『第78回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:5月5日

 いわき平競輪場で開催された輪界でもっとも権威のあるタイトル、令和6年能登半島地震復興支援競輪・大阪・関西万博協賛「第78回日本選手権競輪(GI)」は、5月5日に最終日が行われた。単騎の選手が4人になった決勝では、関東勢が2つに分かれて小林泰正が主導権。最終ホーム手前から仕掛けた吉田拓矢に乗った平原康多が直線で抜け出してV。21年10月の寬仁親王牌以来、通算9回目のGI制覇で優勝賞金8900万円(副賞含む)を獲得。日本選手権は初めて優勝。年末に静岡競輪場で行われる「KEIRINグランプリ2024(GP)」の出場権も手に入れた。

決勝競走出場選手特別紹介
決勝競走出場選手特別紹介
決勝1番車、古性優作選手
決勝1番車、古性優作選手
決勝2番車、平原康多選手
決勝2番車、平原康多選手
決勝3番車、清水裕友選手
決勝3番車、清水裕友選手
決勝4番車、吉田拓矢選手
決勝4番車、吉田拓矢選手
決勝5番車、山口拳矢選手
決勝5番車、山口拳矢選手
決勝6番車、諸橋愛選手
決勝6番車、諸橋愛選手
決勝7番車、武藤龍生選手
決勝7番車、武藤龍生選手
決勝8番車、小林泰正選手
決勝8番車、小林泰正選手
決勝9番車、岩本俊介選手
決勝9番車、岩本俊介選手

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると外から武藤龍生が飛び出して誘導員を追う。吉田拓矢-平原康多-武藤が前を固め、古性優作、清水裕友、山口拳矢の単騎のSS班3車がこの後ろに続く。小林泰正-諸橋愛は7番手からで、岩本俊介はこの後ろ。
 青板バックから小林が上昇を開始すると、この動きに合わせて古性も上昇する。誘導員が退避後すぐに古性が前に出るが、すかさず小林が先頭に躍り出る。古性は3番手に入り、この後ろが内に吉田、外に清水で併走となるも、吉田は6番手まで車を下げる。最終ホーム手前でも前のペースは上がらず、6番手の吉田がスパートを開始する。1センターで先頭の小林を捕らえると、バックではライン3車が出切る。吉田のカカリが良く、前に迫る仕掛けがないまま直線へ。吉田の番手を回った平原が抜け出してV。吉田ラインの仕掛けに乗り、外を伸びた岩本が2着。武藤と岩本の間を鋭く追い込んだ古性が3着。


<6R>

志智俊夫選手
志智俊夫選手
 切って出た山本伸一を赤板2コーナーで谷口遼平が押さえて出る。タイミングを取った河端朋之が、8番手から打鐘で仕掛ける。合わせて谷口も踏み込むが、河端がスピードに乗せて最終ホームで叩き切る。3番手に飛び付いた谷口は車間が空いて、6番手の鈴木竜士、7番手の山本は動けない。バックを通過しても谷口は、前と2人の車間が空いたまま。しかしながら、逃げる河端も失速。番手から差し脚を伸ばす香川雄介を谷口がつかまえて、その外を志智俊夫(写真)が伸びて1着。19年8月のオールスター以来となるGIでの勝ち星を挙げた。
 「並びからして谷口が主導権を取って、あとは力勝負でしたね。(カマした)河端はダッシュがいいんで、もしかしたら1人かと思ったけど、香川も付いていた。前のレースで小倉(竜二)がすごく伸びていたんで、間(のコース)をいくより、外を行く方がいいのかなと。(1着で)お客さんにもほめてもらったし、今回はケアも調整もうまくいった」
 二次予選で落車に見舞われた谷口遼平だったが、シリーズを戦い抜いて成績をまとめた。最終日もラインでのワンツーなら合格点だろう。
 「(周回中の)並びが良かったですし、展開も最低限でした。(河端が仕掛けて)来ているのがわかったけど、(2走目)落車している分、感じがすごく悪かった。ダッシュをしても、めちゃくちゃ離れてしまった。きっちり飛び付けたらもっと楽に詰められてたと思うんですけど。ただ、(最終)バックで河端さんもキツそうだった。落車してこの着(3、2着)ならっていうのはあります。2走ともしっかりと仕掛けたわけではないですけど」

