『第2回オールガールズクラシック(GI)レポート』 最終日編

配信日:4月29日

 久留米競輪場でナイターシリーズとして開催された令和6年能登半島地震復興支援競輪「第2回オールガールズクラシック(GI)」は4月28日に最終日が行なわれた。今年初のGIとあって互いの思惑がぶつかり合った決勝は、スタートからけん制状態となり、レースが進んでも打鐘からスローペースになるなど異様なムードに包まれたが、人気を集めた地元エースの児玉碧衣は冷静に最終2コーナーからスパート。先まくりで抵抗する前団を豪快に飲み込んで昨年6月のパールカップ以来のGI制覇を遂げた。完全優勝した児玉は、優勝賞金750万円(副賞を含む)を獲得すると同時に、年末に静岡で行なわれるガールズグランプリ出場権を真っ先に手に入れた。

決勝競争出場選手特別紹介
決勝競争出場選手特別紹介
決勝1番車、児玉碧衣選手
決勝1番車、児玉碧衣選手
決勝2番車、吉川美穂選手
決勝2番車、吉川美穂選手
決勝3番車、尾崎睦選手
決勝3番車、尾崎睦選手
決勝4番車、柳原真緒選手
決勝4番車、柳原真緒選手
決勝5番車、小林莉子選手
決勝5番車、小林莉子選手
決勝6番車、野口諭実可選手
決勝6番車、野口諭実可選手
決勝7番車、久米詩選手
決勝7番車、久米詩選手

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴るも長いけん制状態が続いて、痺れを切らした小林莉子が誘導員を追い掛ける。初手は、小林、尾崎睦、柳原真緒、児玉碧衣、吉川美穂、野口諭実可、久米詩の並び。
 赤板手前で小林がようやく誘導員に追いつくと、最後方から久米が上昇して児玉の前に入る。更に野口も上昇し児玉後位で吉川との併走となる。打鐘で誘導員が退避し、押し出された小林がピッチを落とすと、久米が後ろの動きを警戒しながらゆっくり上昇。しかし小林が腹を括ってそのまま先行態勢に入る。小林の後ろは、久米、尾崎、柳原、児玉の順で続くが、最終2コーナーから児玉がまくりを開始。前の久米、尾崎も仕掛けるが、児玉が2センター手前で前団を一気にのみ込んで、直線でも後続の追撃を許さず地元GIを制覇。児玉後位を取り切って吉川が踏み出しで口が空きながら懸命に続いて2着。先まくりを放った尾崎が3着に入った。


<7R>

鈴木奈央選手
鈴木奈央選手
 打鐘で誘導が退避して、周回中に7番手の廣木まこが、4コーナーから勢いよく仕掛けてカマシを狙う。だが、先頭の石井貴子は、廣木を突っ張ってペースアップし、主導権を譲らない。周回中から3番手の位置を回っていた野本怜菜は、最終2コーナー過ぎから仕掛ける。鈴木奈央(写真)は、外にへばりついた廣木との併走をしのいで野本を追っていく。野本が石井を4コーナーでまくり切るが、さらにその外を伸びていった鈴木が、直線で抜け出した。連日7着に敗れた悔しさを、最終日は1着で晴らした。
 「昨日(2日目)7番手で何もできずに終わってしまった。今日は前の方に出て、位置を取って4コーナー勝負したいと思っていた。前が石井さんだったので、後ろの人も全力でいかないと切れないと思っていたし、後ろは特に気にせず前だけを見ていました。外からまくりにきていたけど、前日にイエローライン(のコース)が伸びたので、そのコースをいけた。7着、7着をしちゃって、メンタル的にもきつかったけど、それでもファンの方が応援してくれていたので頑張ろうと思いました」
 すんなりと3番手からまくった野本怜菜だったが、最後は鈴木に外を行かれて2着。
 「石井さんが1番車で、本当にどうしようかなって思っていたけど、前の方をキープしていこうと。石井さんが(廣木を)突っ張るのか、出させるのかでしたけど、3番手で様子を見ました。廣木さんが私の外で止まったのが予想外で、焦って進まないところで踏んでしまった。最後は力不足です」

