『第23回共同通信社杯秋本番(GII)レポート』 最終日編
 
配信日:10月20日


 取手競輪場で行われていた「第23回共同通信社杯秋本番」は今日20日で最終日。おなじみとなった関東勢の磐石ラインに村上博幸が初手から競りこむ展開となった決勝戦は、混戦を尻目に脚を溜めた山崎芳仁のまくり一閃で決着。バンクレコードと並ぶ上がり10.7の高速ラップで北日本勢がワンツースリーを決めた。



決勝戦 レース経過
  号砲が鳴るといち早く成田和也が飛び出し、有坂直樹が続いた。初手の並びは山崎芳仁―成田―有坂の東北勢が前受けし、平原康多―武田豊樹―神山雄一郎―幸田光博の関東勢が後ろ攻め。村上博幸―山口幸二の中近勢は外から平原の番手を狙い、武田に競り掛けた。すると、併走を嫌った武田は一旦車を下げて隊列は一本棒に。武田は七番手で追い上げるタイミングを見計らう。
  赤板を過ぎ、ジャン前で平原が上昇を始める。前団を押さえて先頭に立った平原が中バンクに上がると、武田はすかさず内をすくって番手へ追い上げた。武田がドッキングに成功すると、平原は徐々にペースを上げて先行態勢に入る。競り合いは1コーナーに入ったところで武田が遠心力を利用して村上を飛ばして決着。しかし、今度はすかさず山崎が後方からスパート。山﨑は一気に平原に迫り、バックで抜き去った。スピードに乗った山崎は、懸命に追い込む成田を振り切って優勝。成田、有坂がそれぞれ2、3着に入り、ラインで上位を独占した。
ゴール
ゴール
表彰式
優勝した山崎芳仁選手
表彰式
優勝した山崎芳仁選手


<1R>
佐々木健司選手
佐々木健司選手
   先行した福田知也を菊地圭尚が最終バックで豪快にまくると、直線で番手から佐々木健司(写真)が鋭く抜け出した。
  「今日は福田君が行く気満々だったので、前攻めの作戦でした。圭尚はダッシュが凄いからカマシだと厳しかったけど、まくりだったので何とか付いていけました。道中はずっとハンドルを引きっぱなしだったし本当にきつかったけど、最後は交わせて良かった。最近は状態が良いのに、ずっと展開に泣かされていた。これで悪い流れが断ち切れそうです」


<2R>
篠原忍選手
篠原忍選手
   荻原尚人の先行を篠原忍(写真)が力強くまくって快勝。ビッグ初勝利を挙げた。
  「恵まれました。最終日の一般戦でも1着は嬉しいです。ホームでは余裕があったけど、荻原君があんなに踏むとは思わなかったし、きつかったです。自分のタイミングで仕掛けられなかったので、ゴール前は一杯でした」
  地元の十文字貴信が篠原にしぶとく食い下がり、2着に入った。
  「篠原君が強かったです。踏み出しで離れて追い付くのに脚を使いました。こんなに強い選手が一般戦を走っているなんて不思議。でも、何とか2着に入れたし、今回は補充でしたけど、体調は良かったです。この次に地元でビッグがある時は正選手として最初から走れるように頑張ります」


<3R>
富弥昭選手
富弥昭選手
   ゴール前は先行した濱田浩司と番手の富弥昭(写真)のマッチレースとなったが、長い写真判定の末、軍配は微差で富に上がった。
  「ハマちゃん(濱田浩司)は2車なのに、迷いなく風を切ってくれた。その心意気に何とか応えたかったし、僕も必死で志村(太賀)君のまくりを止めに行きました。最後はギリギリだったけれど、何とか差せたし結果は最高です。それにしても番手のレースは良いですね。これからは3日に1回くらいは番手を回りたいね(笑)」


<4R>
牛山貴広選手
牛山貴広選手
   地元戦の牛山貴広(写真)が最終ホームからカマして先行策に出ると、別線を一蹴。最終日にして初白星をあげた。
  「四日間、気持ちを切らさずに来れたし、若干疲れはあるけれど、今日が一番良い競走でした。最後はタレましたけどね。G2での逃げ切りはこれが初めてだし、自信になりますね。あと2、3年は先行で力をつけて、ゆくゆくはGレースで活躍できる選手になりたいですね」


