『久留米競輪開設74周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:6月27日

 開設74周年久留米記念「第29回中野カップレース(GIII)」は、6月27日に最終日を迎えた。注目の決勝は4車そろった北勢が終始レースを支配。新山響平が前受けからそのまま突っ張って先行勝負に出て、脇本雄太を出させなかった。北勢による直線勝負になり、番手から踏み出した新田祐大をゴール前で逆転して成田和也が優勝を飾った。なお、成田の記念優勝は実に13年6月函館以来で、5回目となる。また、9レースではレインボーカップチャレンジファイナルが行なわれ、岸田剛がV。2着の昼田達哉、3着の近谷涼の3人がA級2班への特別昇班を決めた。

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると成田和也が出て、新山響平-新田祐大-成田-渡部幸訓の北日本カルテットが前を固める。中団は坂井洋-坂本健太郎-津村洸次郎の即席ラインが占め、脇本雄太-東口善朋の近畿コンビは後攻めとなった。
 赤板前から新山は誘導員と車間を空けはじめるが、後続の動きがないまま赤板を通過した。2コーナーを立ち直ったところから脇本がスパートすると、新山も誘導員を交わして猛ダッシュ。新山の出脚は素晴らしく、脇本は渡部の外あたりで厳しくなるが、前と車間が空いていた坂井の前に東口が潜り込んで脇本を迎え入れた。新山-新田-成田-渡部、脇本-東口、坂井-坂本-津村の一本棒で最終ホームを通過する。最終バックで脇本が再び仕掛けるが、車はあまり進まずなかなか前団に迫れない。逃げた新山と車間を空けて後続の動きに備えていた新田は2センターから踏み込む。新山のかかりが良く、直線の半ばでようやく新田が先頭に立ったが、続いた成田が鋭く伸びて新田を8分の1輪交わしてV。約10年ぶりとなるGIII優勝を達成した。2着は新田、3着には渡部が入り、北日本勢が確定板を独占した。


成田和也選手
成田和也選手

 シリーズの行方を占う初日特選。新山響平が突っ張り先行で脇本雄太を不発に陥れたにもかかわらず、吉田拓矢のまくりに屈して北日本勢は全滅。同じ失敗はできない。それは、まとめ役である成田和也(写真)が一番感じていた。
 「初日の失敗があって、坂井と脇本を相手に4車で結束したんで、このラインなら負けられないよねって話は新田(祐大)としました」
 先頭の新山が、8番手で構えた脇本を警戒して誘導と車間を取る。打鐘目がけて踏んだ脇本に合わせて、新山は強烈なダッシュで加速する。ことごとく力でねじ伏せてきた脇本を、新山が合わせ切った。5番手に入り直した脇本がもう一度仕掛けるが、それを察知した新田は最終4コーナーで前に踏み込んだ。
 「新山が落ち着いて駆けてくれて、すごい掛かりだった。(新山は)頼もしいというより、SSなんで、さすがだなって。ジャンですごいダッシュしたんで、後ろは多分口が空いてるだろうなと思って、(脇本が)後ろに入ったのは分かりました。新田が(番手から出て)いけば自分が(まくりを)なんとかしなくちゃって思ったけど、新田のスピードがあった」
 新田をゴール寸前でとらえた成田の優勝。昨年は4度GI決勝の舞台に立ったが、GIII優勝となると13年6月に函館記念を制してから、実に10年の月日が経っていた。
 「10年っていうのは自分では分からなかったですね。でも、チャンスは十分あると思ってました。このチャンスを逃したらもうないって感じで力が入りました。優勝できて良かった」
 職人気質の成田は10年ぶりの優勝にも浮かれることはないのだろう。また厳しい練習を繰り返し、激しい戦いへと身を投じる。
 「一走、一走が勝負だと思ってますし、来たチャンスは逃さないようにと思ってます。練習して、レースではラインに恵まれて、その中で自分のレースの質を高めたい。それができれば、結果も付いて来ると思うので」
 今年北日本のS級S班は4人。そこに加えて成田がいる。ラインの結束力を示して、層の厚さをまざまざと見せつけた。

