『奈良競輪開設73周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:2月22日

 奈良競輪場で令和6年能登半島地震復興支援競輪・開設73周年記念「春日賞争覇戦(GIII)」が、2月22日に幕を開けた。初日のメイン、特選では、8番手からのロングまくりで前団をのみ込んだ脇本雄太が1着で好スタートを切った。また、一次予選では、三谷将太や中井太祐、俊亮の兄弟も勝ち星を挙げて、地元の記念シリーズを盛り上げた。シリーズ2日目の2月23日は、二次予選で激戦が展開される。
 記念シリーズは開催中の毎日、300人に先着プレゼント。「あったか肉グルメ」フェスティバル、未確定車券抽選会、予想会トークショーなどが予定されています。また、2月23日の2日目は、アニマルプレイランド、ぬりえスタジアム、青森物産展なども行われます。奈良競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

 大外から武井大介がスタートを出て、南関勢が前団に構える。青板から上昇を始めた佐々木堅次をバック過ぎに道場晃規が突っ張る。いったん下げた佐々木は、インを進出して赤板を迎える。先行態勢の道場がペースを握り、打鐘では4番手が佐々木と田中和磨で併走も内の佐々木が踏み勝つ。道場は落ち着いて徐々に踏み上げて駆ける。佐々木は車間を詰めていっぱい。番手の嶋津拓弥が、きっちりと交わして1着。
 「道場君が頑張ってくれた。なんとなく中団で(別線が)併走しているだろうと思っていたけど、道場君はダッシュがいいので付くことに集中していた。ずっと踏み上がっていたので誰も来られないだろうと。途中からは車間も空けなくていいなと思った。道場君は脚があるからこういうレースをすれば強くなっていくと思う。(自分は)人の後ろも増えているから、少しずつこうやって変わっていくのかなと」
 道場晃規は別線に一度も先頭を譲ることなく突っ張り先行で、ラインでの上位独占をメイク。自らも2着に粘り込んだ。
 「前を取れたら突っ張ろうと。別線を出させると一番後ろになってしまう。直線も短いし後ろの2人を信頼して駆けようと。1レース1番車を任されたので、(ラインで)ワンツースリーが決まって良かった。最近は先行していて、前々回の小松島でも(準決で)逃げて2着だったし、自信をもって2人を信頼して駆けました」


<2R>

吉本卓仁選手
吉本卓仁選手
 秋本耀太郎が青板のバック過ぎに先頭に立つが、赤板で後方の片岡迪之が早めに巻き返す。打鐘で叩いた片岡が主導権を奪取。3番手の掛水泰範はからまれて、そこを最終ホームで吉本卓仁(写真)がまくる。吉本のスピードが良く、逃げる片岡を3コーナーでとらえて福岡ワンツーで吉本が1着。
 「片岡君が来たら突っ張って、秋本君を出させてと思っていたけど、最初に来たのが秋本君だった。今開催はデキもデキなんで、なんでもしたいっていうのがあった。奈良の1コーナーは出ないので、(まくりのタイミングは)嫌なところ順番が来たなって。いかんせん脚力が落ちている。もうちょっとキレが欲しい。ゴール前も粘りたいけど、(現状では)これが限界ですね」
 短い直線で4分の1輪まで詰めた稲吉悠大が2着。
 「もう少し展開が動くかなって思ったけど、ああいう形になって展開が向いた。(吉本が)強かったです。(吉本は)まくってからのコース取りも上手だった。自分は最後、ドリフトしてしまった。差せればいいけど、付いていけているんで問題ないです」


<3R>

 赤板手前で佐々木吉徳が出た上を青柳靖起がカマし気味に仕掛けて打鐘手前で主導権を奪う。8番手になった栗山俊介は4コーナーから反撃に出て、6番手の近藤隆司が合わせてロングまくりを打つ。逃げる青柳も抵抗するが、坂本健太郎のけん制を乗り越えた、近藤が今年の初勝利を収めた。
 「佐々木君の押さえ方が甘くて、1回踏んだらやめてくれた。青柳君も出てから流している感じだった。それでチャンスが出てくれた。栗山君の動きは見えていなくて、詰まったところで仕掛けようと。思いのほか、詰まる勢いを使えてそのまま行っちゃえと。ナショナル(チーム)の人たちがやっているような乗り方を1カ月ほどやっていたけど良くなくて、今回から以前の乗り方に戻したら気持ちが楽になった。練習での感覚も良かった」
 近藤マークの海老根恵太は、直線で外を追い込んで坂本に踏み勝った。
 「東出(剛・54期、引退)さんの命日だったので車券に絡みたいなと思っていた。(近藤は)1回突っ張ってくれたら、いいなと思ったら突っ張ってくれた。(最終)ホームで仕掛けてくれて、以前は淡泊なイメージだったけど、前々に踏んでくれて心強かった。33バンクのの特徴で忙しくて脚にくる走りになったが、付いていけて良かった」