<5R>
新井秀明選手
新井秀明選手
   後ろ攻めから柴崎淳が先行。中団がゴチャ付き番手すんなりの山田裕仁にチャンスかと思われたが、空いたインコースを突いた新井秀明(写真)が後方から一気の強襲劇を見せた。
  「いいところが空いたんで、スポットに入った感じですね。道中は1着を獲れる雰囲気じゃなかったから、ラッキーでした。初日の落車で車輪が壊れてたのを昨日直してもらった。来る前に感じが良かったし、久々に1着が獲れてよかった」
  太田真一は天田裕輝との呼吸が合わずホームで連係がバラバラに。中団から内をすくったが、コースを失い7着に。
  「天田もホームで行くのか行かないのか分からなかったからね。岡村の内までしゃくれたらよかったけど、何だかかみ合わないなあ…。最近はだいぶ点数を落としちゃったので頑張らないと」


<6R>
浅井康太選手
浅井康太選手
   断然のスピード差で先行した山賀雅仁を豪快にまくり切った浅井康太(写真)が1着をもぎ取るも、検車場に引き揚げて来た表情は冴えない。
  「出切れて良かったけれど、レースの組み立てが下手すぎますね。他の自力選手の動きが読みづらく、いつの間にか後方に置かれてしまいました。仕掛けてからはとにかく(渡邉)晴智さんのブロックだけを食わないように気をつけました。落車続きで調子もイマイチだし、最近は出走本数が少なくレース勘が鈍っている。もう少し、レースの勉強をしないとだめですね」
  浅井康太にまくられた山賀雅仁は完敗宣言。今後の巻き返しを誓った。
  「かなり掛かってもいたしコーナーを回る時の自転車の寝かたも今までに無いものだった。自分の中では最高の先行だったはずなのに、それをまくられたってことは『力の差』ってことですよ。僕はまだ、G1の決勝に乗る自力選手に勝てるレベルではない。オールスターとここを走って、ツボにハマれば十分戦える自信は付いたけど、これからは真っ向勝負になった時に力で捻じ伏せられるだけの脚を付けないとですね」


<7R>
新田康仁選手
新田康仁選手
   栗田雅也の先行に乗った新田康仁(写真)が石丸寛之のまくりを止めると直線抜け出す。シリーズ2勝目を挙げた。
  「(初周の内側追い抜きが審議になり)ダメかなとも思ったけど、位置を取らないとね。今日は栗田に残るように駆けてもらいたかったから。栗田もペースで行ってくれたし、僕もそれに応えて1着が獲れた。今回は4日間、セッティングをイジりまくったけど、今日はローラーでも良い感じだった。もう少し感じをつかんでから競輪祭に入りたいですね」
  今回は慣れない三番手を4日間回った萩原孝之。最終日は新田マークできっちり2着に続いた。
  「まだ何をしていいのか分からないけど、とりあえず付いて行ってと思ってました。今回は(渡邉)晴智さんに色々アドバイスをもらった。今後もこういう機会が増えるかもしれないし、勉強になりました」


<8R>
新田祐大選手
新田祐大選手
   目の覚めるようなカマシを打った新田祐大(写真)が、強豪たちを退けて快勝。最高の笑顔で検車場に引き上げてきた。
  「流れに乗ってうまく仕掛けられました。村上さんが(後ろの仕掛けを)待つような踏み方だったので、そこをめがけて思い切り行けたのが良かったんでしょう。でも、後半はめちゃめちゃ失速しちゃいました。この後はワールドカップに出場する予定ですが、この感じで頑張ってきたいと思います」


