『広島競輪開設72周年記念in玉野(GIII)レポート』 最終日編

配信日:12月15日

 玉野競輪場で開催されてきた大阪・関西万博協賛・広島競輪開設72周年記念in玉野「ひろしまピースカップ(GIII)」は、12月15日に最終日が行われた。注目の決勝は、山下ろしをかけて太田海也が主導権を奪取。番手を回った松浦悠士が勝機を逃さず、4度目の地元記念優勝を飾った。松浦のGIII優勝は9月岐阜記念以来で、今年3度目、通算22回目となる。
 なお、同時に行なわれたレインボーカップ・チャレンジファイナルは、福田稔希、伊東佑晟、川上隆義が1、2、3着。この3人は12月16日付けでA級2班へ特別昇班を果たす。

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると外枠から鈴木玄人が飛び出したが、内枠の菅田壱道が制して誘導員の後ろを占める。新山響平-菅田-渡部幸訓の北日本勢が前を固め、単騎の鈴木、佐々木眞也はこの後ろ。太田海也-松浦悠士-池田良の中国勢が後攻めで、山田庸平が最後方。
 青板2コーナー付近から6番手の太田が上昇を開始すると、3コーナーから新山が誘導員との車間を空けて後方の動きを警戒する。新山に見られた太田だが、2センターではイエローラインの外まで上がり、4コーナーの下りを使って赤板過ぎに先頭に立つ。山田まで続いた4車が出切るとペースは緩み、単騎の鈴木、佐々木がともに切り替えてバックで山田を掬う。掬われた山田は鈴木、佐々木に入られて6番手に下がる。打鐘過ぎでも後方の動きをしきりに警戒していた太田は、最終ホームを目掛けて再加速。松浦は1コーナー過ぎから太田との車間を空け始める。2コーナーから5番手の佐々木が仕掛けると、松浦はそれに合わせて3コーナーで番手まくりを放つ。池田は松浦の仕掛けに口が空きながら、外の佐々木をけん制。4コーナーを先頭で回った松浦は後続のもつれを尻目に楽々と押し切って地元記念制覇。佐々木の仕掛けに乗る形から池田と佐々木の間を突いた山田が直線半ばで池田を交わして2着に入る。松浦と地元ワンツーを目指した池田は3着。


松浦悠士選手
松浦悠士選手

 競輪祭から動きが一変。今年最後のG1タイトルには手が届かなかった松浦悠士(写真)だが、確実に良化している感覚をつかみながら挑んだ2年ぶりの地元記念だった。シリーズ3度目の連係となった太田海也の番手から自力に転じて、自身4度目の地元記念制覇を達成した。
 「(優勝した今の率直な気持ちは)うれしいです。風も強かったですし、昨日(準決勝)よりも(太田の道中の)ペースが速かったので。(最終)バックで(太田が)止まった感じがあったので踏ませてもらいました」
 2日目、3日目と抜群のスタートを決めていた松浦ながら、決勝はSが取れずに中国ラインは後ろ攻めに。それでも連係実績豊富な太田を信頼しながらリードして冷静にレースを進めた。
 「スタートは菅田(壱道)さんの後輪には(自分の前輪を)掛けていたんですけど、鈴木(玄人)君が見えていなくて。車輪が掛かっていなかったので下げました。(後ろ攻めにはなってしまったが)初日もそうですけど、(突っ張りを得意としている新山に対しての切り方が太田)海也君がめちゃくちゃうまかったです」
 風速1.8メートルと昨日よりも強いバック向かい風の中で、赤板からダッシュ良く押さえて迷わず駆けた太田の気持ちとカカリはもちろん把握しつつ、真後ろの池田にもチャンスがあるようにと踏み込んだ。 
 「あそこ(最終3コーナー)で待ったら(池田)良さん(の着)がないんで。(踏み込んだ感触は)めちゃくちゃ重たかったですけど。後ろの気配がなかったので。良さんの位置は確認できなかったのでどうかなっていう感じでした」
 今年は落車に苦しむ一年で、思うようなレースができずない日々が続き、来年はS班のユニフォームを脱ぐことになるが、落ち込んでいる様子は一切なし。過去は振り返らず、前をしっかりと見つめている。
 「競輪祭の前のことはもう忘れました(笑)。競輪祭が良かったので。過去のことを考えても仕方ないので。ようやく自分の走りができるようになってきましたし、これからの走りを見てもらえればなって思っています。(状態は)整ってきています。(来年の目標は)タイトルを獲りたいです。獲っていないタイトルはもちろん欲しいですけど、まずは(2月に)全日本選抜があるので。1月が走れないのは残念ですけど、1か月練習できるのでしっかり頑張りたい」

