『第68回オールスター競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:8月18日

 函館競輪場を舞台にナイターシリーズで開催された「第68回オールスター競輪(GI)」は、8月17日に最終日が行われた。昨年オールスターを優勝した古性優作や脇本雄太のS級S班をはじめ、好メンバーによる決勝は、4車で結束した近畿勢が主導権。番手を回った寺崎浩平が、最終バック手前から発進して優勝。6回目のGIファイナルで初めてのグレードレース優勝が初のGI制覇で、優勝賞金6500万円(副賞含む)を獲得した。今年すでに2度のGI優勝の同県、脇本雄太と同じく、年末に平塚で行われる「KEIRINグランプリ2025(GP)」の出場権も手に入れた。

決勝出場選手特別紹介
決勝出場選手特別紹介
決勝1番車、古性優作選手
決勝1番車、古性優作選手
決勝2番車、太田海也選手
決勝2番車、太田海也選手
決勝3番車、吉田拓矢選手
決勝3番車、吉田拓矢選手
決勝4番車、南修二選手
決勝4番車、南修二選手
決勝5番車、松本貴治選手
決勝5番車、松本貴治選手
決勝6番車、佐藤礼文選手
決勝6番車、佐藤礼文選手
決勝7番車、寺崎浩平選手
決勝7番車、寺崎浩平選手
決勝8番車、岩津裕介選手
決勝8番車、岩津裕介選手
決勝9番車、脇本雄太選手
決勝9番車、脇本雄太選手

決勝戦 レース経過

 号砲で古性優作と佐藤礼文が飛び出すが、古性が抜かりなく正攻法の位置を確保。福井コンビが古性の前に入り、脇本雄太-寺崎浩平-古性-南修二の近畿勢が前受け。吉田拓矢-佐藤の茨城勢が続き、単騎の松本貴治、太田海也-岩津裕介の岡山勢が後攻めとなって並びは落ち着く。
 青板2コーナーで太田が上昇を開始。察知した脇本は中バンクに上がって太田の動きをけん制する。それでも太田は赤板目掛けて山下ろしで踏んでくるが、脇本は全力で突っ張って出させない。その際に古性が岩津を外に振る動きで近畿の隊列がバラけて3番手に太田がハマるイレギュラーな流れになりかけるが、間髪入れずに古性が追い上げてきて太田は後退を余儀なくされる。太田は5番手の松本の後ろまで引くも、そこも吉田に追い上げられて万事休す。レースは近畿勢ペースで進み、最終2コーナーから吉田がまくると、合わせて寺崎がバック番手まくり。吉田は南の外まで上がるのがやっとで売り切れて、最後は寺崎と古性の一騎打ち。古性も懸命に抜きにいくが、こらえた寺崎がGI初優勝を飾った。2着は古性、3着にもさすがのコース取りで南が続いて近畿ラインでワンツースリーの決着。


<4R>

小原太樹選手
小原太樹選手
 前受けの村田祐樹が、青野将大を突っ張り出させない。青野は3番手に下げて、そこを今度は7番手の石原颯が、赤板2コーナーから仕掛ける。しかしながら、先行態勢の村田もペースを上げて、村田、石原の叩き合い。小林泰正は、8番手で最終周回へ。石原が出切り、青野は2コーナー手前からまくる。青野が石原をとらえて、小原太樹(写真)の追走。小原は冷静に後続との間合いを計り、差し切った。
 「(村田に突っ張られたあと青野が3番手に入った)あの辺も難しい。後ろにラインがいたらできない。青野君があそこまで踏んでくれたから入れたと思う。強かったですね。(青野は踏み込んだ時に)もう行っちゃうなって感じでした。最後もタレていなかったですし、ワンツーは決まったなって思いました。(自分は)脚は悪くなかったと思うんですけど、もっと技術をみがいていかないと」
 7月のサマーナイトフェスティバル一次予選に次いでのビッグでの師弟ワンツーは、弟子の青野将大が2着。
 「とりあえず突っ張られても、突っ張られなくても残り2周でペースを上げたかったので踏みました。たまたまですけど、(石原が仕掛けたあと後方になった)小林君が(先に仕掛けて)来なかった。先に来ていたらキツかったと思う。師匠とワンツーが決まって良かったです」

