『第79回日本選手権競輪(GI)レポート』 5日目編

配信日:5月3日

 名古屋競輪場で開催されている輪界でもっとも権威のあるタイトル「第79回日本選手権競輪(GI)」は、5月3日に5日目を迎えた。ダービーファイナルのキップを巡り、準決では見ごたえのバトルが繰り広げられた。新山響平、岩本俊介、菅田壱道が白星を挙げて優出。新山、岩本のほかにも、古性優作、眞杉匠とS級S班は4人が決勝にコマを進めた。シリーズも大詰め、5月4日のシリーズ最終日には、優勝賞金9400万円(副賞含む)をかけて、厳しい勝ち上がりをクリアしたトップ9による決勝の号砲が鳴らされる。
 日本選手権シリーズは、最終日の5月4日も、様々なイベントでみなさまのご来場をお待ちしております。「松井珠理奈」のトークショー、「ヤーレンズ」のお笑いステージ、オートレーサーの森且行選手のトークショー、BMXの池田貴広選手によるパフォーマンスステージ、来場者先着入場プレゼント、予想会ステージ、太ももカフェ(選手会愛知支部)、名古屋めしキッチンカーの出店、未確定車券抽選会などが予定されています。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

準決勝9Rゴール
準決勝9Rゴール
9R1着、新山響平選手
9R1着、新山響平選手
準決勝10Rゴール
準決勝10Rゴール
10R1着、岩本俊介選手
10R1着、岩本俊介選手
準決勝11Rゴール
準決勝11Rゴール
11R1着、菅田壱道選手
11R1着、菅田壱道選手

<5R>

山崎賢人選手
山崎賢人選手
 赤板過ぎに伊藤旭が出ると、前受けの雨谷一樹が番手に飛び付く。後ろが併走になりペースを落とした伊藤を、打鐘3コーナーで河端朋之が叩く。3番手に入った伊藤は、4コーナーで巻き返す。最終1コーナーで伊藤が主導権を奪取。併走をしのいだ山崎賢人(写真)が続くが、今度は河端が番手で粘る。連結を外した井上昌己が追い上げるも、山崎後位に入っていた永澤剛がさばく。山崎は河端との併走から、3コーナー過ぎに踏み込んで抜け出した。
 「(番手で粘られるのは)想定していました。(雨谷は)前を取ったら、ああいう展開になるかなと。(岡山勢に出られてからは伊藤)旭もバックを踏まずに流れのなかですぐに行ってくれた。(河端は)遅れたので来ないかなと思ったけど、もう1回(自分の内に)来た。でも、自分も余裕があった。後ろを確認して(井上ではないのも)わかっていた。(気持ち的には)自力を出したいのが一番だけど。(番手では)やれている感じがない。レースのスピードでのヨコの動きがまだまだです」
 九州ラインの後ろから運んだ単騎の永澤剛は、追い上げて打鐘2センター付近で山崎の番手を奪う。岩津裕介のブロックをこらえて、追い上げた井上を外に張って2着。結果オーライを強調する。
 「(九州勢は)2段駆け含みかなと思ったんで、(周回中は)そこでと思っていた。(叩いた)河端(のライン)に追い上げようかと思ったけど、できなかった。それで(山崎の番手に)結果的になった。そのあと(井上の追い上げは)しのげる感じがあった。たまたまですけど良かった」

<7R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 中部勢が前団。高橋晋也を突っ張りながら村田祐樹はペースを落とし、様子をうかがう。そこを6番手の鈴木竜士が、打鐘3コーナーからカマす。関東勢が主導権を握り、最終ホームで山田庸平が襲い掛かる。2コーナー手前で逃げる鈴木が自ら山田をブロックするが、山田が前に出る。村田のまくりは不発で、2センターから踏み込んだ吉澤純平の外を山口拳矢(写真)が追い込む。ゴール前で吉澤をとらえた山口が、3走目でシリーズ初勝利。
 「高橋さんが先切りなのかと、迷いながらになりましたね。後ろがゴチャついて見えづらかったが、みんなが思ったよりも早く来ました。前がもつれる展開になったけど、余裕はあったので(最終)バックでの接触も見えていました。自分は最後に踏んだだけで、村田君が連れていってくれた。(右鎖骨骨折から復帰2場所目で)レースだと現状は5割くらい。脚はたまるけど出ない感じです」
 山田に出られて、内の鈴木はいっぱい。最終2センターから追い込んだ吉澤純平が2着。
 「前が遠くて、どうなっているかわからずに見てしまった。鈴木君が早く行ってくれたのに、遅れてしまいました。追って整わないなかで、山田君が来て、内に差していたのでもっていけなかった。あそこをもっていければでした。なんとかこらえていったけど…。今開催は練習や、体調面でも一番やってきたつもり。それでもGIのハイペースに立ち遅れていますね」