<7R>

北井佑季選手
北井佑季選手
 伊藤旭の上昇を阻んで、前受けから北井佑季(写真)が突っ張る。赤板2コーナー手前で下げ始めた伊藤は、雨谷一樹のいる4番手で止まり、併走から打鐘2センターで再び仕掛ける。引きつけた北井がスパート。伊藤は番手に降りて、小原太樹と併走。番手を奪いにかかるが、もつれて2人とも北井に遅れる。6番手から雨谷一樹がまくるが、北井との差は縮まらない。直線を迎えても後ろを離していた北井が押し切った。
 「しっかりと来るところを見て、自分なりのペースで行った。(中団の)併走もわかって伊藤旭さんがカマしてくるか、小原さんのところに降りる感じだった。そこは出切られないように踏んだ。結果的に(小原がからまれて)引きつけすぎた。GIでみなさんが脚も賢さもあるなかで今日(最終日)は逃げ切れたけど、細かいペース配分ですね。自分なりの積極的な走りで3着以内に入るには、今日の走りしかない」
 関東勢を追いかけた単騎の久米康平が、直線で伸びて2着に入った。
 「北井さんが突っ張りかなと思っていたので、南関の後ろからが良かったんですけど、そこは取れなかった。雨谷さんより先に行きたかったんですけどね。(雨谷が)止まってちょっとでも外を回そうと踏み込みました。本当はもっと自力を使って出せたらいいんですけど。道中でいっぱいになることもなく思ったよりやれる雰囲気でした」

<8R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 6番手から先に切って出た嘉永泰斗ラインに松井宏佑が続くが、内から窓場千加頼も踏み上げる。松井と窓場で踏み合いのまま打鐘過ぎに両者が出て、最終的には松井が主導権。窓場が3番手に下げて、今度は森田優弥が4コーナーから仕掛ける。逃げる松井の掛かりが良く、森田は窓場をキメて最終1コーナー過ぎに3番手を奪う。窓場が後退して、三谷竜生が自力に転じる。深谷知広(写真)は、松井の余力を見極めて、バックから番手まくりを打つ。森田を振り切った深谷が1着。
 「なるべく前の方からって考えていたんですけど。みんな早くて後ろになりました。先切りされるのは良かったんですけど、そのなかでハイピッチになった。(窓場も内から踏み込んできて)松井がずっと外で頑張ってくれていた。出切ってからもピッチを緩めずに踏んでくれた。森田君が止まったのが見えて、そのあと1番車(三谷)が見えて、松井があそこまで頑張ってくれた。技量不足ですね。(今シリーズを振り返って)いまひとつGIで勝ち上がって優勝争いをする力はなかった。もう一度プランを組み直して考えてやっていきたい」
 南関勢を叩けずも俊敏な立ち回りで3番手を確保した森田優弥が、深谷に流れ込んで2着。直線でも差が詰まらなかった。
 「車番が悪かったので前の方からって感じでした。(嘉永を)突っ張ろうと思ったんですけど降りられてしまった。(打鐘過ぎ4コーナーから巻き返していったが)自分に力があれば前まで行けたんですけど…。(深谷に見られて)気持ちで負けてしまいました。(今シリーズを振り返って)力不足ですね。まだまだです。練習仲間で同期の(小林)泰正さんが決勝に乗ってうれしい気持ちもあるんですけど、悔しい気持ちもある」

<9R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 近畿勢が前団に構える。寺崎浩平が町田太我を突っ張り、そのまま主導権。町田は後方に戻り、一本棒の隊列で打鐘を通過する。3コーナーから踏み上げた寺崎が緩めた最終ホーム手前の仕掛けどころを見逃さず、4番手の郡司浩平(写真)はスパート。3番手の守澤太志が稲川翔の強烈なブロックでさばかれ、郡司、佐藤慎太郎の2人で出切り、後続を引き離す。立て直した稲川が切り替えて、前の2人を追いかける。直線でのマッチレースは、佐藤を振り切った郡司の1着。
 「自力で任せてもらったんで、無理にでも行けるところをって思っていました。(寺崎は打鐘の)3コーナーくらいから立ち上げて、(最終)ホームでペースに入れてたんで、そこしかないと思って(仕掛けた)。反応はそんなに良くなかったけど、それまでに脚がたまっていたしすんなりだったんで。出切ってからは重かったんで、差されてもしょうがないかなっていうのはありました。(最終日までの3走は)南関の総力をフルに使って、自分は番手に付かせてもらった。それで感じることもあったし、自分も前でもまだまだ頑張りたい」
 地元の佐藤慎太郎が、場内の声援を受けて懸命に郡司との差を詰めるが4分の1輪及ばず。
 「(最終日を)1着で締めたかったんですけど、郡司が強かったのもありますし、自分自身の出も良くなかった。(郡司の早めの仕掛けは)俺も守澤(太志)も想定外で(最終)2コーナー目がけて行くのかと思い込んでいたところもあった。そこは(郡司が)よく判断してくれた。ピッタリ付いてしまうと抜けないし、そこ(直線)にいくまでの余裕が必要ですね」