<6R>

武藤龍生選手
武藤龍生選手
 赤板過ぎに伊藤旭を突っ張った菊池岳仁は、次に来た窓場千加頼を出させる。打鐘手前で窓場が主導権を握り、菊池は3番手に入る。伊藤が6番手になり、一本棒の隊列で最終ホームを通過する。車間を詰める勢いで菊池がまくり、逃げる窓場の番手で村田雅一がけん制して、3コーナーからは前に踏み込む。バック手前からまくった伊藤も迫り、武藤龍生(写真)は2センター付近から追い込んで抜け出した。
 「(窓場が来た時に菊池は)突っ張れそうだったんで、引くのかどうか見ていた。(菊池が)引いたので、(別線の)まくりが来たら止められるように整えていた。(菊池)岳仁君が頑張ってくれたけど、村田さんも仕事をして番手から出ていく感じで合わされ気味だった。それで踏ませてもらいました。(今シリーズは)手ごたえ自体は良かったんで、準々決勝が悔しいですね。(決勝に)関東2人が勝ち上がっているので、自分も加われればっていうのがあります。どんな展開でも取りこぼしのないようにしないと、GIの決勝だったり、タイトルはつかめない。そこはより気持ちを入れていかないと」
 突っ張られた九州勢に降りられた神山拓弥は、赤板2コーナー付近でう回を余儀なくされて関東3番手に付け直す。脚力を消耗しながらも、直線では伊藤との攻防を制した。
 「う回をして(武藤後位に付け直した時に)バックを踏んだんでキツかった。締めきれてなかったんで、しゃくられるかと思ったけど、自分なりに対応できて良かった。最後(の4コーナーは伊藤に)締め込まれた。(今シリーズを通して)脚がないので、参加しているだけになっていた。全体的に脚力を向上しないと。展開が良かったんで着だけっていうのは、5走すべてで感じた」

<7R>

成田和也選手
成田和也選手
 前団に構えた北日本勢は、中石湊が誘導との車間を空けて、中団は吉田有希に小川真太郎がフタをして赤板を迎える。中石がペースを握り、スローに落とす。内に包まれた吉田は動くに動けず、打鐘を通過。3コーナー過ぎから徐々に踏み上げた中石が、そのまま駆ける。4コーナーで小川を外に張った吉田だが、小川との決着はつかない。追い上げるように外併走からまくった小川も一息。自力に転じた坂井洋のまくりは中団まで。逃げる中石を番手の成田和也(写真)が、きっちり交わした。
 「(自分と連係した)二次予選は失敗してしまいましたけど、中石君は昨日(4走目)いいレースをしていた。(中石の)地元ですし、思い切ったレースをしてくれればって思っていました。(周回中は思っていた並びと)違ったんですけど、逆に良かったですね。自分たちに展開が向きました。(今シリーズは)1走目は不安があったんですけど、(最終日まで約)1週間あったのでレースをしながら上向いてきた感じですね」
 吉田と小川での中団争いをしり目に、冷静にペース駆けに持ち込んだ中石湊。GI初出場ながらも存在感を見せて、ラインでの上位独占をメイクした。
 「誰が来ても突っ張って、ゴールまでもつように踏もうと思っていました。中団から(外併走していた小川が)一気に来ると思って、車間を切ろうと思ったんですけど空きすぎてしまった。そこはミスでした。風はあったんですけど、脚の調子がいいのでペースで踏めました」

