『第65回オールスター競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:8月16日

 西武園競輪場で開催された夢の競演「第65回オールスター競輪(GI)」は、8月15日に最終日が行われた。豪華なメンバーが顔をそろえた決勝は、単騎の松浦悠士が主導権を握った寺崎浩平の番手を奪取して近畿勢を分断。連結を外して7番手からまくりを繰り出した脇本雄太が、前団をのみ込んでV。5月の日本選手権に続いて今年2度目、通算7度目のGI制覇で優勝賞金5368万円(副賞含む)を獲得した。

決勝戦出場選手特別紹介
決勝戦出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 号砲で古性優作が出て行って正攻法の位置を確保し、寺崎浩平-脇本雄太-古性の近畿勢が前受け。それぞれ単騎の松浦悠士、吉澤純平が続き、新山響平-小松崎大地-守澤太志-成田和也の長い北勢が後攻めとなって周回を重ねる。
 新山が上昇を開始したのは青板2コーナーから。すぐさま寺崎は誘導との車間を切って突っ張る構えで新山をけん制する。両者は並んで赤板を経過した瞬間にダッシュ。瞬く間に隊列はバラけ、“シビアにいく”の宣言通り脇本-古性の内をすくった松浦が寺崎の番手を奪い取る。脇本が無理せず引いたため、松浦の後ろには北勢がそっくり入る。新山は寺崎を叩けなかったが、先に内に降りた小松崎に迎え入れられて3番手で出直す。一方、脇本は7番手で、最後方に吉澤で打鐘を通過する。そのまま寺崎が踏み上げていって、新山、小松崎、脇本はそれぞれ前との車間が空いてタテ長の隊形となって最終ホーム。1センターで車間が詰まるが、新山も脇本も仕掛ける前に松浦が2コーナー番手まくりで勝負に出る。新山以下は松浦に続き、バックで脇本が反撃を始める。迫る脇本を、守澤が2センター軽くけん制してから小松崎の内のコースに入っていく。新山、小松崎は動けないままで、押し切りを図った松浦を、脇本が怒涛の伸びで逆転してみせた。2着は松浦で、3着には松浦と新山の間を鋭く突いた守澤が入る。


<3R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 山田久徳が切った上を松井宏佑(写真)が、ジワリと押さえて出て先頭に立つ。赤板2コーナーから踏み込んだ瓜生崇智が、松井後位に追い上げて鈴木裕に競り込む。打鐘の3コーナーから後方の河端朋之が仕掛けて松井を叩きに出るが、松井も出させる気配はない。両者の踏み合いは松井が制して、もつれた後位に河端が入る。しかしながら、河端はいっぱい。最終2コーナーからまくった山田を振り切った松井が1着。
 「(周回中は)あんなにいい位置が取れるとは思ってなかった。一番、理想的でした。ただ、僕は逃げ切れたけど、ラインで決められなかったのが…。河端さんが仕掛けて来たのが見えなくて、気づいたら真横にいた。でも、出させるわけにはいかないし、主導権は譲れなかった。ここ最近納得のいくレースができてなかった。けど、この2日間は先行していいレースができたんで、自信になりました」
 河端の仕掛けに反応できなかった山田久徳は、最終ホームで8番手。まくりで逃げる松井に迫ったが2着まで。
 「(瓜生は)僕のところに来るかと思ったけど、前に行きましたね。そのあとは併走を見てしまったところがあって、河端さんのラインを見送ってしまった。ワンタイミング早めに踏んで、スイッチできたら良かった。昨日(5日目)もそうですけど、自力の時に余裕がなかった」