<9R>

木暮安由選手
木暮安由選手
   先行した永井清史の番手で松岡貴久が粘り隊列が短くなったところを木暮安由(写真)がひとまくり。久々の勝ち星に表情を緩める。
  「いやー9月の別府S以来。やっぱり1着は良い薬になりますね。打鐘から永井さんと松岡さんが踏み合っていたし、展開にも恵まれました。仕掛けのタイミングもドンピシャと言うわけではなかったけど、行ける所までと思って躊躇しなかったのが良かったのですかね。小倉(竜二)さんのブロックだけ怖かったけど、そこを越えてからは良いスピードに乗れました。明後日は地区プロ、その後は前橋記念とスケジュールはきついけど、早速明日から練習再開です」
  先行した永井清史は8着に敗れるも「自分のレースは出来たし、今回は結果以上に良い感触で踏めている。次につながる競走は出来ています。GP出場は賞金では微妙な位置にいるので、何とか競輪祭を獲りたい。上手くこの脚の状態を維持していきたいですね」と、早くも次の目標に照準を絞る。
  永井の番手で粘った松岡貴久だったが三宅伸に競り負けると力尽き、最下位に沈む。
  「今日は何が何でも先行と決めていたので、何としても永井さんを突っ張りたかったけど、あっさり出切られてしまいましたね。仕方なく番手で粘って競り負けたんじゃ、良いとこ無しですね。まぁ永井さんのあのスピードに合わせきったところで最後まで持つわけないけど…。やっぱり上位クラスはスピードが違いますね」


<10R>
吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
   前受けの吉田敏洋(写真)が逃げる小嶋敬二ライン三番手を上手くキープすると、まくってきた海老根恵太を大きくブロックした市田佳寿浩が空けた内を突いてバックまくり。そのまま後続を振り切った。
  「変なレースになってしまいましたね。今日は僕が駆ける展開になりにくいなと思ってたので、1回踏んでペースを乱したとこからレースを組み立てたかった。内を行くのは考えてなかったけど、市田さんがずっと空けてるからごめんなさいって感じで。今回は先行だけじゃなくて着を意識したレースができたので、良い経験になりましたね」
  海老根のまくりに乗った伏見俊昭が2着に食い込んだ。
  「吉田は行っちゃってるし、ムリですよねアレは。海老ちゃんはバックまくりで良いのに、早めに行ってくれた。頑張ってくれました」
  3着の海老根恵太は「(ホームで)矢口(啓一郎)が下がって来たので、後ろになっちゃマズいと思って無理矢理踏んだ。市田さんが持ってくるのも分かってたけど、そんなこと考えてられないし、とりあえず前々に踏みました」とレースを振り返った。


<11R>
成田和也選手成田和也選手
武田豊樹選手武田豊樹選手
   山崎芳仁が憎たらしい程の強さでまくり圧勝した決勝。成田和也(写真)は番手絶好となるも、最後まで山崎に迫ることは出来なかった。
  「山崎はゴール目がけてどんどん伸びていく感じ。全力で抜きにいったけど力不足でした。あいつのほうが3、4枚、格が上ですね。今日は『決勝の山崎』の強さを思い知った。また、心新たに練習をして、あいつを交わせる脚をつけます」
  スタートから村上博幸とジカ競りになった武田豊樹(写真)は、平原康多の番手を死守したものの北勢に迫るだけの脚は残っていなかった。
  「今日はとにかく番手を守りぬく事が1番だと考えていたし、競りになったら後ろからまくられるのは仕方ない。これからも今回みたいな事があるだろうけど、引く気も無いし引く理由も無い。全力で立ち向かうだけです。それにしても今日の山崎は強かった。正直、今回あいつとの脚力差を感じたので、そこをどう埋めていくのが課題。また頑張らないといけませんね」
  山崎にまくられ9着に沈んだ平原康多も「村上(博幸)さんにあのコメントを出されて引いたら、これからもずっと標的になってしまう。何とか格好はついたんじゃないですか。あれじゃ山崎さんのレースになってしまうけど、村上さんもそのつもりできたんでしょうからね。悔しいけれど、武田さんが取り切って、まくられたのだから仕方ないですね」とレースを振り返る。
  一方、初手からのジカ競りも競り負け8着となった村上博幸は「今日は僕の技量不足。本当は自分が切れ込んで武田さんを踏み遅らせなくていけないのに、逆に踏み遅れてしまった。まさか平原があんなに早く仕掛けるとも思っていませんでした…」とうなだれる。

   
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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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