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レース展望

 今年のふるさとダービー第2弾は富山県富山市の富山競輪場で開催される。富山でのふるさとダービー開催は5年ぶり4度目となるが、地元のエース・小嶋敬二が断然の優勝候補の筆頭であることに異論のある人はまずいないだろう。また、寛仁親王牌に続いての短走路でのグレードレースだけに、今回も若手選手たちの躍動感に溢れた走りがシリーズを大いに盛りあげてくれそうだ。

怪物パワーを取り戻した小嶋敬二に死角はない
加藤慎平がGP覇者のプライドにかけて差し切る
 
小嶋敬二
小嶋敬二(石川・74期)
 今年前半はずっと低調だった小嶋敬二が、地元でのビッグレース開催に合わせるかのようにようやく本調子を取り戻してきた。
 寛仁親王牌では高松宮記念杯に続いてまたもや準決勝で敗退してしまったが、特別選抜予選では期待の若手の北津留翼と渡邉一成を豪快な捲りでねじ伏せて初日の1番時計の9秒4を叩き出している。北津留と渡邊の先行争いがあったとはいえ、そのスピードとダッシュの切れ味はとても36歳のベテランとは思えない怪物ぶりだ。最終日の特別優秀でも武田豊樹や松崎伊佐央らを相手に逃げて2着に粘り、おなじみの加藤慎平とワンツーを決めているので体調面では全く問題はない。
 FⅠながら5月の富山では捲りの3連発で余裕の完全優勝、準決勝では9秒3の上がりタイムを出しており、当然ながら富山バンクとの相性もいい。地元開催のビッグレースでは負けられないし、負けるはずがないと断言してもいいだろう。
 
加藤慎平
加藤慎平(岐阜・81期)
 加藤慎平も高松宮記念杯に続いて寛仁親王牌でも優出を逃してしまったが、ローズカップでは金子貴志の先行の番手から捲っていった小嶋をきっちり差し込んでいるのだから調子が悪いわけはない。ただ、グランプリ覇者の威圧感が影を潜めているのは事実で、後半のタイトル戦線に向けて今大会で加藤慎平の存在感をしっかりと示しておきたいところだ。相性抜群の小嶋との連係なら当然のごとく差し切りが求められるし、目標不発の展開になってもGP覇者のプライドにかけて1着取りを目指してくるだろう。
 
武田豊樹
武田豊樹(茨城・88期)
 小嶋の怪物パワーに立ち向かえるのはやはり武田豊樹しかいない。武田は2月の落車の後遺症で今年前半は精彩を欠いていたが、武田と小嶋は競輪学校での練習仲間であり、武田の驚異的な底力については小嶋も一目置いているほどだ。寛仁親王牌では不満足な成績に終わったが、レース内容は復活間近を感じさせるものだっただけに、今大会での小嶋との真っ向対決に期待がふくらむ。
 
若手選手たちの積極的な走りがシリーズの流れを支配する
渡部哲男が得意のカマシで再び旋風を巻き起こす
 
 先の寛仁親王牌では結果は75期の手島慶介が捲り、65期の後閑信一が差し切って優勝したが、シリーズ全体の流れをつくり、4日間の大会を盛りあげていたのは間違いなく80期台の若手選手たちだ。
 高松宮記念杯での山崎芳仁の初タイトルによって沸き立った世代交代の大波が、着実に競輪界全体を塗り替えつつあるのは寛仁親王牌の4日間で確実となった。今大会も自力型が有利な短走路が舞台だけに、若手選手たちの積極的な走りがレースの流れを支配していくことになるだろう。
 
渡部哲男
渡部哲男(愛媛・84期)
 渡部哲男は寛仁親王牌の特別選抜予選では赤板前発進の岡本大嗣の番手から飛び出して堂々の押し切り、準決勝ではカマシ先行がみごとに決まって2着以下を5車身も引き離して快勝、GⅠ初優出を達成した。決勝も岡部芳幸の意表を突いた走りにタイミングを狂わされなければカマシを打っていたはずで、今大会でもここぞというときには一か八かのカマシで勝ち上がりを狙ってくるはずだ。
  選手層の薄い四国はビッグレースではどうしても2車の短いラインになりがちなので、関東や中部などの強力ラインに対抗するには、真っ向勝負輪を避けてカマシなどの奇襲戦法に頼らざるを得ない側面もある。今大会でも渡部哲男だけでなく、近畿の乾準一や九州の中川誠一郎や北日本の成田和也なども、小嶋敬二や武田豊樹の強力ラインにカマシで立ち向かっていくシーンがきっと見られるだろう。
 
平原康多
平原康多(埼玉・87期)
 大ギアをかける平原康多は小細工なしの真っ向勝負で好調だ。6月の高松記念の決勝では結果は9着だったが、地元の渡部哲男や伏見俊昭を相手にとことん突っ張りとおして主導権を取りきっている。同じように大ギアをかける1期下の山崎芳仁とはタイプ的にも脚力的にもよく似ているが、積極性では平原のほうが高い。高松宮記念杯では準決勝で敗れたが、坂本英一のGⅠ初優出に貢献しているし、青龍賞では手島慶介―兵藤一也の関東ワンツーを演出している。今大会でも勝ちにこだわった走りの多い武田豊樹に成り代わり、平原が関東勢をぐんぐん引っ張っていくだろう。
 