<4R>

川口聖二選手
川口聖二選手
 岡崎景介をけん制しながら川口聖二(写真)が切って出る。そこを小池千啓が赤板過ぎに出て、川口は落ち着いて3番手をキープする。5番手が単騎の鈴木庸之で、八谷誠賢が6番手の一本棒で打鐘を通過。小池が飛ばして風を切る。最終1コーナーで鈴木が踏み上げて、川口が合わせてまくる。鈴木は不発で、川口が栃木コンビをのみ込んで先頭のゴール。通算200勝を遂げた。
 「(200勝は)うれしいですね。岡崎さんに切られたらキツいんで、そこは突っ張ってあとは小池君待ちでした。鈴木さんが追い上げてきたらっていうのもあったんで、そこは踏みました。前も後ろもしっかりと確認できたと思います。今日(初日)はいろいろいじってきたんで、もうちょっとスパンって進むところがあるかなと。でも、前回よりははるかにいいです」
 森川大輔は直線でも詰められず、そのまま1車身差の流れ込み。
 「細切れなんで、川口君の好きなように位置も全部、任せていました。(3番手を取ったのも)さすがですし、強かったです。自分はいっぱいで抜けなかった。(前回から)ちょっと空いてたんで、しっかり練習ができた。ただ、シューズを換えたりして、まだかみ合ってない」


<5R>

中井俊亮選手
中井俊亮選手
 奥村諭志に突っ張られた末木浩二が中団に下げると、村田瑞季は赤板目がけて仕掛ける。中近ラインが3車で出切り、今度は末木は中団まで追い上げて奥村と併走で打鐘を迎える。逃げる村田の番手で車間を空けた中井俊亮(写真)は、外併走からまくった末木を最終2コーナーで外に振る。それでも末木は止まらず、3コーナーから中井が踏み込む。末木に踏み勝った中井が、地元で1着。
 「前の動きを見ながら村田君も行ってくれて上手に走ってくれた。末木さんも併走しながら休んでいる感じがあって、どこから仕掛けてくるのかなって。末木さんのまくりに合わせてって感じでした。村田君を残したかった。でも、末木さんがまくってきているしで、迷いながら踏んでしまった。そこは反省です」
 まくりを合わされた末木浩二だが、河野通孝が鈴木幸紀のコースを阻むラインプレーで2着に入った。
 「スタートを失敗しました。前を取りに行って近畿勢が前ならその後ろのつもりだったが、西田(雅志)さんのスタートが早かった。一番嫌な初手の位置になった。あの並びになると奥村君に突っ張られるなと。そのあとに中団に追い上げられたのは判断的にも良かった。(中団で)回しながら外併走をしてて余裕はあった。(中井の上を)乗り越えられるのが一番良かったけど、難しかった。調子は好調を維持している」


<6R>

 小森貴大に併せ込んでから再度、川口雄太が仕掛けるが、前受けの上川直紀はそれを阻んで出させない。上川が空けたインを赤板1センターで突いた小森が先頭に立つ。近畿ラインが出切り、単騎の須藤悟まで続いて打鐘。川口が浮いて、小川真太郎は5番手に切り替える。小森は落ち着いて別線の動きを確認するように、徐々にペースを上げて駆ける。小川が自力に転じて最終2コーナーからまくり、間合いを計った中井太祐はギリギリまで引きつけて追い込んだ。弟の俊亮(5レース)に続いて、地元記念で勝ち星をつかんだ。
 「小森は余裕をもって仕掛けていた。けど、初連係だったので、どんな感じで掛かっていくのかわからなかった。それであんまり車間を空けられなかった。余裕をもって(周りを)見られていたんで、状態は問題ないです。最近は流れもいいので、あとはしっかりと集中していきたい」
 外に浮いて後退する川口とは息が合わず、小川真太郎はやむを得ずまくりで打開した。
 「(近畿ラインが内から主導権を握って)僕が近畿の後ろに付いていれば、(川口)雄太を入れてあげられるかと思ったんですけど。雄太が下がっていたので難しかった。(中井)太祐さんの様子見で(まくりに)行ったんで、なんとか(2着に)いけた。車間も詰まったんで出も良くなかった。初日はいつもあんまり良くないけど、悪くはないと思います」


