『第61回日本選手権競輪(GI)レポート』 5日目編
 
配信日:3月22日


 第61回日本選手権競輪「駿府ダービー」は大会五日目を終了した。メインの準決勝ではベストナインを巡って熾烈極まる激闘が繰り広げられた。残すは最終日のみ。G1最高峰のダービーチャンピオンに輝くのは誰か!。注目の決勝は23日11レースで行われる。

 場内イベント会場も連日大いに賑わっており、明日(3月23日)もイベントが用意されております。開門時には場内で『あさばた太鼓』演技、6レース終了後には決勝戦出場選手の紹介、決勝戦終了後には『あさばた太鼓』の演技と共に、表彰式、閉会式がバンク内で行われます。駿府ダービーの頂点を極める戦いを是非本場でお楽しみください。



<4R>
志智俊夫選手
志智俊夫選手
   検車場からは4レースの特選からお届けします、前受けの渡部哲男を打鐘で押さえた金子貴志がそのまま先行態勢を取り、別線を封じ切った。
  「風もあったし、中井(達郎)さんに合わせて脚を使ったしキツかったですよ。でもだいぶ感触は掴めてきましたね」
  その金子を差し切った志智俊夫(写真)がシリーズ2勝目を挙げた。しかし、自力のレースではないだけに、コメントは控えめだ。
  「金子君は強かったね。中井君が追い上げてくる形になったが、彼は地元だし気合も入ってるから、油断負けしないように頑張りました」
  2着はポッカリと空いた内を伸びた内藤宣彦。タナボタのようなレースだけに苦笑いを浮かべる。
  「登志信(斎藤)がコースを作ってくれたようなものだからね。それにしても今シリーズは脚を使い切るレースにならないなあ…。そういえば僕で3レース目の(5)(4)なんですね」
  八番手からまくり上げた渡部哲男だったが、大外を踏むも伸び切れずに終わった。
  「3コーナーで前が三車併走になってたので、避け気味に踏んだが…。外を伸びるかと思ったが、それほどでもなかったね」


<5R>
三宅伸選手
三宅伸選手
   5レースは飯野祐太が押さえ先行で主導権を取った。矢口啓一郎をうまく牽制して駆けたが、ゴール前は末を欠く。
  「打鐘から仕掛けようと思ったが、あまりの風の強さで遅れてしまった。でも結果的には(石丸が突っ張らない)ギリギリのタイミングで行けたのかな。ホームが向かい風でキツイのに、バックでもそれほど流れる感じがしませんでした」
  一旦中団に入った石丸寛之だったが、矢口啓一郎の巻き返しが早く、強引にまくり出る形になった。
  「矢口とかぶりそうになったし、あわてて出たような感じだね。まあ仕方ないです」
  その石丸後位から無風のコースを突き抜けたのは三宅伸(写真)。ベテランだけに余裕の表情だが、ゴール後にはガッツポーズも飛び出した。
  「石丸の頑張りに尽きるね。僕が矢口君を止めてあげられれば、石丸も自分のタイミングで出れたね。止めにいってスカされた感じだった。松永(晃典)君が内を締めてたので、僕の踏むコースが自然にできた」


<6R>
岩津裕介選手
岩津裕介選手
   6レースは後方から豪快にまくった岡山コンビを取り上げたい。まずは七番手から前団を飲み込んだ三宅達也
  「中団に入った圭尚(菊地)君に見られてて仕掛けにくかったけど、行くしかないからね。まくり一発には4.00は威力を発揮するね。普通のギヤなら圭尚君のアウトあたりで終わってる。3コーナー入り口からも伸びたし、まさに大ギヤのおかげ」
  三宅をゴール寸前で捕らえた岩津裕介(写真)もさすがのキレを見せた。
  「伸び切った感じではなかったけど、風のせいか他の選手も苦しかったみたい。94期のエキシビジョンレースに弟子が出てたので、その前のレースで勝てて良かった。弟子といっても同級生なんですが(笑)」


<7R>
村上博幸選手
村上博幸選手
   続く7レースは新田康仁―鈴木誠で3.4倍という断トツ人気だったが、真っ先にゴールを駆け抜けたのは村上博幸(写真)だった。同県佐野梅一の逃げを利すと、稲村成浩のまくりに合わせて番手まくりを敢行。稲村を凌ぎ切って勝ち切った。
  「レース前に、佐野さんから『発進するよ』みたいなことをいわれていたんだけど、二人でいい結果を出したいし、僕も(番手の)仕事をしたかったから、無茶はしないでと思っていたんですけどね。それでも赤板から目一杯駆けて、自分のペースに持ち込んでくれた。ただただ感謝ですね」
  最終バックの大混戦から3着に伸びた西川親幸は優秀戦への勝ち上がりを決めた。
  「稲村の仕掛けに乗っただけ。いいコースもあったしよく伸びました。3着までに入りたかったし結果は良かった」
  人気の新田康仁は萩原孝之が不発でその外を仕掛けたが、2センターで力尽きた。
  「スタートが全て…。前だけは取りたくなかったが、あれだけ出なければレースにならない。前を取らされた時点でかなりヤバイと思ってました」


