『第62回朝日新聞社杯競輪祭(GI)レポート』 3日目編

配信日:11月21日

 グランプリをかけた最後のGI。北九州メディアドーム・小倉競輪場で開催されている「第62回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」は、20日に3日目を迎えた。ガールズでは「ガールズグランプリ2020」の出場をかけて「アメジスト」、「トパーズ」のそれぞれの決勝が行われた。「アメジスト」では、佐藤水菜がまくりで制してグランプリの権利を獲得。「トパーズ」は、児玉碧衣が3連勝で力の違いを見せた。また残りの一次予選2で争われた男子は、競輪祭連覇がかかる松浦悠士が人気に応えて連勝した。21日の4日目にはV戦線を占う意味でも見逃せない「ダイヤモンドレース」が、メインで行われる。
 今シリーズは新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から、すでに申し込み抽選が行われ、その結果、入場証をお持ちの方のみの入場となります。入場証をお持ちでない方は、小倉競輪場1Fの場外車券をご利用ください。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

アメジスト決勝出場選手特別紹介
アメジスト決勝出場選手特別紹介
トパーズ決勝出場選手特別紹介
トパーズ決勝出場選手特別紹介

11R ガールズGPトライアルB(アメジスト) レース経過

 号砲が鳴り、やや見合ったスタートから最内枠の小林優香が誘導員を追いかける。その後ろは佐藤水菜、高木真備の順で並び、最後方から追い上げた梅川風子は、鈴木美教の前に入って4番手。6番手に鈴木奈央が続き、梅川に乗って上昇するも外に浮いてしまった太田りゆは、青板の2コーナーから再び上昇して小林の前に入り、誘導員の後ろで赤板の通過する。
 2番手の小林は、徐々に前との車間を空けて後続を警戒する。最終ホームから梅川が仕掛けると、小林も梅川に合わせて踏み上げて、車間を詰めた勢いでそのまままくり出す。さらに、小林に続いた佐藤も梅川より先に2コーナーから反撃に出て、最終バックでは太田、小林、佐藤がほぼ横一線の状態でモガき合う。3車併走の一番外を踏んだ佐藤だったが、4コーナーで内の2人を力でねじ伏せて先頭に立ち、そのままゴール線を駆け抜けて地元で開催されるガールズグランプリへの切符をつかみとった。

12R ガールズGPトライアルA(トパーズ) レース経過

 号砲で出た石井貴子が前を取り、追い上げた尾崎睦が2番手に入る。以下は、尾方真生、柳原真緒、児玉碧衣、荒牧聖未、久米詩の順で隊列が落ち着いて周回を重ねる。
 赤板過ぎから尾方が前との車間を空けはじめ、その後ろの柳原も若干、車間を切った状態で打鐘を迎える。誘導員が退避して、先頭の石井がスピードを上げないでいると、2センターから柳原が勢いよく仕掛ける。最終ホームから踏んだ石井を2コーナー手前でとらえるが、冷静に柳原の仕掛けに乗っていた児玉が、すかさずその上を一気にまくり出す。段違いのスピードで先頭に躍り出ると、その後も後続を寄せ付けずに4コーナーを回り、堂々と押し切って完全Vを飾った。

<1R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 赤板を迎えても誰も動かず、6番手の寺崎浩平は1コーナーからダッシュを利かせてのカマシ。松浦悠士(写真)を7番手に置いて、寺崎がスピードに乗せて駆ける。最終ホームを通過して松浦が、1センターから仕掛ける。抜群の加速力で前団に迫ると、逃げる寺崎を4コーナーでとらえた松浦が1着。
 「(7番手になって)ヤバいと思った。ただ、寺崎君がジャンからかなりハイピッチでいってたんで、仕掛けどころは訪れるかなと。逃さずに行けて良かったです。自分のラインが2車で相手が3車、3車。厳しいレースになると思ってたし、後方から1着を取れたんでデキはいいです。明日(11月21日)誕生日なんで、バースデーウインを決めたいですね」
 桑原大志が流れ込んで人気のラインでワンツー。長島大介後位から切り替えた宿口陽一が3着に入った。
 「松浦がすごい勢いで来た。(切り替えるか)悩んだけど、もうちょっと待ってもよかったかもしれないですね。初日も今日(3日目)も前が頑張ってくてたおかげ。僕が前を走る時は、それ以上に頑張らないと」

