『KEIRINグランプリ2024シリーズレポート』 初日編

配信日:12月28日

 いよいよファイナルバトル。静岡競輪場を舞台に輪界最大のイベント、大阪・関西万博協賛「KEIRINグランプリ2024シリーズ(歳末チャリティー協賛)」が、12月28日にスタートした。初日のメイン、「ヤンググランプリ2024(GII)」は121期の9人により熱戦が繰り広げられた。目標の村田祐樹が不発になり、直線でインを突き抜けた纐纈洸翔がV。121期の卒業記念チャンプが、同期対決を制して優勝賞金680万円(副賞含む)を獲得した。また、「第17回寺内大吉記念杯(FI)」の特選は、九州ワンツー。伊藤颯馬が山崎賢人のまくりを追い込んで好スタートを切った。シリーズ2日目に12月29日には、「ガールズグランプリ2024(GP)」がメイン。24年の女王の座に就くのは果たして誰だ。
 12月29日のシリーズ2日目は、「コロコロチキチキペッパーズ」のお笑いライブ、ガールズグランプリ予想会、高木真備さんのトークショー、ガールズケイリントークショー、「KEIRINグランプリ2024」公開指定練習、大阪・関西万博PRステージ、先着ファンサービス、超豪華グランプリ出場選手サイン入りグッズが当たる未確定車券抽選会、大道芸パフォーマンスショーなどが予定されています。静岡競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

KEIRINグランプリ2024出場選手集合
KEIRINグランプリ2024出場選手集合

ヤンググランプリ2024 レース経過

 最内枠の中野慎詞がスッと前に出て誘導員の後ろを占めた。初手は中野慎詞-大川剛、太田海也-真鍋智寛、後藤大輝-東矢圭吾、村田祐樹-纐纈洸翔、山口多聞の並びに落ち着き、静かな周回を重ねる。
 青板周回のバックを過ぎると、正攻法の中野は、徐々に誘導員との車間を空けはじめて後続の動きを警戒する。赤板前の4コーナー過ぎから村田が発進すると、中野は村田-纐纈を前に出して3番手に飛びつく。中部勢に続いていた後藤は休むことなく仕掛けて、村田に並びかけたところでジャンが入る。後藤が2センターで前に出ると、九州勢を追っていた太田がスパート。後ろは続けず中野が太田にスイッチした。最終ホーム線の手前で太田が先頭に躍り出ると、後ろはイン後藤、アウト中野で併走に。2コーナーで村田-纐纈がまくり上げると、中野は外併走から太田をねじ伏せにかかり、最終バックでは太田と中野で激しいつばぜり合いに発展した。両者の力比べは直線まで続いたが、太田が中野を外に押し上げるとインが空く。4コーナーで内に降りていた纐纈が、この隙を逃さずインコースからすり抜けてVをゲット。太田に踏み勝った中野が2着。3コーナーで大川をしゃくって中野に切り替えていた東矢が3着。


<1R>

小林泰正選手
小林泰正選手
 後方から上昇した嵯峨昇喜郎が、赤板1センターで切って出る。順番通りにその上をスピード良く押さえた小林泰正(写真)が、打鐘手前で主導権。嵯峨が中団を確保して、緒方将樹は7番手で動けず一本棒の隊列で最終周回へ。2コーナーからまくった緒方は、逃げる小林の掛かりが良く進まない。3コーナー過ぎから外に持ち出した嵯峨も一息。関東ライン3車での決着は、別線を完封して磯田旭を振り切った小林が1着。
 「緒方君はバックもあるし、まくりの決まり手もあるので、早めに来ても合わせるつもりでした。バックが追い風でホームが向かい風。ジャンでしっかり踏んでいい感じに掛かりましたね。風の影響があって、肺は苦しいけど、前回から調子が上がっている感じがあるので、このまま上げていければ。眞杉(匠)が来るまでに負けたくないと思って力が入っていた」
 番手の磯田旭が、小林にタイヤ差まで迫ったところがゴール。
 「(小林が)すごかったです。向かい風も追い風もスピードに乗っていました。(小林)泰正の頑張りに尽きますね。この時期はギックリ腰が出るけど、眞杉と練習をしてきたし頑張ります」