<7R>

北津留翼選手
北津留翼選手
 前受けから皿屋豊を突っ張った太田竜馬が先行態勢。浮いた皿屋が中団に入り、北津留翼(写真)は、一本棒の7番手で打鐘を通過する。太田がリズム良く駆けて中団は動けないが、北津留が最終2コーナーから仕掛ける。1人だけ違うスピードで前団に襲い掛かった北津留が、逃げる太田をとらえた。
 「皿屋さんが浮いている時に一瞬、行こうかと思ったんですけど、見ちゃいました。太田選手が強くて(最終)バックでも伸びてたんですけど、ダメもとで行きました。(一次予選1での落車の)怪我もだんだん小さくなっているので、すぐに治ると思います」
 突っ張り先行の太田竜馬は、最終4コーナーを先頭で迎える。外を伸びた北津留には屈したが、2着に逃げ残った。
 「自分のなかでは最大限でいきました。落ち着いたなかでの全力でした。めちゃくちゃいい感じだったし、イメージ以上でした。昨日(準決)あれができなかったんで、今日できたのは良かった。かみ合ってはいるけど、(タイトルには)まだ足りない。もう1つ武器がないとっていうのを感じます」

<8R>

三谷竜生選手
三谷竜生選手
 中四国ラインが押さえて出ると、山崎賢人と三谷竜生(写真)で中団が重なる。山崎が下げて、4番手は三谷がキープする。原田研太朗がそのまま駆ける。最終ホーム過ぎに山崎がまくりを打って、合わせるように三谷も出る。4コーナーでまくり切った三谷が押し切った。
 「ハラケン(原田)が駆けると思っていなくて、ジャンでカマそうと思っていた。そしたらハラケンがしっかり駆けたので、追いかけるのがキツかった。山下(一輝)君の動きだったりも、キツかったが調子自体は問題ないですね。自分が前の時はしっかりレースをして、それを(前で頑張る選手が)見てくれればと。前の時にしっかりやれるように頑張りたい」
 三谷に危なげなく続いた浅井康太が2着。落車明けのシリーズのなかで、感じるものもあった。
 「(今シリーズは)感覚は良くなっているが、パワーが足りない。今日(最終日)も(三谷)竜生のパワフルな自力がすごかった。自分もしっかりと自力で、あそこまで戻さないと。番手に付いた時にチャンスがない。しっかりとトレーニングをして、(また)タイトルを狙いたい」

<9R>

宿口陽一選手
宿口陽一選手
 眞杉匠の当日欠場で8車立て。雨谷一樹が切ったところを菊池岳仁が押さえて主導権。菊池がペースを上げて、後続は仕掛けられずに最終ホームを迎える。5番手の清水裕友、7番手の深谷知広より先に雨谷が仕掛けるが、宿口陽一(写真)がけん制。車間を詰めながら宿口は、そのまま3コーナー過ぎから踏み込む。地元のGIシリーズを宿口が連勝で締めた。
 「菊池君と2人で、そういう展開になればいいねっていうのがあった。そしたらその形になりました。(逃げる菊池との車間を)空けている時に雨谷(一樹)君が来たんで、焦りもありました。もうちょっと残せたと思うんですけど、連日の不甲斐なさもあったんで、踏んでしまいました。日にちは忘れてしまったけど、(シリーズ中に)平原(康多)さん、吉田拓矢君に自転車をみてもらって急激に良くなった。自分では練習でいい感じでセッティングを出してきたつもりだったけど、これからは考えなきゃいけない」
 7番手から大外をまくり気味に追い込んだ深谷知広が2着。
 「強力な相手(眞杉の当日欠場)が1人いなくなったけど、逆に(菊池と)やり合う可能性もなくなったので、ああいう形(展開)は覚悟していました。菊池君がいいペースに入れていた。(仕掛けて)行けるタイミングがあったんですけど、自分が弱気でした。最後は外を回ったのがあった。でも、脚自体は回っていた」