<8R>

下条未悠選手
下条未悠選手
 周回中に吉岡詩織が2番手外に追い上げて、下条未悠(写真)が吉岡を追う。吉岡が打鐘の誘導退避と共に先頭に出て、下条が吉岡を押さえに動く。が、7番手から勢いよく動いた山口伊吹がさらにその上を切る。一旦は2番手に入った下条だったが、最終ホームで仕掛けて真後ろから山口を叩き切る。吉村早耶香が5番手から踏み上げるが、3コーナーの登りで外に浮いて失速。軽快なペースでレースを支配した下条が、逃げ切りでGI初勝利をつかんだ。
 「1着を取れると思ってなかったので、嬉しいです。競走得点を持ってて、長い距離を行けるのは(吉岡)詩織さんか、加瀬(加奈子)さんか、吉村さんなので、(周回中から)その人達よりは前にいたかった。(吉岡が)併走していたし、それならその後ろで追って、前の方にいようかなと。(2番手に入ったが)あそこで待ってたら、後ろから来られて2日目みたいになると思った。それなら自分らしいレースをしようと思って(仕掛けて)行きました。自分の強みで勝てたのが良かったです」
 那須萌美は、最終ホームで7番手に置かれる大ピンチ。だが、3コーナーで内のコースがガラリと空くと、スルスルと突き進んで2着にリカバリーした。
 「正直、最終ホームではやらかしたなと思った。でも、2コーナーぐらいからみんな仕掛けだしたので、これは内が空くなと思って準備してました。4コーナーでバックを踏んだんで、7番(山口)が下がってコースが空けば1着まで行けたと思う」

<9R>

石井寛子選手
石井寛子選手
 周回中に動き出した岩崎ゆみこは、3番手外で石井寛子(写真)と併走する。岩崎を追った青木美保が打鐘で仕掛けるが、先頭の林真奈美は突っ張って出させない。一旦緩めた両者だが、4コーナーで再度お互いに踏み上げる。踏み合う両者の外を、岩崎も仕掛けて行って最終1コーナーからは3車で踏み合いになる。突っ張り切った林が最終的に先行となるが、2コーナーからは岩崎の後ろから石井がまくり発進。力強く車を進めた石井が、林を直線で抜き去って、シリーズを白星で締めた。
 「まずは気持ちだけは切らさないように走ろうと思っていました。どこでダッシュして、どこにいようとかは決めずに気持ちだけです。まくりにいった形だったけど、歓声が凄くてそっちに集中していました。やっぱりG1は難しいし、決勝にいくメンバーと比べて何かが足りない。展開の読みがちょっと甘いなって。すぐ地元の京王閣があるので、休まずに練習します」
 2月岐阜FIIの落車から80日以上欠場していた林真奈美だったが、最終日にして本領を発揮。気持ちのこもった先行策で2着に粘った。
 「復帰戦ということもあって、レース勘というものが初日、2日目となくなっていたのが分かった。次につなげるために、どこか自分で動く所を見つけて無理矢理にでも動こうと思っていた。確実に今日(最終日)のレースは今後につながったと思う。自分自身の壁を一つ乗り越えられたのは収穫です。初めて長期欠場で休んだこともあって、(欠場期間に)意味を持たせるためにも、考えとかを整理する時間にしようと思っていた」

<10R>

尾方真生選手
尾方真生選手
 打鐘で太田美穂が叩きに行くが、先頭の日野未来は突っ張って出させない。太田美を追って動いた尾方真生(写真)は、太田美が突っ張られると一旦外に浮いてしまうが、4コーナーで内に降りて4番手の位置に降りる。外の太田美が後退すると、尾方は最終2コーナーから踏み上げる。逃げる日野を2センターでねじ伏せて、地元GIを1着で締めた。
 「先行の強い人が多いので、ジャンで前に行った人に付いて行こうかなと。みんなが前に行ったので、なるようになるかなと思った。内に降りられたのが決め手だったと思います。脚にも余裕があったし、2日間(調子自体は)悪くなかったので(仕掛けに)行ってみました。でも、比べちゃいけないかもしれないけど、(児玉)碧衣さんだったら休まず行っていたと思います。自分の中では3日間悪くなかったけど、あとは勝ちにいく気持ちかなと思います」
 周回中に2番手の位置にいた鈴木美教だが、打鐘のペースアップで前と車間が空く。最終ホームで尾方の後ろに入り、そのまま追って2着。
 「昨日(2日目)はスタートで出なくて失敗したので、今日はまず出て、誰も来なければそのまま先頭でもいいくらいの気持ちでいました。みんな力が拮抗してるし、昨日は焦って失敗した。でも、今日は日野さんのダッシュがすごくて踏み出しで離れたのは良くなかったです。最後はいっぱいいっぱい。昨日は勝てたレースだったのに、勝ち切れなかったのは自分の弱さが出た。いつもグレードレースは勝ち上がれなかった後に、気持ちが切れてしまうので、今日は気持ちを切らさず走れました」

