『KEIRINグランプリ2024シリーズレポート』 最終日編

配信日:12月30日

 静岡競輪場を舞台に開催された輪界最大のイベント、大阪・関西万博協賛「KEIRINグランプリ2024シリーズ(歳末チャリティー協賛)」は、12月30日に最終日が行われた。夢の一発勝負「KEIRINグランプリ2024(GP)」は、打鐘3コーナーで南関勢を叩いた脇本雄太が主導権。番手で絶好の展開が訪れた古性優作が、追い込んで優勝。単騎で制した21年の当所でのグランプリに次いで、2度目のグランプリ制覇で優勝賞金1億4000万円(副賞含む)を手にした。そして、一昨年の脇本の年間獲得賞金額の記録を更新して、賞金王に輝いた。また、「第17回寺内大吉記念杯(FI)」の決勝は、4車で結束した九州勢のワンツーで人気の決着。番手まくりを敢行した伊藤颯馬が、今年3度目の優勝を飾った。

KEIRINグランプリ2024出場選手集合
KEIRINグランプリ2024出場選手集合
GP1番車、古性優作選手
GP1番車、古性優作選手
GP2番車、平原康多選手
GP2番車、平原康多選手
GP3番車、郡司浩平選手
GP3番車、郡司浩平選手
GP4番車、眞杉匠選手
GP4番車、眞杉匠選手
GP5番車、岩本俊介選手
GP5番車、岩本俊介選手
GP6番車、清水裕友選手
GP6番車、清水裕友選手
GP7番車、北井佑季選手
GP7番車、北井佑季選手
GP8番車、新山響平選手
GP8番車、新山響平選手
GP9番車、脇本雄太選手
GP9番車、脇本雄太選手
寺内大吉記念杯競輪決勝ゴール
寺内大吉記念杯競輪決勝ゴール
寺内大吉記念杯競輪優勝、伊藤颯馬選手
寺内大吉記念杯競輪優勝、伊藤颯馬選手

KEIRINグランプリ2024 レース経過

 スタートは内枠勢が出るもけん制気味となり、結局、平原康多が誘導員の後ろに付いた。眞杉匠-平原の関東勢に脇本雄太-古性優作の近畿勢が続き、単騎の清水裕友がこの後ろ。6番手に北井佑季-郡司浩平-岩本俊介の南関勢で、単騎の新山響平が最後方。7周回のためしばらく動きはない。
 青板周回のバックあたりから眞杉が誘導員との車間を空けはじめると、2センターから北井率いる南関勢が踏み上げる。眞杉は突っ張る構えを見せるも、赤板過ぎの1センターで車を下げはじめ、3番手岩本の内で粘る。北井があまりペースを上げなかったため、2コーナーを立ち直ったところから脇本がスパート。これに気付いた北井も踏み込むが、脇本はあっさりと北井を叩き、ジャンの2センターで脇本が先頭に踊り出た。脇本-古性の近畿勢がレースを支配し、初手から近畿勢の後ろにいた清水が続いて最終ホームを通過。先行した脇本のかかりは素晴らしく、3番手以下は誰も仕掛けられず最後の直線へ。絶好の展開となった古性は、余裕で脇本を交わして優勝。21年に続き、グランプリ2V目を再びこの地で達成した。古性を追っていた清水が2着、脇本はさすがにやや末脚を欠いて3着。





<4R>

佐々木雄一選手
佐々木雄一選手
 嵯峨昇喜郎が誘導を残したまま引いて、後方から上昇していた山根将太が赤板過ぎに出て先頭に立つ。山根ラインに栗山俊介が続いて、中団は嵯峨と栗山で併走になる。打鐘手前から栗山が踏み込むも、先行態勢の山根もペースを上げて駆ける。3番手付近の外併走でこらえていた栗山だが、最終1センター過ぎに後退。4番手で外が空いた嵯峨が、すかさずまくって2センターで山根の逃げをとらえる。ゴール前で佐々木雄一(写真)が、嵯峨を楽に差し切った。
 「栗山が切ってくれればっていうのもあったけど、山根も出させちゃうとっていうのもあっただろうし。それで(中団が栗山と嵯峨で)併走になりましたね。(コースができたあとは、嵯峨)昇喜郎も動くところで動いてくれた。自分は前回、前々回くらいから感触が上向いてきた。ただ、今年1年は怪我が多かった。(上向いてきたのは)9月の落車のあとは怪我もなく、体が良くなってきたからだと思います」
 中団で隙を見せずに位置を確保した嵯峨昇喜郎が、まくりでラインの佐々木とワンツー。
 「(周回中は)前か中団が欲しかったんですけど、どっちにしても僕的には展開が良かった。(9月の)青森記念でああいう形で引いてダメだった。それもあって絶対に引かないって思いました。(外が)空いてくれたけど、空かなかったら無理やりこじ開けるつもりだった。(青森記念で)鎖骨をやってしまって、まだプレートが入っている。動かしづらくてまだ全然良くないですね」