<10R>

平原康多選手
平原康多選手
 新田祐大が押さえたところを、敢然と吉田有希が飛び出して先行策。関東コンビが出切り、新田が3番手に飛び付く。最終2コーナーからまくった新田を外に張りながら追い込んだ平原康多(写真)が1着。準決で落車に見舞われたが、最終日はファンの期待に応えた。
 「(吉田が)最終的には主導権を取ってくれた。決勝みたいなメンバーだったからキツいなと。後ろが新田君だったのでキツかったし、案の定(最終)2コーナーから仕掛けてきたので合わせようと。(準決の落車で)左肩に痛みはあったが、走ると決めたので吉田君に迷惑を掛けないようにと。ワンツー決まって良かった。(レースが終わってお客さんの歓声があり)頑張って良かったなと、心の底から思った」
 最終2センターで3番手以降がもつれて郡司浩平、内藤秀久、永澤剛が落車。逃げた吉田有希が2着に残った。
 「新田さんに突っ張られたらと思ったが、出させてくれたので良かった。そこからはフォームは関係なく、ドンキーコングみたいだったと思う(笑)。最後まで踏み切って、気づいたら出られたのは平原さんだけで2着なんだと。これまでのビッグレースに比べて調子がかなり良くて、いつもの緊張感がなく1走ごとに楽しめました」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 赤板過ぎにインから単騎の松浦悠士が寺崎浩平後位を奪う。新山響平を突っ張った寺崎は、そのままペースを上げて駆ける。寺崎、松浦で打鐘を通過して、3番手以下に4車で結束した北日本勢。同県の寺崎との連結を外した脇本雄太(写真)は7番手で態勢を整える。最終ホーム手前から脇本が前団との車間を詰めるも一本棒のまま。2コーナー手前から松浦が番手まくりを打つ。松浦に新山、小松崎大地、守澤太志、成田和也が続く。バック手前で脇本がその上をまくるがまだ前は遠い。松浦が北日本勢を退けて押し切るかに見えたが、ゴール寸前で外を脇本が突き抜けた。5月の日本選手権に続いて、今年2度目のGI制覇を5連勝の完全Vで遂げた。
 「(松浦に番手を奪われたところは)僕自身は寺崎君の後輪に集中してるなかで、不意を突かれる形だった。正直、あのあたりは技量不足が露骨に出たなと思います。(下げて7番手からの立て直しとなったが)内に入られたあとの守澤さんの当たりだったりとかも、自分が下げざるを得ない要因の1つなのかなと。そこからまたしっかり優勝するために気持ちを切り替えました。仕掛けは半信半疑だったので、本当にギリギリ届いたなという感じです。自分が1着で駆け抜けたのかって、本当に疑問に思うぐらいのゴールだった。(今後は)大きな目標としては、GIに向けてまたしっかり調整し直すってところからだと思います。このあと(走れるGIである競輪祭まで)2カ月以上空いてると思いますから、そのあたりのコンディションづくりというのも気を緩めずにやる必要があるかなと」
 赤板過ぎにインから寺崎の番手を奪取した松浦悠士は、単騎での奇襲で近畿勢を分断。番手まくりで優勝が見えたが、最後は脇本にのみ込まれた。
 「(赤板前のところは内が)空くかと思ってた。あとはどれだけ空くかなと。自分のやることをしっかりとやって優勝したかったんですけど、悔しいですね。単騎なりのレースができたかと思う。ただ、欲を言えば吉澤(純平)さんに付いて欲しかった。(番手から)まくる時に寺崎君に当たったのが痛かった。あれで一瞬、止まってしまった」
 北日本3番手の守澤太志は、前の2人のアクションを待ってから直線で中を突っ込んだ。
 「松浦君が番手に入ったことで、自分たちにいい流れになった。でも、(北日本の)みんな力不足でした。1、2着の脇本君、松浦君が強かった」

次回のグレードレースは、富山競輪場開設71周年記念「瑞峰立山賞争奪戦」が8月20日~23日の日程で開催されます。今シリーズは松浦悠士、平原康多、佐藤慎太郎、宿口陽一のSS班4名が参戦する超豪華メンバー。他にも全国各地から荒井崇博、犬伏湧也、山口拳矢、岩本俊介、渡邉一成ら強豪が集結するだけにV争いは熾烈を極めます。大激戦になること間違いなしでしょう!

8月8日時点の出場予定選手データを分析した、富山競輪GIII「瑞峰立山賞争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

プロスポーツ号外版は"こちら"