<8R>

守澤太志選手
守澤太志選手
 赤板過ぎに阿竹智史を突っ張った窓場千加頼がペースを落としたところを、中野慎詞が仕掛ける。2コーナーで中野が先頭に立ち、先行態勢を取る。窓場は3番手に飛び付いて、和田健太郎と併走になり打鐘。最終ホームで中野がペースアップ。3番手を和田が守り、4番手に窓場。後ろは佐々木龍が競り勝つも、3コーナーから脇本が追い上げる。勝負は北日本両者。番手で車間を空けていた守澤太志(写真)が、直線で詰めてきっちり差し切った。
 「(中野は)ここっていうところで、しっかりと仕掛けてくれたんで良かった。(後ろが)もつれていたのもわかったし、和田さんが取り切ったのもわかった。窓場君がいなくなっても脇本君がいるんで、油断しないで車間を切って来られないようにと。こんな展開は100走に1回くらいしかない。これ以上、楽な展開はないだろうし、自分じゃなくても楽だったと思う。それでも今回に関しては、だいぶ悪かった時期に比べたら良くなった」
 ラインを上位独占に導く先行策。出し惜しみすることなく風を切った中野慎詞が2着に逃げ粘った。
 「後ろが守澤さんなんで、安心して駆けることができた。力をしっかり出し切ろうと。わざともつれさせたわけじゃないけど、(窓場に)引かれるよりはもつれた方が有利な展開になるかなと。ちょっと疲れなのか、体が重い。イマイチ持ち味の掛かりがなかった。どうしても一次予選の方が掛かっている感じがあった。まだ3走しかしてないので、原因がどこにあるのか、(最終日に)しっかりとケアして臨みたい」

<9R>

新山響平選手
新山響平選手
 8番手の太田海也は、前との車間を空けてタイミングを計り、赤板では動かない。前受けの新山響平(写真)も、誘導との距離を取る。1センター過ぎから太田が仕掛けて、新山は合わせてペースを上げる。松浦悠士は太田の加速に付いていけない。遅れる松浦を成田和也が、打鐘2センターで外に張る。主導権を奪った太田の後ろに新山が飛び付き、最終周回。6番手の坂井洋が、2コーナー手前でまくりを打つ。新山は合わせるように番手まくり。坂井はまくり切れず、番手付近まで。新山がそのまま押し切った。
 「本来なら3番車の自分が(スタートを)取らないといけないんですけど、阿部(力也)さんが取ってくれたので脚を温存できました。いつも太田君にやられていたので、突っ張りたかった。けど、すごいダッシュでした。もうあそこで(成田に)入れてもらえていなかったらなかったと思うので、成田さんと阿部さんのおかげです。(太田が)出たあと流していたので、もう1段階、2段階上がるのかなって思ってツーテンポ待った。でも、踏み直されても仕方ないと思っていったら、前までいけたので良かったです」
 北日本ライン3番手の阿部力也は、最終1センターで内に差し込んで万事休すかに思われた。しかしながら、4コーナー手前で外に持ち出してシャープに伸びる。ビッグ初優出が、この日本選手権になった。
 「(ラインの3番手で)内は締め過ぎなくらい締めていて、まったく余裕はなかった。かなり詰まったりしたんですけど、成田さんに全部お任せでした。成田さんがいればどうにかなるっていう絶大の信頼があった。新山君が(太田の番手にハマったあとも)仕掛けてくれたので、付いていって最後はガムシャラに外を踏みました。外を踏むしかないと思っていましたけど、冷静には見られていなかった。内に詰まったり、脚を使っていたんですけど。最後はしっかり伸びてくれた」
 松井宏佑は、最終ホームで8番手に置かれるピンチ。まくり追い込みで強襲して、なんとか3着には届いた。
 「(赤板で坂井に)内をしゃくられてしまって、後方になってしまって申し訳なかったです。郡司(浩平)さんもいましたし、勝負どころで一気に仕掛けようと思っていた。でも、うまいところで仕掛けられなかった。(自転車は)進んでいたんですけど、目標は郡司さんとワンツーだった。めちゃくちゃ悔しいです」

