新潟県の弥彦競輪場で3年ぶり6度目となるふるさとダービーが開催される。今開催の最大の見どころは何と言っても、小嶋敬二と山崎芳仁の競輪界2強の対決だ。数々の名勝負を繰り広げる両者が再び真っ向勝負を演じる公算が大きい。だが、平原康多や新田康仁、海老根恵太と好調選手も多数参戦で波乱の目も十分。激しい機動型バトルが展開される見逃せないシリーズとなろう。 |
ラストイヤーにふさわしい豪華メンバーが集結! |
直線の長い弥彦で平原の捲り追い込みが炸裂する
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今開催も当然ながら山崎芳仁と小嶋敬二の東西横綱の怪物パワーの激突が最大の見どころになるが、ここは敢えて地元・関東のエースである平原康多を優勝候補の最有力に推したい。
平原は06年のふるさとダービー富山を逃げ切りで優勝するなど、徹底先行を売りに現在の地位にまで駆け上がってきたが、ホームバンクが500の大宮ということもあってか、本来は脚を溜めての捲り追い込みを一番の得意戦法にしている。
昨年の全日本選抜での捲り追い込みによる準優勝は記憶に新しいが、ここぞという時や、コマ切れ戦で自力型が多い時には、無理な叩き合いは避けて仕掛けが遅めになる傾向がある。そして弥彦は400バンクにしては直線が長く、遅めの捲り追い込みが決まりやすいバンクなので、平原の2度目のGII制覇が大いに期待できる。
小橋正義がホームバンクで復活に賭ける。小橋はここ数年はやや低迷していて、05年の全日本選抜以後はビッグレースでの優出がないが、近況は確実に調子が上向いている。FIながら今年はすでに優勝が2回(ちなみに昨年の優勝はゼロ)あり、2月・豊橋記念の決勝戦では目標不発の苦しい展開から3着に食い込んでいる。
地元主張で平原にジカ付けなら、平原が遅めの捲り追い込みの展開になっても、おなじみの頭を激しく振っての強襲できっちり差し切ってくるだろう。
捲り追い込みといえば忘れてならないのが井上昌己だ。昨年12月の広島記念あたりから捲り追い込みを主戦法に勝ち星を積み重ねて絶好調モードに入り、競輪祭では狙いすました位置取りと3番手からの追い込みで2個目のタイトルを獲得した。
戦法がワンパターンと言ってしまえばそれまでだが、捲り狙いと分かっていても誰も井上のスピードを止めることができないのだから、捲り追い込みの切れ味は超一流の域に達していると言っていいだろう。
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平原康多(埼玉・87期) |
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小橋正義(新潟・59期) |
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井上昌己(長崎・86期) |
北日本勢を率いる山崎芳仁が王者の貫禄を見せつける |
新田康仁が自在戦で北日本ラインの粉砕を狙う
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山崎芳仁は競輪祭の決勝戦では勝負どころで小嶋敬二に叩かれて8着。次場所のいわき平FIの決勝戦は格下相手に赤板先行で4着と、今年は消化不良気味のレースが続いていたが、2月の東西王座戦ではさすがの王者の貫禄を見せつけた。
山崎芳仁、武田豊樹、平原康多に新田康仁と、GIの決勝戦でもこうは揃わないという豪華な組み合わせになったが、武田も平原も好位狙いに終始して単調な流れになってしまい、山崎に流れが向く展開。脚力が一番で、攻めの気持ちも一番だった山崎がすんなりと主導権を握り、北日本ワンツーをあっさり決めてしまった。
ただひとり新田だけは、混戦を誘ってきた北日本の独走を阻止しようと奮闘していたが、結局、決勝戦の大舞台で山崎に真っ向勝負を挑めるのは、現時点では小嶋敬二しかいないことが図らずも証明されてしまった。
今回も小嶋抜きのレースで武田や平原らがいつも通りの勝ちにこだわった走りをすれば、山崎率いる北日本勢が圧倒的に優位となるだろう。
一方の小嶋敬二は西王座の決勝戦では、東王座戦と比べればメンバーがやや小粒ということもあり、力の違いを見せつけて連覇を達成している。
ただ、次場所の名古屋記念では初日特選が不発の5着、二次予選Aが落車失格で途中欠場しているのが気になるところ。落車は幸い軽傷だったが、昨年11月に復帰して以来いきなりのフルパワーで突っ走ってきた分、常人ならそろそろ疲れが出くるはずで、さすがの怪物・小嶋も今開催あたりで不発のシーンがあるかもしれない。
そこで注目したいのが新田康仁だ。相変わらず成績の波は大きいが、近況の調子はまずまずだ。地元・静岡ダービーに向けて調整してきた貯金がまだ残っているはずで、東王座戦のときのように孤軍奮闘の自在戦でレースをかき乱し、王者・山崎相手に金星を挙げてくれるかもしれない。
南関東では海老根恵太にも注目したい。海老根は長らく低迷していたが、ここへ来てようやく本来のスピードと積極性が戻ってきている。
2月の豊橋記念では4日連続の先行勝負をみせた。決勝戦では番手の渡邉晴智に差されて、最後は末を欠き4着と優勝は逃したが、今回も積極的な仕掛けで南関東勢の勝ち上がりに大きく貢献してくるだろう。