<2R>

岩津裕介選手
岩津裕介選手
 赤板過ぎに内山雅貴が、押さえて先頭に立つ。内山ラインに続いた不破将登は2コーナー手前でインに切り込んで、山根将太を制して4番手を確保する。結果的に下げざるを得なかった山根が、7番手で打鐘。ペースを握った内山が徐々に上げて駆ける。最終ホームでは4番手の不破は前と大きく開いて、山根は2コーナーでまくりを打つ。前との車間が詰まらない不破を乗り越えた山根だったが、2センター付近でスピードが鈍る。山根のまくりに乗った岩津裕介(写真)が、中のコースを鮮やかに突き抜けた。
 「(あの流れで後方になって)山根はやってしまったなって思いました。不破君も風でいっぱいそうな感じになっていたんで、あれで(まくった山根は)生き返った。そのあとは自分は踏みやすい感じだった。(状態的には)変わってない。ヤバいっていうのもあったので、なにかやってみようかと思います」
 地元の内山とラインでのゴール勝負かに思われたが、岩津の鋭脚に屈した佐藤壮が2着。
 「(内山は駆けるのが)ちょっと早いかなって思ったけど、結果、ホームが向かい風なんであれがベストだったかなと。あとは5番(山根)が来てどうなるんだろうって。(岩津は)スピードが違いましたね。交わせているかわからなかったけど、2着で良かった。(状態は)着々と良くなっている」

<3R>

志田龍星選手
志田龍星選手
 赤板過ぎに菊池竣太朗を突っ張った山本勝利が、落ち着いてペースを落とす。菊池は4番手まで下げて、志田龍星(写真)と併走になり打鐘を通過する。別線の様子をうかがいながら山本が踏み上げずにいると、菊池が3コーナー過ぎから叩きに出る。が、山本も突っ張って、最終ホームでは2人の踏み合い。後方になった志田だが、展開は悪くない。1センターから踏み込んだ志田は、2コーナーから抜群の加速で一気に前団をとらえる。遅れた3番手の伊原克彦まで吸い込まれて、志田はライン決着をメイクしての1着。
 「展開が向いてくれました。踏んだ感じは良かったです。あんまり距離を踏んでないけど、とりあえず良かったです。(ビッグでは)単純にトップスピードが違うので、練習をするだけです。いまはいろいろと練習方法を変えたり、試したりしている。それが来年につながれば」
 危なげなく志田の踏み出しに対応した村田雅一だったが、その加速には脱帽する。
 「(最終)2コーナーで離れそうになった。(志田が)追い風のスピードに乗っていって、抜けるかは厳しい感じでした。今日(初日)のアップ中に体が重かった。競走間隔が詰まっているけど、休まずに練習をしてきたので明日からは疲れが抜けてくるかなと。決勝に照準を合わせて強めにやってきた。2着上がりの厳しいなかでいいスタートが切れたので、決勝に乗れるように頑張る」

<4R>

元砂勇雪選手
元砂勇雪選手
 前受けの山本直が、脇本勇希を突っ張る。浮いた脇本は元砂勇雪(写真)のアシストで5番手に入りかけるが、そこを新山将史をすくう。新山はそのまま内を進出して、打鐘3コーナー過ぎに先頭に立つ。結果的には脇本に仕掛けどころが訪れて、そこを逃さず2センターから踏み込む。山本も合わせて踏むが、最終1コーナーで脇本が叩き切り、元砂まで出切る。3番手は内から山本、木村隆弘、愛敬博之の3人の併走でバックを迎える。大外の愛敬がコーナーで力尽き、しっかりと間合いを取った元砂が脇本を差し切った。
 「(番手を狙われることは)想定はしていたけど、粘られたらそこで勝負するだけなんで、とくに気にはしてませんでした。(自分の後ろが)併走していたけど踏んでこなかったんで、ギリギリで(抜きに)いけば大丈夫かなと。しんどかったけど、そのなかで余裕もありました。(人の後ろは)前が逃げてくれたらなにかしらしないとって思うけど、やっぱりまだいろいろ反省点が出てきます。レースでは自力を出さないので、練習では自力でやっていた時以上の練習をやっています」
 近畿ラインのワンツー。逃げ粘った脇本勇希が2着を振り返る。
 「(山本)直さんに突っ張られる可能性もあるとは思っていた。ただ、結構、踏んで突っ張られたので、引くのが遅くなった。そのあとは新山さんが内に行ってゴチャついたので、僕も(仕掛けて)行きやすくなった。(最終)ホームでは直さんと踏み合いになったけど、出切れる感じはあった。あとは後ろをもつれさせないように踏んだ。兄(雄太)がいる以上、目標は決勝ですけど。前回が終わってから体調を崩して、(コンディションは)ギリギリですね」

