『第3回オールガールズクラシック(GI)レポート』 最終日編

配信日:4月28日
 岐阜競輪場でナイターシリーズとして開催されてきた「第3回オールガールズクラシック(GI)」は、4月27日に盛況裡に幕を閉じた。注目の決勝は先行した佐藤水菜が得意とする形に持ち込んで堂々のV。世界で戦う第一人者としての貫禄を見せつけた。この優勝で今年のグランプリ出場権も真っ先に手にした佐藤のGI優勝は昨年11月の女子王座戦に続いてで通算3回目。
決勝出場7選手と手越祐也さん集合
決勝出場7選手と手越祐也さん集合
決勝1番車、児玉碧衣選手
決勝1番車、児玉碧衣選手
決勝2番車、梅川風子選手
決勝2番車、梅川風子選手
決勝3番車、小林莉子選手
決勝3番車、小林莉子選手
決勝4番車、佐藤水菜選手
決勝4番車、佐藤水菜選手
決勝5番車、細田愛未選手
決勝5番車、細田愛未選手
決勝6番車、柳原真緒選手
決勝6番車、柳原真緒選手
決勝7番車、石井貴子選手
決勝7番車、石井貴子選手

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると、少し見合ったなかから小林莉子が飛び出して誘導員を追う。周回中は小林、児玉碧衣、3番手が内に佐藤水菜、外に細田愛未で併走が続き、その後ろは梅川風子、石井貴子、柳原真緒の並びとなるが、青板のバックストレッチで佐藤が車を下げる。この動きを見て後方から上昇した石井が4番手に入り、佐藤は5番手に収まって赤板のホームストレッチで隊列は一本棒となる。
 赤板周回の2コーナーで小林が誘導員との車間を空け始め、打鐘のタイミングに合わせて児玉、佐藤が踏み上げる。佐藤は2センター手前で先頭に立ち、最終ホームにかけては2番手が内に児玉、外に梅川。3番手は内に小林、外は追い上げた石井、4番手も内に柳原、外に細田と併走状態が続く。佐藤は2番手外の梅川の動きをしきりに警戒し、2コーナー出口で踏み込んだ梅川の動きに合わせてスパート。バックでは梅川に並びかけられたものの、佐藤は2センターで梅川を合わせ切り、直線でも後続のモツれを尻目に振り切って今年最初のGIを制した。佐藤後位にハマった児玉は、内に詰まる形となり直線でようやくコースができたものの、佐藤との差を詰められず2着。佐藤に合わされた梅川は外併走をこらえて3着に入った。


<7R>

熊谷芽緯選手
熊谷芽緯選手
 周回中に増田夕華が2番手に追い上げて、先頭の熊谷芽緯(写真)の後ろは、内の竹野百香と併走になる。打鐘で仕掛けた渡口まりあが先頭になり、熊谷は2番手に飛び付く。最終ホームで踏んだ杉浦菜留は、3番手の外で併走。渡口が流し気味で駆けていると、熊谷は最終1センターからすぐさま反撃。2コーナー過ぎには主導権を奪いとる。ゴールまで目一杯踏み直した熊谷が、シリーズ2勝目を挙げた。
 「前から行こうと思っていました。(打鐘で)渡口さんがきたので、落ち着いて入れて。(最終ホームで)杉浦さんがきたのでちょっと焦ったんですけど、大丈夫だと思って落ち着いて。(岐阜は)冬期移動で練習させてもらっているので、(バンクの)特徴はわかっているので。ここで踏んだらっていうところでいきました。昨日(2日目は準決で)いい経験をさせてもらって。ドキドキでしたけど。今回は(GIで)準決勝に乗れたので。次は準決勝で着を取れるように頑張りたい」
 竹野百香は、熊谷後位での併走を内で我慢。駆けだしで踏み勝って熊谷を追ったが、最後は差し切れずの2着。
 「(熊谷の)後ろを取るつもりとかじゃなかったんですけど。後ろが取れたので、熊谷さんの仕掛けについていこうと思いました。でも、仕掛けが遅くて。熊谷さんのスタンディングがすごくて、思ったよりも伸びていって。(自分が)スタンディングをやめるのが早すぎましたね。構えてしまうのが。結構、周回中から熊谷さんの内に差し込んでしまったりしたので。(熊谷は)同期の中で一番強いと思っているので。今回は着も良くなくて。2日間弱気だったなって思ったので、今日(最終日)は強気にと思っていました」

