『防府競輪開設69周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:11月1日

 防府競輪場で開設69周年記念「周防国府杯争奪戦(GIII)」が、11月1日に幕を開けた。33バンクを舞台に初日は一次予選から、激しいバトルが繰り広げられた。メインの特選では、清水裕友が地元で幸先のいい白星スタートを切った。2日目は初日特選を勝ち上がった9選手による優秀「天神杯」が、メインで行われる。V戦線を占う意味でも見逃せない一戦になりそうだ。
 本場では開催中の毎日、先着400人にお菓子をプレゼント。吉岡稔真さん、山口幸二さんによる予想会とトークショー、未確定車券スピードくじ、「スピーチーズ」のライブなどが行われます。防府競輪場では様々なファンサービスとイベントで、お客様をお待ちしています。ぜひ、本場へ足をお運びください。

<1R>

竹村勇祐選手
竹村勇祐選手
 赤板で押さえて出た栗山俊介が主導権を握る。鷲田佳史、紫原政文まで出切って、4番手は大関祐也と恩田淳平で取り合い。後方に置かれた竹村勇祐(写真)は、打鐘の3コーナーでインから押し上げて恩田後位の稲村好将と併走。内に詰まった竹村を見て、松澤敬輔が最終ホーム手前から自力を打つ。逃げる栗山に好スピードで迫った松澤を鷲田がブロック。内を突いた紫原を追った竹村が、中を割って強襲した。
 「ジャンで強烈にバックを踏んでしまった。ラインの前なんで外を踏んでいかないと。33バンクだから前に前に踏んでいかないとっていうのがあった。(併走も)恩田君のところまで行ければ良かったけど、稲村さんのところなんでダメですよね。ただ、前だったらあそこのコースを見つけても行けなかった。それがちゅうちょせず行けるようになった」
 「良くないですね、鷲田さんのおかげです」とは、逃げて2着に粘り込んだ栗山俊介は、鷲田のブロックに助けられ感謝しきり、5着の鷲田を気遣いながら振り返る。
 「出てから、さぁっと流して、このままいい感じかと思った。そしたらジャンでタレて、(最終)ホームでケツを上げたけどヤバかった。なんか重かったです。本当に後ろのおかげです」


<2R>

 後ろ攻めの神田龍が中団の高橋築にフタをしてから赤板過ぎに先制。高橋築はすかさず中部勢を追いかけるも車間が空き、打鐘前に三ツ石康洋に振られて外に浮く。正攻法の大西祐は三ツ石の好アシストを受けて絶好の3番手を確保すると、2センターから反撃を開始。抜群のダッシュ力で中部勢を飲み込むと、きっちり続いた三ツ石が高橋雅之の中割りを凌いで差し切った。
 「道中で中団が取れたけど、被る場合があるので、(大西は)被る前に行ってくれましたね。いつものレーススタイルと違うからペース配分は違ったかも。展開はかなり僕らに向いた。後ろに高橋雅君が入っていたのはわかっていたし、直線は割られないようにスレスレを抜いたけど難しかった」 
 高橋雅之は関東勢が不発とみるや内に降り、最終ホームで大前寛則を捌いて三ツ石後位にスイッチ。直線は中割るも三ツ石にきっちり締められて2着まで。
 「高橋築君が三ツ石さんに(けん制を)もらって、33だし、これは無理だなと思って中に入った。4コーナーでいつもあそこのコースにいくけど、三ツ石さんは凄い(内を)締めてました。あんなに締めている人はいない。でも脚には余裕があったし、点数が上がりそうな感じがある」
 大西祐は良い位置を取れたことに驚きを隠せない。高橋築の動きを見極めながら巻き返して3着に粘る。
 「三ツ石さんが位置を取ってくれたし、全部そのおかげ。珍しく3番手に入れたから、緊張して心拍数が30くらい上がりましたよ。あんなに良い位置は取れないから被る前に仕掛けないとと思ってエラかったです」


<3R>

 赤板の1センターで切って出た中田雄喜の上を古屋琢晶が叩いて最終的に主導権。巻き返した谷口遼平は3番手までで、中団がもつれる。願ってもない展開が訪れた浦川尊明が、番手からきっちり差し脚を伸ばして1着。
 「古屋とは6番車と4番車ですから。車番的にも厳しいし、これで2人で勝ち上がれたのは大きい。(古屋は)ジャンガマシのいいレースだった。正直、(後ろが)もつれているのは、キツくてわからなかった。(最終)バック線のところでガリガリいってたんで、アクシデントがあったんだなって。自分はああいう展開でたまたまですよ。なにより古屋と勝ち上がったのがうれしい」
 谷口が外に浮くと、笠松信幸は最終1センター過ぎに内に切り込んで中田から3番手を奪取。直線で外を踏んで2着に入った。
 「あそこ(3番手)をキープしてっていう感じだった、僕が内に入って3番手を取り切ったあとに(アクシデント)音がした。そこからは落ち着きすぎました。外からイケる感じがしたんですけど、全然伸びなかった。あの展開なら1着を取らないと。ちょっと修正します」
 2車でも臆することなく積極策に出た古屋琢晶が、久々に初日を突破して笑みを浮かべる。
 「初日をずっと外してたんで、これがいいキッカケになれば。浦川さんが1着で自分も残れたんで良かった。出も良かったんで、あとはもうちょっと末が良かったら。でも、最近のなかではいい状態です」


