩んだら一人でもカマしていこうと思っていたんですけど、全く緩まなかった。踏み遅れているし、余裕はなかったですよ。車間を詰める勢いで、いけるところまでいこうと思ったら、ギリギリで届いた。いけるかなって感じでした。重く感じたし、疲れがあるかな。しっかりケアをしたい」
 勝ち切れなかった清水裕友は淡々とレースを振り返る。
 「ホームが向かい風だったっていうのもあって終始キツかった。感触としては最悪です。相手が強かった。眞杉君が見えたけど、完全にいかれるなってスピードだった。今日(初日)で脚に刺激が入ってくれていれば」
 ライン4車の先頭で早目の仕掛けに出た松浦悠士は3着。
 「あの辺(最終ホーム)からいくって決めていました。(渡邉)雄太が駆けていたけど、関係なしにいこうと思っていた。スピード自体はよかったけど、追い風で回そうとしたところで眞杉君が来た。思い通りの走りはできたけど、回すところと踏み直しが甘い。自分がタレているから(清水)裕友が伸び負けるんですよね。まだ甘いです」