<2R>

稲川翔選手
稲川翔選手
 後ろ攻めの皿屋豊が打鐘前に鈴木裕を押さえて逃げる。中部勢を追って4番手を確保した稲川翔(写真)が、最終2コーナーから好回転でまくって圧勝した。
 「初手は出たとこ勝負で、展開通りにはならないと思った。南(修二)さんに任されていたし、先行の後ろを取って出し惜しみをしないように。(皿屋が)踏み込んだところが1周ちょっと。自分の態勢が整ってなくても無理やりに行った。勝っても負けても南さんまでチャンスがあるように。感触はわからない。必死でしたね。踏み込めたのは収穫。体調は問題ないし、レースは集中して臨めている」
 皿屋を目標にした坂口晃輔が、南を振って2着を確保。
 「皿屋さんのおかげ。掛かりも良かったし、自分も引きつけてもって行かないと、南さんにすくわれるかもとか考えていたけど。稲川さんの技術がすごかった。スカスカ。バンクが軽いので、(レースは)スピードが出る。かみ合ってはないですね。しり上がりに良くなると思う」
 島川将貴は絶体絶命の位置から大外を伸びて3着に。
 「カマシかまくりで一撃を狙っていた。一本棒になってやばいと思ったが、あきらめずに踏んだ。ここにくる前の練習でみんなにすごい抜かれて不安だったし、状態はいいことはない。でも、昨日(2日目)セッティングをいじったらいい方向になった」

<3R>

新山響平選手
新山響平選手
 赤板過ぎに松川高大が誘導を降ろして先頭に立とうとしたが、正攻法に構えていた古性優作が突っ張る。戦況を見極めていた新山響平(写真)が打鐘から一気に叩いて出ると、古性が少し遅れ気味になりながら番手に飛び付く。佐々木雄一が締め込みながら番手を死守して直線で抜け出したが、内圏線踏み切りにより1位失格。懸命に逃げた新山が繰り上がりで1着となった。
 「粘られると思ったので強めに踏んでフカし気味に駆けましたけど、結果的に後ろに迷惑を掛けてしまった。出ていくのが少し遅かったですね。フカして駆けた分、昨日(2日目)よりもタレてしまった。自分だけになってしまって悔しいですね」
 北日本ライン3番手の阿部力也をさばいて3位入線の古性優作が、2着に繰り上がった。
 「難しいレースでしたね。赤板で外を向いたら新山がいたので。切って、出させて…。難しかったですね。終始、内を走っていたし、もういっぱいでした。1走目の方が今日(3日目)よりも一体感があったかなと。もうちょっときれいに決めたかったけど…。ちょっとレースを見て(振り返って)考えます」

<4R>

高橋晋也選手
高橋晋也選手
 高橋晋也(写真)が山崎賢人を警戒して打鐘の3コーナーから仕掛けて主導権を取る。スピードは抜群で、別線はなかなか反撃できない。そのまま高橋マークの内藤宣彦の追撃も振り切り、会心の逃げ切り勝ちを収めた。
 「(山崎)賢人さんだけをどうにか後方へと思っていた。いい流れで踏めたが、もうワンテンポ遅くてもいいと思った。最後は気持ちで踏んだ。踏み切れているし、調子はいい。1着はめちゃくちゃうれしいし、自信につながるレース」
 鈴木庸之にすくわれた浅井康太は5番手の位置で態勢を立て直すと、最終バックからまくり上げて3着に入った。
 「高橋君の先行になると頭の中で考えて3番手に飛び付こうと思ってそれで組み立てた。昨日(2日目)走ってない分、回転不足かなと思ったけど、踏み応えは良かったので自信になった」