<4R>

 青板周回で正攻法の金澤竜二にフタをした島川将貴がバック過ぎには誘導員を降ろして先行態勢に入る。7番手まで下げた金澤は2コーナーから山降ろしで反撃を狙うが、北村信明にけん制されて出られない。北勢の機を潰した徳島コンビが一本棒にして残り1周を駆けると、自らまくってきた安部貴之を最終4コーナーで外に振って止めた北村が伸びて白星ゲット。
 「将貴(島川)がカカっていた。将貴は周りが見えていたみたいだけど、俺は全然見えてなかったですよ。前が急にダッシュしたから慌てて対応しました。援護は青板から行ってくれたから精いっぱいできることをやろうと。抜けないと思ったけど何とか抜けましたね」
 金澤との二分戦を制した島川将貴は2着に粘り、晴れやかな表情でレースを振り返った。
 「二分戦だったので先行勝負しようと。前受けから突っ張られないようにして、押さえにいく時がしんどかった。金澤さんが見えた時にまたペースを上げてそのまま気持ち良く駆けられました。タレてもないし調子は悪くない」
 まくりを出した安部に乗った工藤政志がスピードをもらって内を猛然と突っ込み3着に食い込んだ。
 「安部君が仕掛けてくれたし、そのおかげですよ。余裕とかはまったくなくて下手したら落車があった。本当は外を踏めたら良かったんだけど、着取るためには行くしかないですよね」


<5R>

中村一将選手
中村一将選手
 後ろ攻めの飯田憲司が吉本哲郎を警戒しながら赤板で勢い良く先制。後方を嫌った吉本がすかさず巻き返すと、ジャン前から吉本と飯田で踏み合いに発展。吉本は最終2コーナーで飯田をねじ伏せたが、脚をタメていた中村一将(写真)が豪快にまくって今年2月以来の記念参戦で存在感を示した。
 「展開一本。まくったというか、前がタレていました。無理やりいったけど踏み出しは悪くない。記念は2月以来で久々だけどこの1着は嬉しいし、励みになりますね。脚は感覚とか加速は良かったけど、今の競輪は相手や展開の面が大きいですからね」
 吉本哲郎は最終バックを先頭で通過しようとする意識が高い。末脚を欠いて3着に沈んだが、今節も積極策で魅せてくれそうだ。
 「出れると思っていたし(外併走でも)ペースで行った。飯田は絶対勝負してくるから(踏み合って)一将(中村)さんがくるのはわかっていたし、3コーナーから踏み直したけど、あぁ、行かれたと。いつも言っているけど、弟子(竹内翼)より良いレースをしたいんですよ。バックを取れて良かった。これで(直近4カ月のバック数が)18本になるからあと2本取って20本にしたい」


<6R>

 押さえて出た佐伯辰哉は、佐川翔吾ライン3車を受けて中団をキープ。一本棒の7番手に置かれた宿口陽一は動けずレースが流れる。4番手の佐伯は最終ホームから発進。佐伯ラインに乗った宿口は、佐伯が前団をのみ込む前にその上を襲い掛かる。終わってみれば、まくり切った佐伯を直線の入り口でとらえた宿口が余裕のゴール。
 「佐伯が中団から先に切れば、ああなるかなと。ただ、ジャン前と4コーナーで行けるタイミングがあった。そこで行けたんですけど、前に佐伯がいたんで…。ラインで決めたかったですね。(まくりの)出はいいです。でも、考えすぎてしまった。あれを(打鐘で)行って3着とかなら、自信をもてるんですけど」
 飯嶋則之がこらえきれず、最終3コーナーから徐々に宿口との車間が空く。佐伯のまくりを交わした内村泰三が、2着に上がった。
 「(佐伯は)2周半で切って、(最終)ホームで行くんだから強いですよ。(佐伯に前回の落車がなかったら)楽勝でワンツーだったと思う。(宿口は)しょうがない。飯嶋君が切れるスピードだし、あれはひと振りで我慢しないと。止めにいったら、(内を)入って来られちゃうんで」
 周回中、中団からの組み立てでスムーズにレースの流れに乗った佐伯辰哉は、ラインの3車で勝ち上がり納得の顔。
 「(まくりが)スピードに乗らなかったんで申し訳ない。戦える状態にはあると思うんで、(8割のデキで)あと2割は頭を使ってですね」


