『第66回朝日新聞社杯競輪祭(GI)レポート』 2日目編

配信日:11月21日

 今年最後のGI。北九州メディアドーム・小倉競輪場で開催されている大阪・関西万博協賛「第66回朝日新聞社杯・競輪祭(GI)」、「第2回競輪祭女子王座戦(GI)」は、11月20日に2日目が行われた。男子は一次予選1、2でポイントが争われ、2では古性優作、松浦悠士、眞杉匠が連勝。1走目にシンガリに敗れていた脇本雄太が、白星奪取で巻き返した。また、ファイナルをかけて準決の2個レースで熱戦が展開されたガールズでは、佐藤水菜が人気に応えて無傷の優出を遂げた。11月21日のシリーズ3日目は、男子で一次予選2、ガールズでは第2回のクイーンの座をかけて女子王座戦の決勝が、世界のケイリンチャンピオンの佐藤ら好メンバーにより行われる。
 開催中の毎日、競輪専門紙「コンドル」による全レース解説会、SPEEDチャンネル競輪専門解説者の予想会、北九州物産展、未発走車券抽選会、ふわふわ遊具、巨大迷路、ちびっこランドなどが予定されています。また、11月21日の3日目には、柔道48キロ級パリ五輪金メダリストの角田夏実選手のトークショーなども行われます。小倉競輪場では、様々なイベントでみなさまのご来場をお待ちしております。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

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河端朋之選手
河端朋之選手
 中四国勢が前団に構えて、河端朋之(写真)が寺崎浩平を出させない。そこを阿部将大が押さえて、赤板2コーナーから踏み込んだ北井佑季が打鐘過ぎに先頭に立ち主導権。北井はそのまま緩めることなく踏んで、3番手に飛び付いた阿部は、車間が空いて最終ホームを通過する。阿部がじわじわと車間を詰めて、7番手になった寺崎はバック手前から踏み込む。寺崎に合わせて3コーナー過ぎからまくり追い込んだ河端は、ゴール寸前で北井、平原康多をまとめてとらえた。
 「メンバーを見た時点から、キツいなって思っていました。(初手は)前か後ろしかないと思っていたので、取れれば前を取ってと。どのラインも切って北井君を出させる感じだと思ったので、阿部君でも寺崎君でも来た方を1回突っ張ってそこからだなって思っていました。ちょっと阿部君が車間を空けているのか、遅れているのかわからなかったので様子を見ながらになりました。けど、寺崎君が仕掛けてきたので、外を踏むしかないなって感じでした。そうしたらまさかの1着まで届いた。思った以上に伸びましたね」
 1周半をカマした北井に付けた平原康多は、阿部をけん制してから追い込んで2着。
 「(北井と初連係で)付いたことがなかったので、どれだけ踏み込むのか、どれだけ踏み上がるのかがわからなかった。その分、余計に(自分自身は)踏んでしまっていましたね。(落車明けのレースで)重さはありました。でも、最低限、やるべきことはできた。阿部君は止められたけど、そのあと河端君はちょっと…」

<4R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 吉田拓矢(写真)が切った上を、嘉永泰斗が赤板2コーナーで出て主導権。あおりがありながらも仕掛けた松井宏佑は、打鐘3コーナーからさらに加速して嘉永に襲い掛かる。守澤太志は、松井と車間が空きながら追いかける。最終1センターで小倉竜二が守澤を大きく外に張って守澤は後退。1人で出切った松井の番手に嘉永が入り、吉田は俊敏に3番手まで追い上げて、その勢いで2コーナー過ぎからまくる。松井を4コーナーでとらえた吉田が1着。
 「(赤板は)突っ張られる可能性もあったので、勢いをつけての判断になった。松井さんが行ったところをスイッチできればと思っていて、そこで小倉さんの動きがあって守澤さんが浮いた。そこを行きました。車は進んでいるけど感触は良くないですね。昨日(初日)、空いたのでマッチしていない。(2走目は)今日より良くなると思う」
 2位入線の小倉は押し上げで失格。アクシデントがあって結果的には自分でまくる形になった山本伸一が2着に入った。
 「(最終)ホームで(三谷)竜生がスイッチして、そこに乗っかっていくところで小倉さんの動きもあった。(吉田)拓矢も行って、(三谷が)浮いたように見えて、竜生が内に倒していて僕も吸い込まれた。そんなに良くないですね。アタマまでいってもおかしくないのに、あんまり良くないのでセッティングを見直します」