<8R>

吉岡詩織選手
吉岡詩織選手
 周回中に永禮美瑠が動き出して、太田瑛美が追いかける。永禮は、3番手の尾方真生の外で脚を止めて、尾方も車を下げない。打鐘で誘導が退避すると、尾方はようやく6番手に下げる。先頭の奥井迪は楽に駆けて、最終ホーム手前から本格的にペースアップ。2番手の吉岡詩織(写真)は、2コーナーから早めに仕掛ける。尾方は、バックから仕掛けるも、前の掛かりが良くて進まない。奥井をバックでとらえた吉岡が先頭でゴール。3連単は20万円台の、波乱の決着となった。
 「もう、スタートを取っても良いから前々と思ってました。前が奥井さんだったけど、本当はカマそうと思った。車間も切って、準備していたんですけど、奥井さんがヤバかった。初めて奥井さんのハコに付いたんですけど、やっぱりペース配分とか、踏み上がりがヤバかった。あれが自分でもできれば良いんですけど。連日情けない結果だったんですけど、自分で前々に踏んでいた結果なので」
 永禮美瑠が、吉岡を追って2着。
 「奥井さんが前で、尾方さんが中団みたいな並びになるかなと思っていて、尾方さんなら引いてくれるかなと思って外併走になった。(尾方が引くのが遅くて)あれって思ったけど、ジャンから奥井さんが良いペースだったので、チャンスがあるなと。最後は踏んではいるんですけど、踏めている感じはなかったです。脚を削られていたのもあるけど、末脚がないのが課題なので」

<9R>

石井寛子選手
石井寛子選手
 下条未悠が打鐘目掛けて仕掛けるが、先頭の石井貴子も突っ張ってペースアップ。両者で踏み合いになるが、内の石井貴が突っ張り切って先行する。他の仕掛けはなく、2番手の石井寛子(写真)に好展開。最終2センターで前に踏み込んだ石井寛が、直線で抜け出して1着をつかんだ。
 「(妹の貴子と)2人で走るのが8年ぶりで2回目だったんですけど。練習では勝てないし、抜けないし、抜かれるし。ダッシュがすごいのを思い出しました。Sを狙ったんですけど、S取りも負けました。でも、2番手の位置は得意なので。誰がきても先にまくりたいなって思っていました。1着を取りたくて。去年のクラシックも4、7、1で去年の自分を超えられなかったんですけど。昨日(2日目)負けてGIの準決勝は壁だなって。昨日負けて今日はそこ(パールカップ)に向けてっていうしかなくなってしまったので。狭い道ですけど。5月はいっぱい練習ができるので。いいイメージで、お客さんにもいっぱいパワーをもらって。次に向けて頑張りたいと思います」
 周回中に4番手の高橋梨香が、直線で中のコースを伸びて2着。
 「想定していた並びになったので。でも、自分で行く勇気も脚もないので。(宇野紅音が)外併走(で自分が被る形に)になったので、我慢するしかなくて。最後はたまたまコースが空いてくれたので。前回のGIよりも着はいいんですけど、レベルが高すぎるので。次のパールカップまでに少しでも差を縮められるように」

<10R>

鈴木奈央選手
鈴木奈央選手
 山原さくらが、打鐘2センターで6番手から一気に仕掛ける。3番手で前と車間を取っていた日野未来は、山原の仕掛けを察知すると合わせて踏み込んで當銘直美を叩く。山原は合わされて出切れず、日野の先行。日野を追った坂口楓華は、最終3コーナーから持ち出す。坂口が日野をねじ伏せたが、終始坂口の後位で脚をためていた鈴木奈央(写真)が、直線で外から交わしてシリーズ2勝目をゲットした。
 「1番車だったので、理想の位置が取れました。ただ、ホームのダッシュで千切れているし、そこは自分の課題が出たと思います。食らい付いて、バックでリカバリーできたのは良かったんですけど、自分はダッシュのなさが課題だと思うので。GIだと基本ペースが早いので、自分向きだとは思うんですけど、結局はそこからのダッシュが遅れているので。去年(のオールガールズクラシック)は不甲斐ないレースだったので、絶対に準決に上がりたかった。準決で勝負できたのは収穫でした」
 坂口楓華が2着。仕掛けのタイミングをミスしたことを敗因に挙げた。
 「良い意味でも、悪い意味でも、今節は余裕がありすぎました。今日(最終日)も、1着を取れる余裕があったから、仕掛けが遅くなってしまって、本来ならまだ山原さんが外にいるところで仕掛けるべきでした。それなら、山原さんが邪魔になって、自分の真後ろに(鈴木が)付いてきてないと思うので。自分の余力を残す形で負けているので、連日残念でした」

