『KEIRINグランプリ2019シリーズレポート』 初日編

配信日:12月28日

 令和初のグランプリは歴史ある立川競輪場が舞台。輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2019シリーズ(歳末チャリティー協賛)」が、28日に開幕した。初日のメイン「オッズパーク杯ガールズグランプリ2019(FII)」は、児玉碧衣がまくりで史上初のガールズグランプリ連覇を果たしたし、優勝賞金1005万円(副賞含む)を手にした。また、3日間シリーズの「第12回寺内大吉記念杯(FI)」の特選では、主導権を握った南関勢の3番手から鈴木裕が突き抜けた。29日の2日目には「ヤンググランプリ2019(GII)」をメインに熱戦が繰り広げられる。
 本場では、様々なファンサービスとイベントでお客様をお待ちしています。29日の2日目には、日本中央競馬会(JRA)の藤田菜七子騎手によるトークショー、「けいマルガールズ」のトークショー、グランプリ選手トークショー、加藤慎平氏の予想会、ケータリングカー、東京選手会ブースなどが予定されています。ぜひ、立川競輪場へ足をお運び、見応えのあるトップレーサーたちのスピードバトルと、イベントをお楽しみください。

開会式
開会式
ガールズグランプリレース出場選手特別紹介
ガールズグランプリレース出場選手特別紹介

ガールズグランプリ2019 レース経過

 大外から踏み上げた奥井迪が前受け。その後ろから石井寛子、梅川風子、小林優香、佐藤水菜、児玉碧衣、石井貴子の並びで周回を重ねる。
 打鐘前から梅川が車間を切って後方からの仕掛けに備えるが、打鐘で誘導員が退避しても隊列に変化はなく、4コーナーから奥井が徐々にピッチを上げる。大きく空けた車間をホームで半分まで詰めた梅川だが、すぐには仕掛けず。残りの車間を詰めた2コーナーからまくって出る。その後ろから小林、さらにホームで佐藤をすくって小林の後ろに上げていた児玉が次々と持ち出してバックからは3人が折り重なってのまくり合戦に。大外を踏んだ児玉が2センターでわずかに前に出ると、小林の後輪と接触した梅川、さらに石井寛が落車してしまう。4コーナーで単独になった児玉がそのまま押し切って2年連続のガールズグランプリを制覇。バック最後方になった石井貴だったが、落車を避けると鋭く小林をとらえて2着に食い込んだ。






<1R>

磯田旭選手
磯田旭選手
 中団を三登誉哲と併走していた隅田洋介は、内からこじ開けるように三登を張って赤板2コーナーで踏み込みレースを支配する。4番手の吉田茂生がまくって出ると、磯田旭(写真)は番手から自力に転じる。吉田を合わせ切った磯田が、番手まくりで1着。
 「隅田さんのおかげですね。今日はそれだけです」
 吉田が合わされると、最終3コーナーで宮下貴之をキメるようにソツない立ち回りを見せた坂上樹大が2着に追い込んだ。
 「久々のレースというのもあると思うんだけど重かった。それでも吉田君が頑張ってくれたおかげですね。(最終)4コーナーで少しコースを迷ってしまった…。1着が良かったですね」

<2R>

小林大介選手
小林大介選手
 赤板過ぎに先頭に立った木村幸希を坂木田雄介が打鐘で押さえる。すかさず反撃に出た谷口明正を坂木田が突っ張るが、前団がもつれたところを見逃さずに長島大介がスパート。バック前に出切って関東両者のマッチレース。最後は小林大介(写真)が鋭く差し切った。
 「長島が頑張ってくれたおかげ。出切っちゃえばもう大丈夫かなって。インフルエンザで練習ができてなかったので、状態はあんまり良くないですね。自分がイメージしているより重く感じました」
 豪快にまくった長島大介は2着。新フレームの手応えは上々だ。
 「余裕はあって、いつでも行ける感じでしたね。楽に行けました。あとは小林さんとの勝負かなって。新しいフレームで結果が出たんで良かったです。悪くない感じです」