<10R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 周回中は7番手にいた松浦悠士は、赤板目がけて加速をつけて4車の北日本勢を押さえる。3番手に収まった新山響平は、2コーナー手前からすかさず巻き返すが、北日本勢は3番手以降の連係が崩れる。打鐘で出た新山に菅田壱道が続き、3番手には松浦が入る。山崎芳仁、和田圭が追い上げて、それに乗った眞杉匠が最終ホーム手前から仕掛ける。2コーナー手前でまくり切った眞杉に坂井洋(写真)の追走。坂井が後続の間合いを計り、余裕をもって差し切った。
 「(眞杉が)冷静に対応してくれた。強かったです。出切るまでしっかりと追走に集中していた。(今シリーズは)まだまだ力不足。(ゴールデンレーサー賞は)番手からだったし、今日(最終日)も番手から。帰ってすぐに練習して、ベースを上げられるようにしたい」
 さすがの仕掛けを見せた眞杉匠が、ロングまくりで坂井とワンツー。
 「新山さんが前を取って突っ張りだと思ったので、前が取れれば自分がそれをやりたかったですね。(松浦の動きは)落ち着いて見ていて、仕掛けどころは来ると思った。(山崎の追い上げもあり)そこでしたね。(今シリーズは決勝に乗れずに)すごい悔しかったので、次(GI)の高松宮記念杯に向けてしっかりやっていきたい」

<11R>

平原康多選手
平原康多選手
 赤板2コーナーで小林泰正が押さえて先頭に立つと、単騎の古性優作、清水裕友、山口拳矢が切り替える。打鐘では内に包まれていた吉田拓矢は、2センターでようやく6番手に下げ切る。小林が踏み上げる前に、吉田は最終ホーム手前から仕掛ける。吉田が1センター過ぎに叩き切り、平原康多(写真)、武藤龍生まで3車のラインが出切る。小林ラインを追いかけた単騎の岩本俊介は、4番手で小林、諸橋愛と3車併走。外をまくった山口にかぶって古性は動けない。番手絶好の平原が直線で抜け出して、外を追い込む岩本を振り切って優勝。日本選手権初VでS班返り咲きを決めた。
 「どんなに弱い時でも応援してくれるファンの人たちがいたので、力になりました。信頼している(吉田)拓矢と(武藤)龍生といいラインで戦えて良かったです。(吉田に)あそこまで行ってもらったら、優勝を獲らないと申し訳ない。それで踏ませてもらいました。まだまだ本調子じゃないので、もっといいレースができるように体調の方を整えていきたい」
 単騎は4人。古性、清水、山口が中団に切り替えていくなかで、岩本俊介がただ一人、9番手でじっと我慢して打鐘を通過。吉田ラインの仕掛けに乗るも、最終バックでは3車併走の大外と苦しいポジション。それでも2センターから踏み込んで2着。初めてのGIファイナルは準Vに終わった。
 「切れ目でも単騎のなかで一番後ろになると思っていた。終わったあとに(最終)2コーナーで行けなかったって(周りの選手に)言われたけど、決勝でしたし3コーナーからでした。2コーナーで行っても、平原さんに合わされていたと思う。2着だけどビックリ。GIの初決勝でお客さんの車券にからめたのはうれしい。運が良かったです。そういう展開で脚をためられていた」
 打鐘で単騎では“最前列”の3番手にいた古性優作。結果的には反撃に出た吉田ラインに岩本までスルーして、まくった山口にもかぶって後方で万事休す。コースを探して直線強襲も、3着が精いっぱいだった。
 「いい位置を取れたけど、(最終)ホームで平原さんのところに行くべきでした。ただ、ただ、力不足。力がなかっただけ。力があればどんな展開でも1着を取れるので。僕が目指しているところ、練習のワット数ができるようになれば、GIを獲れる確率が特段に上がる」

次回のグレードレースは、大阪・関西万博協賛・武雄競輪場開設74周年記念「大楠賞争奪戦」GIIIが5月11日~14日の日程で開催されます。
今シリーズは深谷知広、松浦悠士、清水裕友のSS班3名が参戦する豪華メンバー。地元・九州勢は英明、庸平の山田兄弟をはじめとして嘉永泰斗、北津留翼らが一丸となって強豪を迎え撃ちます。 ハイレベルなV争いが繰り広げられる、ファン必見の4日間です。

4月27日時点の出場予定選手データを分析した、武雄競輪「大楠賞争奪戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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