<7R>

桑原大志選手
桑原大志選手
 赤板1センターで吉田有希が出て、そこを脇本勇希が押さえて先行策に出る。しかしながら、青柳靖起の巻き返しも早く、打鐘3コーナーでは3番手にいた吉田に並び前団に迫る。最終ホーム手前で村田雅一がブロックも、青柳が乗り越える。今度は村田が桑原大志(写真)を外に張る。まくった一戸康宏もあおりで失速。逃げる脇本をとらえるかに見えた青柳が、脇本に合わせられる。態勢を立て直した桑原が、2コーナーから自力に転じてまくる。切り替えた村田らを振り切った桑原が1着。桑原が青柳を称えてこう振り返る。
 「青柳君がすごく頑張ってくれた。それにつきますね。ただ、(最終2コーナー付近で力尽きて)やめた感じになった。北村(信明)君も付いていたんで、なんとかチャンスがあるようにと。(まくりは)たまたまです。(青柳の)気持ちが伝わってきて、自分は責任のある位置だった。(腰部に不安があるが)それが昨日(2日目)はその通りになってしまった。そこ(追走)の精度を上げていかないとグレード戦線では勝ち上がっていけないんで」
 大立ち回りを見せた村田雅一は、最終3コーナーから外の磯田旭をさばいて桑原に切り替えるように追い込んだ。
 「(脇本は先行の)スイッチが入りましたね、(グランプリシリーズで)すごい歓声だった。勇希も全開で踏んでいるから、どうするか迷った。(青柳をけん制したあとに)桑原さんに当たった。そのあと勇希もタレていた。(桑原のまくりに)なかなか反応ができなくて、ゴチャついたところを入っていった。初日、2日目よりも今日(最終日)が(感じが)一番良かった」

<8R>

武藤龍生選手
武藤龍生選手
 赤板1センターから叩きに出た渡邉雄太を出させずに、志田龍星がペースを上げて主導権をキープして打鐘を通過。浮いた志田が下げているところで、今度は小林泰正がアタック。抵抗する志田を最終2コーナーでねじ伏せた小林に武藤龍生(写真)の追走。山田久徳は高橋広大をさばいて、バック手前でまくる。その外を単騎の佐藤一伸も踏み上げる。山田のまくりを止めた武藤が、追い込んで1着。
 「(小林)泰正は先行する気満々でしたし、行ってくれました。後ろの状況はわかっていなくて、(山田)久徳さんが来てビックリしましたけど、そこは頑張らないとって思いましたね。泰正のおかげです。今回は、正直良くなかったけど、今日(最終日)取り返せたので、次につながるのかなと」
 仕掛けどころを逃すことなく踏み込んだ小林泰正が、武藤とのゴール勝負に持ち込んで人気の決着。シリーズのオープニングを逃げ切りで制した小林の動きの良さが、最終日も光った。
 「(武藤)龍生さんが付いてくれてたし、先行したいと思っていました。志田君を叩く時にかなり脚を使っていたし、龍生さんが仕事をしてくれたおかげ。(今後は)眞杉(匠)に前橋記念を獲らせてもらっているし、眞杉の前を回れるような選手になりたい。GIで戦うにはなにをしないといけないかっていう基準もできたし、そこに向けてやっていきます」