<8R>
村上義弘選手
村上義弘選手
   8レースは先行一車に近い組み合わせながら村上義弘(写真)が堂々と主導権を取り切った。ゴール前で僅差交わされたが、レース内容には納得の様子。
  「三日間先行だし、そりゃもう苦しいですよ(苦笑)。岡部(芳幸)さんがヨコまで来たけど合わせ切れるなとは思った。ダービーだから当たり前だけど、今開催は気持ちが入ったレースができてますね」
  ゴール寸前で捕らえた小野俊之は村上を労いながらクールダウン。
  「村上さんとは連係相性も実績も抜群だし、信用していました。本来なら池尻(浩一)さんも連にからんで3人で決まれば一番良かったですけどね」
  八番手ながらまくり追い込みで一瞬突き抜けるほどのスピードを見せた山内卓也は3着までだった。
  「踏み出した瞬間は良かったけど、四角から外に流れてしまったのが痛い。あれがなければ…」
  村上に力勝負を挑んだ岡部芳幸は、ギヤを上げて一発大駆けを狙ったが、あと一息のところで出切れなかった。
  「3.86のギヤは重いね。今日は早めでも仕掛けようと思って、態勢が整う前に無理やり仕掛けたけど、思ったよりも車が進まなかった。今回は重いギヤに合わせた自転車も持ってきたんですけど、色々と試行錯誤ですね。出切れなかったのは僕の力不足です」


<9R>
山田裕仁選手
山田裕仁選手
佐藤友和選手
佐藤友和選手
   9レースは佐藤友和と稲垣裕之のデッドヒートで最終ホームは壮絶なモガキ合い。佐藤が出切った瞬間に仕掛けたのは、今年40歳を迎える山田裕仁(写真)だった。スピードに乗っているはずの佐藤を一気に飲み込んだ。
  「今シリーズはデキには自信があった。今回決勝に乗れなきゃ、いつ乗るんだくらいの気持ちではあった。一番強い佐藤(友和)君が駆ける形になったので苦しかったが、反応も良かったね。想定してる中で一番長い距離をモガかされたけどね(苦笑)。去年の宮杯でヤマコウ(山口幸二)と同じレースで僕だけ決勝に勝ち上がったので、今回は一緒に勝ち上がれて良かったよ」
  2着の山口幸二も内を突いた藤原憲征をキメるあたりはさすがの技。引き揚げてくるなりの第一声は「すげえまくりだった~!」。
  「スピードが凄かったから、誰も追い付くはずがないと思っていた。内に来られてビックリしましたよ。今回の山田は調子に自信があったみたいで、任せとけって感じでしたよ。佐藤君も稲垣君も強いけど、やっぱり(山田は)何度も修羅場をくぐってきたから違いますね。レース前も相当、気合が入ってた。僕も決勝に乗って、また渇を入れられた感じです」
  3着は中を割った藤原憲征。ダービーとの相性は良く、一昨年の立川に続き、2度目の決勝進出を決めた。
  「佐藤(友和)君と稲垣(裕之)君が踏んでいて、どうしようかと思っていたら山田さんがまくってきた。あの展開ならば行くしかないなと思った。三者で出きってからは、後ろの様子が分からなかったけど、外を踏んでも届かないと思って内を踏みました。レース中はまくって付け直すような感じだったから、最後は一杯でした」
  稲垣を叩き切った佐藤友和(写真)だったが、山田にまくられ万事休す。引き揚げてくるとドッカリとベンチに座り込み天を仰いだ。
  「あれで何で負けたんだろ…。山田さんが強かったですね。完全に力負け…。ほんとは中団から組み立てたかったが、中部と近畿がある程度は組んでくるのかと考えすぎました」