<7R>

 青板のバック過ぎに出た真船圭一郎も踏み込むが、そこを佐藤幸治が強引に押さえて先頭に立つ。両者が脚を使って、藤井侑吾のカマシごろ。赤板2コーナー手前からダッシュを利かせて藤井が前団に襲い掛かり、スピードの違いで主導権を奪う。最終ホームではすでに車間が空いて佐藤が4番手。真船は不発で、藤井ライン以外には出番がない。藤井のスピードは衰えず、笠松信幸、小林大介を難なく振り切って人気に応えた。
 「ちょっとバンクが重いのかキツかった。とにかく出切らないとと思って最初は結構、踏みました。ペースで踏んだつもりだけど少し重かった。脚はあるかもしれないけど、組み立てとか展開で甘い部分がある。その辺を煮詰めたい」
 藤井のダッシュに付け切って流れ込んだ笠松信幸が、脱帽する。
 「自分も調子がいいなかで抜ける感じがまったくなかった。カマシのスピードも良かった。脚もたまるところもなく掛かっていく感じだた。彼(藤井)は上でも通用すると思う。単調にならず中団、中団で周りを見ながらだったし藤井君は成長している感じがした」


<8R>

小松崎大地選手
小松崎大地選手
 7番手にいた小松崎大地(写真)を警戒しながら、橋本優己はうまくペースを握り赤板を迎える。先行態勢から徐々に橋本が踏み上げるが、2コーナー手前で小松崎も仕掛ける。小松崎の加速に荻原尚人は遅れながら続くも、西村光太がつくったあおりで連結を外す。小松崎が最終1センター過ぎに1人で出切り、橋本が追いかける。その後ろで西村と瀬戸晋作でもつれる。橋本はそのまま詰め切れず、小松崎がセーフティーリードのまま押し切った。
 「あの形になったら(橋本と)踏み合いになるかと思った。ちょっと立ち回りに反省があります。しっかりと走れていれば、ラインで決まったのかなって。申し訳ないですね。押し切れているんで悪くない。あと(もっと)良くなってくれればいいなって思っています」
 果敢に攻めた橋本優己が2着。援護した西村とともに二次予選に進んだ。
 「相手(小松崎ライン)4車なんで、前々に踏みながらと思っていました。理想は小松崎さんを合わせて、ラインでワンツースリーなんですけど。小松崎さんも脚がありますし、(いまできるなかでは)あれがベストかなと。ただ、フォームもグチャグチャで、内も空けてしまった。ああいうところは空けないように」


<9R>

格清洋介選手
格清洋介選手
 格清洋介(写真)、宗崎世連の順番で出て、すかさず池野健太も赤板手前から巻き返す。しかしながら、それを察知した宗崎が踏み上げて、打鐘では壮絶な叩き合いになる。前団の隊列が重なり、仕掛けどころが訪れた格清が最終1コーナーからアタック。宗崎を制した池野の番手から山本伸一も踏むが、格清がまくり切った。
 「(7番手になった)スタートの位置は想定外でした。考えていない並びだったので、1回切ってそこからかなって。池野さんが仕掛けてきた時に入られそうになったけど、そこはこだわった。前の決着がつく前に仕掛けようと。力を出せる時にいった。踏み出しは重かったからキツかった。1着が取れたので状態は普通ぐらいですね」
 直線猛追の松坂洋平は、半車輪差の2着。
 「スタートは失敗しました。あの並びは考えていなかったけど、格清君がすべてやってくれた。接触したことで踏み出しが遅れてしまったけど、なんとか付いていけた。抜けなかったですけど。(前回から)半月ぐらい空いて、しっかり練習ができた。疲れが前検日に少しあったので抜けてくれれば」