<9R>

岩津裕介選手
岩津裕介選手
 高橋和也が切った上を押さえた松本秀之介は、赤板2コーナー手前で先頭に立つ。坂井洋が打鐘を5番手で通過して、8番手の内山雅貴の反撃に合わせて叩きに出る。最終1コーナーで坂井が松本を叩く。諸橋愛は遅れ気味も、小林潤二まで3車が出切る。バック手前で岩津裕介(写真)が4番手にスイッチして、2センターから追い込む。押し切り図る坂井を、岩津がゴール寸前で交わした。
 「坂井君はさすがのキレで来ましたけど。諸橋さんをさばければ良かったんですけど、松本君もまだ踏んでいなくて、ここから踏み上げるっていう感じのところだったので難しかったですね。そのあとは自分で行く感じになりましたけど、悪くはなかったですね」
 番手の諸橋は直線で伸びを欠き、坂井洋が2着に逃げ粘った。
 「ちょっと内山君が後ろにいたので、嫌だなっていう感じでした。切って切ってで、(内山に)カマされたらキツいと思った。ちょっと良くなかったですね。体の状態というか、体と自転車がマッチしていない感じでした」

<10R>

伊藤颯馬選手
伊藤颯馬選手
 4車の九州勢が、前団に構える。8番手から上昇した皿屋豊を山崎賢人が赤板過ぎに突っ張り主導権は渡さない。九州勢の後ろは単騎の松本貴治がキープして、外から追い上げた青野将大が6番手。皿屋は打鐘3コーナーで8番手に戻って隊列は一本棒。逃げている山崎の掛かりが良く、最終ホームで別線は動けない。1センター過ぎから5番手の松本が仕掛けて、伊藤颯馬(写真)は車間を詰める勢いで番手まくりを打つ。松本は松岡貴久の横までも至らず、そこを青野がまくるが一息。松岡も直線でほとんど詰め寄ることができず、伊藤が今年3度目の優勝で24年を締めくくった。
 「(山崎)賢人さんはすごかったですね。今回は仕上がりも良かったと思うし、ずっと踏んでいるような感じでした。強い気持ちだったのでビックリしました。記憶があんまりないです。松本さんが来た瞬間に出て行きました。静岡は記念でも準決まで上がれているし、相性は悪くないですね。声援か、ヤジかわからないくらい、聞こえないくらいのお客さんの声がありました。少しずつ番手戦に慣れてきて、出るだけではなく仕事もできるように。今年は怪我だったりで調子に波がありました。記念は1個獲ってみたい。自力で獲ってみたいと思うけど、今の力では…。なにをすればいいかは、いまかわからないので、とにかく頑張ります」
 九州3番手の松岡貴久は、伊藤追走に集中して2着をキープした。
 「(山崎は)強かったでしすし、(伊藤)颯馬が行って、これは別線も行けないだろうと思っていました。徐々に良くなっているけど、前の2人との脚力差を感じた。いい時なら抜いていると思うので、トレーニングをしないと。九州勢はグランプリに誰もいないので、誰かが乗れるように」
 最終2センターで青野はいっぱい。新村穣は冷静に青野の内のコースを踏んで伸びた。
 「全部、青野がやってくれました。仕事のないレースでしたし、最後にコースを踏んだだけ。青野君が無理くり行ってくれたんで、いい位置を取ってくれた。すごい雰囲気ですけど、自分がグランプリを走っているわけではない。デビューしてからS班の郡司(浩平)さんだったり、師匠の小原(太樹)さんと練習をさせてもらってきています。自分も少しずつ積み重ねていきたい」