<8R>

鈴木玄人選手
鈴木玄人選手
 8番手から動いた岩本俊介が、赤板前に誘導後位に収まる。その上を切りに出た嘉永泰斗を岩本が阻み、5番手で車間を空けていた眞杉匠が打鐘2センターからスパート。岩本も合わせて踏み上げるが、最終ホームで眞杉が主導権を奪取。関東勢を追った単騎の取鳥雄吾が岩本との併走からまくるが、鈴木玄人(写真)がけん制。あおりで中野慎詞も不発。番手から差し脚を伸ばした鈴木が、GI初出場のシリーズ5走目で初勝利を遂げた。
 「眞杉さまさまです。超一流のトップレベルの番手で1個、2個でも吸収できるように、立ち回りとか勉強になりました。なかなかできることではない。(GI初勝利は)眞杉のおかげですから。(GI初出場だが)良くも悪くもやめっぷりの悪いレースができたと思うし、あきらめない気持ちはGIでも通用した。今後はもっとタテ脚をつけたい。眞杉の求めているのは、番手だけというよりは、自力と番手で交互にできる選手だと思う。交換しながら走れるようになりたい」
 ここがシリーズ4走目になった眞杉匠は、シャイニングスター賞、準決がシンガリだっただけにどうだったのか。
 「周りは見えていたし、タイミング良く行けたんですけど…。正直、シリーズを通して思うレースはできなかった。昨日(準決)も展開は絶好なのに思うように掛からなくて弱かった。合宿の感じは良かったんで、オールスターを楽しみに練習をやってきた。けど、調子をもってこられなかった」

<9R>

浅井康太選手
浅井康太選手
 赤板1コーナーで犬伏湧也が押さえて出て、単騎の伊藤颯馬が3番手に続く。前受けの菅田壱道は4番手を確保して、浅井康太(写真)は6番手。赤板手前から犬伏に合わせて動いていた深谷知広だったが、結局8番手で打鐘を迎える。深谷は仕掛けられず、そのまま犬伏が踏み上げて駆ける。最終ホームを通過して、逃げる犬伏との車間を清水裕友が空ける。6番手の浅井、8番手の深谷が、ほぼ同時に2コーナーで仕掛ける。浮いた深谷は不発。直線で追い込む清水をまくった浅井がとらえて1着。
 「中団、中団を回るのが確実かなと。あとは自力をしっかり出してと。ファンの人に選んでもらったので、自力を楽しみたいなって纐纈(洸翔)に無理を言って主張させてもらった。(最終)ホームで深谷君が来るのか、2コーナー手前で菅田君が仕掛けるのかだった。(深谷が)来なかったし、菅田君が浮いたあのタイミングしかないって仕掛けた。冷静に見えていました」
 犬伏が主導権を握り、流れが向いた清水裕友は、浅井のまくりに屈して2着。
 「(単騎で3番手にいた伊藤)颯馬のまくりが来るかなっていうのはあった。でも、(最終)バックでは、(犬伏の掛かりから)誰も来る感じがなかった。(浅井が来たのが)直線だったし、自分はちょっと中途半端になってしまった。気持ちの面だとか課題だけが残るシリーズだった」