<11R>

飯田風音選手
飯田風音選手
 打鐘を過ぎて誘導が退避するが、隊列に動きはない。先頭の山原さくらは、最終ホームからスパートして先行態勢に入る。2番手の杉浦菜留は、2コーナー過ぎからまくってバックで先頭に立つ。追走した飯田風音(写真)は、4コーナーから鋭く追い込む。真後ろから迫った坂口楓華を振り切って、飯田がシリーズ2勝目をゲットした。
 「車番も良かったので前々でいこうと思っていました。あんまり後ろは気にしないようにしていました。展開も良かったです。(シリーズ通して)強い人と走ると勉強になります。仕掛ける所とか、スピードとかが違った。その辺が今後の課題です」
 坂口楓華は、飯田をとらえ切れずに2着。悔しいシリーズとなった。
 「3日間いつもの感じが出なくて弱気になってしまいました。また気持ちを切り替えて頑張りたい。たまにあるけど、疲労が取り切れなくて気持ちがネガティブになって自分らしさを出せなかった。ちょっと恥ずかしいことをしちゃった。それでも収穫はありました。レースの幅を広げていかないといけないし、まだ自分には器用さがないので自在性をもっと付けていきたい。力だけでは勝てない舞台ですし。悔しさよりも今回は収穫があったのでポジティブにとらえたいと思う」

<12R>

児玉碧衣選手
児玉碧衣選手
 スタートけん制が入って、各車が出方をうかがうなか、しびれを切らした小林莉子が誘導を追いかける。打鐘で誘導が退避してもレースはスローな流れのまま。久米詩が後ろを確認しながら、ゆっくりと上昇するが、小林は最終ホームで腹を決めてスパートする。児玉碧衣(写真)は5番手の位置取りから、2コーナーで仕掛ける。2番手からは久米が、3番手からは尾崎睦が合わせてまくりを放つが、児玉はその上をお構いなしにまくり上げる。3コーナーの登り坂をものともせずに、怒涛の加速を見せた児玉が、2センターではすでに先頭へ。児玉は2着に1車身半の差を付けて完勝。オールガールズクラシックを地元で初制覇し、ガールズグランプリ一番乗りを決めた。
 「お客さんの声援が、本当に競輪人生で一番なんじゃないかってくらいすごくて、それがすごく力になりました。地元でグランプリを決められたのが、本当に嬉しいです。あそこまでけん制が入るとは思わなくて、我慢比べになったんですけど、(小林)莉子さんが追ってくれて。あのあたりは冷静に周りを見れたと思います。久米さんが上がってきて、下げる形にはなったんですけど。カマシも頭には入れていたけど、後ろに(吉川)美穂さんがいて、連日伸びていたし抜かれるのが頭にあった。まくり勝負に切り替えました。連日体が動いていたし、今日(最終日)もローラーから調子が良かった。あとは、自信を持って走るだけだなと。賞金ランキングも下の方だったし、GIを獲りたい欲が出て、プレッシャーもありました。本当に声援が力になって、緊張がほぐれて1着が取れたと思います」
 吉川美穂は、周回中から児玉の後ろをキープ。加速に車間が空いたが、食らい付いて2着でゴール。2年連続で、当大会準Vだった。
 「児玉さんにマークする形になったけど、すんなりではなかった。けん制もあったりして、いらない脚を使う形になったし、気持ちが変な感じでした。昨年は凄い伸びての2着だったので、昨年の感じでいったらすんなり(児玉の)番手を回れたら(優勝もある)なって思ったけど。今後は来年に向けて脚力をもっと付けて、地脚とダッシュを付けて対等に戦えるように頑張りたい」
 尾崎睦は、3番手の位置から児玉よりも先まくりに出たが、上を行かれて3着。
 「スタートはちょっといらなかった。(小林)莉子に悪いことをしちゃいましたね。ルールの中でしっかりやらないといけないところだけど、シビアに自分の位置を主張した。自分のタイミングで勝負しようと思ったけど、(児玉と)スピードが違いましたね。(久米)詩も行くかと思って見た部分があった。悔やまれる点でいえばそこです。もう1つ、2つ、3つ(レベルを)上げていかないと優勝には届かないんだなって思った。でも今やっていることは間違っていないので、諦めずに続けていけばタイトルは獲れると思う」

次回のグレードレースは、令和6年能登半島地震復興支援競輪 大阪・関西万博協賛「第78回日本選手権競輪」が、4月30日~5月5日の日程で開催されます。
今年の舞台となるのは「空中バンク」いわき平競輪場。GIで最も権威がある大会に相応しく、SS班9名をはじめとして、全国各地から強豪が集結し、「ダービー王」の称号をかけて覇を競います。
6日間に渡る長丁場の戦いの頂点に立つのは果たして誰か?

4月18日時点の出場予定選手データを分析した、第78回 日本選手権競輪GIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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