<7R>

 人気を集めた鈴木庸之は前受け。赤板で加賀山淳に斬られ、その上を谷口明正が叩いたことで2コーナーでは7番手に置かれる。谷口がペースを緩めず駆けたことで隊列が長くなったが、ジャンの3コーナーから鈴木が反撃。目の覚めるようなスピードで谷口を1コーナーで飲み込むと、内田英介もきっちり続き、3番手以下を大きく千切って期待に応えた。
 「あの位置(7番手)になった時点でどうなっても行こうと決めていた。谷口さんは出切ってから流さないイメージだったから、そこは頭に入れて無理やり行った。前回最終日に上げたギアが良いですね。練習でも良いスピードが出せていて、予選は行けると思っていた」
 鈴木の鮮やかなまくりに内田英介はぴったり続いて2着。
 「ダッシュには自信あるから、踏み出しでいつもは余裕があるけど久々に本気を出した。人生で一番もがいたかも(笑)。最後ちょっとタレたから踏んだけどダメ。出切った時点でこれは抜けないなって思った通りでした」
 逃げた谷口に乗った山口富生が最終バックから自ら踏み上げて3着。
 「谷口君が良いペースで駆けてたけど、ものすごい勢いで(鈴木に)来られた。後ろが点数かかっていたし、自分の調子が良いので何かあったら連れ込んでいこうと思っていたので」


<8R>

山形一気選手
山形一気選手
 赤板手前で小林申太が出たところをすかさず戸田康平が仕掛けて主導権を奪う。戸田がペース上げて逃げて、空いた4番手には巻き返していた蒔田英彦がはまる。戸田の掛かりが良く、蒔田はなかなか車間が詰まらない。番手で絶好の展開になった山形一気(写真)が、直線半ばで戸田を交わした。
 「戸田は回していたし、調子がいいみたいですね。もう1回踏み上がっていったし、(別線のまくりは)ある程度なら止められると思った。あの上は110点クラスの選手じゃないと行けないと思います。僕はまだまだ余裕があるし、2日目以降のレベルが上がるところでも頑張りたい」
 別線を引きつけることなく快調に風を切った戸田康平は、中団からじわじわとまくった蒔田と同着の2着。
 「落ち着いていくことができたけど、ゴール前はいっぱいでした。初日を突破できて良かった。一時期、悪かった時は練習も悪かった。だけど、ちょこちょこ1着が取れだしてイケるんかなと。そういうメンタル面が大きい」
 蒔田英彦は、ラインでただひとりだけの勝ち上がりに反省しきり。
 「ジャンのところで行く勇気がなかった。あそこで行っちゃえばすんなり決まっていたかもしれないけど、空いていたのではまってから落ち着いてしまった」


<9R>

川口公太朗選手
川口公太朗選手
 小酒大勇の上昇を青板の2コーナーで阻んで松本貴治が突っ張る。だが、國村洋が連結を外し、番手に小酒が入る。先行態勢を取った松本がペースを緩めると、そこを逃さず川口公太朗が叩いて出る。5番手で立て直した松本が打鐘の4コーナーで反撃に出るも、川口が絶妙なペースで合わせる。浮いた松本は最終2センターでいっぱい。番手の原真司が、ゴール前で川口を交わして1着。
 「川口は強いっすね。あんなにやめて、もう1回トップスピードに上げていけるんだから。前のおかげですけど、自転車を戻して自分の感じも良かった。(川口を)抜けないかと思ったら、最後は誰かに押してもらった(笑)」
 「脚がないし、弱いなりに悪くないですけど」と、2着の川口公太朗(写真)は控えめなコメント。しかしながら、赤板の1センターから仕掛けての先行策は、内容満点の走りだった。
 「自分が出てから(松本は)詰まってるかと思ったら、早めに抜け出してましたね。そのあとも5番(松本)に2コーナーで出られるかと思ったけど良かったです。(原真と)ワンツーが決められたんで」
 付き直した國村洋は、松本が力尽きるとコースを探して追い込むも4着。地元で薄氷を踏む思いで二次予選に進んだ。
 「ダメですね、しっかり反応しないと。正直、(突っ張りは)考えてなかった。ひとつ、ひとつのミスがつながっていくし、2日目以降、改善して努力をします」