<5R>

和田健太郎選手
和田健太郎選手
 押さえて出た岐阜コンビを菅田壱道は切らずに3番手に続く。そこを岩本俊介が出て、打鐘手前からレースを支配する。4番手に川口聖二、6番手に菅田。後方の太田竜馬の反撃に合わせて、岩本がペースを上げて逃げる。太田は3番手までで、あおりを受けた菅田も不発。番手で絶好の和田健太郎(写真)が、岩本を交わした。
 「もう言うことないですね。(岩本は)2日目も今日(3日目)も本当に強かった。あれ以上キツい展開になっても岩本は仕掛けられたと思うし、(自分が仕事を)する感じじゃなかった。(最終)バックの時点で(ラインの)3人で決まったと。グランプリというよりは、今日一日、僕の車券を買ってくれている人のために頑張ろうと。それで結果(グランプリ出場が)ついてくればと思ってます」
 「内容が最高でした」と、振り返ったのは、レースをつくりラインで上位独占を果たした岩本俊介。和田健とのワンツーに気持ち良さそうに汗をぬぐう。
 「想定していたなかで一番いい流れでした。押さえて駆けてもそれなりにできるので、そんなに慌ててはなかった。太田君が来る前に自分で駆けたのが良かったです」

<6R>

山田英明選手
山田英明選手
 野原雅也が後方7番手から押さえて赤板過ぎに先頭に立ったが、山田英明(写真)がその上を押さえてペースを落とす。鈴木竜士が山田の後位にもぐり込んで隊列が短くなったところを渡邉一成が叩いて主導権。番手の成田和也が車間を空けて援護したが、3番手を確保していた山田が間合いを取りながら直線で外を鋭く伸び切った。
 「車番的にも野原君の前に切って待つか、叩いたところを叩くかでしたね。切って待っても良かったですけど、野原君任せになってしまうのは違うなって。そのあと渡邉君がすぐに来たのでいい位置に入れました。でも、後ろに鈴木君がいて内を空ければすくわれそうで、成田さんも車間を空けていたから難しかったですね。しっかり自力は出していないですけど動けてはいるので。一走して整った感じですね。やっとスタートラインに立てた気がします」
 積極策で抵抗した渡邉一成は、わずかに末を欠いて3着に沈んだ。
 「山田さんと鈴木君が踏み合ってて、そのあと叩きに行きましたけど、もうちょっとゴチャついてほしかったですね。山田さんが3コーナーで仕掛けてくれれば、自分が踏み直して、成田さんが仕事してワンツーだったと思う」

<7R>

柏野智典選手
柏野智典選手
 赤板の2コーナーで和田真久留を押さえた河端朋之が軽快に駆ける。3番手の位置は和田と吉田拓矢で取り合いに。これで絶好となった柏野智典(写真)がきっちりチャンスをモノにした。
 「河端のおかげ。(初手の)並んだ順が良かったですね。かかりはすごかったし、ジャンとバックでは誰もこれないと思ったが、(最終)2センターでタレていた。内を空けたらきそうだったので、空ける素振りだけして引っかかってくれた。昨日(2日目)、今日(3日目)とナショナルのダッシュに付いていけているので悪くない。ダイヤモンドレースは光栄です」
 最終バックで内にもぐり込んだ佐藤慎太郎は3着まで。
 「吉田が頑張ってくれたが、かみ合わなかった。ポイントはひとつで、先に切って河端を行かせれば良かったですね。(吉田が)行ききるか微妙だったので、自分の位置をキープした。(コースが空かずに)力を残して終わりましたね。展開の中では最善を尽くしました。二次予選が正念場だと思うので気を引締めたい」