<5R>

宿口陽一選手
宿口陽一選手
 青柳靖起が押さえて、そこを関根健太郎が赤板2コーナー過ぎに出る。しかしながら、吉田有希は迷わず打鐘で巻き返す。関根がペースを上げて踏み合いに発展して最終ホームを通過する。吉田が強引に2コーナー手前で出切って、関東3車が出る前に青柳がまくりで襲い掛かる。3コーナーで青柳のまくりを外に張った宿口陽一(写真)は、4コーナーでもけん制してギリギリまで引きつけて追い込んだ。
 「関根君がヤル気だった。(吉田)有希も出られるのかなっていう感じで、半信半疑だったんですけど。(最終)2コーナーからもうひと伸びしていったので強かったです。(小林)潤二さんも3番手で内を締めてくれていましたし、もうちょっと自分にやりようがあったのかなって。そうすれば引き込めたかもしれない」
 関根との踏み合いをねじ伏せた吉田有希は、脚力を消耗しながらもゴール前でも踏ん張った。
 「関根さんがめちゃくちゃ強かったです。勢いをつけていけなかったので、ヌメっとした感じでカマシにいった。長い距離とこの風なら僕の方が有利なので。(最終)2コーナーで上を乗り越えて行けた。あとは後ろを信頼して踏み続けた感じです」

<6R>

新村穣選手
新村穣選手
 後方の単騎選手の動きをアテにすることなく、松本秀之介が赤板手前で5番手から上昇。じわりと押さえて先頭に立った九州勢に、伊藤信、栗山俊介、尾崎剛の単騎3人が切り替える。7番手になった新村穣(写真)は、打鐘3コーナー過ぎから反撃に出る。松本も合わせて駆けて最終周回。新村が松本に並びかけて、松岡貴久は簗田一輝を猛ブロック。2コーナーで新村が1人で出切り、松岡のアシストで松本が追いかける。直線でもなかなか詰まらず、ロングまくりの新村がそのまま後続を離してゴール。
 「松本君が徹底(先行)という形ではなく、引いてからの巻き返しができるかなって。欠場をしていたし、7番手から届くかわからなかったけど、静岡の風と応援のおかげで(最終)ホームくらいでは出られると。スピード差もあったし、飛び付かれても(松本は)脚を使っているのかなと。この距離なら練習でも踏んでいますし、上のレベルで自分の力がどれくらい戻っているか確認したい」
 簗田を大立ち回りでさばいた松岡貴久が、松本を交わして2着に上がった。
 「(別線の)まくりを準備していたら、気づくのが遅くなって(新村が)もう来ていましたね。(簗田を張って)そこは空いていたので。(落車から復帰2場所目で)完ぺきではないけど、そこそこですね」

<7R>

柴崎淳選手
柴崎淳選手
 7、8、9番手の単騎3人に動きがなく、4番手の山田諒は構えることなく打鐘手前から仕掛ける。山田が渡邉雄太を叩いて主導権。柴崎淳(写真)、さらに遅れながらも佐方良行まで続く。渡邉は最終1コーナーで4番手に引いて立て直す。9番手からまくった坂本修一は、6番手付近まで。3コーナー過ぎから詰めた渡邉も一息で、柴崎が番手から抜け出した。
 「(山田は)ジャンから行くとは思わなくて、呼吸が合わなかったです。粘られそうだったので、ちょっと押し込んででした。(山田と)ワンツーが決まったと思ったけど、佐方さんは脚がありましたね。(前回の)川崎の2日目に追加連絡を受けて、(その前の)松山記念がダメだったので、その分もと思ってきました」
 踏み出しで立ち遅れて脚力をロスした佐方良行だったが、山田に僅差で先着の2着。
 「(山田が仕掛けた時は)離れました。スピードダウンしたところで付いていけた。渡邉君がゆっくり引いてくれたのが良かった。(直線は)伸びましたね。A級だと伸びないのに。山田君のおかげでここまでいけた、リカバリーもできたので良かったですね。来年から頑張らないといけないし、ここでもあと2走で勢いをつけて頑張りたい」