<3R>

川村晃司選手
川村晃司選手
 赤板過ぎに切った川村晃司(写真)を、坂本周輝が押さえて先行態勢を取る。前受けから後方まで下げた守谷陽介が打鐘から巻き返しを狙ったが、坂本がペースを上げて出させない。3番手以下がもつれて大きく離される形になったが、後方に置かれた川村が2コーナーからまくって猛追。直線で粘る坂本を一気に抜き去った。
 「風が強くて組み立てが難しかった。仕掛けたのは(最終)2コーナーからですね。遠かったですけど、前も風でスピードが落ちていたので。北野(武史)さんと年寄りコンビで決まって良かった」
 北野武史がしぶとく2着に流れ込み、中近コンビで連を独占した。
 「この風で逃げ切るのは相当キツいと思いますよ。川村君も(まくりを)狙っていたわけじゃないと思うけど、結果的に良かった。もうヘロヘロですよ。決勝に乗りたい」

<4R>

取鳥雄吾選手
取鳥雄吾選手
 谷口遼平が打鐘で主導権を握り、前受けから下げた取鳥雄吾(写真)は一本棒の6番手に置かれる。しかしながら、慌てることなく落ち着いて構えた取鳥は、最終2コーナー手前から踏み出して一気。合わせてまくる上原龍、逃げる谷口らを楽にのみ込んだ。
 「新車だったし、セッティングも微妙だったんですけど。なんとかですね。この風(強風)が味方してくれた。変に小細工をするよりっていうのもあった。上原さんよりも先に仕掛けられたのも良かった。(まくりは)出が悪かったけど、伸びていった。でも、まだまだ(新車の)ポテンシャルが出てない」
 最終3コーナーから取鳥に置いていかれ4車身ちぎられた戸田洋平は、岡山ワンツーも苦笑い。
 「(取鳥は)強かった。ヨシ、付けたって思ったら、もうひと加速した。この前は島川(将貴)の後ろも回ったし、せっかくいい位置があるのに離れてたらしょうがない」

<5R>

飯野祐太選手
飯野祐太選手
 打鐘過ぎに飯野祐太(写真)を押さえた片折亮太は、そのままペースを上げて先行策。巻き返す林大悟を出させない。4番手で脚を溜めた飯野は、林、松尾信太郎にかぶって仕掛けられない。最終4コーナーでようやく外が空いた飯野が、シャープに伸びて1着。
 「片折君の先行はないと思って、踏ませてから林君が叩いたところをと思っていた。まさかの展開だったし、林君が簡単には飛ばないから難しかった。結局出切れたけど、あの競走では3番手に付いてくれた人に申し訳ない。脚は問題ないです」
 飯野マークの内藤宣彦が、中のコースを踏んで飯野に迫った。
 「あの展開は想定外だったね。片折君が先行とは…。でも、おかげで展開が向いたところはあったと思う。片折君がすんなり駆けたら、キツいって思っていたけど、飯野君は力があったしそのおかげ」

<6R>

阿竹智史選手
阿竹智史選手
 後ろ攻めから動いた吉武信太朗が赤板の2コーナーで前に出る。渡辺正光が4番手に収まり、近藤夏樹は7番手まで下げる。吉武は後続の動きを確認してからペースを上げる。最終2コーナーからまくった渡辺は車がほとんど出ない。バック前から番手まくりを打った阿竹智史(写真)が、そのまま後続の追撃を振り切った。
 「(吉武が)頑張ってくれた。(渡辺の)まくりは出てなかったけど、近藤が見えてなくて。まぁ最低限かなっていう感じです。直線が長いし、朝よりも風が出ているみたいで、ちょっと重かったです」
 四国コンビの後位を選択した原田礼が2着に流れ込んだ。
 「前の2人のおかげですね。90期同期(阿竹)が頑張ってくれました。自分は何もしてない。展開1本ですね。気持ち良く今年を終われそうです」

<7R>

畑段嵐士選手
畑段嵐士選手
 赤板の1コーナーで先頭に立った畑段嵐士(写真)が、中団取りに動くが堀兼壽にすくわれる。その堀が大石剣士ラインを受けて畑段は6番手。最終2コーナー手前からまくった畑段は、ブロックした大塚英伸の内から抜けて勝ち切った。
 「バックの風がキツかったですね。まくっていく時に脚はいっぱいだった。それでもレースは見えていました」
 大石ライン3番手の山田幸司が、直線の入り口で大石の内を踏んで2着に伸びた。
 「自分はコースが空けば突っ込もうと思っていました。畑段君が強引に来たんで避けながらになってしまった」