<11R>

古性優作選手
古性優作選手
 訪れたチャンスは逃さない。真後ろから清水裕友の影もチラついたが、古性優作(写真)が付け入る隙を与えることなく抜け出した。
 「脇本(雄太)さんのおかげで優勝できてうれしいです」
 今年1年をS級S班としてともに支え合い、このグランプリで抜けたパフォーマンスを見せた脇本に開口一番、感謝した。
 「理想通りの初手の位置を取ってでした。あの並び、あの叩き方になったら脇本さんが勝負するって。思っていた通りでした」
 1番車の古性がスタートで関東勢を受けるようにして、脇本、古性で3、4番手を確保して周回を重ねる。南関勢の先頭を務めた北井佑季がペースを上げずにいて、脇本も構えるつもりは毛頭ない。赤板2コーナーから襲い掛かった脇本が主導権を奪い、抜群の掛かりで駆ける。
 「(脇本は)もう掛かりが抜群というか、自分も(最終)ホームから1コーナーにかけて勝手に口が空いていくぐらい加速していった。これは誰も来られないだろうなって思っていました。(脇本は2日目の)昨日の夜の、最後の指定練習のタイムがこの時期に出るようなタイムではなかった。脇本さんがいままでいろいろトレーニングしてきて、ナショナルチームでのトレーニングだとか、そういうピーキングとかが抜群にうまいのかなって。僕も脅威に感じるくらいのタイムでしたね」
 前日の指定練習で脇本の仕上がりを肌で感じていた古性だったが、自身のデキにも手ごたえはあった。
 「僕も昨日の指定練習で仕上がった感じで、脚が軽いなって。久々に仕上がったなっていう感じだった。脇本さんもすごかったんですけど、脚的には今年一番いいなっていうがあった」
 清水を警戒しながらの運行ではあったが、もう最終バックでは別線に出番はない。あとは脇本とのラインの2人の勝負だった。
 「初めてタイトルを獲った時だったら、今回も差せてなかったと思います。自分の脚力も少しずつ上がっているのかなと」
 直線半ばで脇本を抜き去り、外から迫った清水を4分の3車身振り切ってのゴール。21年に単騎で制した静岡でのグランプリに次いで、2度目のグランプリVも静岡が舞台だった。
 「(静岡は)やっぱり相性いいとずっと思っていた。走っていても気持ちがいいですし、走っていても勝てそうだなって思わせてくれるバンクですね」
 2度目のグランプリを獲り、GIと合わせると10個のタイトル。目標として掲げているダブルグランドスラムはもとより、ダブルグランプリスラム(全冠制覇とグランプリ)まで視界に入る。
 「あと日本選手権と競輪祭を2個ずつ獲ったら、全部2個ずつなので、あと4回。燃え尽きない限り頑張りたい」
 一昨年の脇本の年間獲得賞金額の記録を更新して、今年の賞金王。まだまだ夢は広がっていく。
 単騎の清水裕友は近畿勢後位にポジションを取り、赤板2コーナーで仕掛けた脇本、古性を追走。最終ホーム手前で単独の3番手を手に入れたものの仕掛けられず、古性に流れ込んでの2着になった。
 「(周回中は)近畿の後ろというよりも、中団を取ったラインの後ろからでした。関東勢が前を取った時点で(眞杉匠が南関分断の)粘りもあると思った。前も見えていましたし、脇本さんは行くだろうっと思っていたので準備はできていました。(最終)バックで一瞬、詰まったんですけど、3コーナーからゴールにかけて伸びていった。脇本さんがまだ掛かっているのに古性さんの伸びがすごかった」
 眞杉が内に包まれ、主導権の北井がペースを上げる前の赤板2コーナーで脇本雄太はスパート。北井をあっさり叩いたところで大方、別線との勝負づけは済んでいた。番手の古性が優勝して、自身は3着に踏ん張った。
 「(周回中は)僕のなかでは中団が理想で、位置取りうまい古性君がやってくれた。眞杉君が踏んでいるのが見えて、どこかで仕掛けようと。ガムシャラに踏んでいって、後ろがどうなっているかはわからなかった。けど、古性君を信頼していた。ラインで決めるという意識があって、残れれば良かったけど。グランプリだけあって、もう少し残れたら。今年は古性君との連係がうまくいかない時もあったので、その分、しっかりこの舞台で決められた。納得のできるレースができた」

次回のグレードレースは、立川競輪場開設73周年「鳳凰賞典レース」が1月4日~7日の日程で開催されます。
S班から平原康多、郡司浩平、北井佑季、清水裕友の4名が参戦するのをはじめ、吉田拓矢、山口拳矢ら新年最初のグレードレースには全国の強豪が多数集結します。
地元勢も河村雅章、鈴木玄人ら8名の精鋭が持ち味を発揮して存在感をアピール。頂点を目指す戦いがここから始まります。

12月26日時点の出場予定選手データを分析した、立川競輪「鳳凰賞典レース」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。


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