<8R>

皿屋豊選手
皿屋豊選手
 赤板1センターで切って出た皿屋豊(写真)が、関東ラインを送り出して4番手を手に入れる。一本棒の7番手に置かれた高橋晋也は反撃の機会を失い、打鐘2センター過ぎから先行態勢の一戸康宏がペースを上げて風を切る。皿屋にとっては絶好の流れで、最終2コーナー手前からまくる。笹倉慎也は付いていけず、バックで逃げる一戸をとらえた皿屋が2着を6車身ちぎった。
 「高橋君がどこでカマして来るかなって思っていた。それで自分も踏んだんですけど、前も踏んでくれたんでラッキーでした。あとはまくるだけだなって。まくれるとは思ったんで、あとは高橋君にのみ込まれないようにと。直前は体調を崩していたこともあって、練習も軽めにやっていた。それで逆に疲れも抜けて良かった。それまでは久々に空いて練習もできたんで、その成果が出たのかなって思います」
 労せず中団キープの皿屋の強襲にはあったものの、一戸康宏が先行策で見せ場をつくって2着。
 「(押さえて)ハナを切ってからまず考えようと。(打鐘を過ぎて)思いのほか流れた。高橋君が来るかと思ったけど、腹をくくって先行に切り替えました。久々に先行したんでこういう感覚だったっけっていうのはありました。(皿屋には)瞬間移動のように行かれたけど、1車だったんで追いかける形でと。かなり収穫はありました。前回は(成績を)かなり叩いちゃった。体の状態が崩れたなかでセッティングを出してたんで、今節は戻しました」

<9R>

青野将大選手
青野将大選手
 佐藤一伸が突っ張り気味に踏み込むも、高橋和也が切る。そのあとに高橋が緩めて、そこを青野将大(写真)が赤板2コーナー手前から山降ろしで仕掛ける。二藤元太は遅れて、打鐘2センターで神奈川2人が出切り、高橋が3番手に飛び付く。松崎貴久をキメた佐藤が4番手。再度、二藤が追い上げるも4番手まで。青野がリズム良く風を切り、最終バックを迎える。3コーナー過ぎから佐藤も踏むが、逃げる青野が後続の反撃を退けた。
 「ジャンで3人が踏んでいたので、(最終)ホームでは来ないと思って、来たら落ち着いて踏めた。最後まで踏み直しもできたかなと。いいとか悪いとかはなくていつも通りです。最近はバックが取れているし、バック数をもっていると主導権を取りやすくなって、流れがいいのかなと」
 番手の佐々木龍が伸びを欠き、3番手に飛び付いて脚をためた高橋和也が2着。
 「1回動いてからと思っていて、すんなり切れて、切ってから考えようと思った。(青野とは)前回の佐世保でも対戦していて強いのを知っていました。後ろが併走になっているのはわかったけど、(最終)バックで行ける感じではなかったです。感じは前回よりもいいと思います」

<10R>

伊藤颯馬選手
伊藤颯馬選手
 打鐘目がけて切りに出た松本貴治と山田久徳の踏み合いを、今度は坂井洋が4コーナーで叩く。坂井の先行策も、関東勢に乗った山崎賢人が最終ホーム手前から襲い掛かる。山崎のスピードが良くあっさりと出切り、伊藤颯馬(写真)は1センターで武藤龍生のブロックを受ける。しかしながら、立て直した伊藤は、坂井を乗り越えて山崎を追いかける。直線で追いつた伊藤が、山崎を差し切った。
 「ちょっとソワソワして、詰まったり、空いたりしてしまった。(山崎の)踏み出しに離れちゃって、(武藤のブロックが)来そうだなって逆に構えていた。久々に使ったフレームでちょっと違和感があった。(2日目以降は)慣れると思うので、セッティングもあんまりいじらずにケアだけでしてですね」
 展開面を強調する山崎賢人だが、坂井を楽にのみ込んだスピードはさすがの脚力。
 「みんなが切って、切っての展開になったので、僕は出やすくなりました。(伊藤が遅れていたのは)わかりました。ただ、出切ってからは自分がタレちゃうと、(伊藤)颯馬もこれなくなってしまう。(伊藤は)力があるので最後は抜かれちゃいました。自分は(前回の)佐世保より全然、いい感じです」
 打鐘3コーナーで山田にすくわれて後方に陥った松本貴治は、まくりで3着に届いた。
 「切ったあとに(山田)久徳さんにすくわれちゃったんで、そこがマズいかなって。でも、そのあとに仕掛けられたんで、まだ良かった。あんまり前の動きを見ずに、脚をためて自分のタイミングで行きました。バンクコンディションを考えたら、進みは悪くないかなって思います」