<5R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 雨谷一樹が先に切って、新田祐大が3番手。5番手の山口拳矢(写真)は大きく車間を切って、後方の犬伏湧也を警戒する。打鐘手前で詰める勢いで山口、7番手の犬伏が仕掛ける。中本匠栄は犬伏との連結を外す。4コーナーで主導権を奪った犬伏の番手を山口が手に入れて、最終周回。中本は4番手で続き、8番手になった新田は、2コーナーでまくりを打つ。新田も好スピードで迫るが、2センター過ぎに外に持ち出した山口が追い込んで1着。
 「犬伏君の後ろは強気に取り切ろうと思っていました。早めに動いても、すかさずは(犬伏が)来ないと思った。引きつけてから行きました。犬伏君が態勢を整えていたので、行かれる前にと思っていた。あとは三谷(将太)さんを信頼してっていう感じでした。(番手を取り切ったあとは最終)4コーナーまで誰もこなくてラッキーでした。苦しかったんですけど、思ったよりは進んでくれました」
 直線では逃げる犬伏と山口の間に進路を取った三谷将太が2着で、ラインでの決着。
 「(山口が)よくやってくれました。最悪、先行でもって思っていたんじゃないですかね。じゃないといけないので。最後は外を踏みたかったですけど、さすがに無理だったので内に行きました。(感触的には)あんまり良くないですね」

<6R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 赤板付近で森田優弥と体を併せた深谷知広(写真)が、突っ張って森田の上昇を阻む。森田は4番手に降りて、8番手になった山崎賢人は2コーナー過ぎから仕掛ける。深谷も踏み上げるが、山崎のスピードがいい。打鐘4コーナーで山崎が叩いて出る。が、小川勇介は付け切れず、深谷が後位に収まり、渡部幸訓が小川をさばいて続く。8番手からまくった月森亮輔は中団まで。逃げる山崎と車間を空けた深谷が、詰めながら追い込んで直線で抜け出した。
 「(赤板付近は)流れのなかで危ないタイミングがあった。(森田を突っ張ってからは)次に来るライン次第でした。(山崎)賢人が踏み出したのが見えたので、自分も踏みながらだった。ただ、想定よりも(山崎が)すごいダッシュだった。(小川が離れて)1人っていうのが見えたので、しっかり位置を確保してかぶらないように。(山崎の)掛かりが良かったので、自分のタイミングで行きました」
 小川とからむシーンもあった渡部幸訓だが、ヒートアップすることなくソツなく深谷に流れ込んだ。
 「(深谷とは)何度も連係しているので、踏むタイミング、加速感はわかっている。あとは相手がなにをするかだったんで、自分は追走にしっかり集中しようと。あの展開なら賢人がカマしてくると思って、自分は深谷君と空かないように。(小川ともつれたところは)極力、脚を使わないで併走してと。そのあとの深谷君の加速がすごいんで、できるだけ脚を残してと思っていた。自分はアップの段階から体も軽かった」

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松浦悠士選手
松浦悠士選手
 窓場千加頼を突っ張った小林泰正が空けたインを、包まれていた町田太我が進出する。町田ライン3車が赤板2コーナーで出切るが、そこを小原佑太が打鐘3コーナーで叩いて主導権。3番手に入った町田は、すかさず最終ホーム手前から反撃に出る。町田、松浦悠士(写真)で北日本勢をとらえて、瓜生崇智は竹内智彦にけん制される。3番手で立て直した小原はいっぱいで、番手の松浦が後続との間合いを計り、町田を差し切って連勝。
 「小原君がすかさず来たんですけど、町田君は冷静でしたね。(3番手の位置に)収まってからの出がすごかった。あれだけ踏める選手は、なかなかいないと思います。(町田と一緒に勝ち上がるには)ワンツーじゃないといけないと思っていたので良かったです。本当に町田君の成長を感じましたし、素晴らしい感性でした。(自分の状態的には)今年一番いいんじゃないですかね」
 小原に主導権を奪われて得意パターンにはならなかった町田太我だが、ロングまくりで別線を沈めてみせた。
 「(内を進出したところは)空くだろうと思っていたので、決め打ちで狙っていました。(そのあと小原に叩かれて)出切ってから流していたので、追い上げられる前に行っちゃおうと思って行きました。いい感じだったと思います。(感触としては)上向きだと思います」