<10R>
小嶋敬二選手
小嶋敬二選手
渡邉晴智選手
渡邉晴智選手
   10レースも小嶋敬二と海老根恵太で力のぶつかり合い。前受けから引いた小嶋敬二(写真)が最終ホームからスパート。まさに力でネジ伏せる怪物ぶりを発揮した。
  「押さえて誰かに粘られるレースにはしたくなかったので、前取って、引いて仕掛けるつもりだった。引いてからは手島(慶介)君の動きに惑わされることなく最終ホームからスパートすると決めてた」
  小嶋の怪物パワーに付け切った坂上樹大は優参ならずも、悔しさよりホッとした表情。小嶋、濱口高彰の2人に深々と頭を下げる。
  「濱口さんも納得してくれて、小嶋さんの後ろを回らせてもらったけど、とにかく離れなくて良かった。最後は僕の力不足なので仕方ありません」
  小嶋ラインにスイッチして怒涛の強襲を決めたのは地元渡邉晴智(写真)。大勢の記者団に囲まれると、感慨深げにレースを振り返る。
  「前の海老根(恵太)、後ろで援護してくれた松坂(英司)のおかげですね。坂上君へのブロックも、切り替えたのも夢中でした。2センターから詰めた勢いでまくり掛けようかと思ったが、冷静になって『まくれるわけないだろ』と思い直して内に(苦笑)。地元で準決勝に乗れたのが僕だけなので、みんなが応援してくれたし、盛り立てて後押ししてくれたおかげですね」
  3着はゴール前で接戦も、さすがのベテラン濱口高彰が決勝進出を決めた。
  「自分のデキは変わらず良かった。今日は(海老根の番手から)渡邉(晴智)がどこから踏むのかと、締めるところをしっかり締める事だけに集中していました。それよりも坂上(樹大)が頑張ったね。よう付いて行ったと思うよ」
  動向が注目された手島慶介は中団、中団と切り替えながらも、ゴール前は伸び切れなかった。クールダウンを終えると早々に検車場を後にした。
  「小嶋さんがまくりなら中団先まくりを考えてたが…。あの展開なら小嶋さんのハコで勝負しても面白かったかな…」


<11R>
山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
合志正臣選手
合志正臣選手
   最終11レースは山崎芳仁(写真)が七番手をモノともせずに11秒1のまくりでゴール板を駆け抜けた。
  「本来ならば打鐘から行っても良かったんだけど、あそこから松尾(淳)さんが緩めるはずが無いし、もし踏んでいれば平原(康多)のまくりごろになってしまう。それならば七番手からでも仕方が無いと。平原の仕掛けを気にしたけど、なかなか行かないからバック線目掛けて思い切り踏みました。展開は想定どおりでしたね」
  2着ゴールは合志正臣(写真)。落車の影響もあり、長く不振に喘いでいたが、このダービーで手応えをつかんだ。
  「正直、8割くらいの感触なんですがね。普通に考えたら内に詰まって外をごっそり行かれちゃう位置なのに恵まれましたね。やっぱり伊藤(正樹)さんのデキ、番手から出れるというので他が見過ぎちゃったんでしょうね」
  3着ながら昨年の平塚に続き、決勝進出を決めた平原康多。しかし、仕掛けどころが遅れた点もあり、満面の笑顔とはいかない。
  「伊藤さんが車間切ってるし、見入られてるような感じで…。早めに行けば山崎(芳仁)さんをスピードに乗せちゃうし…。後ろに迷惑をかけたので、決勝は頑張りたい」
  四角ギリギリまで引き付けて踏み込んだ伊藤正樹だったが、他の選手に外を伸びられてダービーの決勝は夢と消えた。
  「松尾(淳)のスピードをもらって思い切り踏んだけど、いまひとつ伸びなかった。人の後ろは久々だったから戸惑いが少しあったけど、準決勝ともなるとメンバーが違うってことでしょう。松尾が行ってくれたわけだし、結果は仕方ありません」


<94回生エキシビションレース>
94回生
94回生
94回生
94回生
94回生
94回生
   第4R終了後には94回生のベストナインの紹介が、そして第6R終了後、エキシビジョンレースが行われました。在校ナンバー1の鈴木雄一朗生徒をはじめ、ダービーに参加している坂本勉選手の長男・坂本貴史生徒など将来を嘱望されるヤングレーサーたちが大勢のファンの前でフレッシュな走りを披露しました。
  レースが始まると、赤板前から激しく叩き合うレースに場内は大盛り上がり。鈴木雄一朗生徒がホームカマシを決めると、岡光良生徒が追い込んで快勝。生徒たちも大いに刺激を受けたようです。3着に沈んだ鈴木生徒ですがレース後は興奮した様子で、「力を出し切れたので結果はともかく、レースの内容には満足しています。たくさんのお客さんの前で走れて、今までのどんな試合より緊張しました。声援を送ってくれる方もいて、とても嬉しかったです。在校ナンバー1として積極的なレースを、早く競輪場でお見せしたいですね」と元気よく応えました。
  坂本貴史選手は残念な結果に終わりましたが、「まだトップスピードが足りません。競輪学校では色々な年齢や経歴の人と一緒に頑張って、人間的にも成長できたと思います。父と比べられるとは思いますが、それをプレッシャーとして感じず、僕は僕なりの選手になりたいと思います」と抱負を語りました。
  94回生は今月25日、26日に卒業記念レースを走り、競輪学校を巣立ちます。実戦デビューは7月から。彼らの勇姿にご期待ください。

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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