<11R>

寺崎浩平選手
寺崎浩平選手
 グランプリスラムを達成した2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯。今年2度のGI制覇を遂げた脇本雄太の前を2つとも務めていたのは、寺崎浩平(写真)だった。それだけに「脇本さんがハコを回れって言ってくれた。古性さんからも」は、周囲の誰もが納得の流れだった。ただ、“脇本のハコ”は、寺崎のプレッシャーも計り知れないものがあったに違いない。
 「最初で最後のチャンスのつもりでした。これで獲れないなら、たぶん自力でも一生獲れないだろうっていう心構えで挑みました」
 同県の脇本が先頭を買って出て、後ろを固めるのが古性優作、南修二の大阪コンビ。勢いのある太田海也、今年のダービー王の吉田拓矢らが相手だとはいえ、これ以上ない近畿の布陣。寺崎は脇本の背中に集中。感覚を研ぎ澄ませていた。
 「(打鐘前に後ろがもつれたことは)全然わかっていなかったですし、僕はもう脇本さんと連結を外さないように。ジャンからピッチもどんどん上がっていきました。別線が来られるようなピッチじゃなかった。そこはもう後輪にだけ集中して付いていきました。後ろは固めてくださっている南さんと古性さんがいる。自分は前のことだけに集中して、行けるところから行こうって考えていました」
 古性がスタートを取り、近畿勢にとっては思惑通りの前団。太田を脇本が突っ張ると、古性、南が外を回して危なげなくドッキング。太田はズルズルと後退して、5番手に単騎の松本貴治、6番手に吉田で最終ホームを迎えた。
 「さすがに(最終)バック線ぐらいで、脇本さんもスピードが鈍った感じがしました。別線の吉田君も太田君もまくりに来られたら、のみ込まれるよりは自分がしっかりタテに踏んで、ラインで決まるように走りました」
 吉田が6番手からまくりを打ち、寺崎は引きつけることなくバック手前から発進。吉田は古性の横まで至らず、優勝は寺崎と古性に絞られた。
 「全然、脚はたまっていなかったですし、(最終)4コーナーから直線がすごく長く感じました」
 詰め寄る古性を1車輪、振り切ったところがゴール。通算6回目、今年3度目のGIファイナルで初めてつかんだタイトルは、寺崎にとってのグレードレース初優勝だった。
 「(デビューからGI制覇まで約5年半経ったが)すごく長く感じましたし、今年タイトルに手が届きそうな手応えもあった。実際にタイトルを獲れて本当にうれしいです。しっかり近畿の先頭でやってきたことが実を結びましたし、しっかり脇本さんの番手っていう責任ある位置を回らせていただけたのは、日ごろやってきたことが実を結んだ結果だと」
 全日本選抜では、まくりで脇本を連れてワンツーの準V。タイトル獲得が視界には入っていたが、チャンスをモノにする難しさを痛感しているからこそ“最初で最後”と自身に言い聞かせた。
 「脇本さんも自力でタイトルを何個も獲っていますし、僕も続けるように。脇本さんの前をまたしっかり回れるように、脚力をつけたい。グランプリに乗ることは目標でしたし、そこに向けていままで通り、一戦一戦、しっかりとGIで戦って積み重ねていきたい」
 早期卒業生としては、初のタイトルホルダーが誕生。デビューから常に期待を背負ってきた寺崎が、ファンに応えるオールスター優勝。グランプリスラムへの第一歩を踏み出した。
 脇本に突っ張られた太田が下がってくると、古性優作は落ち着いて外を回して赤板2コーナーで寺崎に付き直す。そこからは危なげなく寺崎後位を守り、直線勝負に持ち込んだ。
 「(スタートを取るのは)キツかったです。(落車の怪我で)Sを取れる状態ではなかった。けど、そこが取れたら理想だと、いまのできる全力で取りにいって取れて良かった。脇本さんがあれだけフカしてう回したので、ジャンではかなり脚を使いました。寺崎君が先頭に立ったら、(別線が)来たら全部止めようと思っていました。脇本さんがあれだけフカしていったので、(最終)バックから出るのは容易ではなく、寺崎君はキツかったと思う。寺崎君が強かった。まず、悔しいというのはありますが、優勝が寺崎君でみんな文句ないと思うし、優勝してほしい選手でした。悔しいけど、うれしさもあります」
 近畿のシンガリを固めた南修二も、ラインとしてさすがの立ち回り。まくった吉田とのスピードを見極めると、直線の入口では後ろからインを突いた松本のコースを阻んで3着に入った。
 「(太田)海也が下げて来るなかで、(古性)優作がしのいだ。次は自分がと注意をして、そこからでした。(吉田が来ていたのは)わかっていたけど、前が強いので隙がないようにと。外を踏むと狙われる可能性もあるので、中で勝負をしようと。(今シリーズは)自分のなかではいい状態だったと思います」

次回のグレードレースは松戸競輪「燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯」が8月23日~26日の日程で実施されます。

今シリーズのSS班は郡司浩平、岩本俊介、清水裕友で、2名が南関。更に深谷知広、和田健太郎、青野将大と実力者がそろった南関勢は強大な戦力を誇っています。しかし、他地区も黙ってはいられないでしょう。昨年の覇者である清水はSS班の意地もあり、九州は先行力に磨きがかかった後藤大輝の存在が心強く、ひと筋縄ではいきそうにありません。ファン必見の4日間です。

8月10日時点の出場予定選手データを分析した、松戸「燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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