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脇本雄太選手
脇本雄太選手
 前受けの根田空史が、脇本雄太(写真)を出させずペースを握る。そこを菅田壱道が赤板2コーナーで切って、中国コンビを受ける。取鳥雄吾は打鐘3コーナー過ぎに主導権を握って駆ける。脇本は一本棒の7番手で、最終ホームを迎える。2コーナーから踏み込んだ脇本だが、まだ前が遠い。菅田が合わせるように3コーナー過ぎから踏むが、その外を脇本がスピードの違いで突き抜けた。
 「1走目の反省を生かせるように走りたいと。自分がまくれるという過信にとらわれずに動いていければと思っていました。初手が昨日(初日)と同じ位置になったので、展開を待たずに自分から動こうと。最終的に後方になって、脚をためて行けるところから行こうと。感触はあまり良くないので、ケアをして臨みたい。踏み出した感覚のズレがあるので、修正をできれば」
 桑原大志のけん制で菅田が膨れて、山崎芳仁が中のコースを伸びた。
 「ワッキー(脇本)が一番脚を使ったけど、それでも1着で強かった。道中の余裕はありますし、冷静に周りが見えている」

<9R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 前受けの松本貴治も踏み込むが、坂本貴史が強引に赤板1センターで切って出る。5番手の眞杉匠(写真)は前団との距離をとって、後方の藤井侑吾の仕掛けに備える。打鐘手前から藤井が踏み出して、東口善朋は追えずに内から押し上げる。1人で前団に迫った藤井を眞杉が追いかけて、3番手で立て直した松本も合わせて最終ホーム手前から踏み上げる。1コーナーで藤井が出切るも、その上を眞杉がまくって、藤井をとらえる。車間が空いたものの和田健太郎が続いて、松本は佐藤壮を張りながら3番手で前の2人を追う。和田、松本もなかなか詰まらず、そのまま眞杉が押し切った。
 「細切れだったんでどうなるか、わからなかった。それでまずは取れた位置からでと。でも、(藤井を後方に置いて)あれでは車間を空けている意味がない。もうちょっとやりようがあったかなと。昨日(初日)、自転車をいじって練習の感じは良かったんですけど、なんか脚見せとレースでは重くて、もうちょっと調整をしようかなと。体調は変わらずですね」
 眞杉のスピードになんとか対応した和田健太郎は、汗をぬぐい一息つく。
 「前(眞杉)が強すぎます。(付いていて)キツいですね。(眞杉を)追いかけたけど(松本に)邪魔されて、僕が遅れた分、(佐藤)壮のところに(松本が)いった。申し訳なかったですね。(脚の感じは)まったくわからない。(自転車も)いじりっきりで、なにがなんだかわからなくなっている」

<10R>

古性優作選手
古性優作選手
 伊藤颯馬が打鐘手前で主導権を握り、酒井雄多は九州勢を受けて3番手に入る。古性優作(写真)は、前の2つのラインを見て5番手。伊藤がそのまま先行するが、最終ホーム手前から8番手の青野将大が巻き返す。古性は1センター過ぎから南関勢にスイッチして前団を射程圏に入れると、バックから踏み上げる。南関勢は不発で、逃げる伊藤を直線半ばでまくり切った古性が1着。
 「冷静すぎたかもしれないですね。相変わらず良くないです。(4日目はダイヤモンドレース進出で)気持ちは楽になると思う。(3日目の休みは)とにかくリカバリーしてと思います」
 最終2センター付近で酒井と接触してバランスを崩した村上博幸だったが、1車身半差も古性に流れ込んだ。
 「古性じゃなかったら、付いていけなかったかもしれない。安心感が違うので、連結を外さないようにと。(最終3コーナー)浮いてしまうと厳しいので追走はしっかりした。今日(2走目)は古性の後ろで昨日は藤井君で先行争いでした。僕の思っている競輪らしい競輪を走っている。初日は7着でしたけど、先行争いの後ろでしたし感触は悪くなかった」