和田健太郎
和田健太郎(千葉・87期)
  南関東では和田健太郎が好調だ。今大会が2度目のビッグレース出場で、出世争いでは同期の平原康多に遅れをとっているが、近況は南関勢を引き連れてよく逃げているし、先行での連絡みも増えてきているので、大駆けの一発が期待できる。
 
岡部芳幸が自分のスタイルを貫いて今度こその優勝を狙う
捲りの2連発で優勝を勝ち取った後閑信一
 
 短走路の富山バンクでは自力型が有利だが、期待の若手の出場が多い今大会では入れ替わりのめまぐるしいレースは避けられないし、若手同士の叩き合いが激しくなれば、寛仁親王牌のときと同様に追い込み勢にチャンスが巡ってくるだろう。過去3回のふるさとダービー富山でも、95年と96年は松本整が連覇しているし、01年は兵藤一也の先行に乗った稲村成浩の優勝しており、自力型の押し切りはまだない。
  333バンクは直線の長さだけを考えると自力型が有利に思えるが、前にいないと勝ち目がないという意識が選手たちに強いので早め早めの仕掛けになってしまい、結局は400や500バンクよりも長い距離をもがき切らなければならなくなるので、同型が多くて細切れラインのレースになりがちなビッグレースでは必ずしも自力型有利とは言えなくなる。
 
後閑信一
後閑信一(群馬・65期)
 後閑信一は今年前半は胃炎やインフルエンザなどの体調不良のために精彩を欠いていたが、寛仁親王牌で2度目のタイトルを獲得して復活を果たした。初日の選抜予選では小嶋敬二の踏み出しに離れてしまうという失態を演じたが、二次予選は捲って1着、準決勝も目標の武田豊樹が不発の展開から捲って2着で優出の権利を勝ち取っている。
 95年、96年と連覇している松本整もそうだが、短走路のビッグレースではレース巧者で短い距離なら捲りも打てるような選手のほうが、本格的な自力型よりも展開的に有利になることが多いのである。
 
岡部芳幸
岡部芳幸(福島・66期)
 そういう意味では、岡部芳幸の寛仁親王牌に続いての活躍もまた期待できる。岡部の決勝戦での走りには賛否両論あるようだが、あくまでも勝ちにこだわった結果だし、自力は強いがマーク戦には弱い岡部にとってはベストの選択だったと言っていいだろう。今大会も自分の信ずる道を貫いていけばきっと優勝に手が届くだろう。
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ふるさとダービー富山の思い出
捲りの番手に切り替えて追い込んだ稲村が優勝
 01年のふるさとダービー富山の決勝戦は地元優勝を狙う小嶋敬二をはじめ中部勢が4人乗ったが、群馬の新鋭・兵藤一也が中部分断を匂わせていたために、中部勢は別線で戦うことになった。並びは松岡彰洋―光岡義洋が前受け、その後ろに金古将人―小川圭二、兵藤一也―稲村成浩―大河原和彦、小嶋敬二―山田裕仁の順で4分戦。残り3周の青板から小嶋が前に踏むと、兵藤も合わせて上昇する。しかし、赤板で小嶋が踏み込んだときに山田が離れてしまい、兵藤が小嶋の番手に入る。打鐘で山田が小嶋後位へ再び追い上げてくると、兵藤は小嶋を捨てて先行、そして打鐘4角からは8番手にいた松岡がカマしてくる。松岡のスピードはよく、最終3角で兵藤を捲り切るが、稲村が松岡の番手に切り替え、ゴール前では粘る松岡を1車輪交わして優勝、2着は松岡、3着は大河原だった。

直線が長めで4、5番手からの追い込みも決まる
スプリンターより地脚タイプの選手に向いている

富山バンクの特徴
 富山バンクはクセのない走りやすい走路だが、ウォークトップが厚めに塗られていてやや重い。直線も長めで、333バンクというよりも400に近い感覚で、スプリンターよりも地脚タイプの先行選手に向いている。
 そのため、333バンクであるが、小田原や奈良のように前にいなければ勝負にならないということもない。3角過ぎからの外を踏んでの捲り追い込みも決まるし、4、5番手からの直線強襲も十分に可能なので注意が必要だ。
 01年に開催されたふるさとダービーの結果を見てみると、全44レースのうち先手を取ったラインの選手が1着になったのはちょうど半数の22レースで、残り半数のレースでは後方からの捲りや追い込みが決まっている。ちなみに1着、2着の決まり手は次のとおりだった。全44レースのうち1着は逃げが12回、捲りが15回、差しが17回。2着は逃げが7回、捲りが7回、差しが14回、マークが16回で、やはり逃げの連絡みが多めだが、総じてどんな戦法でも不利なく戦えるバンクといえる。

 周長は400m、最大カントは33度41分24秒、見なし直線距離は46.8m。捲りは3コーナーまでに捲り切ることが必要で、仕掛けは最終周のホームか遅くても1コーナーまで。競りはインが絶対有利。カントがきつく、コーナーの出口の外がやや登りになっているので、アウトの選手はコーナーで外にふくらみやすい。

富山バンク



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