<8R>

北津留翼選手
北津留翼選手
 後ろ攻めから動いた藤田勝也は、中団の染谷幸喜にしばらくフタをしてから打鐘で踏み込んで主導権を握る。前受けから合わせて踏んだ北津留翼(写真)は3番手の絶好ポジションを確保。車間を詰める勢いで最終2コーナーから一気にまくって快勝した。
 「西川(親幸)さんが後ろで仕事をしてくれたおかげです。4番手かと思ったら3番手だったんで。いい位置が取れました。バックの風はキツかったけど、何とか勝てて良かったです」
 復帰戦の西川親幸が懸命に続いて2着。九州ワンツーが決まった。
 「結果的に良かったです。これが(北津留)翼ですから。脚を使ってでも中団をしっかり取れたのが良かった。この風で付いていけるか心配だったんですけどね。でも最後は抜かないとですね」

<9R>

植原琢也選手
植原琢也選手
 植原琢也(写真)にフタをした栗山俊介が打鐘過ぎに主導権を握るが、植原もすかさず反撃に出る。全開で合わせる栗山を植原がねじ伏せて主導権を奪取する。3番手に飛び付いた栗山が岡田征陽をさばいて迫るが、植原が振り切った。
 「余裕はあったしペースで踏めたけど、バックの風で止まってしまった。自分がもっと踏み続けていれば、岡田さんが絡まれることはなかったと思うので申し訳ない」
 何度も脚を使いながらも、瞬時の判断が光った栗山俊介は、岡田を内からさばいて追い込んだ。
 「自分的には結構踏んでいたのに気づいたら、(植原が)もう横まで来てましたね。(最終)バックで詰まったというか、内が空いたのが見えて申し訳ないですけど入らせてもらいました。最後は差せなかったけど、あそこまで迫れているので復帰戦のわりには踏めていると思います」

<10R>

鈴木裕選手
鈴木裕選手
 4車で結束した南関ラインの先頭を担った渡邉雄太が、赤板2コーナーで勢いよく飛び出して主導権。一度は稲毛健太が5番手を確保するが、打鐘の2センターで鈴木竜士がすくって5番手を奪い最終ホームを通過する。逃げる渡邉の掛かりが良く一本棒の隊列。8番手まくりの稲毛は不発で、バック過ぎから鈴木竜がまくり追い込む。渡邉ラインの3番手の鈴木裕(写真)は、鈴木竜をけん制しながら踏み込んでおよそ2カ月ぶりの復帰戦で白星を挙げた。
 「僕が(3番手で)車間を切った方が、岡村(潤)さんも仕事がしやすいだろうと。ただ、自分は(踏んでいて)手応えはなかった。それでも伸びてるんでいいんでしょうね。(バンクが)重いんで、(復帰戦の)自分にはちょうどいいかもしれない」
 番手の岡村潤は、鈴木裕との伸び比べに負けて2着。
 「(渡邉が)うまく駆けてくれて、後ろの2人が仕事をしてくれてるのもわかりました。僕はなにもしてないので申し訳ない。もうちょっと車間を切れれば良かったんですけど…」