<10R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 赤板で中部コンビが主導権を握ると続いた単騎の阿部拓真を入れずに、郡司浩平(写真)は3番手に飛び付いて阿部をさばく。最終ホーム過ぎに竹内雄作をとらえた山田英明の動きにも対応した郡司は、2コーナー過ぎからのまくりで勝ち切った。
 「ライン3車で来ても、2車で来ても3番手と決めていました。そうしないと苦しくなるんで。(3番手で単騎の選手を入れないレースを)ああやってやっていけば、もっともっと自分がやりやすくなる。自分のなかでは納得のレースができました」
 急造ラインも諸橋愛が、危なげない追走で2着。
 「勝負どころで動けるから、(郡司は)余裕があるなと。うまくやってくれましたね。湊(聖二)さんに一発いいのをもらったので、それがなければ(郡司と)いい勝負デキてたと思います」
 最終3コーナーで一瞬、前の2人に遅れを取った小林大介だったが、終わってみれば3着で郡司ラインで上位を独占した。
 「ゴチャついたところで慌てたけど、以前まではコースを探して失敗していた。でも、付いていくべきだと一瞬で判断できた。腰の不安があって練習不足だったけど、とりあえず大丈夫そうですね」


<11R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 青板のバック過ぎに堀内俊介が飛び出して、迷いなく主導権を取る。近藤隆司が続いて、3番手に松岡健介、清水裕友(写真)が5番手の一本棒。後方から反撃に出た天田に合わせて、最終ホームから清水も出る。近藤が番手まくりを打つと、清水はトリッキーなコース取りで近藤の内をまくって抜け出して先頭に立つ。松浦悠士が付け切れず援護を失ったが、地元の清水が白星をもぎ取った。
 「ちょっと地元で緊張した。タイミングが取りづらかった。ここ(地元)じゃないと、あそこは行っていないし気持ちが入っていた。初日から勝ちたいと思ってこんなレースになって…。脚の仕上がりが思ったほどではないけど、こういう時はしり上がりに良くなってくると思う」
 内から清水に行かれた近藤隆司は、立て直して2着をキープした。
 「ジャンで(堀内の)スピードが上がっていなくて、もう堀内は出し切ったんだと。それで番手まくりをする形になった。天田君が来ていて、けん制をする意味でも大きく張ったら内から行かれて、自分はなにをやってんだと。清水はすごいスピードだったし、あそこを来るっていう発想がすごい。自分でやっても、このメンバーで2着に入るのは難しいことだし、駆けてくれた堀内君には感謝しかない」
 最終1コーナーで外の岡光良をさばいた松浦悠士は、清水との連結を外したものの3着に入って2日目の優秀に進んだ。
 「清水をサポートしようと思いすぎてた。追走に集中していたら、タラレバですけど、どうでしたかね。よくリカバリーできた。(前検で体調に不安を抱えていたが)不安はなくなったし、体調は問題ない。自転車のセッティングをいじります」


<12R>

和田真久留選手
和田真久留選手
 赤板で出た太田竜馬がペースを上げて逃げる。三谷竜生が外併走から強引に叩きに出るが、太田もフルアクセルで譲らない。三谷は打鐘の4コーナーで香川雄介を押し込みながら、太田の内をすくって先頭に立つ。村上義弘と香川でもつれて、太田が外に大きく弾かれる。菅田壱道もあおりを受けて、結果的に後方に置かれた和田真久留(写真)のまくりごろ。スピードの違いで三谷をあっさり仕留めた和田が1着。
 「ジャンくらいでは(仕掛けて)行ける態勢が整ってた。ただ、三谷さんの動きが見えたのもあって(待った)。組み立てだったりレース内容はあんまりっていうのもあるけど、競輪ができたのかなっていうのはある。(北日本勢が浮いて)締まるんじゃないかって、(まくりは)恐る恐るだった。ビビりなからだったんで、スピードが乗り切らなかった」
 「よく行ってくれましたね」とは、流れ込んだ海老根恵太。例によって静かにこう続ける。
 「前がどうなっているのか、全然見えなかった。ただ、(外に)広がってましたね。とにかく付いていくことに集中してました。最後、村上さんのところを通過する時は緊張感がありました」
 最終1コーナーで大きくあおりを受けた菅田をマークした伏見俊昭は、南関コンビに内を行かれるも、その2人を追って3着に続いた。
 「(最終)1コーナーでだいぶバックを踏んでキツいかと思った。必死でした。(菅田)壱道が浮いちゃったんで、僕は内に切り込んで、もう1回踏み込んだ。村上さんに合わされたかと思ったけど、踏み勝てたんで良かった」
 好展開をメイクした菅田壱道だったが、最終1コーナーで大きく膨れた太田の外を回らされて万事休す。
 「ツイてない。そのひと言に尽きますね。太田がやめすぎて…。(和田)真久留より先に仕掛けてと思ってたし、確実にワンツーだと…」