<11R>

纐纈洸翔選手
纐纈洸翔選手
 121期の卒業記念チャンプが持ち前の器用さを発揮。同期だけで行われた今年のヤンググランプリを9人のなかの最年少の纐纈洸翔(写真)が制した。
 「うれしいの一言です」
 纐纈が破顔一笑。早期卒業制度で卒業記念に参加することなく養成所を巣立った中野慎詞、太田海也の2人をくだしてのものだけに、喜びもひとしおだろう。
 「ジャン前から結構ハイピッチだった。モニターを見た時に(太田)海也さんがちょっと流し気味だったんで、真鍋(智寛)さんのところをドカせたらいけるかなと思った。けど、ドカせずって感じでしたね。それで後ろになっちゃいました」
 同地区で前を託した村田祐樹が、赤板1コーナーで前に出る。しかしながら、九州勢、さらに太田の波状攻撃で気がつけば最終ホームで6、7番手になっていた。それでも村田は、再アタック。前団をのみ込む勢いだったが、逃げる太田に中野が迫ったバック過ぎに失速。そこから纐纈が冷静だった。外に浮かされながらも、2センターで空いたスペースを見つけて内に進路を変更した。
 「1センターぐらいで結構、村田さんがいいスピードだったんで、そのまま行っちゃうかなと。ただ、バックくらいであおりをもらっていた。自分は内が空いてるのが見えたので、海也さんの後ろまで行けるかなと思って内に切り込んだ感じですね」
 東矢圭吾が外に持ち出して、直線の入口で纐纈の目の前には、サイドバイサイドを演じている五輪戦士2人。纐纈が選んだVロードは太田、中野の中割りではなく、伸るか反るかの最内のコースだった。
 「内に突っ込んだ時は、正直、空いてくれと思いながらいった。イチかバチかでいきました。(ゴール前は中野)慎詞さんよりは前にいられたと。みんなからもおめでとうって言われたので、優勝したなって感じがしました」
 村田の仕掛け、そして中野、太田の意地の激突があったからこその優勝。それは纐纈もわかっている。
 「自力を出してしっかりGIで力勝負していけるようになりたい。いま、愛知県と言ったら藤井侑吾さんだと思う。愛知県と言ったら藤井侑吾さんと纐纈洸翔と言われるくらいの自力選手になっていければなと思います。(今年は)夏が終わったぐらいから調子落としてたんですけど、こうやって優勝して締めくくれたんで来年につなげていきたいです」
 今年は8月にオールスターで初めてのGIを経験したが、未勝利に終わった。ニュースターが渇望される中部勢だけに、22歳の纐纈に求められる期待は小さくない。その思いを胸に纐纈は飛躍を誓う。
 太田の真後ろからまくった中野慎詞は、最終バックで太田にブロックされてスピードが鈍る。それでも直線半ばで太田をとらえたが、インを強襲した纐纈に優勝をさらわれた。
 「冷静にレース運びができたけど、最後に差されて悔しい。(太田とのモガき合いに勝てる)思いました。僕の方が持久力なら高いと思って、併走になったらと冷静にいけた。海也も負けじとブロックしてきて、結果、内が空いていかれた。負けて悔しい気持ちでいっぱいです」
 叩かれた後藤大輝が内に詰まり、最終2コーナー過ぎから切り替えた東矢圭吾は、直線で太田、中野の外を追い込んだ。
 「(最終)1コーナーで外が見えて、このままだと(勝負権が)なくなってしまうし、切り替えさせてもらった。慎詞のところで大川(剛)に競り勝ったりしたけど、最後に纐纈君が行ったコースが正解でしたね。(中野、太田の)2人でやり合っていて、内が空かないと思って、脚に余裕があって外を踏んだ。けど、結果、内が正解でした」