<10R>

岩本俊介選手
岩本俊介選手
 石原颯が赤板1コーナーで押さえて出て、3番手が皿屋豊と眞杉匠で併走になる。外併走から踏み込んだ眞杉が、打鐘手前で先頭に出る。そこを深谷知広が強引に叩いて、4コーナーで主導権。最終ホーム過ぎに岩本俊介(写真)まで出切り、小原太樹は付け切れない。眞杉は3番手で立て直して、6番手の石原は2コーナー手前でまくる。石原は3番手までで、眞杉が外を張りながら踏み込む。しかしながら、岩本が番手から差し脚を伸ばして1着。
 「流れが速くなって眞杉が狙ってくるのは予測がついていた。しっかりと追い上げられて良かった。(眞杉が3番手に)入ったと思ったんで、外を踏んで残したいところでしたけど、これ以上は難しかったですね。今日(5日目)は深谷君の頑張りに尽きるが、外に持ち出して前に踏んだ時に手応えがあった。僕の技量不足で(深谷とワンツーを)決められなかった」
 3番手奪取からの追い込みになった眞杉匠が、こう振り返る。
 「(最終)2角で行けなかったです。(深谷が)来たのがわかって、(3番手を取ってから)もっと早めに仕掛けていれば、(武藤)龍生さんが仕事をしやすかったのに。1走目が一番良かったですけど、昨日(4日目)はあまり良くなかった。修正したつもりですけど、乗ってみるとうーんって感じだった」
 最終バックでは、ほぼ9番手。絶望的な位置からコースを探して浅井康太が突っ込んだ。
 「(最終)3コーナーでハウス(接触)しながら無理やりにいった結果、勝負はできた。アレをいかないと、8、9着してしまう。しっかり突っ込めた。参加選手は(日本選手権の)ここを目指して走っているし、普段のGI以上の気持ちの選手が多い。勝ち上がりもシビアですし。コースはなかったけど、突っ込んだ。感覚は良くなっているし、連日、体と向き合えている」

<11R>

菅田壱道選手
菅田壱道選手
 赤板過ぎに寺崎浩平が先頭に出る。4番手で菅田壱道(写真)と併走になった吉田拓矢は、2コーナー手前から踏み込んで寺崎を押さえる。そこを犬伏湧也が出て、打鐘4コーナーで主導権を握る。中四国勢を追った菅田が、最終ホームで3番手に入る。飛び付いた吉田は、山崎芳仁を弾いて4番手を確保。7番手になった寺崎は、2コーナー過ぎから仕掛けるが前は遠い。3番手で間合いを取った菅田が、2センターから追い込んで突き抜けた。
 「道中、真後ろに吉田君ラインが入るのは、想定していなかった。(来たのが)寺崎君だったら入れて、1回グルッと回ったら、犬伏君のカマシごろになるかなと。そのタイミングで(犬伏ラインに)ビタで飛び付けたのが、自分の持ち味でもある。そこに特化して練習もしているので、最高のレースができたと思います。吉田君が切ってくれたことで、自分の展開がつくれたのかと思います。(犬伏の)掛かりっていうより、自分は道中ずっと余裕でしたね。初日、(新山)響平君で、昨日(ゴールデンレーサー賞)は単騎。今日(5日目)は自力で全然、違う展開ですけど、感触としては自力で戦えている今日が一番良かった」
 4番手の吉田拓矢は、菅田の内を伸びてタイヤ差の2着。しかしながら、3番手を菅田に入られ、ラインの小林泰正との優出を逃しただけに反省を忘れない。
 「寺崎さんが(上昇して)行っても、犬伏は付いていかないだろうと。とっさの判断ができたのが良かった。(打鐘3コーナー付近から)この辺を踏んでいないのが甘い。踏んでいれば3番手だったんで、(小林)泰正さんと勝負ができた。(犬伏の)掛かりが良かったんで、どこをいこうかと。内にいって泰正さんのコースがなくて申し訳ない。軽いんで調子はいいです」
 まくった寺崎は中団まで。最終2センターから2度に渡り、内の小林を押し込んで直線で強襲した古性優作は、なんとか3着での優出。
 「冷静に前を見て、犬伏君までめちゃくちゃ遠いなって。1回当たった時に小林君をどけ切れなくて、そこで1回減速した。それで2回目当たった時に押し込めたんで、そこから踏み込んだ。けど、あんまり伸びなかった。(ゴールした時は)4、5、6(着)とか、その辺かなと。(準決の)映像見たら踏みすぎているんで、修正したいなと思います」