 大会連覇を目指して決勝に挑んだ山田庸平は、松浦と3車身差の2着でゴール線を通過。打鐘手前で鈴木にすくわれてしまったことが致命的だった。
 「太田君のラインが後ろからは想定内でした。新山君は昨日までの3日間より、今日は出させるんじゃないかなって。そこの読みはあたっていました。ジャンの所で緩んで、すくわれるんじゃないかと思ったらすくわれてしまって。でもそこで勝負するよりも引いた方がいいかなって。ごちゃつくと新山君のカマシがくると思ったので。脚を使わないほうがいいかなと思って引きました。(打鐘過ぎに前に入った)サラ脚で中団の佐々木君が(先に)まくるんじゃないかなと。人任せになりましたけど。自分でいける力があれば。いける力がないとG1はきついので。練習を変えてまだ2週間ぐらいですけど、悪くない。来年に向けてももう少しやってみようかなと」

 69周年大会以来で地元記念決勝に勝ち上がってきた池田良。3年前の決勝で松浦に離れてしまった悔しさを糧に追走することのみに集中していたが、松浦が自力に転じた最終3コーナーで踏み遅れてしまう。それでもまくってきた佐々木を懸命にブロックするナイスアシスト。最後は山田に伸び負けるも3着入線。
 「スタートは松浦君が取りにいったと思うけど、後ろからになりましたね。でもどのみち(太田は)先行の組み立てだろうと思っていたので。赤板のところはうまく対応できたけど、(最終)バックで(車間が)詰まって。松浦君も(車間を)空けたと思うんですけど。内に気配もあるしでそこはうまく対応できなくて車間が空いてしまいましたね…。最後は何とかって感じで良かった。決勝の舞台、地元記念は決勝に乗りたいなと。今はこんな感じですけど、点数を上げてまた挑みたい」







レインボーカップチャレンジファイナル

福田稔希選手
福田稔希選手

 号砲とともに岡部陸斗、弓矢輪太郎、久田朔、伊東佑晟の4名が勢いよく飛び出したが、最内枠の岡部がS取り争いを制して正攻法に構える。岡部は青板バック過ぎから誘導員との車間を空け始めたが別線に動きはなく、9番手にいた小川三士郎が内から潜り込んでいく。5番手にいた志田愛希飛は小川に絡まれて外に弾かれそうになったが、そのタイミングで覚悟を決めて打鐘で岡部を叩いて先頭に躍り出る。叩かれた岡部は志田ラインとの車間が大きく空いてしまったが、詰める勢いで最終バックからまくりを発動。志田をリードしていた伊東が気配を察知して番手まくりで岡部だけは合わせ切ったが、最終2センターで外を踏み込んだ福田稔希(写真)が直線で一気に抜け出した。
 「理想は3人で確定板に入ることでした。その中で志田君に出られてしまったけど、3番手に岡部君がはまってそこからうまく仕掛けてくれた。岡部君が(伊東に合わされて)出切るまで待つ脚はあった。小川さんが内にきたのが分かったので、外を踏ませてもらいました。先行でずっとやってきたから、番手回りでも意外と周りが見えていました。追走も楽に付けられました。(2班に昇格するが)脚はまだ不安はあります。1、2班戦でもS級にいっても徹底先行を貫きたいので。もっともっと先行にこだわっていきたい。いまはまだトップスピードとダッシュが足りないのでそこを練習してつけていきたい。今日に関しては岡部君のおかげ」
 福田の強襲に屈して2着となった伊東佑晟ではあるが、前で奮闘した志田の走りを無駄にすることなくシビアに踏み込んでA級2班への特別昇班を決めた。
 「志田君のダッシュが凄くてキツかった。伸びていったけど、バックで止まって。そのタイミングと岡部君が仕掛けてきたタイミングが同じぐらいで。もう少し遅れていたら栃木3車全員に出切られていたと思う。そういう意味では良いタイミングで出られたかなと。まだまだ自分は実力不足だと思う。まだ通用する脚はないと思うので。ダッシュ面と技術面が足りないし、仕掛け所もまだまだ勉強しないと。ちゃんと練習して1、2班戦でも先行して脚をつけていきたい」
 3着に入線したのは川上隆義。最終2センターで内から小川にすくわれたが、後方からまくってきた久田を張りながら外を踏み込み特別昇班を達成した。
 「自分たち以外のラインが志田君だったので、そこを出させないって感じでした。結果的に出られてしまったけど、岡部君がうまくそこから仕掛けてくれた。自分は3番手の位置だったので、援護する意味でもブロックしながらって感じでした。自分は他の選手よりも番手を回る機会が多かったので、その辺の経験もいきたと思う。自力で(1、2班戦に)上がったわけじゃないけど、1、2班戦でも先行して勝てるのが一番だと思っているので、しっかりと練習をして脚をつけたい」





次回のグレードレースは、佐世保競輪場開設74周年記念「九十九島賞争奪戦」が12月19日~22日の日程で開催されます。
今シリーズは松浦悠士、深谷知広、佐藤慎太郎のSS班3名が参戦しますが、迎え撃つ地元勢も山崎賢人、荒井崇博、井上昌己とこれ以上は望めぬラインナップ。今年のGIII開催のラストを飾るのは果たして誰なのか?
また、最終日第9レースにてレインボーカップA級ファイナルが行われます。A級の頂点を決める一発勝負も目が離せません。

12月11日時点の出場予定選手データを分析した、佐世保競輪「九十九島賞争奪戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

プロスポーツ号外版は"こちら"