<2日目11R ガールズグランプリ(GP)>

佐藤水菜選手
佐藤水菜選手
 さらなる進化を見せている佐藤水菜(写真)は、10月に行われた世界選で日本勢の女子としては初のケイリンで金メダルを獲得。世界の強豪と渡り合った佐藤は、連覇のかかるグランプリでも気負いはない。
 「(直前は)昨日(26日)師匠(對馬太陽)と一緒にジムしました。(感触として)最悪ですね、最悪。重りもあまり上げられなかったし。体がいろんな部分痛いんで、怪我しないことを重視してウエートトレーニングは調整みたいな感じであまり重りは上げずにって感じでした。寒いのは好きじゃない。頑張っているところを見てもらいたいです。本当は他力本願のレースが好きなんですけど、自力で頑張るんで。あんまり自力は出したくはないんですけど、出す時が来たら、やるときはやるので自由に走ります」
 6月のパールカップでGIを制した石井貴子は、大怪我を乗り越えて4年ぶりにグランプリの大舞台に帰ってきた。
 「(今年は)去年、一昨年と比べて、本当に大きな変化があった1年だったと思います。年間を通して走ることができたのも、怪我以降では初めてのシーズンでした。今年のシーズンの優勝回数は4回でした。それを思うと今年に関してはGIでも優勝することができて、またこうしてグランプリにきてるので、自分も戻れてますしすごく変化があった1年だったなと。(グランプリを)まだ終えてないので最終的な評価はできないですけど、本人としても充実というかは必死に必死にバタバタしてジタバタして終えるような感じです。あとは(グランプリで)自分がすることは集中して精いっぱい走ること。ゴールまでできる限りのことをすることだと思うので、グランプリであっても普段の競走でも変わらない」
 10年連続出場でグランプリが途切れた石井寛子だったが、2年ぶりにカムバック。仕上がりも悪くなさそうだ。
 「(今年は)グランプリ出場の目標を掲げて、最後に出られたので…。1年間はいろいろと、走れない時もあったんですけど、最高にいい年だったと思います。(前回の女子王座戦からここまでは)基礎トレだったり、地味な練習をしっかりしました。(仕上がりについて)調子は悪くないと思います。私は12年間同じ気持ちで走れていて、気持ちは崩れたことがない。キッカケというよりはガールズ(ケイリン)を始めるって決めてから目標をガールズグランプリに置いて1年間戦っています」

<最終日11R KEIRINグランプリ2024(GP)>

古性優作選手
古性優作選手
 今年ただ一人、GIで2度の優勝。獲得賞金でも2位に1億円以上の差をつけている古性優作(写真)は、単騎でグランプリ初制覇を遂げた静岡で今度は脇本雄太とタッグを組む。
 「去年グランプリ終わって、全部のGI獲るって言ってたんですけど。2つしか獲れてない。去年に比べても3つから2つに落ちてるんで、個人的にはそんな良くなかった。(前回のあとは)しっかりトレーニングして怪我しないようにだけ祈りながら、しっかり攻め続けてトレーニングはした。あとは体調管理をしっかりしてって感じです」
 3年連続でのグランプリ出場の新山響平だが、今年は初めての単騎。一昨年は、北日本勢が4人で結束。昨年は佐藤慎太郎との連係だっただけ、今年はムードも違う。
 「(今年は)結果はあまり出せなかったんですけど、内容は自分なりにこだわってやってきた。そのなかで、まあまあ納得できるものにはなりました。(GIの)決勝に乗るという結果としては出たんですけど、ラインのおかげだったかなとは思います。(12月に玉野GIIIを走ったのには)1つはレース勘が鈍ったりしないようにっていうのもありましたし、その分、落車だったりリスクはあるんですけど。それ(リスク)を負っても出ておきたかった。やっぱり競輪場に来るとモチベーションも上がるので、モチベーションの維持にもつながりました。(そのあとは)やりたいことをやって、やり残したことはあまりないかなって感じでここに入れました」
 6月の高松宮記念杯で初戴冠。グランプリ出場権を獲得した北井佑季だが、近況は一息だけに初めてのグランプリで仕上がりが気になるところだ。
 「(今年は)うまくいった部分と、そうでなかった部分がけっこう大きく分かれた1年かなと。(12月に大垣記念を走ったのは)グランプリまでに12月のうちで前半に1回は走っておきたかった。結果は良くなかったので、体もこう動き切ってはいなかったのかなとは思います。(そのあとは)練習はここに向けてしっかりやって、体調も日に日にグランプリに向けて上がっていっている感じですね。フレームはいままで使ってなかったヤツで大垣の時とも違うヤツです。(レースでの組み立ては)初手の位置でどうなるかもわからないですし、いろんなパターンが考えられるので、そういうのを考えてるとこですね」