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久米詩選手
久米詩選手
 4番手の梅川風子が、6番手の太田りゆを確認しながら前との車間を空ける。坂口楓華も、2番手で吉川美穂との距離をとって打鐘を迎える。スローペースだが、最終ホーム手前で坂口が踏み出して、そのまま駆ける。車間を詰めながら梅川が2コーナー過ぎにまくって出る。周回中から梅川の後ろにいた久米詩(写真)が追走。バック過ぎから太田が迫ると、久米が外に持ち出して追い込む。坂口をとらえた梅川を追い込んだ久米が、1着で決勝に進んだ。
 「初手ですんなり(梅川)風子さんの後ろに入れたので、追走に集中しようと。(梅川の後ろは)取れたらいいなくらいだったので、すんなり取れたのは意外でした。あとは風子さんだけを見てっていう感じでした。(最終)3コーナーで(太田)りゆさんが来たのがわかったので、そこでしっかり踏めたのが良かった。(調子は)問題ないです」
 6番手の太田りゆは、人気を分けた梅川を視界にとらえながらの運行。2着も力強さが目を引いた。
 「自力のある選手が多かったので、まくり合戦になるかなと。それで何度も脚を使いたくなかったので、無理やり位置取りはしないでと。梅川選手が遠くにいるパターンは嫌だなっていうのがあったけど、1車空けてだった。それで様子をうかがっていました。自分でまくりに行ったタイミングが、(結果的に)人の後ろで(最終)4コーナーで上がってからの差し勝負になった。人の後ろでの最後の追い込み勝負にシフトチェンジしました。ただ、差すっていうテクニックが私には足りなかった。(今回から換えた)自転車はいいと思います」
 久米、太田には交わされた梅川風子だが、抜かりない立ち回りで前団をのみ込んだ。昨年、初代クイーンに輝いた女子王座戦で、連覇のスタートラインに立った。
 「(組み立ては)あんまり考えても、並び順が決まるまではっていうのもあった。並びが決まってからは、あんな感じでした。なるべく自分の距離に引き込みたいっていうのがありました。(仕掛けてからは)スピードの乗りが良くなかった。(初日を終えて)レース中の意識だけ、パフォーマンスの出し方を変えたけど、あんまり変わらなかった。(昨年獲った女子王座戦の)連覇に挑戦できるっていうのは、すばらしい挑戦だと思う」

<12R>

佐藤水菜選手
佐藤水菜選手
 5番手で赤板を通過した佐藤水菜(写真)は、赤板2コーナーで7番手から動いた石井寛子にも慌てることなく間合いを取る。先頭の尾方真生がペースを握り、佐藤はためらうことなく打鐘2センターからスパート。合わせて踏み上げる尾方を最終1センター過ぎにつかまえて、當銘直美が佐藤に続く。尾方が3番手に飛び付くも、その後ろの尾崎睦もスイッチ。3番手が併走になり、2番手の當銘はスムーズな追走も、佐藤が押し切って連勝。
 「正直、1着が奇跡なくらい當銘選手が強かった。体調は昨年に比べると全然いいですね。完ぺきに仕上げているわけではなく、不安はあるけどいままでやってきたことを信じて頑張る。昨年は(この時点でグランプリ出場権を持っていたので)なんでもやれる後ろ盾があった。(今回は)自分の仕上がりに不安がある分、失うものはなにもないと思うので、自分のやりたいことをやりたい」
 當銘直美は、ターゲットにした佐藤の後ろで追走。世界のスピードに食い下がって2着に入った。
 「(佐藤)水菜が一番強い自力選手で、その後ろを狙って集中して付いていくことだけでした。水菜の後ろを狙う選手が多くてドキドキしたけど、取り切ってゴール前は自分なりに踏めたので良かったです。大きい大会でマーク選手として売り出せたと思う。(決勝進出した6月の)パールカップは悔しい思いをしたので、明日(決勝)は悔しい思いをしないように」
 2番手でレースを進めた尾崎睦は、佐藤、當銘の後ろに切り替えて尾方と併走で直線を迎える。そこから當銘の外を追い込んだ。
 「尾方さんは前かなと思って、近くにと思ってより近くにいました。(今年3つのGIですべて優出して)昨年の1年間で気持ちが切れて、もういいやって思った時期もあった。けど、家族や師匠(渡邊秀明)、練習仲間に支えていただいた。(昨年も)競輪祭の決勝に乗れて、もうちょいやれるなって気持ちの糸がつながった思い出深い大会です。昨年の決勝はなんとなく乗って、なんとなく終わった。そこから2つ乗って3着しか取れていない。タイトルを目標に掲げてきたし、最高の形で終われるように準備をしたい」