<11R>

児玉碧衣選手
児玉碧衣選手
 打鐘を過ぎても隊列は変わらず、前受けの奥井迪がそのまま先行態勢に入る。児玉碧衣(写真)は6番手から最終ホームで前の佐藤水菜が内を空けたところをすくって5番手を確保。2コーナーから4番手の小林優香が仕掛けるが、負けじと児玉もまくり出る。児玉が小林の上を進み、半車身出た3コーナー付近で内の梅川風子と石井寛子が落車。アクシデントにも動じず、児玉が先頭でゴールを駆け抜け、ガールズグランプリ史上初の連覇を達成した。
 「(初手は)3、4番手が欲しかったけど、6番手だったのでどうしようかと。(最終ホームで)佐藤さんが内を空けたのですくって、(小林)優香さんより先に踏もうと思ってその通りに。(落車は)締めたつもりがなくて、(対象になっていたので)審議はヤバイかなと思ったけど、なんとかセーフで良かったです。来年は大きいレースを全部優勝することとグランプリ3連覇を目指して頑張ります」
 石井貴子は2年連続のグランプリ準優勝。最後方から落車を避けて追い込んだが、優勝に手が届かなかった。
 「もう本当に悔しくて…。今回は自力選手が多くて、組み立てが難しかったですね。後方になって前が(児玉)碧衣ちゃんだったので、昨年のリベンジと思って信じて付いていけば良かったのかな。外を踏んで戻って中途半端でした。落車に巻き込まれそうになって、そのあとに必死に踏んだけど2着まででした。碧衣ちゃんが本当に強かったです。まだまだ頑張れって神様に言われたということですね」
 小林優香は児玉との力勝負に敗れて3着。人気に応えることはできなかった。
 「自分の動く位置とか間の取り方が下手くそでした。展開の読みが甘かったです。言いわけできるならいくつかあるけど、これが本職で車券を買ってくれている人もいるので、しっかり結果を出さないといけなかった。このあとは世界選に向けてトレーニングします。(日本のレースは)次にいつ走れるかわからないけど出直します」

<2日目・11R ヤンググランプリ2019>

森田優弥選手
森田優弥選手
 森田優弥(写真)は直前の地元、大宮FIで3度目のS級優勝を飾った。
 「9月に初めて落車して、それからあんまり良くなかったんですが、やっと戻ってきた感じですね。フレームを換えて、いい方向に向かってます。ここに向けては、いつも通りやってきました。全員が単騎で難しいけど、しっかり力を出し切りたいですね。楽しんで走ります」
 宮本隼輔は終盤戦に入って成績が急降下。スランプにあえいでいる。
 「最近は成績が悪くて、ここに向けてというよりも、どうやったら走れる状態に戻せるかを考えて、自転車にはほとんど乗らずに体のケアを中心にすごしてきました。いまは探り探りでやってるけど、やる時はやるんで。優勝を狙って走ります」
 野口裕史はメンバー最年長だが、自力でしっかり見せ場は作る。
 「前回の松山は自分の持ち味が発揮できなくて悔しい結果だったんですが、終わってから軽いギアで回転を出すような練習をして、結構仕上がったと思います。全員が単騎で競輪学校の競走訓練のようなスタイルですね。その時のイメージとして、後ろにいては勝負にならないことは痛感してます。出たとこ勝負ですけど、緩んだところではしっかり仕掛けたいですね」

<最終日・11R KEIRINグランプリ2019>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 今年最初のGI、2月の全日本選抜を単騎の大ガマシで優勝した中川誠一郎(写真)は、6月の高松宮記念杯を脇本雄太の番手から追い込みV。グランプリに出場する9選手のなかでただひとり、今年2度のGI制覇を飾っている。
 「(10月の)地元記念で頑張りすぎたのもあって、競輪祭の時は(状態が)だいぶ落ちていた。戻すのに時間がかかったけど、(グランプリの)前夜祭あたりでは戻っている感じがあった。(一番最初にグランプリの出場権を獲得して)そこから長かった。待ちくたびれた(笑)。でも、地元記念が終わってからは、もうグランプリモードです」
 03年から4年連続でグランプリに出場した佐藤慎太郎は、13年ぶりに年末の大舞台に返り咲いた。
 「13年ぶりだから、初出場のようなものです。前に出た時とは気持ち的に違う。当時は獲りたい気持ちはもちろん、“佐藤慎太郎”っていうのをアピールしたいっていうのもあった。いまは変なプレッシャーもないし、勝手に(気持ちが)入ってくると思う。そこらへんが年齢を重ねているところですね。今年はずっと詰めてレースを走ってたんで、こんだけ空いてどうかなっていうのはあります」
 初日の全レースが終了し5時過ぎに始まった夕方の指定練習で清水裕友、ヤンググランプリに出場する宮本隼輔と感触を確かめた松浦悠士は、練習を終えると自転車の調整に余念がない。
 「乗ってる感じは良かったけど、ダッシュした時に自分の感覚と違った。それで自転車をいじりました。(ハンドルの)ポジションを変えます。(初出場のグランプリでも)いつも通りっていうか、普段と同じ感じですね」