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山崎芳仁(福島・88期) |
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小嶋敬二(石川・74期) |
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海老根恵太(千葉・86期) |
堂々の特選スタートの新田祐大が大逃走を見せる |
地元地区での大活躍が期待できる志村太賀
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ふるさとダービーは地方都市の競輪場の活性化を図ることを目的としていたため、スタート当初は地元地区優勢のやや偏った出場メンバーが特色のひとつとなっていたが、回を重ねるごとに、GIに出場できない若手選手の登竜門として盛り上がりを見せるようになっていった。
01年の番組制度改革によってGIIに格付けされ、全日本選抜のトライアルレースとなった頃には出場選手の偏りはなくなり、若手の活躍のチャンスも少なくなっていったが、それでも毎回1人か2人の若手が予選を連勝で勝ち上がったりして大会を盛り上げてくれることが通例となっている。
今回出場予定の若手の中で一番の注目株といえばやはり新田祐大だろう。ビッグレース初出場となった競輪祭では一次予選で敗れているが、期待通りの積極的な走りを見せ、2日目選抜では捲りで初勝利を挙げている。そしてふるさとダービー初出場の今回は、堂々の特選スタートとなっている。2月の前橋FIが完全優勝、次場所の小松島FIも優勝と調子よく、今回の初日特選では北日本勢を連れての大逃走が期待できる。
地元地区でのビッグレースに燃える志村太賀もファンの期待に応える走りを見せてくれるだろう。志村はふるさとダービー初出場となった昨年4月の観音寺では連日の先行勝負で準決勝まで勝ち上がっている。昨年の活躍ぶりと比べると、近況はやや勢いにブレーキがかかっているような印象もあるが、1月前橋FIでは地元の小林大介を連れて先行して準優勝と調子は決して悪くない。
浅井康太は今回がビッグレース初出場となる。新田や志村と比べると積極性でやや劣るところがあるが、12月の広島記念は準決勝Bまで勝ち上がり、1月の和歌山記念は準決勝Cまで勝ち上がるなどトップクラス相手にまずまずの活躍ぶり。今回も初出場らしい思い切りのいい走りを見せてくれるだろう。 |
新田祐大(福島・90期) |
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志村太賀(山梨・90期) |
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石毛克幸がビッグレース初優出で初優勝を達成 |
00年4月にデビューした石毛克幸は同年12月のルーキーチャンピオンを制し、02年12月のヤンググランプリでは3着と健闘した。そして05年6月のふるさとダービー弥彦でGII初優出を果たすと、捲りのスペシャリストの面目躍如の走りで初優勝を成し遂げた。決勝戦は石毛克幸-竹内智彦、武田豊樹―神山雄一郎―深井高志―豊田知之、稲垣裕之―小野俊之―室井竜二の並びで周回。赤板から武田が上昇すると、稲垣も合わせて上昇。打鐘から武田と稲垣の先行争いになるが、武田が主導権を握る。小野は深井から神山後位を奪取。最終1センターで武田のペースが緩むと、石毛が満を持してスパート、神山の牽制を凌いで捲り切り、そのまま先頭でゴールイン。武田ラインの3番手から鋭く差し込んだ小野が2着、小野の外へ踏んだ豊田と、内に踏んだ室井が3着で同着となった。
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バンクは重く、捲り追い込みがよく決まる |
直線が長く、4、5番手からの突き抜けも多い
弥彦バンクは直線が長くて重く、逃げ切りは少ない。追い込みが断然有利で捲りもよく決まる。
ただ、2角からの捲りは先行ラインに牽制されて不発になりやすく、バック線を過ぎてから仕掛ける捲り追い込みが有効だ。バック向かい風の日でも、3角を過ぎれば影響がなくなるので、捲り追い込むには向いている。
05年6月に開催されたふるさとダービーの決まり手を見てみると、全44レースののうち1着は逃げが5回、捲りが13回、差しが26回、2着は逃げが4回、捲りが11回、差しが15回、マークが14回となっている。
7、8番手からの捲りもよく決まっていて、先手ラインの選手が1着になったのは全体の3分の1の15レースしかない。400バンクでよく見かける、先手ラインの番手の選手と捲った選手の絡みという決着パターンも少なかった。
直線は中バンクから少し内寄りのコースが一番よく伸びる。インに差したり、外寄りのコースを取ると伸びはよくない。
周長は400m、最大カントは32度24分17秒、見なし直線距離は63・1m。1角の後方に弥彦神社があり、その裏は弥彦山で、四方をうっそうとした森に囲まれている。春は湿度が高くて重い感じの日が多く、先行型は踏みっぱなしを強いられるので苦しい。追い込み型は4、5番手からでも突き抜けるケースが多い。
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