『小松島競輪開設75周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:7月6日

 小松島競輪場開設75周年記念「阿波おどり杯争覇戦(GIII)」は、7月6日に最終日を迎えた。注目の決勝は、犬伏湧也を先頭に地元勢が5人勝ち上がって結束したが、単騎の西田優大がまくりで粉砕。堂々の記念初優参初優勝を決めた。123期勢のGIII優勝は西田が一番乗り。

決勝戦 レース経過

 号砲でいち早く菅田壱道が出て正攻法の位置を確保。佐藤慎太郎、杉森輝大が追って上がってきて北勢の前受けで、3番手に単騎の杉森。犬伏湧也-島川将貴-小川真太郎-小倉竜二-久米良の長い地元勢が4番手以下を占め、最後方にもう一人の単騎の西田優大が構えて周回を重ねる。
 赤板ホーム入り口あたりから菅田がしきりに後方を気にして、波を作りながら誘導との車間を切っていく。これに対して犬伏は1センターからダッシュ。あっと言う間に先頭に躍り出て島川も続くが、3番手の小川は離れ気味で、菅田に捌かれて後退してまう。徳島ラインの間に北コンビが割り込む形になり、その後ろに初周からの流れで西田。立ち遅れて下がっていった杉森が最後方で最終ホームを通過する。島川や車間を詰めた菅田が動く前に2コーナーから西田が一気にスパート。西田はグングン加速して上がっていき、3コーナーでは島川の外を通過し、2センターでは犬伏をまくり切ってしまう。慌てて島川が追うが、西田は2車身差を保ったままゴール。外を踏んだ菅田は伸びず、佐藤が中を割るが、2着の島川に8分の1車身及ばず3着までだった。


西田優大選手
西田優大選手

 「信じられないですし、もうビックリです」と西田優大(写真)はS級初優勝を記念で決めた。記念の決勝戦を走るのも初めての経験で、自身でも驚きの勝利になったが、優勝インタビューでもいつも冷静な西田は表情を崩すこともなくレースを振り返った。
 道中は最後方からレースを進め「菅田(壱道)さんはSが早いし、前受けなら粘るんだろうと思って最後方から行けるタイミングがあればと思っていました。想定通りだったので焦ることはなく自分の力を出せるタイミングを見極めていました」と事前の想定通りにレースが動いたこともあり、脚力を温存していた。
 最終ホームで前団に離れた小川真太郎が下がって来たタイミングで仕掛ける準備はできていた。「小川さんが下がってきて、外を回すか、内かと思ったけど、内を行ったら、思いのほか、吸い込まれてスピードをもらえたかなと。2コーナー過ぎに島川さんが見えたあたりで越えられるかなと思った」と道中でためていた力を開放すると、前団を瞬く間にのみ込んだ。
 優勝を確信したのはゴール線を先頭で駆け抜けてから。「出切ってからも菅田さんのスイッチがあるかなと、ゴールを切るまで優勝はわからなかったです」。
 2023年にデビューし、昨年の8月に特別昇級でS級選手となった。そこから1年足らずで記念V。もちろん123期の中では一番乗りだ。
 「123期は不作と言われていますけど、ちょっとは挽回できたかなと思います。自分で想像していないくらいうまくいって、このあとが怖いです」
 この優勝で初出場になるGIオールスター競輪での活躍も期待されるが、「オールスターは格上の選手ばかりなので力を出し切るだけですけど、その前のFI2つが、記念優勝したら緊張するかなと」と目の前の一戦に目を向けるあたりは、冷静な性格を感じさせる。
 現在、広島競輪場は全面改修中でリニューアルオープンが待ち望まれるが、新たに誕生したスターも再開を心待ちにしている。
 「今は玉野で練習させてもらって感謝をしています。広島バンクができたら、広島の選手と練習して強くなれたら。実家は滋賀なんですけど、バンクはないですし、選手のうちは広島にいると思います」

 地元が5車結束で重要な位置である2番手を回った島川将貴。レース前は一番人気に支持されており、絶好のチャンスがくると思われたが、後ろには菅田が入っていた。その状況で、最終バック前はタテに踏むか、どうかの判断に迷いが生じてしまった。
 「あれで獲れないと、獲れないですよね。犬伏がしっかり仕掛けてくれて、自分は粘られても、そこでしっかり勝負しようと。後ろに菅田さんが入っているのは分かっていました。2コーナーから出ようと思ったんですけど、菅田さんを引き出すだけだと思ったし、一瞬迷った時には西田君がすごいスピードで来たので合わせられなかった。番手を回らせてもらったのに、ラインに申し訳ないですね。今回は調子がそこまで良くはなかったですけど、ラインに助けられてここまで来られました」

 地元勢の思惑通りにレースを進めさせなかったのは菅田が気迫の競走を見せたからこそ。佐藤慎太郎は菅田をしっかりと追走して、最後は内のコースを伸びて確定板入り。今節は1123着。今年1月の松阪記念で骨盤骨折の大怪我をしたが、今シリーズで戦っていける手応えをつかんだ。
 「(菅田)壱道が前々にしっかり踏んでくれた。突っ張るつもりで踏んでいるからこそ、あの位置に入れたと思う。あの位置に入って、踏んでいって自分のことを3着まで連れていってくれましたね。(今開催中に話していた)ターニングポイントっていうのは心の問題なんです。48歳で大怪我をして、このまま浮上できないと思うこともあって。平原(康多)もやめているし、『そろそろ弱くなるタイミングじゃないか』と、もう一人の慎太郎が言っている。それを払拭してGIで勝ち負けできるようになりたい」







次回のグレードレースは弥彦競輪「ふるさとカップ」が7月10日~13日の日程で実施されます。

今シリーズは高松宮記念杯で5連勝の完全Vを達成した脇本雄太をはじめ郡司浩平、新山響平のSS班3名が参戦。関東勢も地元の重鎮・諸橋愛をはじめ、佐々木悠葵、坂井洋、長島大介、武藤龍生と戦力は整っています。「9つの色が織りなす戦い」で主役を演じるのは、果たして誰でしょうか?

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