号砲と同時に石丸寛之と西川親幸が飛び出して誘導を追った。並びは石丸―西川の前受けに単騎勝負の長塚智広、富永益生がそれぞれ続き、更に栗田雅也―中井達郎―中村浩士、大西祐―前田拓也の順で並んだ。
周回が進み、赤板から大西が上昇すると合わせて栗田も踏んで中団を取りにいった。大西がジャン前で誘導を切ってペースを落とすと、長塚が内を斬り込んで中団取りを狙う。更に富永が追い上げて好位を狙いにいった。それとほぼ同時に大西がホームから本格的に踏み込んで先行態勢に入る。三番手に付けた栗田は車をはずして外をけん制すると、富永は行き場を失って終了。大西が逃げるなか、車を外した栗田は、そのまま巻き返して出た。しかし、懸命に逃げる大西とスピードが合ってしまった。すると狙い澄ましたかのように石丸がまくりスパート。スピードが違い、石丸は前団を瞬時にまくり切った。石丸は懸命にゴール目指したが、4コーナーから早めに追い込みをかけた西川が、直線で鋭く抜け出して優勝。石丸はゴール前でわずかにタレてしまい、最内を伸びた長塚が2着に食い込んだ。
石丸寛之のまくりに乗ったベテランの西川親幸が直線で渾身のV差し。平成5年の地元熊本以来、実に15年ぶりとなる記念制覇を達成。検車場に戻ってきた西川は終始、笑顔でインタビューに応える。
「石丸君は強いので、信頼して任せていました。打鐘で石丸君が内に行ってちょっと切り替えようか迷ったけど、いいところまでは必ずまくってくれますからね。そのスピードに乗せてもらった方がチャンスがありますから。踏み出しに集中していたけど、意外と楽に付いていけました。踏み直しがすごいと聞いていたので、早めに踏み込んだんですが、思ったよりも自転車が出てくれました。4日制の記念優勝は初めて。同期や同級生が頑張っているので、励みになっている。狙うは年末(のGP)。まだまだ先は長いし、一戦一戦悔いのないように頑張ります」
今シリーズ唯一のSS班・石丸寛之は決勝でも豪快なまくりを決めたが、直線で2人に交わされた。
「踏み出した瞬間、まくり切れると思いましたが、今日はちょっと重く感じましたね。最後はタレてしまったし、ズッポリいかれてしまいました。慌てて外に持ち出したので、内からもいかれてしまった。決勝は結果的に3・71のギアが失敗だったけど、今回はこのギアを試そうと思っていたから仕方がない。決勝は結果を残せなかったけど、今回は勝ち上がりでいいレースができたと思います」
長塚智広が俊敏なレース運びから直線で最内を強襲し、2着に食い込んだ。
「初手は大西君ラインから行こうと思っていたけど、先に前に出ちゃって…。連係できずに大西君には悪いことをしました。ホームからみんな全力のダッシュできつかったけど、2着なら満足です」
連係ミスで浮かない表情は静岡コンビ。単騎でまくる形となった栗田雅也は「三番手に入ったけど、富永さんが追い上げて来たのが分かったから外に張ったんです。そうしたら中井さんが内に来てしまい…。中井さんもまくる脚があるから邪魔をしたくなかったけど、自分も脚が残っていたので、迷いながらまくっていきました」とレースを振り返る。
中井達郎は「栗田君が出切れないと思って切り替えたんです。前田さんがけん制したときに内を突けばチャンスがあると思ったんですけどね。今日は栗田君とちょっと呼吸が合わなかった」と言葉少な。
地元の富永益生は追い上げに失敗。見せ場を作れなかった。
「単騎よりも長塚と2人で並んだ方がチャンスがあると思って後ろに付いた。展開がもつれて、栗田のところまで追い上げれば勝機があると思ったけど、上手く決まらなかった」
大西祐は公言どおり先行し、力は全て出し切った。
「栗田さんと踏み合いになってしまい、出るまでにかなり脚を使いましたね。でも、今日は風もなく、バンクが軽くて走りやすかった。前田さんに何とか3着までには入ってもらいたかったけど、僕の力不足ですね。記念の決勝は場違いな感じがしたけど、いい経験になりました」
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