 2着の新田祐大は納得の表情でレースを振り返る。初日の失敗を糧にして、北日本上位独占を果たした。
 「やっぱり新山君のスタイルもありますし、坂井(洋)君もいましたけど脇本君と戦う感じになるのかなって思っていました。新山君の調子が良かったですし。初日にミスをしてしまったので、絶対にミスをしないようにと思って。気持ちを無駄にはできないんで。新山君が全部やってくれました。4着に粘っていましたし。(脇本が5番手に入ったことが)確認できていなくて。新山君のカカリも良かったですし番手から出て行かなくてもいいなって思っていたんですけど、(脇本が)見えたので。スゲーなって。一番後ろから来ているんだったらのみ込まれてしまうなって思って前に踏んだんですけど。初日の失敗があったからこそいい形で最終日を迎えられたと思うので。(次の函館サマーナイトは)地元地区の大会なので、しっかりと北日本から優勝者をだせるように頑張ります」

 北日本4番手を固めた渡部幸訓が3着に入った。
 「(打鐘付近の新山のダッシュは)過去イチできつかったです。脇本さんに入られてしまうわけにはいかなかったんで。後ろに(脇本が)入ったのはわかったんで。ちょっとレベルが高すぎましたね。また脇本君が(まくりに)きたので。ちょっと(最終2センターで)バックを踏んでしまったんできつかったですね。外に東口(善朋)さんが見えて張りながら止まってくれればと思って踏みました。(競輪祭の権利を獲得して)嬉しいですね。気持ちの余裕はあったんですけど、もう少し脚力的に余裕が欲しいですね」





レインボーカップチャレンジファイナル

岸田剛選手
岸田剛選手

 単騎で動き出した比佐宝太に照井力斗が続き、赤板で昼田達哉を切る。続いて5番手から長谷川飛向が飛び出して、その動きに岸田剛(写真)が反応。長谷川ラインを追って3番手を確保する。長谷川の先行で、岸田は他の仕掛けに被る前に最終2コーナーから先まくり。バックで先頭に立った岸田が、まくりで迫る昼田達哉の追撃を堪えて優勝を飾った。
 「前々で戦おうと思ってて、スタートでまん中の方が取れたので、流れを見ていい感じで行けました。行けると思った所から、全開でいきました。でも、出切ってからいっぱいいっぱいで、最後も抜けれたかなと思った。もっと末脚をしっかりしたい。この一年で特班出来ず、最後の最後で特班で締めくくれて良かった」
 前受けから下げた昼田達哉は、最終2コーナー過ぎに7番手から巻き返す。岸田には届かなかったものの、前をまくり切った脚色は良かった。
 「(初手は)長谷川さんより前にいたくて。切るのに脚を使うと思ったので前からと思っていました。本当に道中はほとんど覚えていない感じで、後ろに一人はいるなっていう感じでした。堀(航輝)さんが止まっていたのがわかったので、その上をいかないとゴール前勝負ができないなって思って。(ゴール前は岸田と)お互いにかなり1着を意識してた感じで、抜いたかなって思ったんですけど、モニターを見たら全然でしたね」
 近谷涼は打鍾前に追い上げて昼田後位を確保。昼田のまくりを追い、3着に入線。
 「スピードを貰って追い込めればって思ったんですけど、あおりもあったので届かなかったですね。最近はまくりのレースをしていなかったので出せるか楽しみだったんですけど。自分でまくりに行けたかはわからないですけど、手応えはあった」





次回のグレードレースは、前橋競輪場開設73周年記念「三山王冠争奪戦」GIIIが、6月29日~7月2日に開催されます。
高松宮記念杯覇者の古性優作に、準Vの佐藤慎太郎らSS班3名をはじめとして眞杉匠、深谷知広、清水裕友と超ド級の自力型が参戦する豪華メンバーです。
地元勢は佐々木悠葵、恩田淳平らが一丸となって対抗します。無風のドーム走路で繰り広げられるスピードバトルから目が離せません。

6月19日時点の出場予定選手データを分析した、前橋競輪「三山王冠争奪戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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