<11R>

小林優香選手
小林優香選手
 赤板で太田りゆが動き出すと、3番手の尾崎睦も外に外してけん制する。太田りは動きを止めて、併走の上を追い上げた小林優香(写真)が、打鐘で3番手に収まる。誘導が退避して、太田美穂が先行する。外併走から最終ホームで仕掛けた太田りだったが、太田美に合わされてしまい本来のスピード感がなく、バックではいっぱい。2番手の久米詩が、3コーナーからまくって先頭に立つと、追走した小林が外から交わして1着だった。
 「(初手が)後方になってしまったので、前回(3月の)武雄(決勝)の逆のパターンになったので、自分から動いて位置を取らないと始まらないなと思っていました。前も掛かっていましたけど、自分のタイミングで行こうと思っていました。まだこのフレームと合っていなくて新車が待ち遠しいんですけど(今シリーズの)ラストで1着を取れたので、次のパールカップでは決勝に乗れるように頑張ります」
 那須萌美は、最終ホームで尾崎をすくって小林の後ろを確保。小林に続くかたちで2着に食い込んだ。
 「普段は初手の位置をあまり考えないんですけど。前々にいって後悔しないようにと思っていました。本当は太田(りゆ)さんの後ろが欲しかったんですけど。ちょっと尾崎さんが何をしたいのかわからなかったので、この距離だと(先行した太田美も)持っちゃうなって思って内へいきました。今日はたまたまコースを踏めたので。いまできる最大限の走りはできたと思います」

<12R>

佐藤水菜選手
佐藤水菜選手
 5番手の佐藤水菜(写真)が、打鐘と共に前へ踏み込む。児玉碧衣は、2番手から合わせるように踏んで先頭に出る。佐藤が叩いて、2番手に飛び付いた児玉は、梅川風子と併走になる。後ろの状況を確認した佐藤は、絶妙ペースで最終ホームを通過。外併走のままの梅川が2コーナーで仕掛けるが、佐藤は合わせてペースを上げる。佐藤が合わせ切って、梅川は3コーナーで半車身後退。佐藤は落ち着いたレース運びで、ゴール前の余力も十分。力強く逃げ切って、2度目のオールガールズクラシック制覇を達成した。
 「後ろで2人が競ってくれていたので、落ち着いてゴールまで持つように走れました。一番の力試しができるかたちで優勝できて良かったです。競技だとあの展開は多いですし、私はレースも見えているので、冷静に走れました。自力選手が真後ろにいたのがプラスですし、児玉選手が飛び付いたときにはしめしめと思ってました。梅川さんに、バックでまくってこない方が良いよと思ったんですけど、仕掛けてきたので全力で合わせました。900万円の賞金が素直に嬉しいです。準決で負けたのが、悔しかったし、嬉しかった。今までは先行して勝てていて、負けパターンがなかった。ああいう負け方がガールズを走っていて初めてだったので、あそこで負けて、まだ自分も成長できるんだなって思って嬉しかったです。今回ガールズケイリンを走って、危機感がありました。もっと強くならないとっていうのと、軽ギアにもっと対応しないとっていうのと。悔しかったけど、まだ成長できるんだなって。パールカップには、まだ出たことがないからめちゃくちゃ楽しみです。グランプリスラムが目標ですし、それを達成できるように頑張りたいです」
 児玉碧衣は、終始内に包まれる展開。4コーナーでようやく外が開けたが、佐藤との差は縮まらなかった。
 「何パターンか考えてはいましたけど、(併走になって)ああなるなって思っていましたし、想定はしていました。ああなったら4コーナー勝負だと思ったんですけど、差し脚がないんで。サトミナもペースにずっと入れていたので。今回は1週間練習してきてここまでこれたので。6月の岸和田はもっと走れるんじゃないかなって。(気持ち的にも)6月に向けて頑張りたいなっていまのところ思えているので。次は負けないように」
 外併走から力勝負を挑んだ梅川風子だったが、力及ばず3着。
 「(周回中に)サトミナがきたので。番手が欲しいなって。プランにはなかったんですけど、いいプランだと思って。でも、逆にうまくやられましたね。(組み立てが)難しかったというより、600前からいくサトミナ(佐藤水菜)の勇気がすごい。そこがスピードよりも上回っていたと思う。勝ちに徹する以上、自分はあそこ(打鐘付近)からは踏めないので。正直、サトミナがもっとペースを上げてくれたらもう少し回せていたと思うんですけど。変なところにいたんで行くしかないなって。(今シリーズの状態は)めちゃくちゃいいっていうわけじゃなかったんですけど。勇気が足りなかったですね。普通開催でも勇気を持って。ああいう決して早いピッチじゃなくても、誰も行きたくならないようなペースっていうのは勉強になりました」

次回のグレードレースは、名古屋競輪「第79回日本選手権競輪」が、4月29日~5月4日の日程で開催されます。

GIの中でも最も権威のある日本選手権競輪。第79回大会は、4月29日~5月4日の日程で開催されます。
舞台は第69回大会以来となる名古屋競輪場です。昨年の覇者である平原康多らSS班9名をはじめとして、寺崎浩平、太田海也、中野慎詞、山崎賢人ら全国各地からスピードスターが集結して覇を競います。6日間に渡るサバイバル戦で主役を演じるのは果たして誰でしょうか?

4月23日時点の出場予定選手データを分析した、名古屋競輪「第79回日本選手権競輪」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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