<8R>

小倉竜二選手
小倉竜二選手
 赤板の2コーナー過ぎに山中秀将が飛び出すと、一本棒の7番手で車間を空けた清水裕友は打鐘の2センターから踏み込む。合わせる山中を清水が最終2コーナーでとらえて、小倉竜二(写真)、坂本健太郎までラインの3車で出切る。別線に出番はなく、ゴール前で小倉が清水を差し切って1着。99年、06年と2度制した小倉の競輪祭で通算400勝のメモリアルを飾った。
 「何気に400勝ができました。今回はできると思ってなくて、まさか(シリーズ中に)2勝できるとは。(小倉は)タイトルを獲れた場所ですし、思い出といえば思い出の場所です。いいところで400勝ができた。仕掛けたタイミングが早かったし、清水君の踏み直しが早くてその分抜けたのかなと。展開に恵まれて、しっかりと抜けている」
 ロングまくりで別線をねじ伏せた清水裕友は、一次予選連続の2着で4日目のダイヤモンドレース進出を逃したが動きは悪くない。
 「欲を言えばダイヤモンドレースに行きたかった。(2日目の)1日の休みで体は楽になりました。(感じとしては)あんなもんかなっていうのもあるけど、座ってからのトルク感が欲しい。脚は問題ないです」

<11R>

佐藤水菜選手
佐藤水菜選手
 前の太田りゆとの車間を大きく切った2番手の小林優香が、後方の動きを確認するも誰も動かない。打鐘の4コーナーでようやく5番手から梅川風子が仕掛けると、小林も車間を詰めてペースを上げる。合わせるように太田も踏む。さらに3番手の佐藤水菜(写真)も外を踏んでまくり合戦になる。最終バック手前では内から太田、小林、佐藤、梅川のナショナルチーム4人が併走。佐藤のスピードが良く、直線半ばでわずかに抜け出して1着。賞金圏外からの逆転劇で地元のグランプリ出場を決めた。
 「去年はこの競輪祭で怪我を経験してツラい1年でした。(競技の)全日本自転車選手権大会でも勝てない相手に自力を出せて勝てたのでうれしいです」
 梅川の仕掛けにかぶることなくポジションを確保し、冷静に仕掛けた佐藤の走りが光った。
 「初日は自力を出して4着。2日目は展開もあったけど、悔しい3着だった。それがあったからこそレースが見えた。それが勝因だと思います。競輪祭は毎年何かが起きてたんでですけど。今年は何があるかなと思ったら優勝しかないと。自然体で動けました。ナショナルチームに入って、肝が据わりました。メンタル面でプラスになっています。グランプリでもチャンスをつかめるように」
 佐藤に外を行かれた小林優香は、グランプリ出場を逃す2着。
 「1番車だったので前を取らないとっていうのもありました。ただ、Sはいらなかったです。(打鐘の)4コーナーで一気に仕掛けとけば面白かったですかね」

<12R>

児玉碧衣選手
児玉碧衣選手
 3番手の尾方真生が4番手の柳原真緒を警戒するように前と車間を空けて、両者を見るように児玉碧衣(写真)が5番手にポジションを取る。柳原が打鐘の2センターからダッシュ良く仕掛けると、尾方は合わせることができず内に包まれる。最終ホームで柳原を追った児玉にとっては、その時点で勝負あり。
 「(尾方)真生とヤナギ(柳原)が自分の前にいたんで、2人でモガき合いになると思った。2人が仕掛けなかったら自分で行くつもりでした。そしたらヤナギが行って真生をフタする形になったんで、自分にとってはラッキーでした。初日、2日目は併走から1周モガいていたんで気持ちに余裕がありました」
 確信のまくりで後続をちぎって、児玉が圧勝劇を演じた。すでにグランプリの出場権は得ていたが、このVで1番車も決まった。
 「またグランプリを(一昨年みたいに)1番車で走れるんで、3連覇を目指していきます。3連覇っていうのはなかなかできることではないし、自分の名前を残したい。あと1カ月ちょっとあるんで、グランプリまでに練習します」
 インを突いた久米詩と児玉後位が併走になった荒牧聖未だったが、併走をこらえて児玉に食らいついて2着に入った。
 「車番を生かして自分の力を出し切って、3着以内に入ってお客さまの車券に貢献できればと思っていた。内をすくわれそうになるのも警戒していた。離れながらだけど、付いていけて良かった。今度はもっと詰められるようにしたい」
 尾方を制して積極的な仕掛けで力を出し切った柳原真緒は3着。
 「尾方さんより先に仕掛けようと思っていた。しっかり出切れたんで良かったです」