<10R>

菅田壱道選手
菅田壱道選手
 5番手の清水剛志が、坂本紘規をけん制しながら先に切って出る。その上を坂本が踏み込んで、菅田壱道(写真)は飛び付くかに見えた清水を制して番手をキープ。坂本ライン3人が出切り、清水は4番手になる。赤板1センターから車間を詰める勢いで伊藤稔真が巻き返す。最終ホーム手前で菅田に外に振られた伊藤稔は後退。今度は1コーナーから清水がまくり、菅田が阻む。さらに松岡健介も踏み込むが、的確な判断から菅田が抜け出した。
 「(坂本)紘規が駆ける番組構成だったし、あとは清水君だったり、櫻井(学)さんがインを切り合うかなと。展開が向いたと思います。紘規が出て流したところは、キツめに締めた。うまくしのげました。紘規も長い距離を行っていた。番手から出ていくことは簡単ですけど、なんとかワンツーを決めたいなと。止めて、止めて、ダメだったらっていうのはあったけど、奈良の特性上、あそこまでいけば残るかなと」
 後ろを守った菅田にも助けられた坂本紘規は、長い距離を踏んで2着に踏ん張った。
 「(周回中は)あの並びは一番嫌なパターンだった。(残り)3周から外を踏まされたしキツかった。流れに沿って切ってからは、あとは(別線を)出さないように。なんとかっていう感じでした。新車を使っていた時期もあったんですけど、それが良くなかった。2カ月くらい前に戻してからは、良くなってきている。ただ、(初日は)セッティングをいじって失敗だったので修正したい」


<11R>

 山口翼の上昇を阻んだ貴志修己が、突っ張った青板過ぎから先行態勢を取る。九州勢が中団を確保して、山口は7番手に戻り赤板を通過。2コーナーから山口が仕掛けるも、主導権の貴志が踏み上げて山口は進まない。4番手で脚をためていた田川翔琉は、最終ホームでも動かず、2コーナーまくり。田川のスピードが鈍り、踏み込んだ松尾勇吾は鷲田幸司に止められる。番手絶好の三谷将太が、地元記念を白星スタート。
 「貴志君の好きなように走ってもらった。彼が頑張ってくれたのに残せなかったのは、自分の技量不足。ラインに助けられている感じがしますね。まだスタートラインにも立っていない。決勝に乗ってからなので。お客さんの声援はすごかったですね」
 近畿ライン3番手の鷲田幸司は、最終4コーナーで松尾のコースを塞いでから追い込んで伸びた。
 「貴志君が気合を見せてくれて、(踏む)距離が長くなりそうだなと。ただ、日中から気温が下がってバンクが重くなり、ロングでいくと(ラインの)3人で決めるのには難しい条件になった。感触はいい。例年に比べて福井は雪が降らず、地べたで乗れているので調子がいい」


<12R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 前受けの新山響平は誘導との車間を空けて別線の反撃に備えるが、青板バックでは8番手の脇本雄太(写真)は動かない。波をつくりながら新山が絶妙なペースで駆けるが、脇本も打鐘でスパート。最終ホーム過ぎに4番手の古性優作に並び、脇本が東日本勢に迫る。バックでもう一度加速した脇本は、守澤太志のけん制を乗り越えて新山の逃げをとらえた。
 「メンバー構成上、力ずくでいかないとレースをさせてもらえないかなと。(周回中で)8番手になった時点で押さえにいけば(新山に)突っ張られるだろうと。中団には古性君もいるんで。新山君の道中のスピードもかなり良くて、行けるか行けないかは半信半疑でした。行けて良かったけど、自分のなかでは全然、満足はしてない。ただ、行く気持ちと、踏み込みはできているんで」
 新山の先行を利した守澤太志は、脇本を止められずも三谷竜生に踏み勝ちまずまずの動きだった。
 「いつもの新山君の先行と違って蛇行しながら走っていた。いつもなら(別線が)来たのに合わせてダッシュするんで、来たのかっていうのはありました。しっかりと駆けてくれたのに、脇本君を止められなくて申し訳ない。(新山)響平君が強くて恵まれただけだけど、このメンバーで2着なんである程度、走れるかなと」
 脇本マークの三谷竜生は、最終2コーナーからバックにかけて古性に張られて脚力を消耗。その分、直線での伸びを欠いた。
 「脇本君を信頼して付いていくだけでした。(周回中の位置は)想定の範囲内でした。あとは脇本君がどこで行くか。(脇本が仕掛けたあとは)僕のところで古性君と合ったので警戒しながらでした。それで最後は伸びなかった。ただ、後ろに付いている感じも、比較的、余裕があった。あとは日に日に(もっと)良くなってくれれば」