『福井競輪開設67周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:7月25日

 福井競輪場を舞台に行われた開設67周年記念「不死鳥杯(GIII)」は、7月25日に最終日を迎えた。激戦の決勝を制したのは脇本雄太。野原雅也の番手からまくって優勝。2年ぶり、3度目の地元記念制覇を成し遂げた。
 また、9レースに行われた「KEIRIN EVOLUTION(ケイリン エボリューション)」はテオ・ボスが圧勝した。

決勝戦 レース経過

 号砲と同時に村上義弘が勢いよく飛び出し、近畿4車が前団に収まる。初手の並びは野原雅也-脇本雄太-稲川翔-村上、北津留翼-橋本強、郡司浩平、後閑信一の順で落ち着く。
 青板の2コーナーから北津留が上昇。前受けの野原は3コーナーで誘導員を交わしてこれを突っ張る。北津留は下げる一方、近畿勢を追った郡司が2センターで村上と接触して落車。赤板から再度、仕掛けようとした北津留に合わせて、野原は一気にペースを上げる。これで北津留は6番手の位置に戻り、一列棒状で打鐘を通過する。ハイピッチで駆ける野原の後位で絶好となった脇本は最終2コーナーから番手まくり。同時に踏み込んだ北津留はほとんど車が進まずに不発。最後まで力強く踏み切った脇本が後続の追撃を振り切り、2年ぶり通算3度目の地元記念制覇を果たした。続いた稲川が2着、村上が3着に流れ込み、近畿勢で確定板を独占した。

脇本雄太選手
脇本雄太選手

 一段と成長して戻った地元のエースの優勝に、ファンは大いに沸いた。脇本雄太(写真)がチャンスをモノにして、地元記念を制覇した。
 「福井はGIだと思って走っているので、獲れて嬉しいです。(野原)雅也も突っ張ると言っていたし、後輪に集中して。雨の中での番手回りはこれまでになかったし、記念の決勝っていう大きな舞台で、改めて人に任せるというプレッシャーを感じました。雅也、(稲川)翔さん、村上(義弘)さんに助けられて優勝できました」
 世界を相手に戦う脇本にとって、2年ぶりとなった地元記念。今回の敵は自分自身だった。競技と本業のギャップに苦しむも、きっちりと修正して期待に応えた。
 「競技では、点と点の争いをしていて。自分が勝つ意識が強い。でも、競輪はそうじゃないって改めて思いましたね。気持ちが整った上で、ライン戦を意識して走る。競技思考との切り替えが抜けていなかったんですけど、修正できました」
 今後も競技と本業で多忙な日々は続く。しかし、自分を乗り越えた脇本なら、結果は付いてくるだろう。
 「この後は中6日で川崎のナイター記念です。詰まっているけど、自分は空けない方が調子良い。あえて詰めました。空いてしまうと、競技の思考が抜けないので。そこを含めて、自分との勝負だと思っています」

 稲川翔が脇本に続いて2着。ラインの3番手を固めて、脇本を盛り上げた。
 「それぞれがやるべきことをやりました。その中で僕がもうちょっと詰め寄っていれば。後ろの村上さんにもチャンスがありましたね」

 3着の村上義弘は、ラインの後ろで後輩の成長を感じた。
 「脇本は初日がダメだったけど、立て直してくれた。僕は自分の回った位置で仕事をしようと。ただ、(郡司との)接触があって車輪が…。最後はいっぱいでした。レース巧者で強い人がいる中で、展開を予想しにくかったけど、雅也も先頭の役割を果たしてくれた。今回、雅也と初めて連係して。一時は落車で悪かったけど、頼もしい選手になった。自分も課題がたくさんある。回る位置の中で、展開を読んでいけるように」

 野原雅也は大役を果たし、ホッと胸をなで下ろす。
 「先輩方が付いてくれているし粘られるのが嫌だったので、前を取って欲しいとお願いしました。(郡司の落車は)頭がいっぱいでわかりませんでした。ただ、後ろを見たら村上さんがいたので、4人いるのはわかりましたね。ラインで決まったのでよかったです」

 北津留翼は、見せ場を作れず7着敗戦。
 「押さえるタイミングはあそこしかなかったけど、バック線が雨で見づらくて。2周半前だと失格になってしまうので。そこからいまいち踏めませんでした。(残り)1周手前でいったら面白かったかな。僕がダメでも岩津(裕介)さんにはチャンスがあったかもしれない」

 岩津裕介は、目標の北津留と共倒れに終わった。
 「近畿勢と逆のことがしたかったですね。後ろになったとしても、一回は主導権を取りたかった。僕たちの組み立てが甘かったです」

 単騎の後閑信一は思い描いた展開にならず4着まで。
 「(郡司の落車は)びっくりしました。郡司君が一波乱を起こしてくれればと思ったけど。あとは、北津留君が叩いてくれないと何もないですね」






9R KEIRIN EVOLUTION(ケイリン エボリューション)

ボス選手
ボス選手

 ケイリンエボリューションは断然の人気を集めたボス(オランダ)(写真)が脚力の違いを見せつけた。レースは赤板を過ぎても動きはなく、前方2番目に位置した掛水泰範が打鐘から出ていく。吉永好宏が続き、人気のボスは後方6番手。最終ホームを掛水、吉永、櫻井正孝、笠松信幸、中井俊亮の順番で通過し、ボスは変わらず6番手に。しかし、ボスのパワーはケタが違った。ボスは1センターからスパートすると一瞬で前団を飲み込み、後続をブッ千切って勝利。前回、久留米でブフリが出したタイムをコンマ3秒上回る、上がり10秒1と驚愕のタイムを叩き出した。
 「(タイムは)グッド! 嬉しいね。ペーサーが上がって残り1周から仕掛けようと思ってた。中井さん、櫻井さん2人とも速いレーサーだから、中井さんの後ろで様子を見たけど、櫻井さんは行かなかったね。残り1周のスピードが自分にとって良いスピードだったのでいけたね。競輪を走っている間も、カーボンフレームの自転車を練習してたのでよかった。ディスクホイールだから回転数を補えた。走るのも7人だったから前が見やすかったね。このあとは競輪のフレームにアジャストして。このあと一時帰国するけど、また戻ってきて8月の名古屋も頑張ります」

 吉永好宏が2着に入り、出迎えた選手から「日本人1位! 優勝だよ」と祝福を受ける。
 「僕は自分から仕掛けられないんでね。ダッシュが1番緊張しました。平面だったし、掛水君には競輪で3回くらい千切れてるから。ペダリングもへったくれもない、必死でついていっただけ」

 櫻井正孝は日本人選手のなかで人気を集めたが、結果は4着。
 「打鐘で出たけど、(掛水に)突っ張られてしまいました。3着に入ったと思ったんですけどね」

 中井俊亮は慣れない自転車に戸惑い6着に終わる。
 「初手はもう少し前に居たかったですね。ボスの前になってしまったんで。前に駆けられてカーボンだから、伸び方がいつもと違ってすごく良くて…。走りにくかったですね。怪我は全く問題なかった。良い刺激になりました」